あなたにもう一度毛布をかけるため 作:もしも=ロマンの可能性だよねッ!
個人的に書きたかったエピソードだったのでスラスラ書けました!なので連日投稿だ!
それでは続きをどうぞ( ´ ▽ ` )つ
鷹の目との闘いが終わった翌日、俺達はバラティエを後にし航海を続けていた。時刻は昼となり食卓には豪勢な料理が並んでいる。
俺は現在、一味に入って既に何度目かの号泣をしていた。
「アルガ。お前何で泣いてんだ?」
「だっで……あ"んな別れを見てたらごっちまで泣げでぎじゃって……ウオゥ……ヒグッ」
「何でお前がおれより泣いてんだよ」
俺が泣きながら返すと既に泣き止んでいるサンジは呆れた様子で食事を再開した。
しょうがないじゃん!!あの名シーンを生で見れるとかファンからしたら国宝級に価値があんだから!!!
ゼフが「カゼひくなよ」っていった瞬間サンジと同時に泣いてしまったわ……親の愛ってやっぱ偉大だわァ……。(涙ドバーーッ)
「アルガの兄貴めっちゃ泣いてますね。確かにあの別れは泣けやしたね。でもホラ、コックの兄貴の作った料理でも食べて落ち着きましょうや!」
「サンジが……作った……料理……」(ドバーーッ)
「いや、おれの料理でも泣くのかよ!」
「あっひゃっひゃ!おもしれェ~な~」
ああ、サンジの作った料理……。マジ生きててよかった……。母さん俺を産んでくれてありがとう。
こうして俺たちは食事を楽しみつつ航海を続けるのだった。
バラティエ編が終わったところで今は新しく仲間になったサンジと共にヨサクを連れてアーロンパークへ向かっている。
アーロンパーク。ヨサクがいうにはコノミ諸島に拠点を構えている"
ルフィ達は魚人がどんな姿か話し合っている中俺だけは違うことを考えていた。
コノミ諸島はナミの故郷ココヤシ村がある島。つまりここでもアーロンはあの島を支配していることになる。
ナミと初めてあった時から海賊専門の泥棒と名乗っていたあたり状況は原作と変わっていないのだろう。
アーロンにも人間を憎む理由があるのは分かる。だが、原作で行ったことは決して許されることではない。
はたして俺はナミの現状を聞いた時我慢できるのだろうか……。
俺はそんな一抹の不安を抱え船を進める。懐に仕舞った一通の手紙を携えながら……。
あ、ついでに現れたモームは知っての通り二人にボコられ馬車のように船を引っ張り走らせた。
「てめェらいったい何やってんだ!!!」
無事?にコノミ諸島に着いた俺達は現在ゾロに叱られていた。
いやァ、考えごとしててすっかり忘れてた。そいえばルフィサイドの上陸はこんな感じでしたねはい。
先ほど海岸まで来て上陸しようとしたがモームが止まることなく海岸にぶつかり俺達は船ごと吹っ飛んでしまい田んぼのような場所に着陸した。
ついでに居合わせたゾロを巻き込みながら。
「よく生きてたね。普通死ぬよあれ」
「てめェらのせいだろうが!!!」
ごめんなさい。
でも、待ってほしい。空から降ってきた船に引かれそこから数十メートル先の岩場に衝突して何で頭から少し出血した程度で済んでんの?
俺は改めてゾロの頑丈さにビビる。俺なら死なずとも全身骨折ぐらいはしそうなんだが。
「何ってナミを連れ戻しにきたんだよ。まだ見つかんねェのか?ウソップとジョニーは?」
「ウソップ……!そうだ!こんなところで油うってる場合じゃねェ!!」
「ん?どうした?」
ゾロは何かを思いだしすぐに立ち上がると走り出そうとする。ルフィは理由が分からなかったがすぐに知ることとなった。ここへ駆けつけた人物によって。
「殺されました!!!」
ゾロは立ち止まり振り返るとそこには涙を流すジョニーがいた。
「もう手おくれです。……ウソップの兄貴はもう殺されました!…………!!ナミの姉貴に!!」
『──っ!!?』
その言葉に一同が驚愕する。しかし、すぐにその言葉に怒りを覚えたルフィがジョニーに掴みかかる。
「デタラメいいやがって!!ナミがウソップを殺すわけねェだろうが!!!おれ達は仲間だぞ!!!」
「信じたくなきゃそうすればいいさ……!!でも、おれはこの目で……!!」
「誰が仲間だって?ルフィ」
しかし、そこにこの話の当事者ナミが現れた。冷たい瞳でおれ達を見つめて。
「ナミ」
「何しに来たの?」
「何言ってんだ。お前はおれの仲間だろ。迎えにきた!」
「大迷惑」
そこからはドロドロした展開が続く。ジョニーがナミを魔女と叫びナミはウソップを海の底といってゾロが斬りかかろうとし、それを止めるためにサンジがゾロに喧嘩を仕掛ける。
最後にナミは俺達に別れを伝えるとルフィはその場で倒れた。
「ねる」
「寝るゥ!?この事態に!?こんな道のど真ん中で!?」
「島を出る気はねェし、この島で何が起きてんのかも興味ねェし……ちょっとねむいし、ねる」
『は!?』
ルフィの言葉に疑問を浮かべる皆だが、ナミはひとりだけその言動に激情に駆られる。
「……勝手にしろ!!!死んじまえ!!!」
そう言い残しナミは走り去っていった。その後、ヨサクとジョニーはアーロンに目を付けられる前に俺達と別れどこかへいってしまう。
俺達はルフィをこのまま放っておくワケにもいかないのでその場に座り話し始める。
「オイ、ナミさんは本当にあの長っ鼻を殺してねェのか?」
「どうかね。おれが一度"小物"ってハッパかけちまったから勢いで殺っちまったかもな」
「小物!?」
「はいストーップ。熱くならないでサンジ。ウソップが死んだかどうかはあれ見たら分かるよ」
「あれって……おお!?」
サンジが俺が指差した方向を向くとそこには走ってくるウソップの姿があった。
「よかった!!おーーい、お前らまだアーロンパークにいってなかったようだな!」
「ウソップも無事でよかったよ!ね、これでハッキリしたでしょサンジ」
「ああ、そうだな。だが、今はそんなことより……」
サンジはゾロに向かって蹴りを入れる。
「ナミさんの胸のどこが小物だァ!!!」
「なんの話だァ!!?」
「おいアルガ……。あいつら何であんな争ってんだ?」
「あーー……。ナミの胸の大きさかな」
「てめェアルガ!!説明をめんどくさがって適当こいてんじゃねェ!!!おれはんなこと一言も言ってねェよ!!」
少し騒いでいると流石にルフィも目が醒めて起き上がりウソップを見ると喜びながら飛び上がる。
「おお~~!ホラなやっぱ生きてんじゃん!あいつら適当なこといいやがって!」
「ああ、それなんだがよルフィ聞いてくれ」
ウソップがこれまでの経緯を説明する。自分がこうして生きているのはナミのお陰だということ。そのことを踏まえナミがアーロン一味にいるのには何かワケがあるのかもしれないと。
「無駄だよ。あんた達が何をしようとアーロンの統制は動かない」
そこへ現れたのはナミのお姉さんノジコだった。ウソップからノジコのことを聞いた後、ノジコはいきさつを全て話すから俺達はこの島からでてほしいという。
だが、ルフィは興味ないといいどこかへ散歩にいった。残った俺達で話を聞くことになったがゾロはすぐ寝てしまう。
仕方なく俺、ウソップ、サンジで話を聞くことにした。
ノジコから話を聞くと内容自体は原作と変わらなかった。
…………そう、変わらなかったのである。
サンジはナミの過去を聞きアーロンへの怒りを露にするがそこをノジコに殴られてとめる。俺達がここで騒ぎを起こすとナミの8年間の闘いが無駄になるからと。
「だからこれ以上……あの娘を苦しませないでほしいの」
そう言い残しノジコはこの場を去っていった。
「あんなこと言われちゃおれ達も迂闊に手が出せねェな……アルガ?大丈夫か?」
「………うん、大丈夫。俺も少し腹が立っちゃって」
「にしてはオメェ……今スゲェ恐い顔になってんぞ」
ウソップに言われて初めて俺が今どんな表情をしているのか気付く。……ダメだ。今はまだ抑えろ。時は直に来る……。
「ありがとうウソップ。もう大丈夫だから」
「そうか。ならいいがこれからどうするよ?」
「俺達で決められないなら待つしかないよ。だからルフィもこの島に残ってるワケだし」
「それもそうだな」
「でも……多分だけど俺達が動くのはそう遠くないと思うよ」
そういって俺はノジコがいった方へ歩き始める。
「そろそろ俺達も行くとしよっか」
「どこに行くんだよ?」
「ココヤシ村。ここにいても何も始まらない。俺達が動くのは……
そして、俺達はココヤシ村へ行くと状況は一気に変わっていた。ナミが8年間貯めたお金がアーロンの手引きにより海軍から全て徴収され村の人達は我慢の限界がきてアーロンパークへ乗り込みにいった。
彼らの覚悟に圧され止めることが出来なかったナミはただひとりその場で座り込みアーロンへの恨みを叫び左肩の刺青にナイフを何度も刺し続ける。
そこでルフィはナミの自傷を止めるが出てけと当たり散らす。しかし、その声は徐々に弱まり……俺達の待っていた一言を溢した。
「ルフィ…………助けて……」
「当たり前だ!!!!!」
ルフィがそう叫ぶと俺達の方へ歩いてき……。
「いくぞ」
『オオッ!!』
船長から出撃の合図がでる。俺達は誰ひとり臆することなくそれに答え共に歩み始める。
俺達の航海士を奪い返しにいくために。
アーロンパークでの死闘は激しさを増した最終局面。ルフィが上階へ逃げ込むと中から様々な物が落ち始める。机に椅子、棚に本……そして無数の海図も。
ナミは涙を流していると突如屋根からルフィの伸びた足が飛び出し……。踏み下ろされた足はアーロンパークを崩壊させてしまった。
そして、崩壊したアーロンパークの瓦礫からルフィが現れ──。
「ナミ!!!お前はおれの仲間だ!!!!」
そう宣言するように叫ぶとナミは溢れる涙を拭いながら頷く。
「うん!!」
それがきっかけとなり周りの村の人達は喜びの歓声をあげた。
その後、海軍のネズミがくるも俺達でさくっと潰しナミからキツい一撃を貰って退散していった。
変な邪魔が入ったが村の人達はこのニュースを島中に知らせるためにアーロンパークを後にする。その日の夜は皆が泣いて喜び支配から解放された幸せを宴で分かち合うのだった。
皆が夜通し楽しみ寝静まったころ俺はある場所へ向かうために立ち上がる。
「んお?どこかいくのか?」
意外にもゾロは起きていたようで俺にそう聞いてくる。サンジやウソップはあそこで寝てるのに……てかサンジ何気に両手に美女を囲って寝てやがる。サンジの癖になんか腹立つな。
「うん、念のためにアーロンパークを見張っておくよ。倒されているとはいえ起きてすぐどこかへ逃げないか心配だしね」
「そういうことならおれも行こうか?」
「大丈夫。魚人とはいえ手負いに敗けるほど弱くないから」
「……そうか。それならおれは寝るとするわ」
そういってゾロはその場で雑魚寝した。一瞬でグガーと鼻提灯を膨らまして寝てしまう。いや、寝るのはっや!?
ゾロの瞬間睡眠に驚くが俺は気持ちを切り換えてアーロンパークに向かうのだった。沸々と煮えたぎるような感情を秘めながら。
しっかりと話を聞かせてもらわないと気が済まないからな……。
人間が憎い……。
おれが……いや、おれ達魚人や人魚がお前らに何をしたって言うんだ。
魚人島へ来れば荒らされ人魚を見れば拉致って地上に売られ奴隷として働かされる。
そうでなくてもおれ達の大切なモノをことごとく奪っていく。両親やかつての同胞達……そしてタイの大アニキまで……!!
いくら大アニキの言葉でもおれはどうしても我慢ならなかった。
確かに大アニキのいってることは分かる。だが!その言葉すら無に帰したのはあいつらだ!!ならおれ達も奴らから奪って何が悪い……!!
これは制裁だ!おれ達魚人から人間へのな!!!
…………………………。
………………。
……ン、ここは……。
目が醒めると空は既に深夜を回っているのかあたりは真っ暗だった。なぜ真っ暗なんだ……?明かりはどうした?いや、待て……そもそもアーロンパークはどうなった?
「ようやく目覚めたか。アーロン」
「ん……!?テメェは昼間の!」
おれは色々と困惑していると近くからおれの名を呼ぶ声が聞こえた。声の方を向くとそこには昼間におれのアーロンパークに乗り込んできたあの麦わらを被った下等種族の仲間がひとりがいた。
「なかなか起きないもんだから死んじゃったかと思ったよ」
「ほざけ!!おれがお前らみたいな下等種族に殺されるわけねェだろ!!!」
「その下等種族にキミもこのアーロンパークごと潰されたけどね」
おれはすぐさまこいつを殺そうと立ち上がろうとするがガシャンと音がなり身動きがとれなかった。
「こいつは……」
「起きてすぐ暴れると思ったからね。悪いけど拘束させてもらった」
頑丈な鎖がおれの体に巻き付けられており動けないことに気付いた。よく見ると周りの同胞達も同じように拘束されている。
「ニュー!アーロンさんスマネェおれ達も気付けばこんな有り様に」
「ハチッ!くそテメェ……!こんなことしてなんのマネだ!!」
「……なんの……マネ……?」
人間はそう呟くと先程とは明らかに違う雰囲気になり口を開いた。
「それは俺の台詞だ」
「なんだと……」
「幼い頃のナミに消えない刺青を刻みこの島の人々から上納金を巻き上げる。気に入らない人は殺してその姿を火糞笑む……テメェらこれがいったい何か分かってんのか?」
さっきまで、頬けていた態度とは一変し人間の顔には怒りという感情が滲み出ていた。
「この行為はお前らがもっとも嫌いな人種がやることだ……それなのに……それなのに……!」
人間は俺達に向かって問いかけるように声を張り上げた。
「お前らはタイヨウの海賊団で何を学んだ?フィッシャータイガーから何を教えてもらった?なあ……オイ……!お前らはこんなところで何やってんだよ!!!!」
「テメェ……なぜその名をっ……」
その言葉を聞いたおれや同胞達は困惑する。なぜこんな下等種族に大アニキの名が出てくるんだ。
その時、人間は驚く行動に出た。
人間はおれに近づくとカチと音がなる。すると、ジャラジャラと鎖は落ちて拘束がほどけた。
「なんのつもりだ……」
「勝負をしよう」
「勝負だと?」
「ああ、もしお前が俺を倒せたらこの場は見逃す。仲間を連れてどこかへ行ってもいい。……だが、俺が勝てばひとつ質問に答えろ。いいな?」
そういい人間はおれから少し距離をとった。
「勿論、キミひとり逃げ出すのならそのまま行ってもいいよ。…………たかが人間に恐れをなすならだけど」
「~~っ!!?上等だァ!!」
明らかな挑発だと分かっていてもおれは我慢できず人間に襲いかかった。しかし、おれの攻撃はことごとく躱されてしまう。
「くそ!ちょこまかと!!」
「その程度なのか?やっぱあのジンベエと肩を並べたっていうのは文字通りなだけで実力は違うようだな」
「なっ!?テメェ!!!」
おれは頭に血が上り大降りの一撃を繰り出す。しかし、そんな攻撃が当たるわけもなく振り下ろされる瞬間に隙をつかれ人間とは思えないほどの重い一撃を食らった。
なんだこの威力……!!本当に人間なのか!?
「ハァ……これじゃなんでタイガーさんはお前みたいな奴を船に乗せたのか分からないな」
「テメェにタイの大アニキの何が分かるっ……!!」
「ああ、だからムカつくんだよ……!俺なんかよりずっと長くいたお前がなんで分かってやらねェんだってなァ!!!」
「ゴフッ!!」
すかさず奴から重い一撃を食らってしまう。そして、奴は上着を脱ぎおれに背中を晒した。
そこに刻まれていたのは……間違いなくあの天竜人の奴隷である証のマークだった。
「テメェ……それは……」
「タイガーさんはスゲェよ。自分の過去のトラウマを捩じ伏せてたったひとりでマリージョアを襲撃し多くの奴隷を解放した。俺もそのひとりだったから。なのに、そんなスゲェ男の背中を見てきたお前らが……なんでこんな真似してんだよ!!!」
同胞達はその言葉によって何も言えなくなったのか顔を俯けてしまう。だが、おれは違った。
奴が奴隷だからどうした……。結局はテメェも人間だろうが……!!
「黙れェッ!!元を辿れば下等な人間共がおれの家族を!おれ達の居場所を……タイの大アニキを奪ったのが原因だろうが!!」
おれは今まで秘めていた本音を晒け出す。
「テメェら人間がいなけりゃあおれの親は殺されなかった!タイの大アニキは死ななかった!おれの怒りはおれだけじゃねェ……おれこそが!魚人族の怒りだァア!!!」
「偉そうに言ってんじゃねェ!!」
「ガハッ!!」
しかし、おれの叫びは無情にも奴の拳でとめられてしまう。
「その憎しみの過去を!差別の歴史を!未来に繋ぐ何も知らない子供に植えつけるなって話だろうがっ!!!」
「グゥ……!」
「そうさせないために結成したのがタイヨウの海賊団なんじゃねェのか?タイガーさんは自分ではもう叶わないからお前らに未来を繋げたんじゃねェのかよ!!!」
奴の言葉は胸に突き刺さる。分かってる!分かってはいるが……それをお前に言われる筋合いはねェ!!
「うるせェ!!下等な人間風情がおれの前でタイの大アニキを語るな!!テメェが語っても大アニキの冒涜にしかならねェんだよ!!」
そして、遂におれの拳が奴の顔面を捉えた。しかし──奴の顔は黒く変色しておりダメージがはいった様子はない。むしろ殴ったハズのおれの方が痛みだす。
「俺が語ってんのは……お前らがタイガーさんの人生を冒涜したからだろうがっ!!!!」
「グッ……ゴハッ!!」
殴られたハズだが怯むどころが打ち返してき奴の拳が腹を殴られる。内蔵を丸ごと抉られるような痛みを感じ堪らず膝がついてしまう。
「お前らがやっていることはタイガーさんがもっとも嫌っていた人種の真似事だぞ!!分かってんのか!!?タイガーさんを冒涜するな?ふざけんな!タイガーさんの人生を冒涜してんのはお前らだろうが!!!!」
「ブッ!!グッ……ハァハァ……」
もう、体が動かなくなってきてしまった。おれがこんな人間ごときに……!!
ここまで言われて黙ってられるかと己にハッパをかけ意地で立ち上がる。そんなおれに奴は悠々と歩みおれに近づく。
「もう一度言うぞ。お前らはタイヨウの海賊団の船で……コアラと過ごした日々で何を学んだんだ!!」
「テメェ……コアラのことまで……」
コアラ……。あの船で唯一乗せた人間の子供。なぜこいつがそれを知っているのかは分からない。だが、コアラの名を聞いたことでおれはかつての憎しみを思い出す。
そうだ……。元はあいつを船に乗せたのが原因でタイの大アニキは死んだんじゃないか。
確かにあのガキ自身に悪意はなかった。だが!そこに人間の悪意が付け入る隙を与えてしまった……人間を信じてしまったばっかりに!!
「グォォオオオオオオオオ!!!」
おれは海へ潜り奴に狙いを定める。この一撃で奴を確実に仕留めるために。
「偉そうに言っても結局はおれを倒せなけりゃあテメェの主張は無価値なんだよ……!綺麗事ばかり並べやがって!!できもしねェ現実は絵空事にしかならねェんだよ!!」
おれは海中深く潜り海底までやってくる。これだけの加速距離があれば例えジンベエのアニキといえど止めることはできねェぞ!!
「超加速……"
距離が長いほど加速度が増すこの技はもはや誰も止めることはできない。海面から飛び出す頃には音速を越えており奴の心臓めがけて飛び出した。
しかし──。
「遅ェ……。"武装色硬化"」
それでも奴には──。
「"
届かなかった。
おれの鼻が奴の心臓を突き刺すよりも先に黒く変色した奴の拳がおれの顔面に突き刺さった。
宙に舞うおれは薄れ行く意識の中、奴の顔から目を外せずにいた。
とても勝者には見えない奴のどこか寂しげな顔を……。
おれがまだタイヨウの海賊団にいた頃。タイの大アニキは楽しそうに新聞を読んでいた。
「タイのお頭、何をそんな楽しく読んでおるんじゃ?」
「おう、ジンベエ。それにアーロンこれ見てくれ」
「んお?これは……!」
そこには聖地マリージョアの奴隷脱走の記事がのっていた。
「『聖地マリージョアの大事件再び!!』これって」
「ああ、傑作だろう!あそこからまたも奴隷達が脱走したんだ。笑いが止まらねェぜ!」
「ほう、自力で脱走したのかそれともタイのお頭みたく誰かが乗り込んで解放したのか……」
「シャーハハハハ!どっちにしたってあの憎き人間共がへまやってんだ!確かに笑えるなこりゃあ!」
「ああ、そこで気になる部分があってよ」
タイのお頭は記事を広げある写真に指をさす。その写真の小さい部分にガキが女性を引っ張っているところだった。
「このガキがなんだよ?」
「実はこいつは以前おれが解放した奴隷のひとりでよ。どうもここにいるのが不思議に思ったんだ」
「なんじゃと?この子供が?」
「ああ、会った時から不思議なガキでよ。どうしても捕まって連れ戻されたとは思えねェんだ……」
「何が言いてェんだ?」
「ひょっとしたらこの事件の犯行はこのガキなんじゃないかって思ってる……いや、間違いなくこいつだろうな」
おれとジンベエのアニキは目を見開く。こんなガキが大アニキと同じことを成し遂げたってのか?
「冗談はよしてくれタイのお頭。とてもそんな大それたことをできるようには思えんが……」
「おれもそう思いてェが不思議とあいつならできると思っちまうんだ」
「やたらとこの子供に肩入れするのう」
「……そうかもしれん。おそらくこいつはおれが唯一心を開いた人間だからな」
そういわれおれ達は再び驚愕した。あの大アニキが……?嘘だろ!?
「そんな人間がいようとは……驚いた。して、その子供の名はなんと言うんじゃ?」
「ああ、あいつの名は──」
「おっ、もう目が醒めたか。流石にしぶといな」
目を醒ますとまたも目の前には奴がいた。立ち上がろうとするも体が動かない。さっきの闘いでダメージが大きすぎたようだ。
そうか……おれは敗けちまったのか……。
「……テメェなぜトドメを刺さねェ」
「誰が殺すかよ。俺はそういうのはしねェんだ。お前らと違ってな」
「なんだと?」
「殺せば終わりなんだ。お前らはもう……あいつらと同類なんだよ」
「っ!?」
『殺したら負けなんだ!あいつらと同類になりてェのか!?』
かつてタイの大アニキの言葉と同じことを言われおれは目を見開いた。
「さて、約束通り守ってもらうぞ」
「ふん……勝手にしろ」
「ん?やたらと物分かりがいいな?」
「別に……おれは敗けたんだ。下等種族相手に2人もな」
「そうか」
おれは今後の運命を受け入れると奴から何か投げられおれの目の前に落とす。それは一通の手紙だった。
「これは……手紙?」
「ああ。今のお前なら素直に読んでくれそうだからな、渡しておく。元々俺がここへ来た目的はこれを渡すことだったしな」
手紙を手に取り差出人を見るとそこにはコアラと書かれていた。
「っ!?」
「昔、俺もコアラと会ったことがあってな。近々"
手紙を開き中を見てみる。そこにはコアラの今まで生きた人生やおれ達のことが書かれていた。
『アーロンさん達へ
元気にしているでしょうか?あたしはあの日皆と別れた後からずっと元気です!
手紙を書いてるとハチさんとのコイン当てゲームを思い出します。またやりたいなァ~。
っとと……話を戻すね。実はあれから色々あって今は革命軍に入りそこで知り合った魚人から魚人空手を習い師範代をやってます。今ならクロオビさんにだって敗けないんだから!
あたしが魚人空手を習ったのはもっと皆のことを知りたいと思ったからです。魚人にはいい人がいっぱいいるんだって世界中の人達に伝えたいから。
それが今のあたしの"夢"!!
お互い簡単に会える立場ではないけどまたいつか昔のように皆と話せる日が来ることを願っています。
コアラより』
昔と変わらない……いや、昔よりずっと明るくなっている彼女の手紙を読みおれは今までの人生を思い返していた。
「どうだった?」
「テメェにひとつ聞きてェ」
「なんだ?」
「何故ここまでする?おれはお前らにとって憎しみしかねェ敵のハズだろ……?」
「まあ、コアラから直接頼まれたってのもあるが……お前のそれを見ちまったらな……」
「……?」
「お前がただただどうしようもねェクズならここまでする気にはならなかったが……。お前にも大切にしていたものがあるって分かったからな」
おれは言っている意味が分からず首を傾げる。すると奴はおれの頭に目を向けた。
「お前のその夏コーデに合わなすぎて逆に違和感に気付けなかったけど……その帽子『フィッシャーマンキャップ』だろ?」
「っ!?」
「一時でも忘れないようにそんな服装でもその帽子を被ってるのを見てそう思った。だから、手紙を渡したんだ」
「そうか……」
さっきまでお前を殺そうとしたおれにここまでしてくれる人間がいるとはな……。まさかこいつは……。
おれは目覚めた時から感じていた疑問を聞いてみることにした。
「お前……名をアルガって言われていたな」
「ああ」
「さっき見たマーク……ひょっとしてタイの大アニキと面識があるのか?」
「……っ!タイガーさんが俺の話をしてたのか?」
「まあな」
すると、人間……いや、アルガは少し考える素振りをした後本題にはいった。
「なら話しは早い。約束通り俺の質問に答えてもらう」
「……なんだ」
「……タイガーさんはどんな顔で逝った?」
その顔はおれが先ほど気を失う直前にもしていた寂しげな表情だった。
「どんな顔……か」
おれは当時のことを思い出す。
輸血を断りその理由を話していたあの苦渋な涙を流す大アニキの顔。
そして、最期にボソッと呟いたあの顔。
『死ぬ前にあいつともう一度会いたかったぜったくよォ……』
人間によって苦しんでいた大アニキが唯一その人間に向けていたあの顔は間違いなく──。
「泣いてたよ……テメェにまた会いてェと笑いながらな」
「そうか……ありがとう」
そういうとアルガは立ち上がりアーロンパークから立ち去っていった。頬から雫を滴しながら。
奴がいなくなったことでおれはここから逃げることもできるが……。
ここで逃げても、あいつに会わせる顔がねェからな……。
おれはただその場で座りながら海面を照らす夜空をずっと眺め続けた。
どうも皆さんもしロマです!
今回さらっと出てきたアルガの技。そうです、実はアルガの戦闘スタイルは大きく分けて3つあります。体術と金棒と刀の3つを使い分けて闘います。
そして、いよいよ次回で"東の海"編が終了しますので楽しみお待ちください。
では次回会いましょうでわでわ~( ´ ▽ ` )ノ