あなたにもう一度毛布をかけるため   作:もしも=ロマンの可能性だよねッ!

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どうも皆さんもしロマです!
今年もいよいよ終わりですね。
そんな訳で今年最後は2話続けて投稿致します!
それでは続きをどうぞ!( ´ ▽ ` )つ


FILM〜Z〜下

 半裸のデブに革ジャンのロン毛にジャラジャラチェーンに牛角カブトのジジイ。コイツラが何者かは分からねェが……雑魚ではないな。

 

「邪魔するなら殺す、ねェ。先を急いでんのはこっちも同じだ。てめェらが道を開けろ。じゃねェとブッた斬る」

 

 出会い頭に殺すと言われ大人しくしている程穏やかじゃないんでね。向こうが何か妙な行動を取れば即斬る。

 

 だが、アイツラの反応は俺の反応していたものではなく……。

 

『ン?』

 

 疑問符だった。思わぬ反応におれも首を傾げると革ジャンのロン毛が前へ出る。

 

「お前はゼットの所へ向かってるんだよな?なら火山へ行くべきじゃないのか?こっちに進んでも海岸しかないぞ?」

「…………」

『…………』

 

 何……だと……。

 

 相手は冗談だと思ったのか一瞬吹き出しそうになるもおれの顔を見て本気なのだと悟り徐々に「え?ウソだろ?」と言いたげな様子で絶句する。

 

『うわあ……』

「うわあって何だこら!?」

「いやァ、"海賊狩り"が方向音痴とは聞かされていたがここまでだったとわ……」

「目の前に火山あんのに。何で……」

「うっせェ!!黙れてめェら!!人を憐れむ目で見んじゃねェマジでブッた斬るぞ!!?」

 

 つい先程まで「殺すぞ」とまで言われていた相手にそんな目で見られると余計ムカッ腹が立ち思わず刀を抜いた。コイツら許さん。

 

 つーか、誰だよおれが方向音痴とかホラ吹いた野郎は……そいつも必ず斬ってやる!

 

「まあいい、本題に戻ろう」

 

 ジャラジャラチェーンが咳払いをし話を戻す。

 

「おれ達はゼットがお前らに敗けて海軍に殺されると思っている。だったら使わなくなったダイナ岩を回収し有効活用しようって腹だ。別にお前らの邪魔はする気はねェ……だからここはお互い見なかったことにしようぜ」

「ヘェ、おれ達が勝つと思ってんのか。称賛されるのは悪くねェな……が」

 

 おれ達を高く評価してくれたことに対しては悪い気はせず表情が緩む。しかし、すぐにそんな表情は消え目の前の連中にガンを飛ばした。

 

「おれ達の喧嘩に余所者が割って入り何かを掻っ攫おうって言うそのハイエナ根性……気に入らねェな」

「成程、聞かされた"海賊狩り"の情報では「方向音痴」ともう一つ……「好戦的な狂人」だったか」

「あの方からおれ達は戦うべき相手じゃないと警告されたが……"覇王色"に目覚めていない今なら話は別だよなァ?」

「そもそもコイツに「王の器」があること自体疑わしいがな」

「アア?ゴチャゴチャ言ってねェでやるんだったらさっさとかかってこい。まとめて相手してやるよ」

 

 手拭いを頭に巻きつけ3本の刀を抜くと相手は身構える。その内の一人がやる気を見せ前へ出た。

 

「まとめて相手してやるだァ?調子に乗るなよ"海賊狩り"ィ!!てめェ1人おれだけで十分だ!!!そのご自慢の刀ごと溶かしてくれる!!最大熱量一万度!!!」

 

 半裸デブの身体から蒸気が上がり熱風を巻き起こす。あまりの温度上昇に奴の周りの岩や地面がドロリと溶け始める。

 

 そして、全身高熱状態のままタイヤのように身体を高速回転させるとおれに向かって突進してきた。

 

「おいバカ待て早まるな!!単独で戦うなって言われただろうが!!!」

「”ネッタイヤ,,!!!」

「三刀流……!!」

 

 味方の声も聞かずに特攻してくる半裸デブ。すごい勢いで向かってくる。当たれば奴が通過した岩地面のように溶けてしまうだろう。

 

 ()()()()()()だがな。

 

「”千八十煩悩鳳(せんはちじゅうポンドほう),,!!!」

「ドベッヘェエエエッ!!?」

「アッチーノ!?」

 

 当たる直前に斬撃を放つと半裸デブは全身を斬り刻まれ血だらけとなり後方へとぶっ飛んでいった。

 

 何らかの能力者だろうしとりあえず海まで届かないようにしておいてやったぜ。まあ、しばらくは目覚めないがな。

 

「伝わんなかったみてェだからもう一度言うぜ?てめェら全員でかかってこないと相手にならねーって言ってんだ。───まとめて来ねェんなら出しゃばんなハイエナ共」

「だ、誰がハイエナだ!グツグツの熔解にしてやる!!」

「ジャラララ!!マジか、これでまだ目覚めてねェのかよ!!このスリル、いいね~!!トレジャーハントはこうじゃねェと面白くねェ!!!」

「バロロロロ!!粋がるのは結構だが流石に舐めすぎだ!制限時間内にぶっ殺してやる!!!」

 

 奴らは半裸デブのやられっぷりを見て俄然とやる気を出す。革ジャンロン毛は全身をグツグツと煮え滾らせ、ジャラジャラチェーンは両手に鎖を持ち、牛角カブトのジジイは手元の小石を弄ぶ。

 

 よしよし、ようやく楽しめそうだな。

 

「NEO海軍の雑兵ばかりで退屈だったんだ。せいぜい楽しませてくれよ?」

 

 

 

 

 

 先生を守る様に海軍の前へと出る私とビンズ。

 

 相手の戦力は計り知れない。見渡す限り海兵が至る所にいる。しかも中には中将などの強敵もおり大将黄猿まで……。

 

 こんな軍勢を相手に先生は一人で……。

 

「アイン!?ビンズ!?何故戻って来た!!?お前らの敵う相手じゃない!!逃げろォ!!!」

「「嫌です!!!」」

「なっ!!?」

 

 これまで先生の指示に忠実に従ってきた私達が拒否した事に驚愕する先生。こんな状況だと言うのに普段見せない新鮮な反応に思わず笑みを零す。

 

 そこに先ほど「一般戦闘員R」と名乗った男、鬼の戦漢は先生の前に座り懐を弄る。そして……。

 

「あまり怒らないでやってくれ。あいつらを焚き付けたのは俺なんだ。まあ、ここにいるのはアンタが不甲斐ないからってのもあるがな」

「お前まで!何であのまま逃げなかったんだおれはケジメをつけるために」

「死ぬことがケジメってか?ただ楽になりたいだけだろ」

「っ!!」

 

 先生は鬼の戦漢の言葉に肩を震わせる。すると肩を掴まれ真剣な眼差しで見つめた。

 

「男なら最期ぐらいかっこよく逝こうと考えるのは分からんでもない。だがな、ケジメを理由にかっこよく最期を飾る暇があんなら最期まで足掻き続けやがれ。そんで泥臭くてめェの人生を歩み続けろ。それがホントのかっこよさってもんだろ」

 

 手を離すと奴の手には一本の酒瓶が握られていた。それを見て先生は目を丸くする。

 

「あ、お前それは!」

「一番かっこいい酒だっけ?今のお前には勿体なさ過ぎる代物だな。つー訳で……俺が貰うぜコレ」

 

 先生の好きなお酒である「シェリー」をくすねた鬼の戦漢は私達と見合わせる。

 

 「後は任せたぞ」と言っているように。

 

「気をつけろ!何か来るぞ!!」

 

 鬼の戦漢は海兵を一望すると周囲は警戒心を上げる。次の行動次第で乱戦が始まりそうな雰囲気に一同息を呑むと……。

 

 キュポン。

 

「ゴキュ……zzZ」

 

『エェエエエッ!!?寝たァ〜〜〜〜ッ!!!?』

 

 酒瓶を開け一口含んだ瞬間その場にバタリと倒れ寝てしまった。まさかの行動に海兵達は驚いてしまう。

 

 と言うより私達も驚いてる。本当にすぐ寝ちゃった。

 

 私達は眠ってしまった彼を見つつ少し前の話を思い出す。

 

『相手は万全の状態で待ち構えていた海軍だ。中将は何人もいるし大将もいる。ぶっちゃけ今のままじゃ絶対殺されてジエンド───だから"1分"だ。1分間お前らには2人だけで俺とゼットを守って貰う』

 

 ……と言ってたけれど。

 

「いざ前にすると物凄い重圧感ね。足が竦みそう」

「モサ?ならば拙者一人で任務を遂行いたすか?」

「冗談、これぐらい……先生を失う恐さに比べたら」

 

 屁でもない。必ず守り通す!

 

「やるわよビンズ。───死なない覚悟で」

「モサ!!」

 

 鬼の戦漢が起きるまで後50秒。

 

「この状況で寝るだと……我々を舐めているのか!?ならお望み通りその寝首掻っ切ってくれる!!かかれェ!!!」

『ウォアアアア!!!』

 

 中将の一人、ドーベルマン中将がこの場の海兵達に指示を送ると一斉に襲いかかってきた。

 

 物凄い数だが……。

 

「モサモサモサァ〜!!!」

「うわっ!?何だこれは……植物!!?」

「クソッ!ツタが絡みついて動けないィ!!」

「何とか切り外さないと───ウワア!?」

 

 身動きが取れなくなった海兵を狙い次々と体に触れていく。すると姿はみるみる幼くなり隊服がブカブカになる程に幼くなった。

 

 1回タッチで若返るのは12歳前までだけど、連続で触れれば年齢は一気に下がる!

 

 後40秒……。

 

「気をつけろ!!あの女に触れると子供に変えられるぞ!!」

「アイツ……!!だったら距離を取りつつ銃で撃ち殺せェ!!!」

 

 接近するのは危険と判断しすぐに遠距離からの射撃に移り変わる。だけどね、その戦術はファウス島とセカン島でも経験している。

 

 守る範囲が狭ければ……!

 

「撃てーーッ!!!」

「ビンズ!!」

「モサモサモサ〜〜ッ!!!」

 

 次々と撃ち込まれる銃弾と砲弾の雨。しかし、ビンズの能力で太い植物を次々と生やし強固な盾となる。

 

「な、何と言う強度だ!?ただのツルじゃない!」

 

 銃弾どころか砲弾すら届かないビンズの植物に驚く海兵たち。そうよ、戸惑いなさい。私たちの目的はあくまで時間稼ぎ。

 

 後30秒……!

 

「ダメです!銃が効きません!!」

「かまわん!!撃ち続け……あっつ!!?」

「”モドモド,,!!!」

 

 ビンズの植物でガードしつつ私の能力で海兵達の足元を溶岩に戻す。手で触れる時ほど時間を遡ることは出来ないけど、ここら一帯の地面や岩を溶岩に戻す程度ならモドモドのエネルギーを飛ばすだけでも十分!

 

 怯んだ今がチャンスだ。もっと追撃をかけて時間を稼ぐ!

 

 後20びょ───

 

「アイン危ない!!伏せろォ!!!」

「えっ!ビン……キャッ!?」

 

 突然背後からビンズから突き飛ばされ倒れ込む。いったいどうしたのか上体を上げると……。

 

「「”嵐脚(らんきゃく),,!!!」」

 

 いよいよ中将達が出張って来てビンズの植物をいとも簡単に斬り倒される。ビンズと共に……。

 

「ゲボッ!!?」

「ビンズ!!?」

「お前達の過去は知っている。同情もしよう。だが、正義に背いた者は例外なく粛清する!」

 

 植物の盾がなくなりモモンガ中将が刀を構えビンズを捉える。すぐに助けに向かおうとした時手首にカチャリと金属音が聞こえた。

 

 と、同時に言いようのない脱力感に襲われ膝を着く。自身の手を見ると……手錠をかけるオニグモ中将がいた。

 

「これ以上我々の手を煩わせるな。もはや貴様らに未来などない」

「これは……海楼石っ!!?」

 

 マズイ!これではもう能力が使えない……!いやそれよりも今はビンズが危な───

 

「モ"ザッ!!?」

「ビンズーッ!!!」

 

 ザシュッ!と肉が斬られる音と共に鮮血が飛び散り頬に彼の血が垂れる。どうしよう早く助けないと!

 

 アイツが起きるまで後何秒だっけ?ああもう頭の整理が追いつかない!このままじゃ皆殺されてしまう。何とかしないと!でも、どうすれば……!

 

「能力は封じた。忍者のNEO海兵も斬り伏せた。なのに何故まだ抗おうとする?貴様の何が希望へすがりつく?───あの男か?」

「ッ!!」

 

 オニグモ中将の言葉に肩を震わせる。その態度に確信したのかオニグモ中将は眠っている彼の方へと向かって行く。

 

「何者かは知らんがこの戦場の中、眠り惚けるなど巫山戯た奴だ。だが、奴に何かしらの期待を寄せているのなら……その根ごと葬り去るまで!!」

 

 眠っている彼に飛びかかったオニグモ中将の背中から6本の腕が生え合計8本の刀が彼に突き立てられる。

 

「くっ!!」

 

 その時、私は考えるよりも先に体が動いた。

 

「ッ!小賢しいぞ小娘が!!」

 

 砲弾を撃てる特注銃を乱射し意識を向けさせる。そして、鉛のように重たい体を動かしナイフでアイツの前へと走りこれ以上オニグモ中将を行かせないように立ち塞がる。

 

「何の、つもりだ……?」

「ハァッハァッ!ここから先へは……絶対に行かせない!!!」 

「阿呆が、どちらから殺すのも大差ないと言うのに。そんなに死にたければ望み通りにしてやろう!!!」

 

 オニグモ中将の8本の剣が一気に私へと振り降ろされる。避ける力も残っておらず、ただ受け入れるしかない私は目を瞑った。

 

 

 先生っ!

 

 

───ガキィィイイイン!!!

 

「よくやった。若いNEO海兵」

「えっ?」

 

 覚悟していた痛みが襲ってこない事に違和感を憶え目を開くと……私の前にオニグモ中将の斬撃をアイ受け止めるアイツの背中があった。

 

 

 

「お前が命を懸けて生み出した"勇気ある数秒"は、良くか悪くか……たった今、世界の運命を大きく変えた!!」

 

 

 

 

 

 アッハッハッハ!!一度は言ってみたいセリフシリーズのひとつをいってみたが……ん〜〜!気持ちいい〜〜!

 

 悦に浸っていると向かい合っているオニグモ中将が声を荒げる。

 

「貴様、眠っていた筈じゃ……!?」

「うん寝てたよ。俺ってば酒弱くてさァ〜。そんでもって敵意に敏感な体質でもあるからどんなに寝ててもす〜ぐ起きれちゃうんだよなァこれが」

 

 まあ、睡眠中に敵意で起こされるから寝起きは最悪だがな。

 

「それにしても、よく1分間守りきったな。流石だよお前ら。後は俺に任せとけ」

「アル……R。本当に戦えるの?」

「今名前呼び間違えそうにならなかった?」

 

 ここまで正体隠したのにあっさりバラたら恥ずかしいぞ?頼むからボロは出すなよ?それと……。

 

「問題なし。しっかり1分寝れたからな。全快とは言わんが体力は回復したぜ」

「いや、たった1分じゃない」

「お前1分の睡眠をナメてるな?」

 

 ルフィも原作で二度のクロコダイル戦後に血流しすぎて倒れたけど1分寝たら回復してたし問題ないだろ。それに、こう見えて俺は超ショートスリーパーだしな。

 

 さて、と……!

 

「オラァア!!」

「グッ!?」

 

 両手の刀に力を込め8本の斬撃を振り払う。今ので俺をただのザコではないと認識したオニグモ中将は一度距離を取った。

 

「”紅枝垂(べにしだれ),,!!!」

「ウオッ!?」

 

 その隙にビンズを取っちめていたモモンガ中将に攻撃し二人を離らかせた。ビンズを取り返しアインの元へ戻り手に嵌められた手錠を"武装色"で握り壊す。

 

「えっ!外れた!?」

「アイン!!ビンズとゼット……総帥を連れてここから離脱しろ!お前の能力なら後の氷の壁に穴開けられんだろ!」

「え、う、うん!でも、貴方は……!?」

「時間を稼いだ後頃合い見つけて勝手に逃げる!」

「そんな!!あの軍勢を1人任せるなんて!!」

 

 俺ひとり残して行くのは後味が悪いのか躊躇しているがそんな余裕はない。

 

 手っ取り早くアインを説得する。

 

「お前らは俺との約束を守った。だから今度は俺の番なんだよ。わかったら行け。それとも逃げる手段がないか?」

「逃げるだけなら海軍を足止めしていた遊撃隊の潜水艦があるから何とかなるけど……」

 

 そうかそうか、とりあえず逃げる足はある様だ。それなら問題ないな。…………ん?ちょっと待って。

 

「え?ひょっとしてシューゾいんの?」

「いるわよ。というよりよく知ってるわね?遭ったことない筈だけど」

 

 うそん、ここに来てアニオリキャラ登場かよ。今までアニオリシリーズ一度もなかったから原作沿いの世界線なのかと思ってたぞ。

 

 千年竜編とかナバロン編とか好きなのに。

 

「ッ!!?」

 

 アニオリの存在に一喜一憂していると空から光線が飛んで来た。

 

───ピュン!!……ヒュイン。シュ〜…

 

「あっぶねェェ……」

「バカな!?大将黄猿の攻撃が吸収された!!?」

「おォ〜、その手袋見覚えがあるねェ〜」

 

 事前に"貝手袋(ダイアルグローブ)"に光貝(フラッシュダイアル)をセットしていたお陰で何とか防げたが……そのせいで正体がバレちゃったかなァ。

 

「黄猿大将!!」

「退いてなェ〜!」

「黄猿が来る!!お前ら急げ!!!」

「わかった!!死なないでね!!!」

 

 少し強めに言うとようやく決心がついたらしくアインは頷きモドモドの能力で氷の壁に穴を開ける。そして、何とか立ち上がったビンズと共にゼットを連れてこの場を離脱した。

 

「”八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま),,!!!」

「”降霊(こうれい)呼憑(よびつ)き」,,!!!」

 

 天から光の雨が降り注ぐ。それを回避するために自身を強化させ一気に駆け出した。向かうは海兵が密集している所。

 

「ウワア!?こっちに来るぞ!っておいおい!?」

「ちょっ!?黄猿大将!!我々がここにギャアアア!!?」

「ウオッとと〜。小癪だねェ〜」

 

 光線が味方に当たってしまい攻撃を中断する黄猿。範囲攻撃が広すぎるのも考えものだよなァ。

 

 と、そこへ今度は中将の猛追が襲う。

 

「次は斬り刻んでやる!!!」

「そういやアンタには2年前世話になったな」

 

 オニグモ中将の斬撃を見切り"貝手袋(ダイアルグローブ)"を奴に突き出す。そして、先ほど吸収した黄猿のビームをぶっ放した。

 

「ぐおっ!?今の、はァァ……ァ!?」

 

 ビームで集中力を削がれ背後を取られたオニグモ中将は手首にガチャリと何かを嵌められまたたく間に力を抜かしてしまう。

 

「これは私の……いつの間に!?」

「アッハッハ〜♪ゴメンねェ〜、俺ってば手癖悪いからさァ〜」

「まさか、あの時か……ぐっ!」

 

 さっきアンタの剣を受け止めて薙ぎ払った時に懐に入ってたのを頂いちゃいました。これのせいで2年前の戦場ではマジで追い詰められたからな。

 

 つってもコイツの手錠だから鍵も持ってるだろうしすぐ外されるだろう。なのでその前に!

 

「恨み辛みの……”怪・力鬼(カイリキ),,!!!」

「ぐはああっ!!?」

『オニグモ中将っ!!?』

 

 無防備な状態から重い一撃を食らいオニグモ中将は遠くまでぶっ飛ばされる。その光景を見ていた海兵達は愕然としたいた。

 

 よっしゃリベンジ成功!やられたら必ずやり返す!それが俺よ!

 

「ハアッ!!」

「おっと!今度はモモンガ中将か!」

「おのれ!よくもオニグモを……!!」

 

 何だかんだでコイツとは結構戦ってるよなァ。いや、それだけじゃないか。

 

 流石にオニグモ中将がやられ焦ってきたのかモモンガ中将を始めドーベルマン中将やダルメシアン中将にヤマカジ中将まで……まるで中将のバーゲンセールだな。

 

「寄ってたかって皆で袋叩きとか正義が聞いて呆れんぞ。人の心とかないんか?」

「うるさい!!”指銃(シガン),,!!!」

「”竜鱗掌底(りゅうりんしょうてい),,!!!」

 

 ダルメシアン中将の”指銃,,が飛んで来るが掌底で受け流す。そして、一瞬呆気に取られるダルメシアン中将の顔面に蒼炎の拳を繰り出した。

 

「何っ!?」

「”煉獄・朧突(れんごくおぼろづ)き,,!!!」

「ゴハァアアッ!!?」

 

 殴られた腹部からジュッと焦げる音が聞こえた瞬間地面に何度もバウンドしながら向かいの岩盤に衝突しメリ込んだ。

 

「ダルメシアン中将まで……!!」

「クソッ!!一斉にかかるぞ!!」

「ああ───ぐっ!?眩しっ!!」

 

 今度は全方位から同時に仕掛けてきたため俺は目眩まし程度に微調整した"光貝"で周囲は照らす。思わず目を瞑り一瞬怯む中将達だが、それは彼らにとって支障はあまりない。

 

「子供騙しだな!」

「中将以上の将校は皆"見聞色"を持っている!!」

「時間稼ぎにもならんぞ!!」 

「わかってるよ。だけどさァ……」

 

 それって、お前らの"見聞色"が俺のより上回ってたらの話だよなァ?

 

「桜木二刀流!!”桜華乱舞(おうからんぶ),,!!!」

 

 俺の首を狙う3人の中将の斬撃を全て受け流し捌き切る。2年前の戦場で味わった将校クラスのエンドレス連携に比べりゃベリーイージーだっての。

 

 まあ、万全じゃないんで流石に所々掠り傷は負ってしまうが、致命傷さえしなければ問題ない。

 

「オラオラどうしたァ!!中将3人がかりでこの体たらくかァ!?また一からゼット総帥にご指導受けてもらった方がいいんじゃねェの〜っ!!!」

「ぐっ!?このォ……!!」

「NEO海軍にこんな隠し玉がいたとは!!何者なんだコイツ!?」

 

 たった一人に三人がかりで倒せない事に驚きを隠せない中将達。うし、いい感じに時間稼ぎできてるな。ある程度アイツらの逃げる時間を稼いだら俺も頃合いを───ッ!!?

 

───ゾクゥゥゥッ!!!

 

「選手交代、こっからはあっしがやろう」

「黄猿!!?」

 

 見聞色でヤバい気配を感じると目の前に光の剣を構えた黄猿が襲いかかる。

 

 あれ?でも、今の声って……。

 

「”天叢雲剣(あまのむらくも),,!!!」

「うおっ!?」

 

 二本の刀を重ね黄猿の光の剣を受け止めるが凄まじいパワーに押し負けそうになる。コイツ見た目の割に力あんな……!

 

 だけど……!

 

「おい」

「ん?」

 

 鍔迫り合いをしていると黄猿から声をかけられる。

 

「何でオメーさんがゼファー先生を?さっきまで殺し合ってたんじゃァないのかい?」

 

 アチャー、その反応は完全に俺の正体に気付いてますね。それを公言しないのは何か思惑があるからなのか?

 

 何を考えているかはわからんが黄猿の問いには答えることにした。

 

「俺さ、あのオジサン気に入ったんだよねー。だから助ける。それに、お前らもホントは殺したくないんだろォ?だったら見逃してくれよ〜。「どっちつかずの正義」の名が泣くぜ?」

「殺したくない?何を根拠に言ってんだい?適当言うんじゃ……」

「そういう割に随分とまあ濃ゆいのかけてるなァ。サングラス」

「っ!!」

 

 揺れたな?今、心を……!

 

「桜木一刀流奥義!!!”一刀・桜漸閃(いっとうさくらぜんせん),,!!!!」

 

 神速の居合抜刀。刀を鞘へ納める頃には黄猿の首は真っ二つに斬られていた。しかし、奴にダメージはない。

 

 流動回避、未来予知レベルの"見聞色"と変幻自在に体を変化させる事ができる"自然系"の能力を使い相手の攻撃をすり抜ける回避技法。

 

 だが焦ったな?以前クロコダイルと戦ってその流動回避にはひとつだけ致命的な弱点があるのを知ってんだよ!

 

 未来予知レベルの"見聞色"と攻撃をすり抜ける様に能力を微調整する繊細さが求められる流動回避は、その間体を動かせない!

 

───パァン!

 

「ウッ!こりゃ……やられたねェ」

 

 黄猿の肩に指先程の小さな鮮血が飛ぶ。だが、黄猿の顔がその深刻さを物語る。

 

 眉を寄せる黄猿の視線の先には俺が握っていたピストルの銃口から煙が上がっていた。

 

 そう、すぐに首は戻ったがその僅かにできた硬直状態を狙い俺はゼットから酒と一緒にくすねていた海楼石製の銃弾が入ったピストルを発砲したのだ。

 

 本来のお前だったらこんな粗末な手には絶対に引っかからなかっただろうが……如何に今回の任務が嫌だったのかが窺える。

 

 これでもう、能力は使えないよなァ?

 

「能力に頼りすぎるなと、ゼット総帥から忠告されてたよなァ!歯ァ食いしばれっ!!」

「こりゃ、イカン───」

 

 武器を金棒に切り替え"武装色"を纏うとおびただしい量の覇気が迸る。海楼石の銃弾が撃ち込まれ上手く体を動かせない黄猿は冷や汗を流した。

 

「”雷鳴八卦(らいめいはっけ),,!!!!」

 

 重い一撃が決まると黄猿のサングラスにヒビが割れただでさえ見えづらかった表情が更に分からなくなった。

 

 そして、勢いよく飛ばされた黄猿は岩盤に衝突した。

 

「黄猿大将ォォッ!!?」

「バカな!?大将がやられるなんて!!?」

「何なんだアイツはァッ!?」

 

 どよめく海兵達の声を余所に俺は冷静に状況を整理する。

 

 確かに手応えはあったが今の単発じゃ黄猿は倒せせていない。攻撃する直前に"武装色"でガードしてやがった。さすが大将だ。

 

 だが、恩師を殺さないといけない精神的疲労に加えて海楼石の銃弾で能力を封じられ身体機能も著しく低下している。

 

 そんな状態での”雷鳴八卦,,はさぞかし堪えただろう。少なくともしばらくは起き上がれないハズだ。

 

 いや、起き上がりたくないの間違いかな。

 

 何にしても最大の障害は乗り越えた。後は消化試合……。

 

「ウ"ッ!やっば……」

 

 身体から溢れる光が霧散し言いようのない脱力感に襲われる。まだ行けるかと思ったが活動限界が来てしまったようだ。

 

 やっぱ”流桜武神,,を使った後で”降霊「呼憑き」,,2回は無茶だったか。もう立ってるだけでやっとだ。

 

「何だっ!?急に動かなくなったぞ!」

「たたみかけるか!?」

「っ……!」

 

 マズイ!ここで悟られてしまえばたちまち袋叩きにあってしまう。幸い今は黄猿が倒れて士気がダダ下がってきている。毅然とした態度を崩すな。

 

 優位は俺にあると思わせろ!

 

「まだやるか?」

「ヒッ!?」

 

 あえて煽るが、やらないで欲しい。

 

「グッ!この……!!」

「待て、早まるな!!ゼット以外にここまで戦力を持っていかれるとは我々も想定外だ。一度態勢を立て直す必要も出てきた」

 

 海兵の一人が前へ出ようとしたがそれをモモンガ中将が阻止する。そして、何かいい感じに事が進みそうな雰囲気に内心安堵する。

 

「へえ、大将に頼りっきりの烏合の衆かと思ったが聡明な奴もいたんだ。知将だな」

 

 ここでヨイショしとこ。下手に煽りすぎて逆上されたら溜まらない。

 

 このまま上手く行ってくれれば───

 

「それは困るな」

『───ッ!!!?』

 

 突如聞こえてきた第三者の声に俺やモモンガ中将を含む海兵一同が一斉に視線を変えた。その先には、三人の人影が見えた。

 

「誰だ!?上に誰かいるぞ!!」

「三人!!……と、一匹?」

 

 よく見ると一人の方にチョッパーぐらいの小動物が肩に乗っていた。誰だ?ここからじゃ遠くて見えづらい。

 

 だけどあの異様な気配、間違いない……。さっき黄猿が襲いかかる直前に聞こえた危険な声はあいつらだ。

 

「予定と違うな。ゼファーと海軍がぶつかり疲弊した所をおれ達がダイナ岩を奪う手筈だったろ。というより「ANIORI」はどうした?先にこの島へ来ている筈なのに合流地点にすら来てねェぞ?」

「ヌッキッキ!さっき連絡で"海賊狩り"と戦ってるって!」

「何?ったく、あのバカ共が……!」

「まあ、よかろう我々で対処すれば。ああ、バカといえばゼファーもそうであったな。海賊ってだけでああも掌返しをするとは……」

「まったくだ、わたしも海賊は嫌いだが……復讐のためなら"悪魔"とだって手を組む。ここのダイナ岩でようやくわたしの計画は歩み出せる!」

 

 目を凝らすと中々に個性的な奴らだった。

 

 ひとりは探検家のような格好にボサボサで長めの白髪男。もうひとりは全身メカニックな青い装甲を身に着けている人?それともロボット?そして、真ん中に立っている男は肩にタヌキを乗せた初老の男。

 

 どれもキャラが立っていて覚えやすい見た目だが全員原作で見たことがない奴らだ。誰だ?ひょっとして"エッグヘッド編"以降に出てくるキャラか?

 

 いや、待て……。薄っすらだが何か覚えがあるぞ?えーと、どこだっけ〜、たしかー……。

 

「おい!真ん中の男!!その顔、見たことがあるぞ。少し資料と変わっているが……貴様Level6の脱獄囚の一人───レッドフィールドだな!!!」

「ほう、我を知っているか。なら話は早い───速やかにこの場から退場してもらおう。パト」

「は〜い親分っ!」

 

 パトと呼ばれ返事をしたタヌキが3枚の葉っぱを放り投げる。ヒラヒラと中を舞う葉っぱをじっと見つめると……ボワンと煙幕が上がり中から人影が現れる。

 

───ピュンピュン!ズドォオオオオン!!!

───パキパキ!ガキィー……ン!!!

───ボコボコ……!ジュワアアアア!!!

 

「ギャアアアッ!!?」

「何だ急に葉っぱが人に……いや、それよりも!!」

「バカな!?あ、あれは───三大将ォォッ!!?」

 

 目の前の光景に唖然とする。

 

 突然葉っぱが2年前の姿の大将達に変わりそれぞれの能力で海兵達を蹴散らしていた。何だ今の!?まさかあのタヌキがやったのか!?

 

「何で大将達が我々を!?」

「よく見ろニセモノだ!クザンは元帥との決闘で大傷を負っているはずだが奴には何もない!!そもそも黄猿大将はあそこにいるだろう!!」

「じゃあ何なんだよコイツらァ!?能力も同じ───ウギャアアッ!?」 

「クソッ!致し方ない!!一度態勢を整える!!!全隊退けェ!!!」

 

 次々と蹂躙されていく海兵を見てモモンガ中将が飛んで来る氷塊やマグマを対処しつつ苦渋の決断を下す。それを聞いた海兵達は負傷した者達を担ぎ迅速に撤退していった。

 

 俺はその光景をただ見て奥底の記憶から情報を引っ張り出していた。

 

 レッドフィールド、どっかで聞いた気が……っ!

 

「ああーーっ!!思い出した!」

「お前も我を知っていたか」

 

 暫くすると海軍は撤退しあらかた片付いた所で三大将が葉っぱに戻る。すると、上にいた三人組が降りてきて俺の前へとやって来た。

 

 そうだコイツら漫画やアニメのキャラじゃねェわ!ゲームとかしなかったから大まかな事しか知らんがコイツらの名前は知ってる!

 

「神ゲーの人!」

 

 俺の答えにレッドフィールドは首を傾げる。

 

「カミゲー?」

「んで、後ろの奴らは並ゲー1とその2の人だろ」

「何か分からんがバカにされた事だけはわかる」

「同じく」

 

 レッドフィールドの後ろで並ゲー(アイザックとアディオ)がピキッてしまい思わずヤベッと焦る。そうだ、今動けないんだった。

 

 でもレビューじゃあシナリオはいいけどゲームバランスはイマイチとか言われてたぞ。アディオはゲームシステム自体がかなり賛否別れてたとかだった気が。

 

「なあ、計画にはないがコイツ殺っていいんだよな?"あの方"が最大限警戒しろって言ってたし」

「待てアディオ、迂闊に手を出すな。コイツは"あの方"曰く「世界のイレギュラー」との事だ。何をしてくるか分からん」

「事実、さっきの惨状を見て、我々を前にしても尚一歩も動かんこの胆力……余裕を感じる。まだ隠しダネがあると見てよかろう」

 

 スミマセン、ただ疲れて動けないだけです。

 

 何か変に勘ぐっててくれているお陰で助かってるぞ。できればこのまま穏便に済ませたいんだが……。

 

「さっきから出てくる"あの方"ってのは誰だよ?」

 

 せっかくなので聞いてみることにした。その呼び方が無駄に含みを感じてしまって気になって仕方がない。

 

「悪いがその返答はまだ時期ではない。だが、いずれ貴様と"あの方"は相見えるであろうな。その時が貴様の最期だ"鬼の戦漢"よ」

 

 そういいバサッとマントをはためかせ背を向け歩み出した。

 

「主の情報は頑なに秘匿するとは、余程慕われてんだな。お前らを従わせているカリスマ性に脱帽するぜ」

「フフフ、我々は別に"あの方"に忠誠を立たている訳ではない。皆各々の野望を持っておりここへは「利」という儲けの下集まったにすぎん」

 

 レッドフィールドの説明にどこかで聞いたことのある言い回しに引っかかりを覚える。

 

 儲けのために集まった個性ある奴らの集団か。

 

「まるでロックス海賊団みたいだな」

「ほほう、その名を知っているとは。だが、そうだな。"あの方"も意識してこの海賊団(組織)を作っていたのだろうな」

 

 確かコイツもロジャー時代の海賊だっけ?ならロックスを知っていても不思議じゃないな。てか、ロックスに関しては俺の方がほとんど知らないまである。

 

「………」

「どうしたアイザック?」

 

 アディオの不思議そうな声が聞こえそっちを向くと、青のモビルスーツみたいな奴がじっとこちらを見ていた。

 

 やたらと俺を見てくるなコイツ。わっ、こっち来た。

 

「実を言うとわたしは以前から君を気にかけていた」

「俺を……?」

「そうだ」

 

 無言で近付いてきたので少しビビったが気になる事を言ってきた。何だ?どっかで会ったことあったっけ?

 

「君は"あの方"にとって危険視されているが……()()()()()としては仲間に迎え入れたいと思っている」

「なんだと?俺がお前の?」

「君はかつて、天竜人の奴隷だっただろう」

「っ!」

 

 俺の過去を掘り返され一瞬言葉が詰まってしまった。俺が元奴隷なのは2年前の戦争で自白したから知っててもおかしくはないけど……。

 

 俺の様子を見てアイザックは続けて語り出す。

 

「わたしの野望は世界政府への復讐。世界政府の犠牲者である君とは馬が合う気がしたんだ。どうだろう?もしここでわたしと手を組んでもらえるのなら身の安全を保障しよう。───無論、世界政府及び天竜人の殲滅もな」

「………」

 

 天竜人の殲滅、それは大層な野望だ。

 

 天竜人に不満がある奴なんてごまんといるだろう。俺もそのひとりだからよくわかる。正直、昔の俺だったら喜んで手を組んでいたかもしれない。

 

「俺もいつかはぶっ潰してやりたいとは思ってた」

「ならば」

「だがな」

 

 アイザックの言葉を遮り俺は結論を述べた。

 

「手を取る相手はもう決まってる」

 

『アルガー!』

『おじさーん!』

 

 俺の取る手はもうあの二人で塞がってる。これ以上はいらねーや。

 

「この提案は君を"あの方"から守る意味合いも込めていたんだが…………承知の上か?」

「心配ありがとよ。だが、自分の身は自分で守る。ま、アンタの野望自体は否定する気はないから陰ながら応援するよ」

 

 さっきとは売って変わり今度は重々しい声でそう忠告を受けるが軽口で返す。すると、アイザックは呆れ気味に嘆息を漏らす。

 

「それはそれは、ゼファー共々愚かと言わざる得ない」

「ア?なんでそこでゼットの名が出んだよ」

 

 俺だけならともかく、ここへ来ていきなりゼットの名が出てきて貶すような発言に少しイラっときてしまう。

 

「そうか、君は知らなかったのか。いいぞ教えてやろう」

 

 アイザックは少し間を置きある真実を話した。

 

「かつて海軍を辞めたゼファーは一時期、我々と同じ組織に加わっていた」

「は?」

 

 ゼットが、こいつらと……?

 

「最初は"あの方"と志が同じと歓喜していたが……海賊と名乗った途端に子供のように癇癪を起こしここを抜け出した。それが野望への近道を棒に振ると理解していながらな。まったく、これを愚かと言わざるなんと言う」

 

 ここまで説明するとアイザックはゼットに対し言い切った。

 

「ゼファーは自身のプライドの為だけにチャンスを放棄した愚か者の負け犬だ」

 

 ゼットが、愚か者?負け犬?んなわけねェだろ!

 

 少なくとも、こいつらにここまで言われるような男じゃ断じてないっ。

 

「違う」

「何……?」

 

 俺が否定すると相手の口は止まるがその視線はさらに鋭く感じた。動けない状態でヘタに刺激を与えるのはデメリットでしかない。

 

 それでも、今の言葉を聞き流す事ができなかった。

 

「ゼットは愚か者でも負け犬でもなんでもない。確かに不器用ではあったが、不器用なりに漢が一本の筋通して進んできたんだ。カッケーじゃねェか」

「感情に身を任せてもロクな目に遭わん。それで死んでしまえば元も子もないからな」

「死んでねーよ。生きてるわ」

「そうだったな。本来であればここが奴の墓場になるはずだった。"あの方"の予言ならば」

 

 ここでも"あの方"かよ。そろそろ本格的にあの線を考えるべきかもな。"あの方"の正体、それは……。

 

「その予言を……否、運命を捻じ曲げたお前はやはり危険因子と言えよう」

「喋りすぎだアイザック」

 

 俺達の会話に割って入ってきたレッドフィールドは少し怒気を含んだ声でアイザック制す。

 

「これ以上の情報は控えろ。一応、我々は来たる時までは水面下で動かねばならない」

「そうだったな。すまない、誘いを断られ少々ムキになってしまった」

「自身で感情で動く云々と説いていたクセに。まあいい、図らずもこうして"鬼の戦漢"と接触できたのだ。ついでにあの用事も済ませよう」

 

 改めてレッドフィールドが対面し俺に迫り寄る。俺に用事だと?

 

「"あの方"は来たる日の為に戦力を集めている。その中で幾つかのチームに分けているのだが……中々集まらないメンバー候補がいてな。貴様にはその行方を聞きたいのだ」

 

 チーム?メンバー候補?俺が知っている奴なのか?

 

 

「トットムジカはどこにある?」

 

 

 その名を聞き俺は背筋を凍らせた。

 

「2年前の戦争で貴様が革命の歌姫(ウタ)と繋がりがあるのは調べがついいる。ならば、あの楽譜もどこかへ隠しているのではないのかと"あの方"も睨んでおる」

 

 思わぬ名前を聞き少し萎縮してしまうとレッドフィールドが立て続けに詰め寄ってくる。

 

「我も古い文献でしか知らぬがかなりの代物と聞く。"あの方"でさえ奴だけでも手中に収めれば世界を牛耳れる言わしめる程にとな。では、聞かせてもらおう───トットムジカはどこにある?」

「…………」

 

 この威圧感、こいつらがどれだけアレを欲しがっているのかがよくわかる。だけど……。

 

「残念だったな」

「何……?」

「ウタをエレジアから出そうとした時、楽譜に封印された状態のまま襲いかかってきてな。撃退して燃やしたからもうこの世にはねーよ」

「───っ!!」

 

 俺の答えにレッドフィールドは目を見開く。その後ろでピピッとシステム音が聞こえるとアイザックが前に出る。

 

「脈拍、体温ともに正常。嘘はいっていないようだ」

 

 そんな機能もあんのかよ。サイボーグかお前は。

 

「そう、か……」

 

 アイザックの言葉に顔を俯かせると雰囲気が変わり俺への視線が鋭くなる。

 

「もし、トットムジカが貴様に葬られていた場合……十中八九正体は確定したから可能なら消すようにと言われている」

「奇遇だな。俺も"あの方"が何者なのか分かった気がするぜ」

 

  これまでの会話である程度把握できた。"あの方"の正体、それは……俺と同じ転生者だ。

 

 ゼットがやたらと俺たちに詳しかったのも、こいつらがゼットの結末を知っているのも、他にも多々見られた不自然に原作の展開を知っていたのも全部こいつらの裏にいる奴が転生者なら整合性が取れる。

 

 しかし、ここへ来て俺以外の転生者か。いないとは言い切れなかったがここまで物語が進んでも一向にそんな気配もなかったから油断していた。

 

 さて、色々と分かってきたけど……この状況どうしよ。

 

 さっきと違い明らかに殺意を感じる。まずったなァ。いい感じに切り上げてくれそうだったけど言葉の選択を誤ってしまった。

 

 せめてあと数分待ってくれれば動けるぐらいには回復するけど……ムリだよな。

 

「まだ何か隠し手を持っているやも知れん。アディオ、アイザック。同時に仕掛けるぞ」

「「了解」」

 

 そうこうしている内にマジで攻撃する5秒前みたいな状況に!マズイ何かないか!?この状況から抜け出す方法を───

 

「”スマッシュバスター,,!!!」

「「「ッ!!?」」」

 

 突然、頭上から砲撃音が響き三人は一斉にその場から離れる。そして、目の前で大きな爆発が起きその余波で吹っ飛ばされてしまった。

 

「オワアアア〜〜!!……ァ?」

 

 中を飛び数秒程浮遊感に襲われると誰かに抱きかかえられ地面に落下するのは回避できた。安堵するも束の間、見上げるとそこには先ほど逃げた筈のゼットがいた。

 

「おまっ!何で戻って来た!?あのまま逃げろって……」

「そうしたかったが、何やら海軍は撤退するわ懐かしい気配が聞こえるわ……胸騒ぎがしたもので急いでバトルスマッシュを着けて戻ってみたら……どうやら勘は当たったみたいだな」

「ゼファー……!邪魔をしおって!」

 

 ゼットの登場を不快に思ったのか三人は明らかに苦い顔でゼットを睨見つけていた。

 

「久しいなお前ら。こんな所で再会とは思わなかったぜ。景気づけに一戦やるか?」

「血の気が多いのは相変わらずだな。我々を裏切り完膚なきまでに打ちのめされた事を忘れたか?」

「ありゃあ流石に多勢に無勢だったな。だけど、お前ら三人ぐらいならまだ戦えるぜェ?」

「このっ!あの時見逃されたのも"あの方"の恩情だと言うのに……!」

「政府からダイナ岩を奪うおれを泳がせたの間違いだろ」

 

 お互いに嫌味を含んだ言い合いが続くがゼットは涼しい顔で俺を片腕で担がれる。扱いが雑だなオイ。

 

「にしても、このチームで来たか。もっと他にもいただろう」

「我々より上のチームは"あの方"の非常時にしか動かん。故にここへはチーム"ANIORI"と我々チーム"BAND◯I"が来たのだ」

「うおい!?そのネーミングはマズイって!!」

 

 お前らのチーム名ってそれかよ!モロにその名を出すんじゃない!この作品どころか作者のアカウント自体BANされてDAIになっちまうだろうが!

 

 つーか、そのチーム名の時点で"あの方"が転生者なのは確定じゃないか。

 

「ま、一戦交えるってのは冗談だ。流石に今日は疲れた。悪いが帰らせてもらおう。この隊服を着た兵も連れてな」

 

 俺の服装はNEO海軍のものだがこの場の全員が俺の正体を知っているのでそんな建前は通用せずレッドフィールドは冷めて目で見る。

 

「白々しい。それを黙って見ているとでも……っ!?」

 

 俺達二人をこの場で殺すき満々だったが、ゼットが俺の懐から銃を抜き取り地面に刺さったダイナ岩へ銃口を向けた。

 

「ダメだってんなら仕方がねェ。おれ達は既に疲労しきってまともに戦っても勝てねェし……自爆で道連れにするしかねェな」

「貴様っ!!正気か!?」

「ああ、いたって冷静だ。どうせ殺されるんならテメーらも巻き込んで死んでやるよ」

 

 え、待って俺は嫌なんすけど?ブラフだよね?カマかけてるって言ってくれ。

 

 内心ビビっていた俺だが、それは向こうも同じようでさっきまで剥き出しだった殺意が引っ込んでいく。

 

「この際ダイナ岩はくれてやる。その代わりおれ達は見逃してもらおうか。言っとくが、これはお願いじゃあない───命令だ」

「このっ!老いぼれがァァァッ!!!」

 

 この状況下で上下関係が成立するとゼットは勝ち誇った笑みを浮かべる反面レッドフィールドの顔は苦渋に塗れる。

 

 あれだけ有利な立ち位置だったが自爆というジョーカー級の切り札を出され何もできなくなってしまう。そんな奴らを余所にゼットは悠々と俺を担いだまま歩き出す。

 

「そうそう、言い忘れておったが……別に銃を使わなくてもこのリモコンのスイッチ一つで簡単にここらのダイナ岩は爆発させられる。リモコンの電波が届かなくなる海の上までは丁重におれ達を見送ってもらおう」

「こ、んのォ〜〜……!」

 

 激昂し歯軋りをするアディオ。他の二人も流石にここで爆発されるのはマズイのか背を向けてこの場を離れるゼットを怨めしく見届けることしかできなかった。

 

 

 

 

 火山から降りてしばらくすると体力も戻ったので自分で歩き出す。無事にあそこから切り抜けたことに安堵しつつ気になることを聞いてみた。

 

「よかったのか?」

「ん、何がだ?」

「ダイナ岩だよ。あいつら絶対ロクなことに使わねーぞ。それに俺達への報復で使用する可能性も」

「あれ以外にあの場を切り抜ける手段はなかった。今は生きていることに良しとしよう。お互いにな」

 

 確かにそうだ。あのまま戦っていても勝てる可能性は限りなく低かっただろう。だが、あそこにあったダイナ岩は相当の数だ。

 

 今後敵としてまた俺達の前に現れた時にアレを使用されたら……。

 

 まあ、もう過ぎた話だ。また海軍が戻ってくるかもしれないし今はここを離れる事だけを考えよう。

 

「お前はおれを助けた。だからおれもお前を助けた。海賊に借りをつくりっ放しは御免だからな。これで貸し借りはチャラだ」

「わかったよ」

 

 ホント海賊嫌いだなこの人。いや、義理堅いのか?

 

 そうこうしていると海が見えて来る。海岸沿いには幾つかの潜水艦が浮上しておりアイン達が待機していた。

 

「ここで別れよう。お前も早く自分の船へ戻るといい」

「だな、そういやゾロがどうなったのか分からないままだった。ロビン達が連れ戻してるといいんだけど……」

 

 確かチーム"ANIORI"……ってことはアニオリキャラと戦ってるんだっけ?強いキャラとか結構いそうだし心配だな。

 

「アルガよ、おれは改めてNEO海軍の在り方を見つめ直そうと思う。政府の犬である海軍では救える命は限られる。だから海軍では救えぬ命を我々NEO海軍が救っていこうと考えている」

「ヘェ、そりゃ大層な正義だな。とても数時間前まで新世界を滅ぼそうとしていたテロリストの言葉とは思えん」

「言ってくれるな」

 

 ゼットの苦笑した顔を見てこれが最後の会話だと思い、俺は気持ちを切り替えて向き合った。

 

「そういや、アナタは大海賊時代を終わらせたいんだよな?」

「ああ、それで一番手っ取り早いのがこの方法だった」

「だったらさ───」

 

 

「俺達が"ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)"を見つければこの時代も終わんじゃね?」

 

 

「…………」

 

 俺の言葉にゼットは真顔で数秒程沈黙をしてしまい……。

 

「ブワッハッハッハ!!」

 

 盛大に笑われてしまった。

 

「お前たちが……見つける、か……。クク、そうだな。理には適っている」

 

 いったい今の言葉にどこまで信じてくれているのかは分からないがその時の奴の目はこれまでに見たことがないぐらい優しさを感じた。まるで、期待されているような……。

 

「だが、覚えておけ。お前達がこれからの航海で民衆の命を脅かす事があれば……その時はおれがお前を葬る」

「ああ、わかった。俺もまた貴方が暴走した時は真っ先にブッ潰してやるからな」

 

 この言葉を最後に俺達は小さく笑いゼットは部下達の元へ、俺はサニー号へと戻るのだった。

 

 

 

 

 海岸沿いを進むとサニー号を見つけ何とか仲間たちと合流を果たすと既に皆が揃っており俺の心配していた。

 

「あー!アルガが戻ってきたぞ!!」

「もう!あまり心配させないでよね!ロビンなんてついさっきまでアンタを探しに行こうとしてたんだから!」

「悪かったよ。でも、皆そろってて良かった。早いとこズラかろう。この島に海軍以外の敵もいる」

「あー、あのハイエナ連中か」

 

 俺の言葉にピンときたゾロが何かを思い出したように頷く。そういや、アニオリキャラと戦ってたんだっけかコイツ。

 

「ハイエナ?」

「ああ、聞いてくれよアルガ。売られたケンカを買ってたらこのアホコックに割って入られてよォ」

「テメーがモタモタしてっからだろ三流剣士」

「三()流剣士だアホメロリン」

「「ァ"ア"ッ"!!!」」

「コラコラ喧嘩しない」

 

 いつもの喧嘩が始まりそうだったので中断するために質問を投げかける。

 

「それで、敵は二人で倒したと?」

 

 正直、アニオリキャラの敵ならこの二人で戦えばそうそう敗けないだろうと思っているとロビンが答えてくれた。

 

「それがね、後から現れた人に中断させられて戦いは切り上げられたのよ」

 

 思わぬ回答に俺は驚いた。

 

「新手か、その場を仕切ってたってことは相当強いんだな」

「ええ、あの佇まいタダ者じゃないわ。戦っていたら無事ではなかったでしょうね」

 

 そんなにか。ロビンにそこまで評価される奴がいるなんて……いったい何者だ?

 

「どんな奴だったんだ?」

「んー、何ていうかへんてこな格好してたなァ。一言でいうなら……カメレオン?」

「カメレオン?」

 

 そんなモチーフキャラいたか?アニオリでもそんな奴は記憶にないなァ。

 

「まあ、今はいいじゃーか。とにかくここを離れようぜ」

「そうだな。帽子も取り返したし長居は無用だ」

 

 俺が記憶を遡っていると痺れを切らしたウソップが慌ただしくなる。だが、言ってることはもっともなのでルフィは頷き針路を決めた。

 

「んじゃ、とっととトンズラして次の島を目指すぞ野郎共!!───出航だ〜〜っ!!!!」

『オオォオ〜〜〜〜ッ!!!!』

 

 ルフィの掛け声に合わせて声を上げる仲間達。まだ見ぬ先の海を見据えながら俺はこれまでの事を振り返りある言葉が脳裏を過った。

 

『オメーさんひょっとして───』

『お前はひょっとして───』

 

 クザンとゼットから聞かれたらあの言葉を……。

 

 

───「傍観者」なのか?

 

 

 「傍観者」って……どういう意味だ?

 

 こうして、FILM Zの幕は閉じるのだった。まだ判明されていない謎を残したまま……。

 




《今後の戦力図》
・NEO海軍
劇場版と違いアルガの助力もあり無事生還したゼットは改めてNEO海軍の方針を固める。海軍の息が届かない非加盟国の民衆達を守るなどを続け非加盟国からは徐々に支持を得るようになる。
後にクロスギルドが建ちあがり海兵殺しの被害が出るもNEO海軍の斡旋により貧しい民衆を雇う事で一部の海兵殺しの被害を抑える事に成功。Tボーン中将は今日も一日百善をモットーに正義を行う。
余談だが、ある日ワケあって流浪のカブキが入隊した。

・大三陣営謎の海賊団
とある人物の元、原作には登場しない強者が集まっている集団。何が目的でトップの正体は不明だが幾つかのチームに分けられており、来る日のために原作には顔を出さず水面下で行動している。
"ANIORI"、"BAND◯I"、"FILM"、"???????"の4つにチームを別けられている。
最後に出いてきた謎のカメレオンの笑い声は「ギジギジギジ」だったりする。
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