不朽の魔女   作:謎の通行人 δ

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(名無)

…夢を見た。

…いつもと同じ夢だ。

…でも、今日は一人じゃない。三人だ。

三人の魔女が、磔に処されている。

 

私の右手には、杖が握られている。一本の木から掘り出したような形で、頭の部分が太くなって鉤爪状に曲がっていて、そこにシアン色の正八面体の宝玉が浮いてる。

 

……笑う顔が、優しい顔が、人形のような顔が、苦悶に染まる。

 

イメージする。

 

──何も考えられない

 

杖を必死に掲げる。

 

──体が、動かない

 

今から水の魔法を使えば、助けられる。

 

──助けられない

 

今十字架を蹴り倒せば炎から脱せる。

 

──逃げられない

 

 

 

知っている。

 

 

 

視界が、暗転する。

 

 

 

「…………」

ノックの音がした。それに答えるように動いたのが間違いだった。

 

『…エレオさん、起きてますか』

……答えるのも煩わしい。

頭が溶けて、思考が沈んで、思考がうまくまとまらな()()()

 

…次の瞬間に、視界の端で爆発が怒らなければ。

 

「……はっ?」

割と素で声が出た。

え?いや…え?

爆発した方はドアの方。

その奥には真新しい、指揮棒のような短い杖と薄い魔導書を構えたレオン君がいた。

 

………は?

 

いやちょっと待って。

…ん?

いや、たしかにドアには鍵かけてたけど…え?は?

 

 

爆発と同時にドアが吹っ飛んで、一瞬陰鬱な考えも全部吹き飛んだ。

 

 

「エレオさん」

ふと声をかけられる。

あーごめん、今それどころじゃないや、ちょっと情報量が多すぎた。

 

「俺は、何でもかんでも知り尽くした神様でもなければ、相手の歴史が分かるほど博識な人間でもありません。ただの平凡な、Aランク冒険者です。ですけど、」

すっ、と一度大きく息を吸い直した。

 

「凡人なりに、考えました。エレオさんが自分のことを普通じゃないって言うなら…普通の人に対するような対処がいらないのなら、普通じゃない行動を取ります」

いやそうはならんでしょ。

え、えー…えぇ?

ごめんまだちょっと混乱状態で全然状況が整理できてないや。だからちょっと待ってくれるとありがたいな。

 

 

 

 

一度突拍子もない事を起こされるとしばらく気分が沈みにくくなるのか、違和感は残るもののそれなりの気分ではいることができた。

 

「……で…このドアどうするの?」

 

「あー…どうしましょう」

どうやら後のことはノープランだった様子。

ということでとりあえずドアの改修工事を。

無論私は見てるだけだったけど。いやこれに関してはレオン君が「俺が完全に一人でやっちゃったことなんで!」って言ってやり始めたからなんだよ。私が意図的にサボってるわけじゃない。

 

「そういえばエレオさん、昼食とかは…」

 

「……私飲食必要ないよ。というか、逆に変に何か食べるとお腹壊したりするから」

 

「えぇ…」

そりゃまあ普通そうなるよね。

どこから体動かすエネルギー取ってるんだろうとか思うけど、多分私の魔力がなんかしてる。

 

「……というかレオン君、ドアふっ飛ばしたの魔法でしょ?…あれだけ扱えるようになったんだね」

と、彼は若干目をそらしながら答えた。

 

「あー…その、あれ一応上級火魔法の炎槍(フレイムランス)なんですけど…」

 

「……人の家に放って良いものじゃないよそれ」

上級魔法使えるようになったんだ、とかは思ったけどそもそも上級魔法は攻撃用魔法で、普通に殺傷能力がバカ高い魔法。

…あれ、でもそれであの威力…?いや、たしかに殺傷能力はあっただろうけど、それにしては弱い気が…

 

「分かりますよ、まだ威力全然出ないんですよね。上級魔法ともなれば巨岩をも砕くなんて言われてますけど、多分巨岩に当たっても弾かれて終わりますよ、あれ」

せいぜい中級魔法くらいですよねーあれ、と苦笑いしながら彼は言う。

自分の威力は大体認識してやったらしいけど…いやそれでもよ。最初に言ったけどうち引火しやすいもの多いから下手すれば火事になりかねないんだよ。

それでまた教えてもらいに来ますね、と言った彼の方を少し驚いて見る。

 

「……あれ、まだここ来る気なんだ」

 

「えっ、破門か何かですか」

いや破門も何もそもそも弟子として認めてないけど。

まあ…そっか。

 

「……条件は変わらずだからね」

 

「はい!」

普段と変わらない反応とテンション。

でも、その目の奥に本気で私の身を案じている色が見えた。現に…

 

「…ですけど、その…エレオさんは大丈夫なんですか?」

ほらね。

………はぁーー…しょうがないか。もうそろそろ誤魔化しも効かなくなりそうだ。

別に、彼のことだ。教えたくない、言いたくないという旨を伝えれば引いてくれるだろう。

でも、もしかしたら。

 

この曖昧な気分に線を引いてくれるかもしれないとも思っている私が、いた。

 

 

「………はぁー………しょうがないね…魔法に触れるならいずれ話さないといけないことだろうから、話すよ」

とりあえず扉を直してからね、と続けて少し時間をかけて修復。

それから座るように促して、記憶を掘り起こす。

あまり気持ちのいいものではない記憶の扉を、ゆっくりと押し開ける。

 

 

 

魔力の起源について。

 

魔物とは何かについて。

 

 

そして、私という厄災について。

 

 

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