顔を覆った光世は、クラスメイトだけでない気配を感じて警戒しながら、覆った手を下ろす。
まず見えたものは巨大な壁画だ。縦横それぞれ数十mはありそうな壁画には後光を背負い金色の長髪を輝かせ薄っすらと笑う男とも女とも言える顔立ちの人物が描かれていた。
そんなことはどうでもいい。周りを見渡すと困惑しているクラスメイトがおり、台座の上に立っていることがわかる。その周囲を取り囲む者達に目を配る。
30人ほどの人間が祈りを捧げるように跪き、手を胸の前で組んだ格好でいた。
そのうち1人だけ周りより豪華な衣装を纏い、意匠の凝らされた帽子をを被る老人がこちらに歩み寄って来て、話しかけてきた。
「ようこそトータスへ、勇者様。そして同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就ております、イシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ」
イシュタルと名乗る老人は、印象が良く見える微笑を見せた。
生徒達は大広間へと案内された。
通って来た道やこの部屋を見たところ、煌びやかな作りをしており、調度品、絵画、壁紙が一級品な者であるのがわかる。
全員が着席すると、メイドが入って来て飲み物を支給してくる。男子生徒は鼻を伸ばし、女子生徒は冷ややかに睨む。
全員に飲み物が行き渡ると、イシュタルが口を開いた。
「さて、あなた方においてはさぞ混乱していることでしょう。一から説明させていただきますのでな、まずは私の話を最後までお聞きくだされ」
「ここはあなた方が居た世界とは異なる世界『トータス』。あなた方を召喚したのは我々聖教教会が崇める唯一神『エヒト』様です。あなた方の世界はこの世界よりも上位の存在」
「んだこれテレビの撮影か?」
「だよね・・・」
「とりあえず話は聞いておけ」
「この世界の人間よりも優れた力を有しているのです。・・・といってもエヒト様より神託にて伝えられた受け売りですがな。我々は遥か昔からこの世界の南一帯を支配する『魔人族』と戦争を続けています。しかし近年ある異常事態により人間族は滅びの危機に晒されている。至上の神エヒト様はそんな我々を救ってくださる為にあなた方はこの世界へと喚ばれたのです!」
喚んだのは神とやらの存在。
「ふざけないでください!!」
机を叩き、立ち上がったのは社会科教師である畑山 愛子。身長150cmほどで童顔、ボブカットの髪をした教師なのだが・・・一生懸命さは伝わってくるのだが、大抵空回ってしまう残念さがあり、怒っていても可愛らしさが残ってしまっている。
「結局、この子達に戦争をさせようってことでしょう!そんなの許しません!ええ、先生は許しませんよ!私たちを早く帰してください!きっとご家族も心配しているはずです!あなた達のしていることはただの誘拐ですよ!」
「お気持ちはお察ししますが。しかし・・・・・・あなた方の帰還は現状不可能です」
そんな絶望的な言葉で場に静寂が満ちる。誰もが何を言われたのかわからないという顔でイシュタルを見た。
「ふ、不可能って・・・・・・ど、どういうことですか!?喚べたのなら帰せるでしょう!?」
「先ほど言ったように、あなた方を召喚したのはエヒト様です。我々人間に異世界に干渉するような魔法は使えませんのでな、あなた方が帰還できるかどうかもエヒト様の御意思次第ですな」
「そ、そんな・・・・・・」
周りの生徒達は現状に絶望して口々に騒ぎ出す。
「うそだろ?帰れないってなんだよ!」
「いやよ!なんでもいいから帰してよ!」
「戦争なんて冗談じゃねぇ!ふざけんなよ!」
「なんで、なんで、なんで・・・・・・」
生徒がパニックになる中、光輝が立ち上がりテーブルバンッと叩いた。
パニックになっていた生徒達の注目は光輝に行き、冷静に現状を見ていた生徒達も光輝を見る。
「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ、・・・・・・俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って、放っておくなんて俺にはできない!それに、人間を救う為に召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。・・・・・・イシュタルさん、どうですか?」
「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無下にはしますまい」
「俺たちには大きな力があるんですよね?ここに来てから妙に力が滾っている感じがします」
「ええ、そうです。ざっとこの世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょう」
「うん、なら大丈夫。俺は戦う!人々を救い、皆が帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!」
握り拳を作り、そう宣言する光輝。
同時に彼のカリスマは遺憾なく効果を発揮してしまった。絶望の顔をしていた生徒達が活気と冷静さを取り戻し始めたのだ。光輝を見るその目には蜘蛛の糸を垂らす仏のように見えていたのだろう。
「へっ、お前ならそう言うと思ったぜ。お前一人じゃ心配だからな。・・・・・・俺もやるぜ?」
「龍太郎・・・・・・」
「今のところ、それしかないわよね。・・・・・・気に食わないけど・・・私もやるわ」
「雫・・・・・・」
「え、えっと、雫ちゃんがやるなら私も頑張るよ!」
「香織・・・・・・」
いつものメンバーが光輝に賛同する。あとは流れるようにクラスメイト達も賛同していく。愛子はオロオロとしながら「だめですよ〜」と涙目で訴えているが光輝の作った流れの前では無力だった。
その中で光輝に賛同せず、怒りの表情を浮かべる人物がいた。
叩きつけられたテーブルには大きい亀裂が入る。
「・・・光輝。お前は何を言って、何をさせようとしてるのか理解しているか?」
学校でいた時とは雰囲気が全く違い、濃密な殺意を孕んだ目で天之河光輝を睨む。
「なんだ・・・彼らを助けることに不満でもあるのか?」
「そう言ってるわけではない。助けようとする覚悟は良し」
「なら「だが人を殺す覚悟がない」なんだって?」
「これはゲームじゃないんだ。魔人族を倒すという表現は正しくない。魔神族という『人』を『殺す』んだ」
光世の発言に顔を青褪めさせる生徒がおり、その中に雫も入っていた。
「自分が何をしようとしていたのかわかったか?それと聞くが力が手に入ったからなんだ?使い方はわかってるのか?殺し合いなんてしたことがない奴らが人どころか魔物を殺すことなんてできるわけがないだろ」
「彼らを救う為には力を振るうべきだろ!」
「では突然刀を渡されたとしよう。そいつは剣聖になれるか?なれるわけがないだろ。力に振り回され、自分が死ぬか、身近な者が殺すかだ」
「そんなことなんてさせない!」
「口ではどうとでも言えるな。お前のように正義感だけで世界が平和になるとでも思うか?それと殺す覚悟だけじゃない。『殺される』覚悟も必要だ。何一つ覚悟できてない奴らは力を持ったところで、現状より最悪な状況を招くだけだ」
光輝に言いたいことは言い終わったのか、光輝から視線を外し、イシュタルに目を合わせる。
「まず約束して欲しいことがある。一つは戦争の参加は志願制にすること。二つは俺たちの衣食住の確保すること。あとは戦うための術を学ぶ機会を与えて欲しい」
「承知いたしました。二つ目と三つ目に関してはご安心ください。王国の方で準備をしております。それと志願制というのは王国との話し合いにより決定致しますので待っていただければ」
「それで構わない」
目を閉じ、椅子に座る光世。
座った後、雫に目を合わせる。
「後で話がある」
その視線は避難するような目ではなく、呆れを感じさせるものだった。
話が終わり、王宮に案内された。応急では国王や王妃、王女のなどの紹介の後、晩餐会が開かれその中で教育係の紹介があった。
怒涛の1日で疲れた者は与えられた部屋で休息を取り始めるが、雫は自分の部屋ではなく光世の部屋へと行く。
ノックをすると部屋の中から、入ってくれと言われ中に入った。
部屋には八重樫 光世だけじゃなく中村 恵理もいた。
うわぁ、なっが。
それと光輝の部分が難しすぎるぅ。
すいません。木曜日は病院に行くためあげられません。