不朽の魔女   作:謎の通行人 δ

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設定を少し変更しました。

魔王は討伐されるたびに定期的に現れる
→未だ討伐されておらず、完全に魔物に侵攻された魔界と呼ばれる場所で魔物の王として存在している。


(逃走)

四人で日々を過ごすこともう数ヶ月になってきていた。特に何をするでもなく四人で集まって過ごしていた。

そんな中、ラジオから流れてくるニュースが一つ。

 

『原初の厄災と呼ばれる三名の魔女の行方が発見されたそうです』

 

「…は?」「…え?」「…ん?」

「…まさか…!」

咄嗟の判断を下したのはカーミラ。彼女が索敵用の魔法を展開する…と、少し青い顔をした。

 

「…不味いわ、この下水道が包囲されてる」

 

「うっそ!」

 

「…!!それに…魔法の阻害をする何かも使われてるわね、探知が効かないところがあるわ」

このままだとニーナの隠蔽の魔法も持たないかもしれない、とカーミラが付け加える。

決まったのはその時、そこからの逃亡だ。

 

「荷物は!?」

「持てるものは持って。できるだけ痕跡は残したくないけど…机とか運べないものはしょうがないわ」

「幸い元々ここらへんにあるものだけを使ってたから、バラバラにしてそこら辺に撒いとけば気付かれにくいとは思うけどね」

カーミラとニーナの言葉を聞きながら私も脱出の準備をする。幸い元から荷物は多くなかったから助かった。

 

「…よし、行くわよ。念のためニーナ、お願いできる?」

「勿論」

ニーナが魔法を四人個々に隠密を施して全員で下水道の中を走る。

 

「音も消せるから、心配なく走っていけるよ」

「ありがと」

 

しかし、敵のほうが一枚上手だった。

 

「まずいわ、こっちの道の先にもいるわね」

 

「もうー…!」

どの道の先にも魔女狩りがいるようで。

八方塞がりか…と思われた。が、

 

「!!これ…これも一応外に通じてるわ」

カーミラの言葉に反応して振り向くと…廃水道らしく崩落した壁の一角に空いている小さな穴を指した。

 

「…エレオ、貴女はここから出て」

 

「えっ…」

その言葉は、シンと静まったコンクリートの筒の中に響くこともなく話された。

 

「ここを通れるのは貴女くらいだわ、人数は少ないほうが逃げるのもしやすいし。それに、貴女はまだ魔女だと断定されてないから見たままだと捕まることもないはず」

 

「で、でもそれじゃ」

皆は捕まるんじゃ…と言いかけて、カーミラは不敵に笑う。

 

「心配しないで、私がいるのよ?私の探知はどの方向からの人も、道の探索もできる。探知ができない場所は、つまり相手がいるってことを示してくれてるわけだしね。外に出られないことはあっても捕まることは絶対にないわ」

ほら、と言って促す。

それでも踏みとどまる私に、ニーナが黄色い手提げラジオを私の首にかけた。

 

「私達にはカーミラがいるから良い、エレオにはこれが情報となってくれるよ。私たちが捕まらなかったらそういう情報が流れる筈だから、それを聞いたら戻ってきて」

「うん、それでまた皆で一緒にいよう!だから、今は逃げて!」

ニーナとレイトナも賛同する。ッ…と悩むけど、ここで悩んでいても何も始まらない。それなら今は、大切な人たちの事を聞いて従ったほうが、彼女たちの為にもなる気がした。

 

「じゃあコレは私から、お守りよ。また会ったら返してね」

と、カーミラがシアン色の正八面体の結晶を差し出して私のローブのポケットに入れた。

 

「えっ、皆なにかあげる感じ!?わ、私なんかあるかな…」

「いや、良いんだけど…また会うんでしょ?」

ポケットを弄りだしたレイトナに言うけど、流れというものがあるらしく聞かれなかった。結局、彼女からはマゼンタ色のリボンを髪に軽く結んでもらった。

 

「それじゃ、また」

 

「うん、またね」

三人の言葉に背中を押されてその狭い穴に潜る。

たしかにこの狭さでは体がまだ10らへんで止まってしまっている私くらいしか通れないだろう。

 

「…みんななら、大丈夫なはず…!」

頭の片隅に流れて来る恐怖を振り払って無理矢理信頼に書き換える。大丈夫、まずは私が逃げ切れないと…

そんな思いで狭い穴を進んで、もう十何分とかかっただろう。精神も摩耗してきてたその時、視界の先に光が見えてきた。

外だ…!と進むスピードを上げる。一縷の望みが見えてきた。

その小さな穴から這い出ると、山の中…しかも元々私がいたあの小屋の近くだった。

ちょうどいいや、と小屋に入る。勿論中に人がいないのは確認してからね。

 

ボロボロの木製の机にラジオを乗せてスイッチを付ける。なんでもニーナとレイトナが魔法で改造したらしく、所有者…元々はニーナ、今は私が認めた人にしか見えなくて音も聞こえない、魔力で動くから電池もいらないんだとか。

私は既存のものは操作できないからすごいよなぁ…と思いながら周波数を合わせる。と、早速ニュースが流れてきた。

 

『速報です。つい先程、()()()()()()()()()()()()()という情報が入ってきました』

………は?

一瞬、この世から音が消えた。何も、聞こえなくなった。

頭が理解を拒んだ。でも、無慈悲にもラジオの声は淡々と事実を述べていく。

 

『新型の魔力阻害装置が功を奏したのか、隠れていた()()()の三名の魔女を確保し、順次処刑する運びとなるようです』

時間は…場所は…と情報が流れてくるけど、理解できない。

頭が、心が、理解を拒む。

 

 

三人が、捕まった、?

 

 

三人が、死ぬ、、、?

 

 

目眩がした。

もともと立っていなかったのが幸いだったのか、そのまま横に倒れ伏した。

 

そんな、そんな、、?

 

いや、でも…まだ、手はある。

 

処刑される前に…私が助ける。

ラジオが言うには確か…すぐに広場で火あぶりにして公開処刑、だったはず。

そこに私が水の魔法を使えば、助けられる。

消火した後の行動、逃げ場やその他諸々のプランを構築して実行に移しに行く。

 

幸い私の顔は割れてない。隠すとむしろ目立つからあえて隠さずに、杖は置いておく。また戻ってきて取っておけば良い。流石に街に降りるのにコレは邪魔だ。

 

「…大丈夫、私なら、やれる」

心を落ち着けながら、ゆっくりと小屋から出る。周りに変に見つからないように山を降りていき、魔力を制御して体の周りで滞留させる。

 

向うのは、街の広場。見てみると、既に大量の人が集まっていた。

…人が死ぬというのに何を見に来ているんだろう、という怒りを収めつつ、私もその方に目を向ける。

と、見覚えのある三人が鎖で繋がれて前に連れてこられていた。

瞬間、周りから怒声が上がった。

やれ殺せ、邪悪だ、人でなしだ……

聞くに堪えない罵詈雑言が飛び交って、一瞬頭の中が動揺に包まれる。

 

……落ち着け、私。そりゃそうだ、この人達にとって私達は敵なんだ。事情を知らないんだから、しょうがない。

 

三人がその身にくくりつけられた鎖で十字架に縛り付けられる。

…鎖で縛るのか。なら鎖も破壊しないといけない。既存物の操作はできないから、威力の高い魔法で壊そう。

 

執行人と思われる男の人が火を着けよ、と言った。

 

来た、と魔法の構築の準備をする。

イメージする。

水の魔法だ。

濁流に飲まれて火が消され、周りの人も一時的に混乱状態に陥る。

その隙に鎖を破壊して、逃げる。

 

次の瞬間、ゴウ、と火柱が上がった。

いきなり過ぎる炎に驚いて、一瞬体が硬直したけど、怯まない。

水の魔法を…と思って手を向けた。

 

発動、した。

 

したはずだった。

 

 

 

「…え…」

……使えない。

何も起こらない。

火柱を消し止めるどころか、水滴の一滴すら出ない。

 

その時、火柱の中に赤い目が見えた。目も、私を見据えていた。同時に、頭の中に響くように声が聞こえてきた。

 

 

 

『……どう、して…?』

 

 

 

「っ、!!」

聞き間違えるわけがない、その声はレイトナのものだった。

 

『なん、で…なんで…』

 

『…て、よ…エレ…』

 

無理、だった。

今まで一度も失敗したことのない魔法。咄嗟でも、多少イメージが乱れていても問題なく使えたはずの魔法が、私の意思に従ってくれない。

 

…後から考えるなら。おそらくこの場にもその新型の魔力阻害装置なるものが使われていたんだろう。

でも、その時の私は錯乱状態に陥っていて、そんな事考えてる場合じゃなかった。

 

 

 

違う

 

 

 

違うの、皆

 

 

 

私じゃ…ないの

 

 

 

助けようとしてるけど、魔法が…使えないの…!

 

 

 

 

 

 

私は、そこから逃げた。逃げて逃げて、山の小屋にいて。

荷物を持って、どこか知らない所に逃げようとした。

 

それから数日位彷徨った気がする。

もしかしたら数時間だったかもしれないし、もしかしたら何週間も経ったかもしれない。

空を飛びながら誰に言うでもなく言い訳をし続けて、見たことのない地の平原に辿り着いた。

綺麗な川が流れていて、サラサラと薄緑の草が揺れている。

私の心象とは裏腹に、憎たらしいほど穏やかだった。

 

 

…その場で杖を掲げてイメージすれば、魔法が使えた。なのに、誰も助けられなかった。

 

自責、後悔、怒り、哀悼…色んな気持ちが入り乱れてもう何もわからなくなった。

 

さまようこと数分で、ボロボロのレンガ造りの家を見つけた。人は、いなかった。

ドアを開けてみると内装も何もなく、ただただ家のような形のハリボテだった。

私には、ちょうどよかった。

 

 

その日から、私は魔法を使うのをやめた。

 

 

それと同時に、私の世界からは色が消え去った。

 

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