不朽の魔女   作:謎の通行人 δ

9 / 20
(九想)

街から離れてどれくらいだろうか。

もうかなりの距離離れて私の知らない土地に着いた頃、適当に見つけた山の中に身を潜めようと思って降り立った。幸い田舎っぽかったのもあって身を隠すところは多かった。山に登れば空き家や空き倉庫が散乱してるからそこを寝床にしたりしてた。

 

そんなことをしつつ過ごして、およそ一週間くらい経った頃だった。

 

ふと人の気配で目を覚ました。

 

一人で他人を警戒した生活をしているせいか、生き物の気配というものに敏感になっていた。そのせいで誰かが私に近づこうとすると体が勝手に反応するようになっていた。

 

こんな山奥の人気のない寂れた場所に来る人なんてたかが知れている。

秘境巡りという名目の物好きな人か、魔女探しで探りまわっている人か。はたまた元々ここらへんに住んでいた人か。

どうであれ警戒の体制を解かずに気配を隠し、入口のドアの影に身を隠した。

成功しているのかは知らないけど魔力を制御する方法を生み出していた私は体のギリギリ外側、皮膚に触れるくらいの所で魔力を滞留させてそれを全身に巡らせてる。

最低限の量で回してしまえば次から次へと流れ出る魔力もそれに巻き込まれて体の周りで滞留するという、全身からあふれる魔力を全部制御するよりはコスパが良さげに見える方法。合ってるのかは知らない。

 

ともあれ、とりあえず人。

最悪魔法を使って撃退することも考えて、杖を取って息をひそめる。と…

 

「ホントにここらへんにいるの?」

「私の探知の魔法からすると、ね。…正直自信なくなってきてるけど」

「駄目じゃん」

そんな話が聞こえてきた。

魔法…?ということは、相手も魔法使い…?

いや、もしかしたらそういう探知魔法って隠喩の魔力を探知する機械とかかもしれない。

相変わらず息を潜めて気配をできる限り希薄にし、声に耳を傾ける。

 

「街の方はもう魔女狩りでいっぱいみたいだよ。あーあ…」

「人の敵は魔物の方なのにね。まだ比較的敵として明確にしやすい私達が狙われてるのかもしれない。どうにしても合理的じゃないわ」

「合理とかそんなの以前に何で私が、って感じだよ。好きでこんなのになったんじゃないのに」

責めるような、嘆くような声と淡々とした声。

その話に、聞き入ってしまっていた。

もしかすると話を分かり合える人達かもしれない──でももしかすると罠かもしれない──そんな事をくるくると頭の中で回していて、少し警戒を解いてしまった。

 

「わっ!?…子供?」

 

「っ!!」

見つかった。

足音がそこまでしていないからまだ遠くだろうと思っていたけどそこまで遠くもなかったようだ。

私はさっと立ち上がって杖を握り直し、彼女…ピンクの髪と赤に近い目をした女性に向けて構えようとして…ふと手を下ろした。

陽炎のような靄が、彼女の体から少し放たれているのが見えた。

 

「!!その杖っ!ね、君って魔法使えるの!?やった!カーミラぁ!見つけた!ちっちゃい子!」

「うるさい、レイトナ」

と、こちらの様子はお構いなしと言わんばかりに何故かはしゃぐ彼女…レイトナを見て一瞬頭の中が???となっている隙に、ドアからもう一人、私のようにくすんでいない、きれいな短い白髪に青い目をしたカーミラ、と呼ばれた女性が入ってきた。またこの人からも、件の陽炎のようなものが出ている。少し量が多い気もする。

 

「あ、ごめんね?急に。私達、今巷で魔女って呼ばれてるんだけど…君もそうだよね!」

 

「…え、あー…ま、あ?」

距離の詰め方が積極的過ぎるレイトナを見てたじろぎながら答えると、カーミラがぺし、と彼女の頭を叩く。

 

「困惑してる。初対面で、しかもこの様子だとしばらく一人でいた子に対してする距離の詰め方じゃない」

「いいじゃん!久しぶりに仲間に会えたんだよ?テンションも上がるって!」

「そのテンションで魔女狩りに見つかったら世話ない」

「うぐっ…」

鎮圧完了。

まあ何はともあれ。

 

「…お二人は、敵じゃないんですか?」

 

「全っ然!むしろ味方だよー」

いえーい、と言いながらハイタッチの格好を取るレイトナとの接し方を考えていると、カーミラが間に割って入ってきた。

 

「あまり深く考えない方がいい。レイトナはずっとこんな感じだから無理に合わせようとすると疲れる」

「酷い!」

なんともまあ、愉快な人達だった。

その時に、数日ぶりに笑った気がした。

 

 

 

その後いくつかの情報交換をして。

 

「そう言えば…君、名前は?」

 

「私は…エレオノーラって言います」

 

「そっか!じゃあエレオちゃんだ!エレオちゃん、私達と一緒に来ない?」

聞いてみると、彼女らは魔女を集めて一つの団欒にしているらしく──とはいってもまだ三人しかいないらしいが──そこに私も招き入れたい、ということらしい。

 

「固まってれば困った時も助け合いやすいし!」

と笑顔で言うレイトナに押されて、私も彼女らと一緒に行くことになった。

少し楽しみだったことも、否定はできない。

 

彼女らの拠点は廃地下水道の中だった。

 

「昔、向こうの村が栄えてた頃ははここも使われてたらしいんだけどねー、寂れちゃっててもう使われてないんだって。だから人も来ないし隠れ家としては完璧なんだ」

そんな話をしていると目的地に着いたらしく。

が、そこには周りと変わらない地下水道の壁しか無かった。

するとレイトナはその壁に向かって喋りかけた。

 

「ニーナぁ、新しい子連れてきたよー」

と、壁から「はーい」と声がした。えっ、と思いつつレイトナとカーミラに連れられてその壁に向かって歩く…と。

 

「…えっ」

簡素な部屋に出た。

コンクリートで覆われた部屋であり、机が一つ真ん中に鎮座している。

その上には黄色いゴム製のラジオが一つ置かれており、放送が流れてきている。

そして机の周りにある椅子の一つに、エメラルドグリーンの髪と黄色い目の女性が座っていた。相変わらず、体の周りにもやもやとした何かが浮いている。

その女性の顔には、見覚えがあった。

 

「あっ、あのテレビに出てた人……」

 

「おぉ知ってたんだ、まあ有名になってたしね。…にしても君、随分と幼い子なんだね。私はニーナ、三人の中じゃ一番魔女になってから時間を過ごしてるんだ。よろしくね」

あの『最初に見つかった魔女』である彼女…ニーナは小さく笑って首を傾けつつそう言った。

 

「え、っと…私はエレオノーラです。…これでも一応17です…」

 

「「えっ、」」

自己紹介に、レイトナとカーミラが反応した。

 

「えっ、エレオちゃん17だったの!?…年上じゃん…」

えっ、と私も驚いて認識をすり合わせてみると。

レイトナとカーミラは同い年で16、ニーナは私と同じく17だった。私は10歳とか、もしかしたら一桁かも、と思われていたらしい。まあこの見た目だしねぇ…

 

「10歳の時に魔力が発現しまして。それから成長が止まっちゃったみたいなんですよ」

 

「…えっ、私達そんなのあったっけ…?」

「いや、なかった」

「私もなかったね」

…あれぇ?

魔力を持ったら成長が止まるのかと思ってたけど違うらしい。

あと、周りのみんなの話を聞いてみるとこの中で私が一番最初に魔力を持ったらしい。ニーナがだいたい2年前、レイトナとカーミラが去年らしい。私が7年前だから一番古いのか。

 

「多分だけど…少なくとも今確認できてる、生存してる魔法を使える人はこの四人で全部だから、エレオさんが一番先輩ってことになるね。…何なら、世界で一番最初に魔法を使えた人がエレオさんかもしれない」

「うう…先輩風吹かせられなくなった…」

「吹かせる必要ないでしょ」

三人の話を聞いて、そうなんだ…と認識。とりあえずややこしくなりそうだったのもあって、

その場ではとりあえず全員タメ口で話すことになった。

 

それからはその四人で過ごしていた。

ある時は…

 

 

 

「そうだエレオ、ちょっとこっち来て」

ラジオを聞いていたニーナにふと呼ばれてそっちへ行くと、ニーナは私の服と杖に触った。

同時にふわ、と光が舞う。

 

「えっ、」

 

「こんなところにいるとお風呂も洗濯も十分にできないからね。私の魔法で汚れないように、壊れないようにしてあげる」

えっすご。そんなのできるの。

と、光がパラパラと下の方から砕けていって、新品かって思う位ピカピカの状態の服になった。

 

「すごい…」

 

「ふふ、こういうのに魔法って便利よねぇ」

クスクスと小さく笑いながらまたラジオに耳を傾けだした。

…既存物に魔法かけるのってできるっけ…?いや無理無理無理。もしかしてニーナ…私よりすごい魔法使い?

 

 

 

また別の日には…

 

 

 

「ねえねえ、面白い話聞いたの!エレオ!肘って10回言って!」

 

「え?肘 肘 肘 肘 肘 肘 肘 肘 肘 肘…」

 

「じゃあここは!?」

と、自分の肘を指して聞くレイトナ。何がしたいのかわからなかったけどとりあえずそのまま答える。

 

「…肘?」

 

「残ね…あれ!?肘だ!?」

一瞬満面の笑みになりかけて驚愕の顔を浮かべるレイトナ。何で!?って聞かれても肘だし…

と、近くでカーミラが小さくため息をつきながら声を漏らした。

 

「レイトナ、多分それ『ピザ』を10回言わせて肘を指して『膝』って言わせるやつ」

 

「それだ!ね、エレオ!も一回やって良い?」

 

「いやごめん、さすがにタネ知った状態で引っかかるのは無理かも…」

こうなったらニーナ引っ掛けてやる!と、今は食糧調達のために外に出ていていないニーナをターゲットにした彼女は、30分後くらいに帰ってきた彼女に聞くも引っかからず、むくれていた。

 

 

 

そしてまたある日には…

 

 

 

「魔力を取り込んだ植物から新薬ができたんだって」

一概に魔力が悪いってのも否定されてくるといいねーとニーナがラジオを聴きながら言った。

と、それにカーミラが思い出したように反応した。

 

「あーそうだ、この頃私たち外でなんて言われてるか知ってる?」

なんて言われてるか…??と首をかしげるとニーナもレイトナも知らないいらしく。

 

「原初の厄災、だそうよ。顔がばれてるから個人情報も漏れまくり、最初の魔女ってことでそう言われてるそうだわ。…あーでもエレオの情報だけはなかったわね」

何で…と言いかけて思い出す。

そういえば町出るときに痕跡、記憶、私に関する情報全部消してきたんだった。

 

「えっ、何で?」

 

「多分、町出てくるときに痕跡全部魔法で消しちゃったからかな…」

 

「えっ、そんなことできるの!?」

え、できないの?と思ってまた認識をすり合わせてみたところ。

どうやらここにいる四人は全員使っている魔法の()が違うらしかった。

ちょっと詳しく、簡潔にいうなら、私は「物を作ったり消したりする」魔法、カーミラは「物を探す」魔法、ニーナは「物、事を状態的に操る」魔法、レイトナは「物を動作的に操る」魔法が使える。

お互いが他人の魔法を使うのは無理で、三人は私みたいに火とか水を出したりはできなかったけど、逆に私は既にある物を魔法で動かしたり変化させたりするのは無理だった。強いて言うなら消すことはできたくらい。

魔力が関係してるのか何なのか…よく分からなかった。

あと、それぞれの魔法を見せてもらった時、魔法を使った時に体の周りのもやもやが体に纏わりつくみたいに固まって、使った後にはちょっと少なくなっていた。

多分コレが魔力なんだろうとやっと分かった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。