不朽の魔女   作:謎の通行人 δ

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14(意思)

そんな事をしているとあっという間に一ヶ月は過ぎた。

とうとう出発が明日に迫ったらしい。

ラジオでもその話題が持ちきりで、何らかの専門家らしい人が色々と見解を述べていた。

 

「抜、剣…!!」

そして、今日。周期からは少しだけずれてるけど来るのを許可しておいて、前日の仕上げをしてる最中。

一ヶ月の集中指導のおかげでだいぶスムーズな発動、運用ができるようになってる。

元の剣の腕も良かったんだろう、今となっては剣一本で漂着してきてた人くらいの大きさの屑鉄が簡単に両断できるようになってる。

…いやすごいね。

 

「はぁ…はぁ…」

肩で息をしつつも魔力の操作を緩めずに身体強化の練度を上げていく彼。

最初は足だけで限界、何なら片足だけでも結構きつそうだったのに今となっては両手両足に同時に強化をかけられるようになった。

…まあ相応に集中力とかもいるみたいで、疲れるみたいだから要所要所、必要な箇所に必要な分だけ、っていうのを教えたけど。

当人としては大は小を兼ねるから、って考えらしい。

まあ、当人が良いなら…?

 

「解いていいよ。お疲れ様」

 

「っはぁっー…!」

そのままドサ、と尻餅をつく彼。…流石に疲れるよね。

 

「もうだいぶ使えるようにはなってる。ただ剣だけを使うよりも格段に強くなってるはずだよ」

 

「はい…っ、ありがとうございます…!」

日の当たる草原の中、私も珍しく影に入らずに草の上、彼の前に腰を落とす。

いよいよ、明日だ。

 

「ここまでしてもらって、もう引くわけにはいかなくなりましたね」

 

「引く気だったの?」

 

「…言葉の綾っす」

クツクツと喉で笑う彼。

…やれやれ。

それにしても……本当によくやったね。

最初は魔力の操作すらままならなかったのに、今やこうして身体強化を使って数メートルも跳んで鉄を両断することさえ可能になっている。

創生魔法はこの頃教えてはないけど、多分やってるんだろう。日に日に魔力の操作能力も向上している。

 

……おおよそ5ヶ月。その間で、彼は見違えるほどに変わった。

感覚が鈍りがちだけど、寿命が100年とかそんな単位の中での5ヶ月ってのは、案外短いようで長い。

 

そのついでに私の方も変えられた。

 

当人は貸し借りがどうのこうのと言っていたけれど、そのところからしてみれば、私の方の借りの方が大きいだろう。

 

「今日はここまでにしよう。明日に備えて魔力と体力の回復に努めるように」

 

「っはい」

そんな返事を聞いてから、家の中へと一度入れる。

 

「あとこれは選別ね」

 

「?」

渡すのは、一つの分厚いメモ帳。

一見ただの厚いだけのメモ帳だが、中身はそれだけにとどまらない。

 

「うわっ!?え、エレオさん、これ…!」

一月前。

次に来る時にはメモ帳とかとペンも持ってきてくれると助かる、と伝えたところ買ってきてくれた。

どうせ私の持ってる分厚い魔導書は実践には向かない。邪魔だし。

となればどうするか…写生である。

やたらめったらに厚い魔導書の要点と魔法陣のみを抜粋し、転写して簡易的な魔導書とした代物。

どうせ暇な時間は持て余してたしね。

 

「いちいちそんな大きな魔導書、持って運ぶには邪魔だろうからね。プレゼント」

あいにくこれは作ってからの時間が短くて不壊じゃないけど、魔力は籠もってるから機能は問題なくする。

 

「っ…!ありがとうございますっ!」

キラキラとした目を向けてくれるレオン君を横目に、トス、と布団に腰を掛ける。

 

……話す話題がなくてちょっと沈黙が痛い。

 

「…今更だけど」

耐えきれなくなって、口を開く。少し前から思っていたこと。

 

「最初にここに来て、魔法を教えてほしいって言ってくれた時、見てすぐにあー無理だろうな、って思ったんだよね」

まずセンスは見られなかったし。まああの時の三人しか魔力を持った人は見てなかったけど、それでも。

あまりにも魔力がチグハグすぎて。

体から出ている魔力は一定しておらず、まず大体の人がしているであろう無意識的な魔力の出力すらできていなかった状態。

 

「あ、あはは…」

まあ具体的な比較対象が1000年前の人だから微妙ではあったけど、と付け足して続ける。

 

「2回目のとき。一週間ずっとやってこれかぁ…って感じだったよね。一月以上かけてやっと初級魔法扱えだした時にはやっとか…って感じだったし」

 

「まあ…普通の人なら魔力は感覚的に扱えるって言いますしね」

…それは知らないけど。

多分無意識的に何となく分かるんだろう。

 

「まあ、私の教え方が正解だったのかはわからないけど。まあ、よくこの5ヶ月強でここまで成長したね」

私の魔法の教え方が合ってたかなんて分からなかった。今でもわからない。人にモノを教える経験なんてそうなかったし、そもそも似合ってないと思ってた。まあ最初の方はとりあえず暇つぶしの面が大きかったしね。

…今でもちょっとはあるけど。

 

「…まぁともかく、ここまで来たらやれることをやるしかない。頑張ってね」

 

「っ、はい!」

元気のいい返事。

それを耳にして、今日の練習は終了とした。

 

 

それで良かったのが悪かったのかは、分からないけど。

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