「設定がフリーレンかよ」とか言われたので一応断っておきます。
まああの作品がいつ生まれたのかはわからないんですが、少なくとも私が認知するより前(だいたい1年くらい前)から構想は作ってました。そもそも書くだけ書いて放ってたやつです。
というか似てます?これ?
「エレオさーん…?」
ゆすゆすと体が揺さぶられて目が薄っすらと開く。
日の光が瞼の隙間を縫って網膜を焼いてきた。眩しい…
あぁ…レオン君か…
少し狼狽えた困り顔を一瞥して、光に目を慣らせながら軒のベンチから立ち上がってのそのそと這い出る。
……彼には前に押しかけてきた次の日にまた来て土下座して謝られた。
失礼がどうのこうの言われたけど結局何に謝られてるのかわからず、とりあえずオーケーしておいたけど。まあそこからまた普段通りの状態になったから万事オーケー。
「おはよ…」
「もうお昼回ってるんですけど」
大体起きるのは昼だからしょうがない。今日は早めに起きたけど日にあたって座ってたらまた寝てたから。
とりあえず家の中に入ってもらってから、さてと…ん?
「なんかあった?」
なんかレオン君の様子が…いやおかしいわけじゃないんだけど、なんかワクワクしてる状態と切羽詰まった状態がごちゃまぜになった感じになってる。
「!実は、魔王討伐隊が組まれることになったんです」
魔王討伐隊。最初にレオン君が言ってた、彼の最終目標。
Aランク以上のギルド所属冒険者という条件はつくけど、100を超える人が参加するらしい。
「今までの過去の文献とかの研究も進んでて、魔王の攻撃とかおおよその体力、どんな魔法を使ってきてどんな魔法が効率的にダメージを与えられるのかとか、色々分かってきてる上に、今年の戦力はこれまでの中でも最大規模らしいんです。今回で倒せる可能性が高いんですよ…!」
なるほどねー…いや、なんか…
「普通に申し訳ないんだけど…原因私なのに動けないとなると」
さっき言った通り、討伐隊に参加するにはそもそもギルドに入ってないといけない。だから正規ルートで討伐は無理。
個人的に行こうにも魔界がどこにあるかなんて知らないし、もしとんでもない遠くにあったりしたら探知系の魔法の使えない私は最悪帰ってこれなくなる。方角がわからなくなってとか。
となるともう私は動けない。
「エレオさんが意図して作ったわけじゃないですし、しょうがないですよ。それに今回はあの
大丈夫ですよ、と右手を曲げて力こぶを作るようなポーズを取るレオン君。
確か治癒系の魔法は既存の人に影響を与える魔法だし、その中でも特に珍しいんだったっけ。
……そうか。なら…
「行くときはこれを持っていくと良いよ。というかあげる」
ポケットから取り出すのは、紫色の巾着のお守り。
拾ったものだけど、「安全祈願」と達筆な刺繍がされてるそれも、無論劣化しない。
「これ…ありがとうございます、!」
「じゃあ…魔王討伐に向けてやろうか」
「はいッ!」
ビシッ、と腰を曲げるレオン君を前に、話を切り替えて今日の練習。
とは言っても、やるのはそんなに複雑なことじゃない。
「最初にやってたでしょ?魔力の操作。…あれをさらに精密にしてもらう」
更に…精密に?と目を点にするレオン君。
「魔法に限らず、ある程度感覚がつかめてきたら基本をなあなあにしがちだからね。初心に帰って魔力操作の初歩の初歩から」
とりあえず魔力を鎧みたいにして収めるところ、と付け加えると、レオン君は少し得意げに笑った。
「これでも毎日その練習してるんですよ。見ててくださいっ」
サァァ、とレオン君の周りを漂ってた魔力が彼の周りに凝縮されていって、しっかりと形を作る。
おぉ…最初期から見てる身からすると凄い上達…
それに、毎日やってたんだ。真面目だねぇ。
「うん、なかなか綺麗にできてるね。じゃあそのまま五分キープ」
ソレを聞いた瞬間ちょっと魔力が揺らいだ。
…まだ長期的にはあんまり続けられない感じかな。
私は私で床に腰を下ろして少しだけ考え事をする。
魔王。
魔を統べる王。
おそらく無から生み出された魔力の塊が意思を持った特例。
生憎私は魔王の情報について詳しくない。そこまでの情報が共有されてないから。
でもそんな常識の範囲外の怪物、人が相対してまともに相手取れるんだろうか。
いやまあ無論長年研究されて、有利な状況を作り出せるにしても。
……まあそんな事を考えても、か。
私が魔王を探そうとか考えたところで、もし見つけられても魔法を使わない私には攻撃する手段がない。せいぜい魔力で威圧するくらい。
…そもそも、魔法…まだ使えるのかな。
必死に魔力を操作するレオン君に見えないように、そっと左手を構えて、想像してみる。
小さな、小さな火を灯す。
「………」
…ま、無理か。
想像だけじゃなくて、本当に使おうと思わないと使えないもんね。
小さくため息を付いて手を降って、そろそろ五分くらいかな、とレオン君の方を向き直す。
…うん、ちょっと崩れてきてはいるけどそれでも十分に綺麗に操作できてる。問題はないかな。
「良いよ、止めて」
「ッはぁ、っ…はァっ…」
「…息止めてた?」
「しゅう、集中、し、てると…!」
「あごめん、いいから息整えて」
汗だくになって肩で息をしながら答えようとするレオン君に慌てて訂正を入れて休憩させるように指示。
うーん…まあでも、魔法が使えない状態ででAランクまで上り詰めた彼は魔法無しでここまで来てるんだし、正直魔法はおまけでその本職を使いながら補助的に魔法を使う感じになるのかな…?いつも腰に剣差してるし、多分剣士。メインのダメージディーラーって感じかな。
まあそれならこれくらいでも全然問題はないかな?
とか考えてると息が整ったみたいで、講評を。
「精度的には思ってたより上手にできてたね。まあやっぱりもうちょっと体の力抜けると良いとは思うけど…それでも魔法を主に使うような戦い方をしないなら、全然問題ないと思うよ」
「!!ホントですか!」
「うん。じゃあこの感覚を忘れないようにしつつ魔法だね。これからちょっと方針を変えるよ。今日から一つ魔法を突き詰めてもらう」
剣を使うなら変に属性の乗った魔法を使うよりもこっちのほうが効率がいい。その分難しいっぽいけど。
?、と首を傾げるレオン君の前に魔導書の1ページを差し出す。
「身体強化魔法」
最初の頃、魔力の質の話なんて全く知らなかった頃にどうやって物を操ってるのか聞いたことがあった。
…まあレイトナと、あと意外にもカーミラも完全な感覚派で、レイトナに至っては「ぐってやってバーンってやったらできるよ!」とか言われて完全に諦めたのは覚えてる。
その中でも物を状態的に操る魔法を使ってたニーナはまだ結構理論派で、その記憶も割と残ってる。
「身体強化の基本は体中に魔力を巡らせること。これに関してはどんな魔法にも言えるよ」
私が風を纏って空を飛んでたときも、たしかに魔力を体に巡らせて体中から風を出してるような感じがあった。
「魔力を体に…」
「そう。今までは体の周りに鎧を作るみたいにしてたけど、なんていうのかな…血液に魔力を乗せて体に巡らせる感じ?」
うーん言語化…ニーナほど口がうまくないからなぁ…すごさがよく分かる。
言葉にするって難しいよね…
でも、予想外にも。
「…あ、それ多分、たまに使ってました」
目の前でレオン君はやってみせる。体の周りの陽炎が下半身に移動して、足全体に吸収されていく。おぉ、ちゃんと出来てる…
「うん、ここまでできるならあとは魔法陣を展開するだけだね。身体強化の魔法陣はこれ」
開いていたページのまま魔導書を差し出して模様をしっかりと理解させる。
既存のものを操作する魔法は対応した魔力が普通の人の体の中における魔力の割合の中でも少ない。だから効率よく動かすためには魔法陣も複雑になっていく。
幾何学模様みたいになってる魔法陣を見ながら、こうか…いやこうか…と試行錯誤して照らし合わせてしながら少しずつ魔法陣を形作っていくレオン君。
そして…
「!!出来ました!」
手のひらに現れるのは立派な身体強化の魔法陣。
うん、確かにしっかり描けてるね。…うん。
「それをどうするつもり?」
「え?……あ、」
魔法の起点は魔法陣から。
だから、普通の魔法みたいに身体強化魔法を展開すると身体強化魔法を撃ち出す格好みたいになっちゃう。
…気づいてなかったのか…
「が、頑張ったのに…」
それと同時に足からも魔力が発散されてまた体中に纏わりつく。
「まあ、感覚はつかめたはず。あとはその魔法を自分に作用させるためにどうするか…」
「…強化したい所に魔法陣を描く?」
「そう」
やってみて、と促すと一つ深呼吸をしてまた魔力が足に向かっていって…
「ん…んー…こ、こう…ですか?」
魔法陣に足がぶっ刺さってるみたいな形になっていた。
…シュールだけど魔法陣使うとなるとこれが正解っぽいんだよね…
「多分、合ってる。じゃあそのまま外に…それ維持したまま動ける?」
「な、何とか…ぅぁ、わっ!?」
と、いつもの体の感覚とずれるからなのか彼は転びかけながら何とかドアまでたどり着いて、外に出る。
「身体強化魔法は魔力を籠めれば籠めるほど強い強化が得られる。まあまずは最低量で慣らしていこう」
はい飛んでー、走ってー、と動きをつけさせて体を慣らしていった。
いつもより力の出る状況が楽しいのか、操作を誤ってまた川に飛び込みそうになってたから跳躍は特に注意するように指示を追加する羽目になったけど。