熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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無力なプニバード達 騎士として諦めない心

ランボーグ内に囚われたツバサ、ヒョウ、エルの3人を助けるべく地上でプリキュア達が奮闘していた頃。ランボーグの中ではその3人が先程の掃除機光線の影響でランボーグの出入り口と思われる下側の扉の向こうにいた。

 

「え、えるぅ……」

 

「エルちゃん……」

 

エルはランボーグに囚われ、その心細さから今にも泣き出してしまいそうであった。そして、そんな彼女の隣にツバサが寄り添う形で心配そうに見ている。

 

「く、クソッ……出せよこの野郎!」

 

また、ヒョウも何とか脱出しようと地団駄を踏んで床を壊そうとするが、プニバードの体ではまるで力不足。そのため頑丈な床を壊すことなどできない。そんな中でエルの側に寄り添っているツバサは1人、自分を責めていた。

 

「(何をやってるんだ、ボクは……。助けに来たのに、逆に足を引っ張ってるじゃないか。こんなのが騎士だなんて……情けない)」

 

ツバサは先程、ユキやソラの前で自分はエルの騎士だと豪語していた。そのため、ツバサは彼女を守り、連れ戻すべく独断で飛び出すとこの危険地帯に自ら足を踏み入れた。それなのに関わらず、実際はエルを助けて連れ帰るどころか自分のせいでカバトンの前に彼女が姿を晒す事態に陥るとこうして捕まっている。

 

「なぁツバサ。お前も一緒に手伝ってくれ。そうすればきっと……」

 

「ボクは……ボクはどうしてこんな……」

 

「ッ……」

 

ヒョウは脱出のために色々やったが上手く行かず。そのためツバサにも一緒にやってもらおうと考えた。しかし、隣で落ち込んでいる彼を見るとヒョウはどう声をかければ良いかわからずに言葉に詰まってしまう。

 

「(ツバサが困ってる……。どう声をかけるのが……正解なんだ?ッ、アサヒの事を責めてばかりだったからこういう時の上手い言い回しがわからない)」

 

ヒョウもヒョウで今まで散々アサヒへの苛立ちをぶつけてばかりだったせいか、こうなった際のフォローのやり方が上手く浮かばないのだ。

 

「(俺は他人とのコミュニケーション能力をもっと勉強するべきだったんだ。それなのに……それなのに……俺は今までずっと……)」

 

ヒョウはソラシド市に来てからこの一年程、何か成長したかと聞かれても答えられないくらいにめぼしい何かを得られたわけでは無かった。彼は家族の事を見返すつもりで家を出たはずなのに結局やってたのは自分を磨く事では無く、ただツバサの付き添いをしていただけ。

 

一年もあれば、ツバサ程では無いにしても何かを得られたはず。彼もまた、自分が努力をしなかった事を後悔していた。

 

そんな時、横開きで部屋の自動ドアが開く。するとそこにはこのUFOの主、カバトンがバナナを両手に持って立っていた。

 

「あーむっ。……お前ら、スカイランドのプニバード族だろ?」

 

「それが何だ?」

 

「こんな所にまで連れてきて……俺達を解放しろ!」

 

カバトンはプリキュア相手で無いのなら恐るるに足らずと言わんばかりに余裕の顔つきで2人相手に接する。対してツバサはエルの前で彼女を守るように両腕を広げ、ヒョウはファイティングポーズを構えるようにいつでも戦える状態になっていた。

 

「ぷぷぷーっ、そんな事するわけ無いのねん。そもそもお前ら2人はあくまでプリンセスのオマケ。ついでに釣れただけに過ぎないんだよ」

 

「「ッ……」」

 

「ああ、それとお前らって確か空を飛べないダサダサの鳥だって聞いた事があるのねん!」

 

カバトンは完全にプニバードの2人を舐め切っており、顔つきからも2人を見下しているのがよくわかるくらいだった。

 

「エルちゃんは渡さないぞ!どうしても欲しいと言うなら、このボクを倒してからに……」

 

「うん?待てツバサ、勝算はあ……」

 

「カバトンパンチ!」

 

ヒョウはまたツバサが無謀にもカバトン相手に挑むような予感がして慌てて彼の方を向こうとするが、ヒョウが言い切るよりも早くツバサの顔面にカバトンのパンチが突き刺さってしまう。

 

「ふぶっ!?」

 

「えるぅ!?」

 

ツバサはその一撃を喰らっただけで完全にKOされてしまうと倒れて目を回す。それを見たヒョウは完全に呆れてしまった。

 

「きゅう……」

 

「ツバサ、お前幾ら何でも何の勝算も無しに挑むなよ……」

 

「へん、口程にも無い雑魚……いや雑鳥なのねん」

 

今のツバサの一撃KOを目の当たりにしたヒョウはやはりプリキュアで無いのならカバトンとの戦いの土俵にすら上がれないのだと察するとどうするべきか考える。すると、カバトンが強者の余裕と言わんばかりにお情けでヒョウへと戦う意思があるかどうか質問してきた。

 

「さて、そっちの白いのはどうする?プリンセスを渡すか、そっちの奴みたいに痛い目に遭うか」

 

「……どっちもお断りだよ!!」

 

その瞬間、ヒョウはカバトンが油断しているのを良い事にポンと音を立てて人間へと変化。その際にわざと煙のような物を発生させるとカバトンの目を眩ませる。

 

「むっ!?」

 

ヒョウはカバトンとの正面からの殴り合いだと結局ツバサみたいにワンパンされて終わるのがオチなため、まずは彼の視界を奪った。そこから弱い顔面への直接攻撃ならまだ勝機はあると言わんばかりにそこを目掛けて飛びかかる。

 

「はあっ!」

 

「この脇役、小賢しいのねん!」

 

カバトンはまさか自分が油断している間に不意打ちしてくるとは思っておらず。最初こそ動揺して怯んだが、それもほんの一瞬の隙でしか無い。それどころかすかさずヒョウが自分の顔に飛びかかってくるのを見切るとカウンターの拳をヒョウの顔面にぶつける。

 

「ぐ……ああっ!?」

 

「うーん……ッ、ヒョウ!?」

 

その時、一時的に気絶していたツバサが目を覚ますと丁度彼と入れ替わる形で今度はカバトンからの拳を顔面に受けてしまったヒョウの方がプニバードの姿に戻って気絶。ツバサは慌ててヒョウを心配する。

 

「ヒョウ!」

 

「さて。2人纏めて俺様が倒したし……さっきお前が言った通り、プリンセスはもらうぞ」

 

そのままカバトンは容赦無くエルを左腕で捕まえてしまう。エルは逃げようにもこの至近距離から赤ちゃんの足で逃げるなんて不可能。仮に小舟に乗ったとしてもこの狭いUFO船内ではすぐに捕まるのがオチだ。

 

「えるるうっ!」

 

「それにしても本当にお前らYOEEEくせに何でそんなに頑張っちゃってるの?」

 

するとカバトンはツバサやヒョウが戦闘能力において大した事無いのに何故ここまで頑張るのかが理解不能だったために質問した。

 

「あっ、アレかぁ!プリンセスに恩を売っておけば、王様からご褒美貰えるかも……ってか?まぁそれならお前らが弱くても戦う理由くらいにはなるかぁ」

 

「……そんなのじゃないよ」

 

カバトンが上機嫌にそんな事を話しているとツバサは気絶しているヒョウの分もと言わんばかりに立ち上がるとカバトンへと一歩も退かない様子で反論する。

 

「はぁ?……じゃあ何だよ」

 

「……こんな小さい子が、知らない世界に放り出されて。助けてあげたいと思うのは……当たり前じゃないか!」

 

それを聞いたカバトンはツバサの考え方がまるで理解不能と言わんばかりに呆れ果てる。弱いくせして自分に刃向かってくるツバサがどれだけ大きな報酬をぶら下げられて動いているのかと思えば、本人曰く報酬では無く善意で動いているとの事で。

 

「はぁ……。何だそれ……」

 

「んんっ……」

 

するとヒョウが少し遅れる形で目を覚ますとエルがカバトンに捕まって今にも連れ去られそうなのを見てしまう。

 

「ッ、エルちゃん!!このおっ!」

 

「は?」

 

するとヒョウは半ば自棄と言わんばかりにまた人間態になるとカバトンを殴ろうとする。しかし、カバトンはあっさりそれを見切るとその腕を横から右腕で掴んでしまう。尚、先程まで持っていたバナナは一旦しまったようだった。

 

「……お前もお前で何だこのひ弱な腕。女みたいに細い腕してるくせして俺様に挑むとか身の程知らずにも程があるだろ」

 

「ッ!?」

 

すると、ヒョウは何故か女という言葉に反応。動揺したような顔つきになると反論しようとするが、それよりも早く腕をカバトンに強く握られたせいで痛みに顔を歪めた。

 

「あううっ!?」

 

「ヒョウ!?」

 

「お前もYOEEEくせして頑張るよな。……まぁ、そっちの奴と同じ答えが返ってくるのは何となくわかったからそれ以上は聞かないのねん」

 

そのままカバトンはヒョウを振り回すかのように腕を自分の元に引き寄せるように引いてからすかさず彼の事を片手を掴んだ状態で投げ飛ばす。

 

「うわっ!?がはあっ……う、ううっ……」

 

ヒョウは再度プニバードに戻ると意識こそ残っていたが、度重なる攻撃のダメージが蓄積してグッタリと倒れてしまう。

 

「ヒョウ……」

 

「これ以上は時間の無駄なのねん」

 

それからカバトンは先に食べ終わっていた1本目のバナナの皮をツバサの頭に被せるようにポイ捨てする。

 

「ッ!?」

 

「お前らの考えが俺にはわからん」

 

そのままカバトンはエルを手に入れた以上、このプニバード2人など相手にするまでも無いと言わんばかりに背を向けつつ歩き出す。そのまま自動ドアを通り過ぎ、部屋を完全に出てから呆れたような顔で振り返る。

 

「……お前ら、なんか嫌い」

 

「えるるぅ!」

 

エルは助けを求めるように涙目になりつつ叫ぶが、だからってツバサがこの一瞬でカバトンを倒せる程に覚醒するわけでは無い。そして、そのツバサは敵わないと知りつつもエルを助けるという気持ちからカバトンを追いかけようとする。

 

「エルちゃん!?待て……」

 

その瞬間だった。エルを追おうとしたツバサや倒れているヒョウの足元が突如としてパカッと両開きで開く。理由は単純、カバトンが2人をランボーグから締め出すために先程3人を招き入れる際に開いた下側の出入り口を解放したのだ。そのままツバサと気絶したヒョウは重力の餌食になる形で落下を開始。

 

「えっ?うわぁああっ!」

 

こうして、エルを守れる者は誰1人として彼女の側にはいなくなってしまう。これタイミングを同じくして。エルを連れたままランボーグの内部を歩くカバトンは先程から手元が煩いことに気がつく。

 

「えるぅうううっ!えるううっ!」

 

そこには知らない人に連れて行かれて助けてくれる者が誰もいないという心細さやカバトンへの恐怖でギャンギャン泣いている状態のエルがいた。

 

「またこれか……カバトントン」

 

カバトンは前にスカイランドの王城から攫った際にもエルがギャン泣きしていたためにその時の既視感を思い出す中、彼は容赦無くエルをシャボン玉の中に閉じ込める。

 

これにより、エルが泣くことによる煩さがマシになったという事でカバトンは笑みを浮かべた。

 

「……ここは遥か空の上。だ〜れも助けになんて来れないのねん」

 

カバトンはそう言いつつ先程ツバサ達を倒すために一時的にしまっていたバナナを一口で完食。それからその皮を船内にポイ捨て。だが、カバトンはそんな些細な事は気にしない。

 

「さ〜て、行くとするか。我らが暗黒の世界……アンダーグ帝国へ!」

 

それからカバトンは邪魔者は全て排除し、勝ち逃げの準備が完了したという事でエルをアンダーグ帝国と呼ばれるいかにも闇に染まったような世界に連れて行こうとするのだった。

 

同時刻、先程ランボーグから放り出されたツバサとヒョウの2人はエルの乗っていたスリングに乗ることで高所からの落下死を逃れていた。

 

「ツバサ……ありがと……」

 

「ううん。多分これはエルちゃんの力が残ってたから浮いてるだけ。それに、ボク1人じゃヒョウの事も助けられなかった」

 

こうしてエルの使う浮かぶスリングに乗っている2人だが、ツバサの言う通りエルの力が残っていなければそのまま落下死もあり得た場面である。また、もし仮にエルの力が途切れるような事態が起きればこの浮かぶスリングも効力を失ってしまうだろう。

 

「……それにしても詰めの甘い奴で助かったよ」

 

「アイツ、俺達を落としたと思ったらすぐに行ったもんな……。もう少し確認してるだけですぐ見つけられるのに」

 

丁度今2人がいるのはランボーグの真下。ランボーグの目は上の部分にあるのでランボーグからの視認もできず、カバトンもエルを連れて行く事で頭がいっぱいのために完全に取るに足らないプニバードの2人を完全に放置していた。

 

だが、それでも状況が変わったとは言い難い。このままではどちらにしてもエルを助ける事はできないだろう。

 

「……けど、ボク達じゃ結局カバトンには勝てないよ。後はプリキュア達に……」

 

「……ううっ、そんなの、ダメだ」

 

「ヒョウ……」

 

ツバサの心は折れかけており、今にも諦めてしまいそうだった。しかし、ヒョウはそれに反対。ツバサへと言い聞かせるように説得する。

 

「……諦めるには早いよ、ツバサ。カバトンはまだここにいる。エルちゃんだって」

 

「だけどどうやって……もう望みなんて……」

 

ツバサが落ち込んだようにそう言っているとヒョウは一度深呼吸。それから先程自分がアサヒにやられたようにツバサの両頬を掴んで横に引っ張った。

 

「ッ!?」

 

「ツバサ、お前のエルちゃんを助けたい気持ちはそんな物かよ。さっきソラさんに言われてたじゃん。ツバサはエルの騎士だって。騎士が……騎士がそんなに簡単に主君を助けるのを諦めたらダメでしょ……」

 

ヒョウがバレないように小声でそう言いつつツバサを叱咤する。それを聞いてツバサは先程エルが連れて行かれる際に涙する瞬間を思い浮かべた。

 

「ヒョウ……そうだよな……。ボクはプリンセスの騎士……そんな簡単に助けるのを諦めるなんて……絶対にダメだ」

 

「なんだ、その気になればまだまだ頑張れるじゃん」

 

ヒョウはツバサに肘で軽く彼の胸辺りを小突く。それにツバサは頷いた。気持ちが固まった所で次はランボーグへの侵入をどうするかだ。

 

「ツバサ、ランボーグ内部に入るのに良い場所は無い?」

 

「うーん、多分ボク達がさっき出入りした場所。出入り口が開く事は無いよな」

 

ランボーグの下側に存在する出入り口は先程のようにカバトンが任意で開け閉めしている可能性が高い。また、ランボーグの意思でも開ける事は可能だろうが……今となってはそのどちらも望み薄。そう考えると他の場所から侵入することになるが……。

 

「どこかに良い場所は……」

 

「あっ、それならボクに考えがあります」

 

それから2人はスリングを操るとランボーグの視界に入らないようにして円盤の下から出ると円盤の上側。ランボーグの胴体部分を見た。そこには外周に窓が存在しており、ここなら硬い鉄板の装甲とは違って自分達で壊して入れそうに見える。

 

「ッ、ここなら……」

 

「オッケー。じゃあ、侵入経路も決まった所で俺達でエルちゃんを助けるぞ」

 

「うん」

 

それから2人はスリングに乗ったままランボーグに接近。窓を割る形でプニバードや赤ちゃんが通れるだけの小さめな穴を開けるとそのままエルを助けるべくランボーグ内部に潜入するのだった。




また次回もお楽しみに。
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