不朽の魔女   作:謎の通行人 δ

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幾度となく交差する剣と爪。

魔王が変形してからもうまともに一回もダメージを入れられてない。

周りの冒険者達は次々這い上がってくる魔物の処理で手一杯、魔法隊もそっちに与しつつの攻撃だから威力も頻度もかなり落ちてる…!

 

「ッ、!」

危なっ!

腹をえぐりに来た黒帯に気づかなくて、反射的に剣で弾きつつ一回少し距離を取る。

…やべえ、あの帯はホントに掠るだけでも不味い。弾くために沿わせた剣の一部が抉られてる…!

 

『なかなかやるな…』

 

「そりゃ…どうも!」

接近、身体強化をふんだんに使いつつダッシュ、右へ左へフェイントも混ぜながら移動して攻撃の隙を探す。

すれ違いざまに剣を振り、飛んできた黒帯を弾き、時折炎槍(ファイアランス)やらの魔法を駆使しつつ翻弄、ずっとこれの繰り返し…魔王も魔王で若干小柄になって身体能力が上がってるのか、こっちの動きに合わせながら爪や魔法、黒帯なんかで包囲しながら攻撃を仕掛けてくる。

とそんな時、隙を見つけて剣を振りかぶった所にぐるり、と魔王の腕が関節を無視したありえない動きをして弾かれ、体制が崩れた。

不味っ…!

 

『、なっ!』

その時後方から飛んできたのは、苦無に似た投擲武器。

思いがけない攻撃に驚いたのか防御より回避を優先した魔王に、隙が生まれた。

…後ろの方を見ると、グレイが魔物の相手もしながらこっちに援護してくれたみたいだ。ありがてぇッ…!

 

「抜剣…!!」

仰け反ったその体に剣を叩き込む。

ギイィィン!と明らかに肉体に刃があたったとは思えない音を鳴らして刃が止まる。

だが…!

 

「身体強化……!乱剣!!」

そんだけ懐に接近できりゃこっちのもんだ!

怯んだその体に数十の剣を突き立てる。

 

「おらァァあ!」

 

『ぎ、ッ…!』

魔王の体に纏っている黒帯にも触った所から剣が壊されちまうから、その間を縫う。

確かに大したダメージにはなっていない。現にほとんどの剣は肉体に刺さらずに弾かれてる。

だが、確かにダメージは蓄積されていたようで、一撃入れた脇腹の表皮の一部がひび割れたように傷がついた。

 

「そ、こ!」

 

『グッ!』

ひび割れた傷に思いっきり剣を突き立てようとして…当てられるとまずいと思ったのか魔王は一回跳躍して距離を取ろうとした。

させるか!

 

「牙、突!」

足に身体強化のリソースをすべて割いて一気に距離を詰めながら狙いを定めて…!

 

『レオン君』

 

「、は?」

突然聞こえたその声に、一瞬体が硬直する。

その隙を、突かれた。

 

「、が、ッ!」

地面から飛んてきた黒帯に反応しきれず、咄嗟に回避行動は取ったものの脇腹を抉られる。

っ、つ…!

 

「何、だ…!」

バランスを崩して地面におちて、踞る。

んだ今の…師匠…!?

見上げたその先には…師匠がいた。

…家の壁にかかってた綺麗な杖を、俺に向けて。

 

『ごめんね、色々あって』

杖の先に魔法陣が展開される。…見たことのある魔法陣。炎槍(ファイアランス)だ。

 

『君に魔法を教えてる間は…ま、気は紛れたけどね。でも結局退屈なことに変わりはなかったよ。暇つぶしと言うにもお粗末だったよ』

声も、姿も、何も変わらない。

強いて言えば目がいつもより死んでるくらいか。…冒険者をしてればたまに対峙する、相手に対して本当に何の関心も持っていない目だ。

 

『適当にあしらおうとしてもしつこいし、物覚えも悪い。そうだね…暇つぶしと言うより苦痛にも近かったか』

…分かってる。

こいつは師匠じゃない。多分魔王が作った幻影か何か…師匠が言ってたように、あの人から生まれた魔力の塊らしいから何かしら記憶みたいなのがあるのかもしれない。もしかしたら俺の記憶から引っ張ってきてるのかもしれないが……どちらにせよ、本物じゃないのは確かだ。だが…

ソレの言ってることが本当だから。

もしかしたら、師匠の心の内をこいつが代弁しているだけなのかもしれないと思うと、急に怖くなってくる。

 

『まあ本当の意味での実力を間近に見たことがなかったから詳しくは言えなかったし、言ったところで無駄だったんだろうけど。今見て思うよね。あんなに長く教えて()()()()かって』

っ、!

 

『魔法への適性は本当に無いね。ちょこまかと使ってた炎槍(ファイアランス)だって、家に撃ったものと大して威力も変わってない』

 

『まあよくここまで戦えたねってのは思うけど、まあその程度じゃ倒すのなんて無理でしょ』

 

『諦めときなよ、君には向いてない』

…分かっ、てる…

だが…師匠の声で…姿で…んなこと…!

 

『…最後に言っときたい事はこんなところかな、それじゃあ最後にちゃんとした魔法を見せてあげる。人ごときの魔法じゃなくて、本物の魔法を。…炎槍(ファイアランス)

一瞬、杖が光った。次の瞬間束ねられた炎が見えて…目の前に出てきた青白く光る壁に阻まれて消えた。

え、と思って一瞬伏せた顔を上げると…目の前で師匠の姿に光弾が貫通して、揺らいで消えた。

一瞬目を見開いたその影から黒い靄が飛び出て、少し後ろで形を取り直して魔王の姿になった。

 

…は?

 

「それは、私の声だよ」

聞き慣れた、声。

 

「魔力も、まあそうか」

たつたつ、と地を踏む音がする。

 

「…精々手の込んだ()()()があること無いこと…」

なんで、ここに…貴女が…!?

 

 

 

「私の弟子に、余計なこと吹き込まないでくれる?」

 

 

 

閃光が飛んで、魔王の身体を貫いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ここか」

空を飛んで到達したのは、黒雲が立ち籠めたいかにも空気の悪そうな所。

でも正直それ以外は至って普通の街。

 

「ここに魔王が、ね…」

一度地面に降りて周りを見回す。

地面は普通のコンクリート…ひび割れてはいるけど。周りにあるのは荒廃したコンクリートの塊。多分元々ビル群とかだったりしたのかな。と、

 

「っと」

横から飛んできたのは牙のやけに長いコウモリの群れ。…型の魔物。

 

「そっか、確かに言ってたっけ」

魔物に侵攻され尽くした土地、魔界の空気には魔力がかなり高い濃度混ざってるから魔物が出現しやすくて、また消えにくい。

 

「…ま、でもその程度か」

イメージしながら杖を振るう。

次々と火球が飛んで見事命中、霧みたいなのが飛んで死骸が残った。

…ありゃりゃ。

 

「…せめて火葬してあげよう」

魔物とはいえ元はただの動物。敵かもしれない相手に対して先に襲い掛かるのは本能だ。それ自体に罪はない。

こっちも正当的に防衛しただけだけど、だからといって死骸を放置するのは良くない。

ボ、と昇った火はその骨すら残さず燃やし尽くして、でも地面を少し煤けさせるに留まった。

 

…さて、レオン君達はこの先か。少し急ごう。レイトナ、行くよ。

 

 

──おっけー!

 

 

もう一回浮いて道を進んでいく。

ここらへんは…元商店街っぽいかな?意外と形が残ってるものも多いね。

そんな事を考えていると、ちらほら人が見えてきた。…そういえば100人超えの人数が魔王討伐に参加してるって言ってたっけ。

そんなことを考えながら進んでみると、どうやら治癒者(ヒーラー)の人達らしい。負傷で後衛に回った人たちを癒やしているのが見えた。

…そういやこれ真っ向から行ったら不審がられそうだよね…いやもう良いや。どうせ今更だし。

 

また地面に降りて近づいてみると…

 

「っ!」

どうやら重症者がかなり多いようだ。私に気づかないくらい集中して治癒を施してる。…これは、想像以上に不味いかもしれない。

 

 

……ニーナ、いける?

 

 

──任せて

 

 

「あの」

 

「は、はい!って、はい!?」

声をかけた男性の治癒者さんは綺麗な二度見を決めて返事をしてくれた。まあそりゃそうなるよね。

 

「怪我人ってどこらへんに集められてるとかありますか?」

 

「え、あ、一応ここらへんに集められてるけど…って嬢ちゃんどうやってここに来たんだい!?」

 

「細かいことは今はいいです。ここらへん…となると今のところ見える範囲の方で全員ですね?」

 

「あ、あぁ…」

それをきいて首からラジオを外す。

 

 

……お願いね。

 

 

次の瞬間、ラジオを中心に半球状のドームのようなものが展開された。

 

「えっ、は!?」

どうやら、この範囲の中の人を治す、というものらしい。広さは半径10メートル程。十分すぎる。

 

「こ、これって治癒領域(ヒーリングエリア)…」

なんか言ってたけどとりあえず無視。ここの治癒は()()()()()()()前線へ進む。

 

どうやら魔法使いを防御者が守りつつ前線で剣士たちが近接特攻、といった感じらしい。

でも魔物が次から次から湧いて出てるせいでまともに攻撃すら出来てないように見える。

 

「…よし」

ならこうか、と頭の中で魔力を回す。

直後、地面が凍りつく。魔物のいる場所は氷柱がその体を貫いて結晶にさせる。…おっと、この魔物は死骸が残らないのか。素体無しで魔力だけで出来た魔物かな?さっきのコウモリと比べてもかなり脆い。

周辺にいる人は避けてるからノーダメージなはずだし、魔物は地面から生まれてきてたみたいたから氷で覆えば生まれない。生まれたとしても氷と地面に挟まれて勝手に圧死してくはず。

 

周りの人たちが動揺しているのを横目にその隙間を通り抜ける。

……全然気づかれないんだけど…と思って自分の手を見てみたところ…なるほどね、透けてるや。バレて後々面倒にならないように、ってことかな…ニーナ、そういうところだよ。

 

更に進む。

 

見えた。少し開けた場所にいる見慣れた人と、感じ慣れた魔力の塊。

 

と、向こうに私の姿をした幻影のようなものができていた。

 

何をして…と思ってたけど、ふと見回してみて分かった。

………あぁ、そういうことか。だから、ここに魔王がいるわけか。いや、ならなんであそこじゃ…あぁそう言えば私が消したんだっけ。

そして残った記憶と魔力と歴史が重なってあんなものを作り出せたってわけね。

 

…少し、腹が立つ。

 

「…は」

ご丁寧に杖まで再現している私の幻影は魔法…炎槍(ファイアランス)をレオン君に打とうとしている。

…させるわけがない。

 

ついでに雷をイメージして打ち出してみたら幻影は一瞬でかき消えた。

魔力の量まで再現しようとしてたみたいだけど、元がそれじゃそりゃあ無理だ。

その上あること無いこと吹き込んで…戦意を喪失させるのが目的か何なのかまではわからないけど。

形作り始めた靄に対してもう一発雷を飛ばす。

 

 

「私の弟子に、余計なこと吹き込まないでくれる?」

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