長い廊下を歩く。隣にはレオン君、その反対側にへギルド長さん。
これはちょっと予想外だ…
要するに、「国のトップとの会談」なわけだし。
…あの後。混乱する冒険者達に事情を説明して余計に混乱状態になるとかいうことがあったりはしたけどとりあえずギルドの方へ戻って、一日休息を取って。そしたら招集がかかって、討伐を報告しに行くところ。…あと、私についてかな。
「…あの、エレオさん。2つ聞きたい事があるんですけど…」
「?何?」
「えーと…エレオさんって元々創成魔法しか使えないって言ってたじゃないですか。なのに、治癒とか強化とか探知とか…何でできたんだろうなぁと思いまして」
「あぁ、それはね」
私は確かに俗に言う創成魔法を扱う魔力しか持ち合わせてない。でも、それと同時にレイトナ、カーミラ、ニーナも独自の魔法を扱うための魔力だけを持ってた。
みんなの持ってた物が手元にあったから魔力の質を理解できて、だからその「魔力そのもの」が既知のものとなったから創成魔法で別の性質の魔力を作り出すことができた。
…正直賭けではあったけどね。
そんな事を伝えると、ものすごく微妙な顔をされた。あとギルド長さんの方からもマジか、みたいな顔をされた。解せないなぁ…
「…魔力で魔力を作るって…なんかすごいですね」
「まあ、できない事はあんまりないと思ってるよ」
で、2つ目は?と聞くと、逡巡してから彼は口に出した。
「あの…俺の事、弟子って言ってました?」
「不満?」
「いっ!いえっ!ですけど、なんか、認めてくれた…って事でいいんですかね?実感があんまり湧かなくて…」
苦笑いしながら頭をかく彼。
「まあ、それこそ創成魔法は合格と言える代物じゃないけどね」
「うぐっ」
あ、軽めのジャブのつもりが割としっかりしたボディーブローになっちゃったみたい…ごめん。
「でもね、身体強化の一点で見ればもう十二分な練度だよ。魔法にも得手不得手はあるだろうし、そもそも剣を扱う上で創成魔法系は正直あんまりいらないかもね」
それより身体強化でゴリ押されたほうが怖いと思う、と付け加える。
まあトリッキーな戦い方を望むのならそういう魔法も使いつつ奇襲と搦手を交えて戦うやり方が合うんだろうけど、レオン君みたいなタイプならもう真っ向から突っ込んだほうが多分強い。
「…ま、素人目で見て、だけどね。戦いとかに慣れてる冒険者の人から見たらまた別視点かもしれないけど…」
チラ、ともう片方の人…掘の深いギルド長さんの方を見ると、んんっ、と喉を鳴らしていた。
「…ま、正直お前の剣の腕は周りから見ても異常なレベルだ。むしろ今まで身体強化も無しにAランクまで上がってきたのがおかしい。それなら更に上乗せされた身体強化の方が強いだろうな」
魔法は魔法使いに任せとけ、とため息混じりに言うギルド長さん。
けど話じゃギルド長さん、剣も魔法も使うって聞いてるんだけど。
と、どこか緩いような空気を流しながら高そうな絨毯を踏んで廊下を歩いていると、大きな扉の前の前についた。
「ここだな。…レオン、一応言っとくが礼儀は最低限しろよ。お前割と失礼な所あるから」
「さ、流石に大丈夫っす」
と、若干息をついてギルド長さんは3回ノックすると、ギギ、と重い声を上げて両開きの扉が自動で開いていく。わお。
「ようこそいらっしゃいました。こちらです」
使いの人らしき男の人について、先に進んでいく。
その先には、昔何処かで…おとぎ話かなにかで見た事があるような椅子に座った、壮年の男性が座っていた。
「よく来てくれましたね、アレクさん。そして…そちらが魔王を討ち取ったというレオンさんという少年ですか」
「は、え、いぇって!」
「そこははい、で良いんだよ」
咄嗟に否定しそうになった、彼の腰を小突く。…次はその妙な弱気をなんとかしようか。
と、王様?というべきなのかな。まあこの国自体別に絶対王政ってわけじゃないんだけど、まあ立ち位置的には王様、か。来てるのも別に豪勢な服って言うわけじゃなくて普通にスーツだし。
と、若干苦笑いしつつ次に目を向けたのは、私。
「…そして、貴女がエレオさんですね」
「はい、エレオノーラと申します」
言いつつ礼をする。
優しそうな人だ。…青の目が──色こそ違うけど──何処かニーナと重なった。
「そこまで畏まらなくてもよろしいですよ。さて、この度は魔王討伐という大偉業、大変お疲れさまでした。…どうぞおかけください」
く、と彼が指を曲げると同時に部屋の端から椅子が三脚飛んできた。…わたしの後ろには、小さめの椅子が。
失礼します、と言ってから椅子に座る。隣から「師匠って礼儀ちゃんとしてるんだ…」とか言う声が聞こえてきたからとりあえず彼の服と背中の間に小さめの氷を作っておく。小さくひっ、と声が上がった。ギルド長さんにも王様にも聞こえてはなかったみたいだけど。
なんか日に日に遠慮なくなってない?気のせい?
「…さて、今日集まっていただいたのには2つ理由があります。一つは報奨の件。魔王討伐へと参加された冒険者達、及び今までにも参加、協力してきた方々へも無論褒章を渡す予定ですが、特に直接、しかも討伐の大部分を担ったレオンさんには個別での特別なものを…具体的に言うなら」
「ま、待ってください!」
ガタ、と椅子を鳴らしてその声を遮ってレオンが立ち上がった。ちょっとびっくりした。
「…それは、違います。それなら、俺よりも師匠が…エレオさんが受け取るべきです」
「…ほう」
す、と王様の目が細くなる…って!
「ちょ、レオン君何を、!」
「今回の魔王討伐作戦、師匠が居なければ死傷者多数の上、敗北していた可能性も…いえ、ほぼ必ず失敗となっていたに違いありません」
「…そのことについてが、彼女を呼んだ2つ目の理由なのですよ」
ふっと王様は目を閉じて、こちらに目を向けた。
「…エレオさん、ですね?魔王があなたから生まれた、という発言の意味…教えていただけますか?」
「!それはっ…!」
「レオン君、今聞かれてるのは私だよ。落ち着いて」
今にも飛び出しそうなレオン君を抑えて、一歩前に出る。
「どこまでご存知かは分かりませんので、1から説明いたします」
できるだけかいつまんで説明する。
魔力、魔法の祖としての私のことから、今日に至るまで。そして…
「先日、直接赴いて。魔王とは、あの場において処刑された魔女たちの残留思念…魂、と仮称しますが、それと魔力が混ざり合うことで生まれた魔法生命体である、というのが私の見解です」
体感にしておよそ3分程度。その話を聞いて、王様は眉間にシワを寄せて視線を落としていた。
「…やはり、そうでしたか」
「、やはり?」
返答が気になって聞いてみたところ。
魔王討伐が完了したとの連絡を受けて調査団として直属の魔法使いを数人派遣、色々と調べていたところ、魔界の地下にかなり形に残った施設を発見したという。
色々と探ってみたところ、かなり破損してはいたもののデータ端子と思われる、USBに近いものが見つかったのだと言う。
それを解析してみたところ、内部に入っていた情報はまさに今私が話した
「1000年前の魔法使い、エレオノーラさん。この程度でなにかが変わるとは…それこそ、存在するはずだった命たちや貴女のご友人が返ってくるわけでもないことは重々承知しています。が、この国を纏め、統治する立場の代表として、そしてそれでいて何も理解できていなかったこと、今一度謝罪させていただきます。本当に申し訳ありませんでした」
「…そうですね。とはいえ貴方に謝罪されたとて、あなたはほぼ無関係だったんですからどうということはありません。…ですが、この国の行動が回り回って自国の首を絞めたのがこの結果だと、あえて言わせていただきます」
キツい事を言うようだが、正直、理不尽だとは分かっていても思うところは大きい。
…そのうち一つは、こんな人が当時の政治家の頭であったならあんな事も起こらなかったはずなのに、なんていうもうどうしょうもない考えだけれど。
「その通りです。…私としましては、貴女の望みをできる限り叶えたいと思っております。何かございますでしょうか」
!
そう言われて、一瞬悩む。
…逆に言えば、悩んだのは一瞬だけ。
「一つだけ、要望があります」
───
「…師匠、本気ですか?」
「?…あぁ、うん」
会談はつつがなく終わって。
私の要求は、割とすんなり通った。
というか、先方からしても「え、そんなこと?」みたいな感じだったみたいで、逆にレオン君とかからは「マジで?」と言われた。
…まあ、ねぇ。
意外にも
まあ、試験内容は全然問題ないかなとは思うけど。記憶力はかなり良い方だし…というかこれも魔力がなにかしてるのか、ものを忘れにくいから問題なし、魔力量は言わずもがな、魔力が見える体質からも問題ないでしょ。
いやぁ…ねぇ。
1年前の私に会いに行って、「私働くことになるよー」なんて言われても絶対信じないと思うけど…何があるかわからないものだね。
「ま、それにしても革新が起こるだろうなぁ…教科書の内容が半分くらいまるまる変わっちまう」
「確かに。そこら辺どうするのかな…」
そういや魔力とか魔法って元々は神話とかお伽噺みたいな成り立ちになってたんだっけ。
どうするんだろ…
…ま、なんとかするか。私がぐちゃぐちゃと考えることじゃない。
■
カツ、コツ、と靴を鳴らして長い道を進む。
3ヶ月くらい前の試験は無事合格…というか合格以上の成果が出た。そこから2ヶ月の研修を経て、無事免許を取得。
ということで、今年…というより今年度から無事ニートから昇格して就職したわけで。
…本当に、長い人生何が起こるかわかったものじゃないね。まさか私がここに立つことがあるとは。そもそもここに入るのすらもう1000年近くぶりだ。
しかも、よくよく考えてみれば元々暇つぶしでやってたのを本職にする事になってるわけで。
はーまた変なところでつながってるや。
そんな事を考えながら私から見て大きなドアを横にすべらせて入る。
横には、何十冊と束ねられた本が浮いている。
その部屋に入るやいなやその部屋の中から様々な視線を向けられた。
その多くは混乱や疑念。
…似てるなぁ、と思う。だけど負の感情は湧いていない。まあそりゃそうだ。この場に完全に子供サイズの私がいるのは流石に混乱するだろう。
その程度は想定済み。
足を揃え、前を向いて子どもたちの顔を全員分確認し、欠席がいないことを確認。束ねていた教材の紐を風で切って全員の机の上に飛ばす。
「エレオノーラと言います。こう見えてももう4桁は生きています。本日よりこのクラスの魔法史、及び魔法陣学、実践科目における教科担任となりました。…それでは、
───授業を始めます」
もう、忘れないように。
一応完結です。
が、まだちょこっとやります。