並び立つすごい数の冒険者。
総勢は100を超えると言われてたけど、これは…150人位いるか?
「よ、レオン」
「あぁグレイ、シオン」
いつもの
ちなみにシオンは三人でパーティーを組むときのリーダーだ。
「やっとお前の最終目的だな?」
「…あぁ」
グ、と服の上から、首にかけてる師匠に貰ったお守りを握る。
…やっと、だ。
「…そろそろ出発だ。2人共、行くよ」
シオンの声に従ってギルドの前の人だかりの中に入る。と、一つ、太い声が響いた。
「予定時刻だ!これより!魔界侵攻及び魔王討伐作戦を開始する!」
率いるのは、ギルド長。もう50が近い人だがその剣と魔法の腕はまだまだ成長してる。
「魔王の弱点及び攻撃の特徴はしっかり確認してきたな!?我々の目的は一つ!魔王の討伐だ!これより、前回の討伐隊の残してくれたマーキング地点へのポータルを開く!魔界から魔物が溢れぬよう、一方通行のポータルだ!細かい指示は俺が適宜出す!くれぐれも!無駄に命を散らせることのないように!!」
その号令に、冒険者たちの戦鬨の声が響いた。
俺も、周りの人と同じように、使い慣れた剣を一度抜いて空に掲げる。
絶対に、倒す。
最終俺じゃなくてもいい。だがせめて、その助けにはなってやる。
ギルドの敷地の前にそびえ立つ、門にギルド長が触れて魔力を流し込んでいく。
普段はギルドの象徴となる門に、紫の煙がどんどん満ちていく。
門の間の空間が完全にその煙で満たされた時、ギルド長はこっちを向き直して声を上げた。
「では…!行くぞ!」
その声を号令に、ギルド長を戦闘に次々と冒険者が門を潜っていく。
「行くよ、グレイ、レオン」
「ああ」「おう」
シオンの声に合わせて俺達も門を、くぐる。
一瞬視界が歪んで、次の瞬間に妙な浮遊感。
すぐに消えたその後に俺の眼の前に広がっていたのは…街だった。
暗い雲が立ち籠めていること以外は、普通にそこら辺の街と変わりない。
「これが…魔界…?」
「魔界っつっても元は人間の街だからな。魔物の進行で放棄された後、魔力が充満しすぎた空間の総称なんだよ」
ちなみに人間もあまり長いこといると危険なことになるぜ、と全く知らない冒険者の人に教えてもらった。あざす。
「魔界には魔物がかなりの数湧いている。だが各自戦闘は最小限に!
進行!の合図と共に、編隊を組み、おびただしい数の冒険者が進んでいく。
「…これどこに魔王がいるとかわかるのか?」
「A
「魔王だ。気を抜くな!」
レベルレッド…赤だ。魔王級の魔力の持ち主…とは言われているが、そもそも魔王級というのが魔王しかいない。となると…そこにいるのは紛れもなく魔王。
ぐ、と全身に力が入るのを感じる。
だめだ、緊張しすぎるなと師匠にも言われた。深呼吸…常に万全の状態で戦えることを前提としろ…!
目を細くしてわざと呼吸をゆっくりに、自分の心音が聞こえるくらいにまで集中力を引き上げ、魔力を体に回していく。
「見えたぞ!」
その言葉と同時にバ、と編隊が変えられる。およそ50メートルといった所に、ヤツはいた。
黒い身体をして頭から角のようなものが生えている、人形のソレ。しかし腕は4本あり、体は3メートルはあろうと見える。魔王だ。
魔王を前として、すべての防御者を前に、その前に剣士、重戦士。最後方に魔法使い、治癒者。
ズズ、とその実体がこちらを向いた。赤い、4つの目がこちらを見据えた。
『何だ、?』
…!反応した…!
チラ、とギルド長の方を見る。
まだ合図は出ない…と思っていたその瞬間。
「開始!!」
その声と同時に魔王を取り囲むように散開する。
防御者は魔法使いを守り、剣士や重戦士といった近接特攻部隊が突貫する。
『煩わ、しい、!』
ズア、と全方位にばらまかれる威圧感…!魔法攻撃か!
何百年と調べられてきた魔王の特性や攻撃…それらの書類や話から当てはまる最適解を導きつつ、考えられる攻撃を予測して回避行動と攻撃行動を織り交ぜて攻撃していく。
「魔法隊!」
後方でギルド長の声が響いた。
魔法攻撃が開始するのか!
魔王に最も効く魔法は火や電気といった光に関する魔法。特に火の魔法がよく効く。
飛んでくる大規模の炎の魔法を見つつ、俺も身体強化魔法を使いつつ魔王に攻撃を仕掛ける。
が。
『ふ、ん、!』
衝撃波が生成されて接近すら許されない。幸い直接的に傷はつけられてない。
くッ、そ…!
周りの人たちも同じように吹き飛ばされてる。人によっちゃ打ちどころが悪いと死ぬ…!
『虫、如き、が…!触、るな、!』
「ッらァ!」
魔法の行使の直後には若干の後隙が生まれる…それは魔王でも変わらない…!
吹き飛ばされて地面に足をつけた直後に今瞬間的なかけられる最大出力で身体強化をかけて急接近、剣を振りかぶる。
それもガン!と音を立ててその紫の爪に剣は防がれた。だが…!
「
まさか俺が魔法使うなんて思わねぇだろ!!至近距離でのお前の大嫌いな炎魔法だ!
本来魔法は魔導書と杖がないと発動できねぇ。だが俺には師匠特製の手のひらサイズの魔導書と剣がある…!
剣に魔力を通して杖みたいにすれば問題なく発動できる!
『きさ、ま…!
顔面に思いっきり直撃したはずの
と、ザザッ!と音がして黒い鋭い帯みたいなのが俺のいた所を通った。知ってんだよ、防御無視の貫通魔法攻撃!
「近づかれたくないみたいだな?」
瞬間的な身体強化だけなら魔力消費もそこまで多くない…こちとらこれまで全身にギリギリの量かけて特訓してたんだ。必要な瞬間に必要な箇所だけ使う程度訳ねぇ!
「はっ、と、ほっ…やァッ!」
次々飛んでくる黒帯を避けつつ再度前進、イライラしたように周りの剣士の人達を薙ぎ払って俺の方に指を向けた。
同時に展開される6つの魔法陣。
『
黒い雷が一瞬で眼の前に迫ってきた。本能的に固まりかけたが脊髄反射で上に飛んで躱す。と、六つ中一つの魔法陣がこっちを向いていた。
…あぁ、よく考えてみりゃ飛んできた雷は5つしかなかったようにも思える。読まれてたってか…!
「ッ、が、ッ…!」
咄嗟に身体をかばうように横に構えた剣のど真ん中に黒い雷が衝突した。
勢いを殺しきれず、そのまま体が吹き飛ばされて…世界が一、二回転して、背中に鈍い衝撃が走った。
視界には黒い空が映っている。
「だ、大丈夫ですか!」
声に気づいて慌てて起き上がると…どうやら自陣の向こうまで弾き飛ばされたらしい。治癒者と思わしき少年が走ってきていた。
「ああ…ってェ、」
腕が痺れてるな…直撃してたらホントにヤバかった。
「回復します…!」
と、少年に触れられた所から痛みのしびれが消えていく。
…ふぅ。
「ありがとな」
それだけ伝えて立ち上がる。
いける。俺の力が少しは通用してる。
再度跳躍、前線に復帰しに行く。
と。次の瞬間。
『小賢、しい、!』
魔王が手を地面から空へ高く掲げたと同時に足元に黒い魔法陣が展開、地面から無数の黒帯が空を突き破っていった。何人か冒険者が巻き込まれそうになってたが、見えた限りでは避けられてたみたいだ。
「ッ!」
帯の合間を縫って走る。走る。
足のみに身体強化をかけてできる限り早く魔王の元へ…!
『!戻っ、たか、!』
「はァッ!乱剣!」
隙と思える場所全てに斬撃を通す。身体強化をかけることで技の一撃一撃の間の隙を限りなく0に近づける。
『ッ!』
手刀でそれらを弾いていた魔王だが、一撃、受けきれずに手を弾かれたのに怯んだのか、一瞬仰け反った。
その隙だ。
自分の鞘に剣を戻して体を丸める。
腕、足、胴、5箇所に同時に身体強化をかけられるだけかける…!
「抜、剣!!」
振りかぶる力、胴の動き、足への圧力…相手の体制の崩れた隙を狙って撃つ、最速の剣技…!
それは、しっかりと魔王の腹に突き刺さった。
『ナ、…!?』
「まだ、まだァ!」
足に身体強化をかけて回り込む、怯んだ隙に反対方向へ…!
「牙突!」
ロクにちゃんとしたダメージを受けたことすらなかったんだろう、痛みに怯んだその背中に、思いっ切り剣を突き出す。
突き立てた剣に、魔力を通す。
「
ゴォ!と剣の刺さった箇所から中級の炎魔法が立ち昇る。
どうだ!ちょっと遠隔での魔法の発動!
『っ、…なる、ほど』
バチ、と剣が振りほどかれてちょっと距離を取る。
次の瞬間、地面から生えてた黒帯が魔王の体に纏わりつき始めた。
な、何だ…!?何しようとしてんだ…?こんな行動報告に無かったぞ…!?
周りにいる冒険者達も明らかに動揺してる…まさかここに来て本領発揮…とか言わねえよな…?
と、黒帯が繭のような形を作り、直後にそれが内側から弾け飛んだ。
そこにいたのは…黒帯を体中に巻き付けて細身になった、魔王。
…確かに、体は細くなって背丈も小さくはなってる。まあそれでも2メートル位はあるが…それよりも。
圧が、違う…!
『訂正しよう。虫の中にも畜が混じっていたらしい…お前
刹那。
周りにいた冒険者たちを取り囲むように地面から魔物が湧き上がってきた。
『その他は我が相手するまでもない…お前達、そこにいる人間以外は好きにせよ』
…やっべぇことになった気がするぞこれ…