不朽の魔女   作:謎の通行人 δ

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(極彩)

二ヶ月経った。

大体一週間に一回、きっかりと一定のペースで来てたからそれに応じて毎回レオン君の魔法の練習に付き合ってた。

そして今回、大体七回目の練習───

 

 

「しっ、え、エレオさん!エレオさん!できましたよ!やっと!!」

彼は二ヶ月もの時間をかけてやっと下級火魔法、火球(ファイアボール)を発動してみせた。

な、長かった…まさかここまでかかるとは…

魔力の認識からまあ一ヶ月もあれば問題なく行けるでしょとか思ってたらまさかの二ヶ月もかかるとはね…

まあでも一回成功したらあとは魔法陣が複雑になっていくだけだからまあなんとかなるかな。

 

「…うん、見てたよ。できたね」

いよっしゃあああああああ!と草原の上で両腕でガッツポーズを掲げる彼に言う。…うん、聞こえてないね。

……というか、ちょっと離れたところに感じたことのない気配があるんだけど。あの森の方。まーとりとめて気にするほどのものでもなさげだけど…気にするほどのものでもないならいっか。

 

 

 

「…一回自分で発動できたから、大体感覚は掴めたはずだよ…あとは魔法陣を難しくしていくだけ」

少しはしゃいで、やっと落ち着いた様子のレオン君に言う。

うん…まあ今まで使えなかったのがやっと使えるようになって嬉しいのはわかるけどね?流石にはしゃぎすぎて川に突っ込むのはやめよう。止めなかった私も悪いけどさ。

 

「…まあでももう山は越えたところだし、街で魔導書と杖でも買うといいよ…後はひたすら慣れるだけ。魔力の操作練習も欠かさないようにね」

私の持ってるこれをあげてもいいけど、最初に言った通りあんまりきれいなものじゃないからね…衛生観念上よろしくないかと。見つけた時泥やら何やらでドロッドロだったし。

 

「分かりました!ありがとうございます!」

 

「…うん」

それでこの日は終了した。

彼が帰ったあとの家の中で伸びをしながら考える。

 

 

うーんこれで特訓も終わりかぁ。ちょっと手持ち無沙汰になりそ………

 

 

その瞬間、一瞬視界に色が()()()

濃いオレンジのレンガ、赤や青のビン、開きっぱなしの本の濃緑の表紙、木目調の薬棚。

同時に、脳裏に映った紅い炎。

 

 

…違う。

 

 

元々こういうのはしょうがなく引き受けたはず。

惰性で、適当に、受けてたはず。

 

だから、楽しむなんてのは、違う。

 

 

 

違う、はず。

 

 

 

 

次の瞬間には、視界がグレーに戻る。

 

 

 

 

………私、は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────

 

「あの、レオンさん」

師匠の家からギルドに戻って、依頼達成の確認をしてもらっている最中受付の人に呼ばれた。

 

「その…少し差し出がましい事かもしれませんが、タイムタートルの討伐、3Lの血液採集にしては時間がかかり過ぎではないかと…」

………不味い。

いや、そうだよな。そりゃそうなるわ。

師匠には周りに悟られるなって言われてたけど、前からバレるかもな、とは思ってはいた。俺嘘バレやすいらしいし。けどまさかそう切り出されるとは…

 

「月に数回ほど、普段のレオンさんならそこまで時間がかからないはずの依頼に数時間かかっているものもあります。調子の悪い日などはあるでしょうし、多少なら別にギルドとして変に干渉することはないのですが、その…今回はギルドとして何があったのか確認しなければならない程伸びていまして…」

タイムタートルの討伐。

俺が今回カモフラージュ用に受注した魔物だ、毎回こういう感じのを受けてるが、タイムタートルの討伐推奨ランクはD。討伐推奨ランクは「まあこのランクなら確実に倒せるよね!」というレベルの話で、Aランクの俺がそんなに手こずるわけがない。なんなら一撃普通に剣当てたら終わるし、3Lとかいう量であっても、まあ十体も倒せば全然間に合うわけで。実際討伐だけなら20分あったら終わってたしな。

まあ…アレだ。師匠の家でちょっと話をしてたら1時間をちょっと過ぎてたりとか、そもそも距離が遠すぎて片道2時間強かかってたりとか、初めて魔法が使えたのが嬉しくて帰り道にちょっとした魔物に使ってみたりとか、そんな寄り道もしてたから今回は依頼達成までの時間が六時間とかいうバカみたいなレベルまで伸びちまったわけで。

そんでAランクまで上がってるやつがタイムタートルごときに六時間もかかってるとなるとそれはそれで問題になってくるわけで。

 

「あー…いや、そのぉー…」

ど、どう言う?

魔法が使えるようになって嬉しくて魔法の練習してた…とするなら多少の注意で終わるだろうけど急に魔法使えるようになるわけ無いし、俺の魔法の才能の無さは割と有名になってるくらいで。まあ街中の魔法使いに弟子入りに行って全部に断られるとかいう事してたら有名にもなるだろうけど…ってそうじゃなくて。

 

やばい、死ぬほど目が泳いでる自覚ある。

 

と、

 

「お?レオンどうしたーってマジでどうしたお前」

よくパーティー任務を組む友人のAランク探索者(シーカー)のグレイがいた。特徴は絶妙な長さのホットドッグみたいなリーゼント。

ってかまずい、こいつはほんとにいよいよ不味い!こいつ謎に察しが良いし面白い方に流されるタイプだから絶対面倒になる!

 

「あーいや、その…依頼の達成までの時間が…」

 

「ああ、今日の草原のやつか」

 

「!!?」

ナンデ!?こいつ何で!?なんで知ってんの!!?

 

「そう…げん?」

と、受付の人が首を傾げるのに、グレイが答えた。

 

「あー…いや、こいつたまにめっちゃ依頼に時間かかるときあるじゃないスか。んで毎回そん時ソロで受けてるんで、隠密使ってこっそり後つけたんスよ」

ちょっと待てお前!マジでちょっと待て!全然気付かんかったぞ!?いやまあ伊達にAランクじゃない斥候職の隠密ってことか!?これ下手したら俺もう師匠のとこ行けなくなるぞおい!

 

「いやグレイお前ちょっっと待て。一回おまっ」

「そしたらこいつ先の草原で昼寝してたんスよ」

マジでそれッ……え?

 

「え、えーと…お昼、寝…?」

 

「そうそう、あのクソ長い森抜けた向こうの草原で。途中でタイムタートル狩り終わらせて草原で寝てましたよこいつ」

………?

…ん?

 

「あー…そういう…まあ、息抜きとかならまあ…うーん?」

受付の人余計に混乱してる気がするけど、何とか助かった…?

と、横を見ると「説明しろよ?」って目で見てくるグレイが。

……余計に面倒な方に捕まった気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…で?」

 

「いやマジで助かりはしたけど追求しないでくれ」

何とか納得してもらって、ギルドを出てから速攻でグレイに詰め寄られた。

待って今なん?

 

「いや気になるだろ。あんな場所に家あるとか知らなかったしそこで女の子と一緒にいたら尚更」

「ぶふぉっ!?」

何で知ってんのこいつ。

マジで。

 

「Aランク探索者(シーカー)舐めんなよ?隠密と気配隠蔽重ね掛けして尾行、森の出口の木の陰から利目(ききめ)利耳(ききみみ)使ってストーk…ンンッ観察。声はあんまり拾えなかったが外でお前が奇声発しながらなんか暴れ狂ってるのは見えたぞ」

「メンヘラ彼女かテメェ」

まじで何なんこいつ。基本良いやつなんだがふざけが過ぎるぞ。

あとストーキングって自分で言いかけてんじゃねーか。

 

「で?あの子誰なわけ、彼女か?顔はよく見えなかったが一時間位いたろ、あそこ」

 

「路上で話す話題じゃねぇし教えねぇよ」

と、ははーん、と謎に納得したように眺められる。

…こいつッ…!謎にムカつくッ…!

 

「路上で話せない所までヤったか」

 

「『抜剣』ァ!」

なんつーこと言ってんだこいつ!?

腰の剣を一閃振って自慢のリーゼントを額のところでまっすぐに切り落してやった。

仰け反ることも予測してギリギリのところまで剣を近づけたおかげで髪も一緒にぱっつんに切れた。なんか魔力の制御がうまくいくようになってから魔力感知の精度が上がってか、相手の動きとかが何となく分かるようになってるんだよな。

 

「だっ…てっめぇやって良いことと悪いことがあんぞ!?」

「どの口が言ってんだテメェそれこそマジで路上だぞ!?」

そのままギャーギャーと騒いでるとギルド長に怒られました。マジですんませんでもマジで悪いのは俺じゃなくてこいつです。

 

 

 

…ちなみに、なんとか撒いた。

けど家戻ったらなんか玄関前で待ち伏せしてたから気づかれる前に回れ右してギルトで寝泊まった。マジであいつ許さんぞ。

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