あなたにもう一度毛布をかけるため《現在物語修整中》   作:もしも=ロマンの可能性だよねッ!

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今週のアニワンは感動で涙が……!!
ロビン再会できてホントによがっだよ"〜!!

そして、この度読者様から初めてファンアートを頂き更に涙が……!!
読書の梟さんありがとうございますぅぅぅ!!!

ファンアート
『読書の梟』様
アルガのキャラデザ(※AIイラスト注意)
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8話 逆襲の狼煙

 ドレスローザの一件が終わりルフィ達と別れた夜、おれはカラス達の上でアルガから受け取った物を見ているとジニーがひょこっと後ろから覗き込む。

 

「なーなー、お前さっきアルガから何か受け取ってたけど何貰ったんだ?」

「ああ、なんでも丸薬だとさ」

「丸薬?」

 

 更に身を乗り出し肩に顎を乗せ掌に幾つか入っている丸薬の包みを見る。しかし、丸薬と言ってもどういう代物なのか分からずハテナマークが浮かんでいた。

 

 これがどういうものなのかを説明するに辺り先日の事件を話す。

 

「先日、パンクハザードで一部の裏社会の人間にしか視聴できない中継を覚えているか?」

「あったなー、ドラゴンさんに頼まれて革命軍も見れるようにハッキングしたっけ。ザルなセキュリティだったから簡単に入れた」

 

 さらっと言ったがとんでもない事である。この人会わない内にまたハッキング技術が上がったなァ。

 

「元々は化学兵器のデモンストレーションだったんだろ?ま、ルフィにぶっ飛ばされて終わったが。あん時の科学者の顔ウケたなー」

「全くだ、ルフィが不意打ちで出てきたもんだったからお兄ちゃんの顔筋が崩壊しちまったよ」

「そのまま瓦解しちまえ」

 

 散々聞かされてうんざりなんだよとげんなりするジニー。あれ?そんなに話したっけ?いかん、弟の話は息するように口に出すからあまり覚えていない。

 

 ……って、そうじゃない。話が脱線してたな。話を戻そう。

 

「あの中継でデモンストレーションこそ失敗に終わったがあの化学兵器「シノクニ」の恐ろしさは十分に伝わった。あんな殺戮ガスが今後裏社会で売買されていたらと思うとゾッとする」

「それで?何でそんな話を急に」

「これは「シノクニ」だ」

「へー、その丸薬がねェ……ん?んっ!?」

 

 さらっと丸薬の正体を話すと理解が遅れたジニーは一瞬フリーズしワンテンポ遅れて驚いた。

 

「ちょ!?おまっ!その小せえのにあの殺戮ガスが!?」

「流石に中継時の量はないって。それにこれはあれほど恐い代物でもない」

「そうなのか?」

 

 おれが頷くと取り乱していた彼女は少しづつ気持ちを落ち着かせ冷静になる。

 

「本来の「シノクニ」はガスに触れた生物の皮膚を即座に硬化させる効果を持つ。だが、こいつは皮膚じゃなくて体内を硬化させるんだ」

「体内って事は臓器……っ。心臓もか!」

 

 臓器と聞き的確な答えを出す。流石ジニーだ理解が早い。

 

「そう、ガスに侵食された者は一時的な仮死状態になるって所はどちらも同じだが……こいつは本来の「シノクニ」よりも毒素の成分が弱く衝撃で割ったりせずともしばらくすれば硬化が解ける」

「つまり、そいつは一定時間仮死状態になれる薬って訳か」

「要約するとそうだな」

「うーむ……」

 

 わかりやすくまとめたが改めて考えにふけると難しそうな顔で丸薬の重要性を解いてくる。

 

「スゲーけど、必要になる場面あんのか?」

 

 彼女の疑問は最もだ。きっとおれの強さを知る奴は全員同じ疑問を持つだろう。

 

 だけど、これを受け取る時に見せた彼の目からは冗談などは一切感じなかった。近い未来、おれに何かしらの災いが来ると疑わない心配の目だった。

 

 だからおれはこれを受け取ったんだ。

 

「そこはおれも……若干、そう思わなくもない。だけど、アルガが何も考えなしに渡したとは思えないんだよ。アイツは世界政府の何かを知っている気がする。そんな奴からこれを渡すって事はそういう事なんだろ」

「つまりなんだ?敵を騙すならまずは自分からって感じのピンチが訪れるかもってか?お前に限ってそんな窮地そうそう来ねェと思うがなー」

 

 言いたいことは分かる。これを使うってことはつまり戦ってもダメ逃げるのも無理な状況を意味している。これまでも戦場で危ない目には遭ってきたがそこまで絶体絶命になった事は一度もない。

 

「おれも保険ぐらいの気持ちだ。でも、敵の強さは未知数。これぐらいの備えはあってもいいだろう」

「それもそうか。なあサボ」

 

 ジニーは俺の隣に座ると遠い目で夜空に浮かぶ星々を眺めながら言う。

 

「死ぬんじゃねェぞ」

「当たり前だ」

 

 約束、とは違う。それは彼女の率直な気持ちだった。こんな時気の利いた言葉をかけれる程器用じゃないおれは同じように率直に返答する。

 

『『サボォ~~~~~~~~!!!!』』

 

 2年前の戦争で再会した兄弟の顔を思い出す。生きていたおれを喜んでいた2人の顔。それと同時に同じぐらいおれの死を嘆く2人の光景を想像できた。

 

 もう、おれの死で悲しむ人は出したくねェ。だから、絶対に生きて帰ってやる。

 

 

 

 

───パキッ…パキパキ……パァン!……ドクンッ…ドクンドクン…!

 

 ……ん、んん。……何だ?なんだか夢でも見ていた気がする。

 

「ん?今何か聞こえたような?」

「おい急に立ち止まってどうした?早くこいつらの死体を焼却処分しねーとおれ達が処分されちまうぞ?」

「いやー、今何かが割れた音が……」

 

 身体中が痛ェ……ここは、どこだ?揺れてる……誰かに運ばれているのか……?何で───っ!!

 

「何を言っているんだ。割れ物何て持っていないだろ……うへ!ちょっと待て!!お前の持ってる死体動いてねェか!?」

「へっ!?そんな筈!?遺体を持ってきた兵は確かに心臓が止まってるって───ぶへっ!!?」

 

 おれを担いでいた衛兵の顔面を思っきし殴り倒す。一発で意識を断ち切り倒れるとおぼつかない足取りで立ちもう一人の衛兵に殴りかかった。

 

「な!貴様なぜ生きて───ぐぎょ!!?」

「ハァ!ハァ!ここは……ぐっ!?う、腕が……!」

 

 衛兵を殴った衝撃で自身の状態に遅れて気づく。肘から先の右腕が失くなっている。

 

 そうだ、おれはあの空の玉座の部屋で奴らに……。

 

「ハハ、とりあえずはあの場から乗り切れてみたいだな。ひとまずここを離れねェと……」

 

 死ぬんじゃねェってジニーと約束したもんな。

 

「アルガ、ありがとう」

 

 アルガから貰った保険で命拾いしたおれはその場にいない恩人に感謝の意を告げた。

 

 

 

 

 

 黄猿のレーザーで気を失っていた俺は目を覚ますと鬼姫様が俺を守る様にサターンと戦う光景を目の当たりにする。

 

 鬼姫様が俺を助けてくれた嬉しさ。そして、もうひとつ涙が留められない程嬉しい情報が耳に入る。

 

『……ジニー、待たせてすまない。おれだ、サボだ』

 

 死んだかと思っていた人物の声を聞き少しの間放心してしまう。その間も2人の会話が聞こえてくる。

 

『サボッ!!!てめェ出んのがおせーんだよ!!!時間がねェって言ってんのに焦らしやがってこのブラコン野郎が!!!』

『悪かったって!こっちもあれから色々あったんだよ。深手を負っちまって回復するのに時間がかかった。今はとある人と一緒に身を隠しててな……逆探知されないように準備してた』

 

 どうやらサボさんにも事情があったらしいが、ジニーさんはそんなの関係ねえとサボさんの意見を両断する。

 

『せめてウチらには一言ぐらい連絡しろよな。生きてるってよ。コアラの奴気が気でなかったぞ』

『悪い事をしたとは思ってる。だけど、事情があっておいそれと連絡もできなかったんだ。だが、アルガがピンチだって聞いたら居ても立ってもいられなくてな』

『コアラ、アルガに負けててウケる』

『やめろアイツ根に持つ性格なんだぞ』

 

 まるでいつもの日常会話のように言葉が弾んでいる。その声を聞く度に俺は心に染まっていたドス黒い何かが晴れていくのが分かった。

 

『兎にも角にも……おい、アルガ聞いてるか?もし寝てたら近くの誰か起こして伝えてくれ。───この勝負、ウチの勝ちだ』

 

 サボさんが死んだと絶望する俺に彼女が別れる前に交わした勝負。それを見事に勝ち取り勝利宣言する。

 

 そして、いつもの勝気な声で俺に励ましの言葉を贈った。

 

『もう、ウジウジすんのはナシだ。心のつかえは消えただろ。だったらお前、ウチらに見せてくれよ───五老星への逆襲をよォ』

 

 …………情けねェな、俺って。

 

───プルプルプルプルプルプルプルプル……ガチャ

 

 俺は仕舞っていた電伝虫を取り出しジニーさんへと通信を繋げた。そして、まずはお礼を伝える。

 

「ジニーさん、ありがとう」

『んお、起きてたか。だったら話は早い。今、直面している状況は最悪と言っていい。だが、ウチらの小さな足掻きは確かにてめェまで繋げた。こっからはアルガ、てめェも一緒に足掻いて……この状況から前進すんぞ!!』

「ああ、もう迷わない。必ず五老星をぶっ倒して───皆でここを出よう!!!」

 

 そういい通信を切るとジニーさんも満足したのか映像が切れる。その後、ベガパンクの映像が流れ始めた。

 

『───その脈々と受け継がれる ザザッ 意志と言える』

 

「何だ?今度はベガパンクが映ってる。でも……」

 

 俺は視界に写る遠くで倒れたベガパンクをみて不思議に思う。本人があそこにいるならこの映像は?録画か?

 

 いや、その前に起こしに……っ!?

 

 ここで、見聞色に反応が出ない事に気付いた俺は急いでベガパンクの元へと駆けつけた。

 

「そんな!?ベガパンク……守れなかったのか。くそ、くそっ!くそォォ!!」

 

 抱き上げても反応は一切ない。呼吸もしておらず完全に心臓も止まっており既に亡くなっているのは明白だった。

 

 戦桃丸と約束したってのに俺がウジウジしていたせいで……何て体たらく!……いや、後悔は後回しだ。もう、迷わないって言ったばかりじゃないか。

 

「これ以上被害を出さないために今できる事をやれ。くよくよしている時間はないんだぞ俺。後悔は自分の役目を果たしてからだ!」

『うむ、全くもってその通り!』

「えっ!?」

 

 突然頭の中に何者かの声が響きビクッとするが、”降霊「呼憑き」,,が発動しっぱなしな事に気付き声の正体を思い出す。

 

『あ、や〜〜っと声が聞こえるようになったわね!もう!どれだけ声をかけても聞く耳持たなかったから私達心配しちゃったじゃない!』

「ご、ごめんなさい」

『アッハッハッ!なに、元気に戻ったみたいでよかったよかった!さ、ここから気張ってけ!!』

「ああ!……とはいえ、思ったより重傷だな。体が重いし痛い……」

 

 しかも、右腕がまた無くなっちゃってるよ。どうしよ、また皆に心配されちゃう。

 

「おじさん!よかったァ!意識が戻って。また僕の前からいなくなるんじゃないかってハラハラしちゃったじゃないか!」

「わぷっ!す、すみません鬼姫様。いでで!それとあまり抱き締めないで……今されると体がズキズキするのででででっ!?」

「あ、ごめん」

 

 意識を取り戻した俺に気付いた鬼姫様が飛んでくるとその勢いのまま抱き締められる。その後、ハグ加減を知らない鬼姫様の腕力に悲鳴を上げるとさっと離してくれた。

 

「しぶとい、まだ動けるか……。今度こそ始末してくれる」

「だーかーらー!おじさんには手を出させないって言ってるだろ!この分からず屋ジジイ!!」

「確かに、貴様の様な邪魔者が出張ってくるとは予想外だった。ならば……」

 

 視線を逸らし別の場所を見つめる。その方角にいた人物を目認した瞬間血の気が引いた。

 

 サターンの思惑を察しすぐに駆け出すも全身に走る激痛で動きが鈍足となる。結果、出遅れてしまった俺は視線の先にいる人物の名を叫ぶことしかできなかった。

 

「先に動けぬ者から始末しよう!」

「くまさん!!!」

「くっ!間に合うか!?」

 

 ここへ来て標的を変えたこと意表を突かれ鬼姫様も反応が遅れてしまう。すぐに駆け出すもこのままではとてもじゃないが間に合わない。

 

 鬼姫様が追いつくよりも先にサターンがくまさんにトドメを刺してしまう。

 

「く、そ……!!何もできず助けられないのか?そんなの冗談じゃねェ!!!」

 

 もっと早く動けや俺の体!!くまさんがピンチだって時に無能晒してんじゃねェよ!俺が、くまさんを……!!

 

「助けるんだァァァッ!!!」

 

 叫んだ、決死の叫びで闘志を燃やし手を伸ばした。当然、伸ばした手がくまさんに届く訳もなかった。ただの悪足掻きに過ぎない。

 

「フン、吠えるだけしか出来ぬ負け犬よ。そこで見てるがいい。くまの最期を───」

 

 しかし、その悪足掻きの叫びが奇跡を呼んだ。

 

「なっ!?」

「え?は!?あ、あれって……」

 

 サターンの爪がくまさんを貫こうとした瞬間、突如現れた人物により助けられサターンの攻撃は空振りに終わる。

 

 そして、くまさんを持ち上げ助けた人物を見てサターンどころか鬼姫様も同じく驚愕した。交互に俺を見比べて。

 

 なぜ見比べたのか、それは助けた人物が───

 

「あれって……おじさん!!?」

 

 俺だったからだ。

 

「どういう事だ。なぜ"鬼の戦漢"が二人いる!?奴なら確かにあそこにいる。ならこいつはいったい……!?」

「あれ?でも待って、あのおじさん……右腕がある!」

 

 鬼姫様の言う通りくまさんを助けた俺は目立ったキズもなければさっき斬り落とされたはずの右腕がついていた。

 

 一瞬誰なのか理解不能だったが……アイツから感じた気配を感じ正体に気づく。

 

 そうか、お前だったか……。

 

「誰かは知らんが偽物には変わりあるまい。とっととその死に損ないを寄越───ッ!!?」

「……キキッ♪

 

───ズドォォン!!!

 

「ッ!!?ヌッ!!ウゥ……!?」

 

 もうひとりの俺……もとい、トットムジカがいたずらっ子みたく笑いべーと舌を出すとサターンの頭上から光線を撃ち込まれる。

 

 修復で動けなくなった隙にトットムジカがくまさんを連れてこちらへとやって来た。

 

キキ〜!

「トットムジカ!!くまさんを助けてくれてありがとな!最高だよお前ェ〜!」

キャッキャッ♪

 

 くまさんを下ろしたトットムジカに俺は抱きしめて感謝する。トットムジカも嬉しそうに口角が上がっていた。

 

 その光景を異様に感じた鬼姫様は困惑気味にトットムジカに興味を示す。

 

「え?何?おじさんそのおじさんっぽい人知ってるの?」

「えーと、説明すると長くなるのでまた後日に。……ってそういや何でお前俺の体と分離してんだ?俺の魂とひとつになったのに」

キー

 

 俺の疑問に応えるようにトットムジカの体が溶け出し音符型の粒子となって霧散する。その後、霧散した音符型の粒子が俺の右肩へと集まっていき腕の形へと変えていく。

 

 形が整うと見事に俺の右腕が復活した。

 

「すごいすごい!おじさんこんな事もできちゃうの!?腕が戻っちゃったよ!!」

 

 驚きながらも目を輝かせる鬼姫様。そんな反応とは裏腹に当の本人はと言うと……。

 

「え、何これ……知らないんすけど……」

「知らないの!!?」

 

 知らないよ!そんなぽんぽん腕が斬り落とされる事なんてそうそうないし!俺もビックリだよ!

 

 確かにこの右腕は俺の本来の腕ではないが……こんなギミックがあったとは……ちょっと今度トットムジカと話し合おう。他にも何か隠された能力があるかもしれん。

 

 それと、気のせいかトットムジカが戻ってきたらさっきまでの倦怠感とか疲労感が嘘のように引いていくのがわかった。

 

 ひょっとして、一時的に魂が分裂してたから生命力的なものが削られてて体が重く感じていたのかもしれない。

 

「腕が戻ったか……貴様も不死染みた力を使いよる」

「げっ!クモジジイがまた来る!しつこいなー!!どうするおじさん。……おじさん?」

「…………」

 

 トットムジカが戻ってきて力も回復してきた。これは嬉しい誤算だ。だけど、同時に自分の浅はかさを思い知らされた。

 

 そう、俺は思い上がっていた。カイドウと戦い己の強さに対し自信過剰になっていた。そんな少し前までの俺に言ってやりたい。

 

 俺単体の勝率はそう高くないだろと。

 

 確かに俺の実力はそこそこあると自負している。だが、これまでの航海で強敵相手にどれだけの勝率を上げてきた?鷹の目やクロコダイル、エネルとかわりかし敗けてる時もかなりあったじゃないか。

 

 俺ひとりの限界なんてたかが知れている。そんな時いつもどうしていた?そうだよ、これまでと変わらない。俺だけでダメなら()()でだ。

 

「復讐心で意固地になっちまっていた」

「おじさん……?」

「鬼姫様、お願いがあります」

 

 視野を広げ今俺に何ができるのか。誰がいるのか。再認識した俺は改まって鬼姫様と向かい合いひとつお願いをする。

 

「俺と一緒に、戦ってください」

「……フフッ」

 

 一瞬ポカンと口を開けるとすぐ嬉しそうに笑う。

 

「何を言い出すかと身構えちゃったけどそんな事か。君は僕の従者だよ?」

 

 そして、当然とばかりに応えた。

 

「一緒に戦うなんて当たり前じゃないか」

 

 あー、やっぱり俺この人の従者でホントによかった。鬼姫様、一生ついて行きます。

 

「それでどうするの?」

「まずは戦況を見極めます。フゥー……っ!」

 

 俺は呼吸を整え集中力を高める。そして、島全体に"見聞色"を使った。カイドウ戦以降見聞色の性能は10秒先の未来が見えるようになっただけでなく、範囲も拡大している。

 

 今の俺なら島一つ分の範囲ぐらい少し頭痛がする程度で済む!確認すべきは味方と敵の位置だ。

 

 ……成程、既に上では脱出の準備に取り掛かっているが船の前にナス寿老がいてパンクレコード近くにはマーズが飛び回っている。

 

 そんで、地上ではウォーキュリーとピーターが……何だ?このでかい気配……ロボ?それに海岸には……うえへっ!?ドリーとブロギー!?え!?エルバフの皆も来てんのォ!!?どんな胸熱展開だよ!!

 

「フゥオオオオ!!マジでか〜!!!」

「うわっ!ビックリしたァ。急にテンション上がっちゃた」

 

 ここまで戦況が変わってるとなるとこちらも動きを変えないと。一旦、俺の勝利ではなく俺達の勝利条件を整理しよう。

 

 まず、第一に俺達がやる事はコイツを倒す……ではない。仲間達の脱出経路を確保しつつ周囲の援護に回ることだ。

 

 なら、ここで取る選択は……───っ!

 

「鬼姫様、一緒に戦ってほしいと言っておいてすみませんが……一度ここを離れます」

「えっ!それだとあのクモジジイ追っかけているよ?」

「大丈夫です。だって───」

 

 俺は今しがた見聞色で聞こえてきた声が近付いてくるのを感じ取り武器をしまった。これ以上にない助っ人がここへ来てくれたから。

 

「ルフィが来てくれたから」

「”ゴムゴムの~白の回転銃(ドーンライフル),,!!!」

「ごはああっ!!?」

 

 覚醒状態となったルフィがサターンの体を消し飛ばす。それを見て俺達は笑った。

 

「あっひゃっひゃっひゃ!!アルガー!遅れちまって悪い!!黄猿ブッ飛ばしたらまた体力尽きてよー。巨人のおっさんからメシ貰って食ってた!助けに来たぞォ〜!!」

「いいタイミングだルフィ!!俺はこれから行きたい所があるからコイツの相手を任せてもいいか?」

「おう!任せとけ!!」

 

 頼もしい返事を聞き俺はすぐに行動に出る。まずは倒れているくまさんを担ぎ次はベガパンクの元まで行くと頭上を見上げる。

 

「ひとまず二人をサニー号へ連れて行こう。ここへは置いていけない」

「そうだね!僕も一緒に行くよ!」

「お願いします!」

 

 どうやって上がるか。トットムジカの力を借りて変身すれば翼も生えて飛べるが消耗が激しい。なら多少時間はかかるが”飛龍翔,,で……。

 

「あっ!でもどうしよ困った!」

「何か問題でも!?」

 

 鬼姫様が突然声を荒げると少し申し訳なさそうな顔でまじまじと見てくる。そして、根本的な問題を小声で漏らした。

 

「僕、飛べない……」

「oh……」

 

 あ、忘れてた。ヤバイどうしよ……。

 

「いや、待てよ。これを使えば……」

 

 少し悩むともうひとつある物を忘れていたことに気付く。しかし、そこへ少女の声が聞こえてきた。

 

「お困りみてーだな。手を貸すぜアルガ」

「ボニーか。お前上に……行った、んじゃ……」

 

 その声はボニーだとすぐわかり振り返ると……とんでもない奴と一緒にいた。

 

「お、おまっ!それって……!?」

「ベガパンクが言ってたんだ。お父さんの姿をした()()()()()にプログラムしたって。だから───」

 

 それは、くまさんのセラフィムだった。

 

「コイツと一緒に来た!」

 

 

 

 

 

 私はもう、十分に生きた。

 

 ステラがいない今……誰の為に生きればいいのか分からない……。だから、私は一人ここに残った。彼らを逃がす為に。

 

 今頃、皆は船に居るはず。後は時が来次第出航するのみ。私の役目はもう後少し……。

 

『バリアはもう意味ない!!ステューシー聞こえとるか!?お前も早く逃げるんや!!』

 

 通信でエジソンの声が聞こえる。本当の人間でもない私を……クローンの私を実の娘の様に想ってくれる大事な人。

 

 その言葉だけでも十分すぎるぐらい幸せだ。だけど、逃げるなんてできない。だって……。

 

「こんな所にいたか、元CPイージス0ステューシー……いや、ベガパンクの傀儡よ。世界政府を欺いてきたお前を我々は許しはしない。その命をもって償え」

「ごめんなさい。もう、助かりそうにないわ」

『はあ!?どういうこっちゃ!!そっちに五老星が向かって行っといたがまさか……!!』

「エジソン……」

 

 今生の別れを悟った私は最期の言葉を送った。

 

「あなたは生きて」

『ちょっ!?ステュ───』

 

 ブチン、と通信を切った私は自分の運命を受け入れるべく一歩前に出て鳥の怪物……マーズ聖へと向かい合う。

 

「ほう、潔いな。自分の命すら厭わぬとはやはり貴様は生物として欠落した存在。替えの利く量産品よ」

「っ!!」

 

 別に死にたいわけじゃない。誰だって死ぬのは恐いに決まっている。だけど、私がここでコイツを食い止めている間は他の皆への被害を抑えられる。

 

 少しでも時間を稼ぐのよ。それが、今私に残された唯一の役目!

 

「死ぬがいい裏切り者!!!」

「……っ!!」

 

 くちばしが開き光のエネルギーが溜まる。数秒後の未来を想像し震える手を握る。そして、ギュッと目を閉じ───

 

───ズパァン!!!ボカァアアアン!!!

 

「ヌオォオオッ!!?」

「えっ!?」

 

 急に爆発音が轟き目を開くとくちばしの中から煙が上がっていた。目を瞑っていた為何が起きたのかわからず困惑する。

 

「何が起きた……!?突然下から斬撃が飛んできたぞ!?」

「え……」

 

 下から斬撃ですって。皆は既に船へ行っている筈、だとすれば彼は私を逃がそうと……!

 

「カ───」

「何者であろうと私に敵意を向けた。これは万死に値する。消え去れえええ!!!」

 

 名前を呼ぼうとした瞬間、マーズ聖が再びくちばしからエネルギーを溜めて光線を放った。

 

 とてつもない熱量に放った光線の跡には焦げた大穴が広がっていた。その光景を見て思わず口を塞いでしまう。もう敵だったとはいえ彼とは気の良い友達だったから。

 

 それが……こんな……!

 

「次は貴様だ」

 

 今度こそ私の番が回ってくるとマーズ聖が再びくちばしを開きエネルギーを溜める。

 

「終わりだ!!!」

 

 私に向かって光線が飛んできた。

 

「くっ……ッ!?」

 

───ピュン!ピュン! ズドォォン!!!

 

 もうダメだと諦めたその瞬間、後ろから複数の光線が飛んできて相殺してしまった。

 

「また邪魔を……!!今度は誰だァ!!!」

「誰が傀儡だ?量産品だ?これ以上この人の侮辱は許さねェぞ?」

「あなたっ!?」

「ステューシーさん無事でよかった」

 

 現れたのは何とアルガだった。なぜこんな所に!?そう思わずにはいられず目が離せなくなった。

 

「おい害鳥、自分の姿を棚に上げて彼女を非人間扱いすんじゃねェよ」

「それを何と言おうが私の勝手だ。事実、それは人ではない。人型に作られた人工生命体……それが奴の正体だろう」

「……っ!」

 

 悔しいが奴の言う通り。私は作られた存在。いくら人のように振る舞おうがそこは変わらない。

 

「そう、所詮私は替えが利く存在。人じゃない、だからあなたも早く船へ行って頂戴。最期ぐらい自分の意思で、私はあなた達の役に立とうと───」

「何言ってんだステューシーさん。あなたも「人」だろ」

「ッ!!?」

 

 思わぬ返しに言葉を失う。彼は私に歩み寄り震えていた手を握ってくれた。

 

「ステューシーさん、あなたは確かにクローンだ。だけど……それだけだよ」

「それ……だけ……?」

「ああ、ただ産まれが特殊なだけで本体とは育ちも別だ。たとえ体は一緒でも───心はあんたがオリジナル(本体)だ」

「───ッ!!!」

 

 さっきまで、あれだけ重くのしかかっていた私の負の感情が……彼の言葉一つで吹っ飛ばしてくれた。

 

 私はどこまで行ってもクローンで……だけど彼は心は違うと……私が本体だと……!

 

「もう、自分から仲間外れになる必要はないんだ。寂しいのが平気な人はいない。そんな時は誰かに頼って良いんだ。誰かに縋っていいんだ。君がまだ人じゃない、孤独だと言うのなら……!」

 

 握る手が更に強くなる。そして、私の為に涙を流す彼を見て自然と同じように目から溢れる涙が頬を伝った。

 

「俺が、何度だって言ってやる!あなたは独りじゃないと。人と関わりを持つのが好きなどこにでもいる普通の「人」なんだと!」

「ア、ルガ……!」

 

 咽び泣く声を抑えようと口元に手を当てる。彼の言葉に体が、心が反応する。こんな経験なんてない、同仕様もない感情が渦巻きその場に崩れ落ちた。

 

 自分を認めてくれて嬉しさで溢れて止まらない。せめてもの強がりとして私は一言だけ彼に告げた。

 

「うふふ、やっぱり私アルガちゃんのファンだわ」

「アッハッハッ!そいつはよかった!なら、ファンにみっともない姿は見せられないな」

 

 そういい彼はマーズ聖と向き合い臨戦態勢に入る。

 

「茶番は済んだか?」

「待っててくれたのか?随分と優しいじゃんか」

「ああ、ここに居ると言う事はあそこから逃げ果せたという事。やはりサターン聖一人に任せてはおけないからな。貴様を確実に仕留める為に他の五老星へと招集をかけていたのだよ」

「なっ!!?まさかまた全員ここへ!!」

 

 アルガの慌てた様子を見てマーズ聖はしたり顔で翼を広げる。

 

「気づいた所でもう遅い。次こそは全員掛かりで確実に息の根を止めてくれる!!」

「ま、待て!!また全員で襲われたら……!!」

「さあ、呼ぶ───っ!!?」

 

 どうやらここへ五老星を呼ぼうとしたらしいが突然声を詰まらせ言葉が止まる。そんな姿を見てさっきまで焦っていた顔から一変、今度はアルガがしたり顔で笑みを浮かべた。

 

「───なァ〜〜んちゃって♪」

 

 私一人だけどういう事なのか状況を把握できず首を傾げる。いったい何が起きているというのか。

 

 その疑問はマーズ聖が答えてくれた。

 

「なぜ、他の場所にもお前がいる……!!?」

 

 

 

 

 「研究層(ラボフェーズ)」海雲フロア、サニー号前。

 

「おい、どうなってやがる?斬り落とした腕がくっついているのはこの際置いとくとして……おれ達の前に其々いるだと?お前、何者だ?」

「あー!さっき戦ってた時はよく見てなかったから気付かなかったがやっぱあれ鬼徹じゃん!!ヤバイなゾロ!俺達のと合わせて鬼徹一派勢揃いだ!!」

「いや、何か聞き捨てならねえ事言ってなかったか?お前腕斬り落とされたって……」

 

 

 

 

 「工場層(ファビリオフェーズ)」森フロア、鉄の巨人前。

 

「ジニーさん怪物共がもうすぐそこまで来てる!!早くここから逃げよう……ってうえ!?アルガ?……が二人っ!?どうなってやがる!?」

「どうなっている?奴が二人……何だと!?マーズ聖、そっちにも……サターン聖の方にもだと!?」

「落ち着けピーター聖。恐らくは分身の類、いったいどれが本物か……」

「お前勘がいいな。そう!何を隠そう俺こそが本物のアルガ♪」

「何言ってん……あヤベ、違うぞ俺こそが本アルだ」

 

 

 

 

 同じく「工場層(ファビリオフェーズ)」町中フロア。

 

「バカな……有り得ん!!?」

「お前らが5人揃うと厄介なのは痛い程わかった。だったら別々で戦えば問題は解決だよなァ。これで招集の手は潰れたな」

「あれ〜?お前さっきヤマトと一緒に上に行かなかったか?」

「アッハッハッ!そうかルフィもそう見えるか。まあ、半分正解だな」

「半分?」

「そっ、という訳で……さァ、正体を見せてあげましょ」

 

 

 

「「「「「 残 念 ハ ズ レ キキッ♪」」」」」

 

 

 

 ここはエッグヘッドで最も高い場所。パンクレコードの上に俺は立っていた。そして、戦況を一望し右腕がない状態の俺は不敵に笑う。

 

「さて、逆襲開始だ!」

 

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