ランボーグを召喚して自分の力を誇示。そのまま高らかに笑うカバトン。そんなランボーグに対抗しようとソラがミラージュペンを手にしようとする。
「ランボーグ、挨拶代わりだ。やれ!」
「ランボーグ!」
「ッ!?」
ランボーグはソラが変身する前に攻撃するというヒーロー物の御法度を破ると自販機の取り出し口を開放し、ペットボトルのミサイルを飛ばしていく。
「ッ、危ない!」
その瞬間、ユキが咄嗟にソラを突き飛ばすとミサイルは二人の後ろを掠める形でユキ、ソラとアサヒ、ましろの間を通過。壁に激突して爆発すると近くにいた人々は慌てて逃げ出す。
「それそれ、ランボーグ。もっともっとやれ!」
カバトンは調子に乗ったのかランボーグへとミサイルを更に出すように指示。連射されたミサイルが、次々と四人を狙っていく。
「マジかよ!」
「うわあっ!」
四人はどうにかミサイルを回避するように逃げるが、当然生身とミサイルではミサイルの方がスピードは速い。なので次々と四人の足元に着弾すると爆発。最後の一発に至っては四人の逃げる先に命中してしまった。
「ぎゃははっ!YOEEE!そして俺、TUEEE!」
カバトンは自分が有利な状況を受けて高らかに笑う。このままでは相手のペースだ。
「ッ……こうなったら、ソラちゃん。私がランボーグ?を止めるから……その間に変身を……うっ!?」
ユキが身を挺してランボーグの注意を引こうとする中、昨日の怪我の痛みのせいでその場に倒れかけてしまう。
「ユキさん!?」
「ユキ、お前は戦ったらダメだ。逃げるぞ」
「……そんな事、できないよ」
ユキは体の痛みを我慢して立ち上がると無理してでも戦おうとする。そのため、アサヒがそんなユキを思い留まらせるべく彼女へと近づいた。
「ソラちゃんは……怖がりだから。戦う覚悟を決めるまでに時間が必要かもしれない。だから私がその分を少しでも……。それが、助けられた私のできる精一杯の事だから」
ユキは苦しそうな顔を見せても尚戦おうとする。それをアサヒがどうにか抑えるが、このままではユキ達はランボーグの絶好の的だった。
「あの脇役共、揉めてやがる。ランボーグ、今が絶好のチャンスなのねん!」
カバトンはユキが無茶するのをアサヒがどうにか抑えているのを見てランボーグのターゲットを彼女達にしようとした時だった。
「待ちなさい!」
そう叫んだのはソラだった。彼女はミラージュペンを手にするとカバトン相手に啖呵を切る。
「あなた達の狙いは私でしょう!これ以上、関係無い人を巻き込まないでください!」
「ソラちゃん……」
ましろはそんなソラと手を繋いでいたのだが、やはり彼女の手は震えていた。戦う事への怖さが残っている証拠である。
「ユキさん、ありがとうございます。未熟な私のために力になろうとしてくれて。……ですが、もう私は大丈夫です。だから、ここからは私に任せてください」
ユキはソラからの真っ直ぐな視線を受けるともうソラは大丈夫だと感じ取る。
「ユキ、ソラさんは戦えるし……これ以上は」
「うん……。私が行ってもやれる事……無いよね」
ユキはソラ一人に戦わせる事に不安でいっぱいだったが、怪我した自分では足手纏いでしか無いと頷き、大人しくアサヒに連れられて少しだけ離れる。
「未熟です。友達にあんなに心配されて……憧れのあの人の背中は遥かに遠い。でも、今はヒーローの出番です!」
ソラは覚悟を決めるとミラージュペンがスカイミラージュに変化。そのままプリキュアへと変身する。
「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!スカイ!」
そしてソラの姿は光に包まれると共にプリキュアへと変わり、名乗りを行った。
「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」
ソラがキュアスカイに変身するとカバトンは笑みを浮かべる。そしてランボーグへと指示を出した。
「ランボーグ、キュアスカイを倒すのねん!……あの周りにいる脇役ごとな!」
「「「え?」」」
その瞬間、ランボーグは自販機の取り出し口からミサイルを一斉に放つ。ミサイルによる弾幕はスカイだけで無く、近くにいたユキ、アサヒ、ましろの三人もターゲットにしていた。
「ッ!?ましろさん!」
スカイは咄嗟に近くにいたましろを抱えて跳び上がるものの、二人は避難のために少し離れてしまっていたせいでカバーは間に合わない。
『……仕方ないわね』
「え?」
その瞬間、ユキの首から下げているアクセサリーが一瞬白く光るとバリアが展開。ミサイルが命中した瞬間に全て凍結させると粉々に砕け、防いだ。
「今のは……」
そこに屋上にましろを下ろしたスカイが降りてくると二人へと無事を聞いた。
「お二人共、大丈夫ですか?」
「ああ……ユキの持ってる不思議な力で助けられた。ただ、あの野郎。約束を平気で破りやがって」
「約束を破ってなんか無いのねん、キュアスカイを攻撃しようとしたら近くにお前達がいて巻き込まれただけなのねん!」
「そんなのお前の屁理屈だろうが!」
アサヒがカバトンへと怒る中、ユキはボーッとした顔つきのままである。ひとまず二人はスカイに抱えられるとましろの待つ屋上へと移動した。
「アサヒ、ユキちゃん。大丈夫だった?」
「俺達二人共無事だ」
「……では、私はランボーグと戦いに行きます」
スカイはそう言ってランボーグの元に向かおうとした。しかし、それをましろが呼び止める。
「待って!」
スカイがましろ達の方を向くとましろとアサヒはスカイの前に立つと彼女へと笑顔で話しかける。
「ソラちゃん、気をつけてね」
「頑張れ、俺達のヒーロー!」
「はい!」
スカイはそれからユキの方を向くと彼女はまだ先程自分が助けられた理由がわからずに困惑していた。
ただ、いつまでもここには留まっていられないためにスカイは飛び降りるとランボーグへと向かっていく。するとスカイが降り立った瞬間にランボーグは先手必勝とばかりに取り出し口を開けてペットボトルを射出するとミサイルとして飛ばしてくる。
「ランボーグ!」
「そんな攻撃!」
スカイはそれを拳で弾き飛ばしながら距離を詰めていく。そんな中、周りに弾かれたミサイルが地面に着弾するとペットボトルの中身である飲料水が地面にぶちまけられていった。
「ミサイルから……水?」
ユキはどうにか迷いを振り切って屋上からスカイを見る形で遠目からそれに気がつく。ただ、遠目からでは色とりどりの水溜まりが増えた程度。
ユキは何かがおかしいと考えるが、その予感の正体には辿り着けなかった。その間にもスカイはランボーグに近づくとそのまま連続で拳を叩き込む。
「やああっ!」
「ランボーグ!?」
「はぁああっ!」
ランボーグは至近距離に近づかれると弱いのか、一方的に打撃を打ち込まれてしまう。
「ランボーグ、間合いを取るんだ!」
「ランボーグ!」
するとランボーグは拳を振るって反撃。スカイはそれを後ろに跳んで回避。それをチャンスと見たランボーグはミサイルをまた連続射出する。
「何度も同じ手を!」
スカイは跳び上がってそれを躱すと何発かは地面に着弾。その場所が飲料水で塗れていく。
「はあっ!」
更に自分の方に来たミサイルを全て弾くとそのミサイルはランボーグへと押し返されてそれらを纏めて喰らってしまう。
「ランボーグ!?」
「ああっ!?このままじゃまたあっさり負けちゃうのねん!?」
カバトンが焦ったような声を上げる中、その頬が僅かに上がったのを見てユキは目を見開く。そのタイミングでスカイは飲料水がぶちまけられた事による水溜まりの場所へと着地。一気に決めにかかる。
「これで決めます!ヒーローガール……」
「待ってスカイ、そこは……」
ユキが声を張り上げるものの、もう遅い。スカイが技を繰り出すために踏み込んだ瞬間、足が足元にある水溜まりのせいで踏ん張りが効かず。ズルリと滑ってしまうとスカイは足首を捻ってそのまま倒れてしまう。
「うっ!?」
「嘘!?」
「なっ!?」
ましろとアサヒが急に転んでしまったスカイを見て驚きの声を上げる。そんな中、ユキがスカイの周りを見渡すと至る所に飲料水の水溜まりができていた。恐らく、スカイが攻撃を弾いたり回避したりしてミサイルが着弾した所から次々と水溜まりになってしまったのだろう。
「まさか、これが狙いで……」
「にゃーっはっはっは!作戦大成功なのねん!」
カバトンは自分の思い通りの結果を得られて高笑い。彼の狙いはこれだったのだ。飛び道具を持たないスカイがランボーグからのミサイル攻撃を防ぐにはミサイルを弾くしか無い。
カバトンはそれを見越した上で攻撃をわざと弾かせて地上をスカイが走りにくいように飲料水による水溜まりでいっぱいにしてしまった。
「さっきまでのランボーグの攻撃も無駄じゃなかったのねん!」
「くっ……だとしても私は……ッ!?」
スカイが立ちあがろうとすると突如として足首に痛みが走る。スカイがそこを見ると足首が赤く腫れており、先程倒れる際に脚を捻ったせいで軽く捻挫してしまったのだと察した。
「そんな、こんな時に捻挫だなんて……」
「ッ……」
アサヒが悔しそうにそう言う中、ランボーグはスカイを攻撃しようと歩いてくる。しかもランボーグは大地をしっかり踏みしめながらゆっくりと歩いてくるので水溜まりを踏んでも滑る気配は無い。
「スカイ、立って!」
「逃げるんだ!」
「ヒーローは……逃げたりなんかしません!」
スカイはどうにか捻挫して痛む足を我慢して立ち上がるが、そんな状況でまともに動けるはずが無い。
スカイはランボーグからの拳を受けてしまうと吹き飛ばされて近くの壁に叩きつけられてしまう。
「うああっ!?」
「ランボーグ、トドメだ!」
「ランボーグ!」
するとランボーグがペットボトルミサイルを五、六本飛ばすと全ての弾丸がスカイに命中。スカイは悲鳴を上げるとそのままボロボロの体で力無く倒れてしまう。
「うわぁああっ!?……くうっ」
スカイはどうにか体の痛みに耐えるが、脚を怪我している以上はまともに戦うなど不可能だ。
「まだ、負けてなんかいません……。ヒーローは、こんな所で……諦めません」
スカイがまだやる気でいる中、ランボーグが迫ってくる。しかも先程自分に命中したペットボトルの破裂のせいでスカイの周り一帯が飲料水による水溜まりができていた。
「ッ、きゃあっ!?」
そのため、足元がおぼつかないスカイは力を入れられない怪我している脚をまた滑らせてしまうと転んでしまう。そしてそのせいで足首の痛みは更に増大した。
「うあっ!?」
「YOEEE!やっぱり昨日はマグレだったのねん!」
カバトンが勝ち誇る中、上から見ていたユキは青ざめてしまっていた。また自分のせいで友達が危険な目に遭っていると思い込んだからである。
「私のせいだ……私がソラちゃんの友達だったから……ソラちゃんは私達を守るためにこんな危険な目に……」
「落ち着けってユキ!ソラが……キュアスカイがあんな奴に負けるわけが無い!」
アサヒはそう言ってユキを落ち着かせようとするが、自分でもわかってしまっていた。このままではまず間違いなくキュアスカイはやられる。
『ガッカリよ、ユキ。あなたの想いは……あなたの信念はそんな程度だなんて』
突如としてユキの脳裏に響く声。それは夢の中に声だけが聞こえてきた少女の物だ。
「……違う」
ユキは小声で消え入るようにそう呟く。そんな中、とうとう倒れているスカイの目の前に来たランボーグ。カバトンはそんなランボーグの肩で余裕そうな顔を向ける。
「まずはお前をボッコボコにするのねん。それからあの三人にプリンセスの場所を聞き出してやる」
「まだです……」
「あん?」
「まだ私は……終わってなんか……」
スカイは立ち上がろうと両手に力を込める。しかし、体への痛みのせいで上手く立てない。それどころか足首の痛みが悪化する一方だ。そんな様子を見たユキは覚悟を決めると屋上から飛び出そうと手すりに足をかける。
「ユキちゃんダメ!」
「何やってるんだよユキ!早まるな!」
「私……ソラちゃんを黙って見殺しになんてできないよ!」
ユキはランボーグの前に行ってキュアスカイを、ソラを助ける事を選択した。ただ、アサヒやましろの二人はそんなユキを諌めようとする。何しろ今三人が立っているのはそれなりに高い建物の屋上。こんな所から飛び降りればタダでは済まない。
「無茶だよ!プリキュアじゃないユキちゃんが今ここから飛び降りたら……」
「それに、ユキは怪我してる。そんな事をしたって……」
二人に止められてユキは一瞬躊躇いの気持ちが起きる。……だが、ユキはそんな事よりも自分の目の前で幼い頃から自分を助けてくれた家族同然に育った友達を捨てる選択肢を取りたくなかった。
「嫌だ!私、いつもソラちゃんに守られてばかりで。……幼い頃からずっとソラちゃんの言葉に支えられてきたの。だから、だから私はせめて今だけでもソラちゃんの力になりたい!」
その時、ユキが思い出したのは自分にとって思い出したく無いくらいに嫌な記憶。しかし、今はすんなりと思い出せた。それは昔ソラに言われた自分を救ってくれた言葉だったからである。
(回想)
数年前。ユキが小学生半ばくらいの年齢の時。彼女の周りにいたのは自分に悪意を向けてくる同年代の子供達。そこはスカイランドにおける学校のような場所の校舎だった。
「きゃああっ!?……ゴホッ、ゴホッ……」
「この裏切り者!」
「もうここに来るなよ!」
「親無しの女!」
「最低!」
「あなたみたいな最低な人、顔も見せないで!」
「うぅっ……」
そこで毎日のように受けた罵倒の言葉。それだけじゃ無い。いつも体は傷だらけで。少しでも隙を見せれば物を隠されて、水をかけられた。それはユキに対する虐めだ。
でも、ユキは必死に耐え続けた。これは自分が弱いせいだと。自分がダメな奴だからと。そう思う事で。思い込む事で無理矢理自分を納得させると我慢していた。
こうなったのは自分のせいだと、自分を虐めてくる人達は何も悪く無いと。だから仕方ないのだ……そう信じ込んだ。
「ユキさんを虐めたらダメです!その薄汚い手を退けてください!」
しかし、そんなユキの心を支えてくれた友達の意見は違った。幼いソラはユキを虐めるグループの面々に捕まって身動きが取れなかったにも関わらず、ユキを助けようと必死に励ましていたのだ。
「ユキさん!こんな人達に負けたらダメです!どんな時も私がついています!私が隣にいます!だから、どんなに苦しくても諦めないでください!」
(現在)
ユキが折れそうになった時、いつも側で支えてくれた唯一の友達。それがソラだった。ユキはソラに沢山救われてきたのだ。だからこそ、今はソラを救いたい。そんな気持ちでいっぱいだった。
「私は幼い頃からずっとソラちゃんに助けられた。ソラちゃんがいなかったらきっと私は折れていた。だから今度は私が救いたいの!」
「ユキ……」
「だから、二人共ごめんね」
それからユキは二人の静止を振り切って屋上から飛び降りてしまう。そんな彼女を見たアサヒとましろは慌ててユキのいた手すりから身を乗り出して下を向く。また、下からそれを見上げていたソラは顔を青ざめさせてしまう。
ユキが自殺行為をしてしまったと。ユキが目の前から消えてしまうという気持ちが溢れた。
『……ほんと、小さい頃からずっと変わらない危なっかしい子。……仕方ないわ』
その瞬間、ユキの首のアクセサリーから吹雪のような風が吹き出すエネルギーが溢れ出るとそれによって生まれたバリアがユキを包み込む。
「ラン!?ランボーグ!」
ランボーグはいきなり落ちてきたユキを殴ろうとするが、その拳がバリアに触れた途端ランボーグの腕が凍結。吹き飛ばされてしまう。
「ランボーグ!?」
「何だと!?」
カバトンが驚く中、ユキは地上に近づくと落下はゆっくりな物に変化。地上に降り立つと痛みを我慢しながら急いでソラの元に駆け寄る。
「ソラちゃん!大丈夫!?」
「ユキさん……どうして……どうしてあんな無茶をしたんですか!下手したら……下手したら死んでたんですよ!」
スカイはユキへと怒りの声をぶつける。幾ら自分を助けるためとはいえ、普通なら飛び降りた時点で自殺するような行為だからだ。
「……そんなの、ソラちゃんを助けるためだよ」
「無茶ですよ……ユキさんには何の力も……」
「うん。私も特別な力無しでこんな事するのは無茶だと思う。……でも、これが私の決意。私の信念だよ!」
するとカバトンはそんなユキを見て高笑い。それと同時にランボーグと共に前に出た。
「あははっ!YOEEE雑魚のくせして守るだぁ?そんな事できるわけ無いのねん。昨日だってボッコボコにされてその怪我も治ってないんだろ?」
「そうよ。私は弱い。でも……それでも私はソラちゃんを守りたい!」
「ダメです……ユキさん。ここは私一人でどうにかできます!ですから、ですから危険な事はもう……」
スカイの目は不安でいっぱいだった。今までずっと自分が守ってこないといけなかったユキがこうして自分一人で戦うと言っているのだ。
「ごめんね、ソラちゃん。私、ずっとソラちゃんに守らせてばかりで。ソラちゃんも沢山巻き込んで。……ソラちゃんは怖いんだよね?あの時みたいに私が折れてしまうって。そう考えたら怖くなったんだよね?」
それを聞いてスカイ目を見開く。その言葉はスカイが今思っていた事をピタリと当てたからだ。
「……ソラちゃんはずっと私を守ってくれた。でもそれは、私の心が弱かったから。守らないと折れてしまうくらいに弱かったから」
ユキは自分に何が足りないのかを自覚。そして、首から下げたアクセサリーへと語りかけるようにして話す。
「……私、ソラちゃんに友達と言ってもらえて嬉しかった。ソラちゃんと友達でいられて良かった。だからもう簡単に折れないようにする。……だからお願い、力を貸して!」
その瞬間だった。ユキの首から下げられていたスカイトーンのような形をしたアクセサリーの石化にヒビが入るとそこから白い光が漏れ出したのは。
ユキはその光に包まれると同時に一瞬だけ精神が別の場所へと飛ばされるのだった。
また次回もお楽しみに。