熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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無謀なあげは シャドーの秘密

シャドー相手に奮戦したプリキュア達。しかし彼の力の前に圧倒され、とうとう追い詰めてしまう。とうとうシャドーがプリキュア達へとトドメを刺すために刀を振り上げるとあげはがシャドーの前に立って両手を広げた。

 

「あげは……さん?」

 

「ダメだ……逃げろ、あげは姉!」

 

サンライズがあげはへと逃げるように言うが、彼女は動こうとしない。そんな命知らずな行動をしているあげはを見てシャドーは問いかける。

 

「何のつもりだ、一般人。死にたいのか?」

 

「ッ……そういうわけじゃないよ」

 

「ならば何故プリキュアを庇う?死にたくないのならそこで大人しくしていれば良いじゃないか。別に俺はお前へと進んで危害を加えたいわけじゃない」

 

シャドーとしては一般人を巻き込みまくるカバトンとは違ってあくまで狙うのはプリキュアや任務として命令された攫う対象であるプリンセス・エルのみ。そのため、あげはの事は自分から出しゃばって来ない限りは彼女の事を狙うつもりは無かった。

 

「やられたく無いのなら今すぐそこを退け。そうすればお前くらいは見逃しても良い」

 

そのため、シャドーはあげはに今一度逃げるチャンスと与えると言わんばかりにすぐに退くのなら自分は手を出さないと寛容な姿勢も示している。しかし、当のあげはに退くなんて選択肢は無い。

 

「……残念だけど、それは無理な相談。私はここを退くつもりなんて無いよ」

 

「む……。それは何故だ?お前はプリキュアとは無関係な一般人だろう。本来ならここにいる事すら無いはずだ」

 

「それはそうだけど、一個間違いがあるよ」

 

シャドーからの言葉にあげはは一部を肯定しつつも一箇所だけ彼の言葉に致命的な間違いがあると指摘。それを聞いてシャドーが目を細める。

 

「……その間違いというのは?」

 

「私は……プリキュアと無関係なんかじゃない」

 

「ほう、ならばどういう関係性がある?」

 

「……ここにいる皆が私にとって大切な友達って事。カバトンに連れ去られたエルちゃんだってそう。友達がこんな目に遭ってるのに……ここで庇えなかったら私は何のためにここにいるのかわからない!!」

 

シャドーはそれを聞いて困惑する。何しろ、シャドー視点だと友達のためにわざわざ自分を犠牲にしてまで庇うという行為をあげはがするメリットが無いのだ。

 

「ッ……綺麗事を。友達のために頑張るだと?……信じられるのは己だけ……。そしてお前は戦えない一般人。そこまでして庇って……何をそんなに誇れるのだ」

 

「確かに私は戦えない一般人……でも、私には私なりにできる事があるって信じてる。そうやって自分の気持ちを貫けるって誰かに誇れる事だと思う!」

 

あげはの強い語りかけにシャドーは混乱する。確かにあげはの言いたい事はわかるしある程度なら共感もできるだろう。例えば自分の気持ちを貫く事が誰かに誇れるという点。その事に限るのならシャドーにも同じ事が言える。

 

ただ、自分の力を他人のために使って自分に何のメリットがあるのかを理解できてないためにあげはが何故戦えない身でありながらプリキュアを守るのかがわからなかった。

 

「ねぇ、あなたにはいないの?そうやって自分の事ばかりで、自分の力を誰かのために使おうって……そんな気持ちにはならないの?」

 

「……俺は1人だ。だから、この力を誰かのために使うとか……誰かのために戦うとか……そんな気持ちは不要!!」

 

シャドーはあげはからの問いをバッサリと切り捨てる。自分の力を自分のために使う。カバトンの事を助けているのもあくまでプリキュアと戦うという自分の目的ありきの行動だった。

 

「ダメです……逃げてください、あげはさん……」

 

「プリキュアじゃないのにシャドー相手に張り合うなんて無理だ」

 

「そうです!それに……シャドーが見逃してくれるって言ってるんですから逃げてください!」

 

「私達なら大丈夫だから……」

 

するとあげはが生身のままシャドーに立ち向かう姿を無茶だと感じたスノー達4人はあげはへと逃げるように言う。だが、あげははプリキュア達にそう言われても退こうとしない。

 

「そんなの嫌だよ。……私、ずっと自分だけ戦えないのが嫌だった。皆よりも大人なのに戦えなくて。本当なら私が責任を持ってどうにかしないといけないのに……」

 

「「「「ッ……」」」」

 

それを聞いてプリキュア達は一瞬止まってしまう。自分達が戦えないあげはのために頑張るのは当たり前だと思っていたスノー達4人にとって、彼女の気持ちは衝撃だった。そして、あげはは体だけ正面にいるシャドーへと向かいつつも頭は倒れているスノー達の方を向く。それから彼女達へと微笑みつつ優しく話しかける。

 

「……皆はいつも誰かのために無茶してる。だから、私にだって偶には無茶をさせて欲しい。……それに、大人にもカッコつけさせてよ」

 

「(あげは姉……)」

 

「(どうしよう……このままじゃあげはちゃんが……)」

 

あげはの覚悟を見たプリキュア達は彼女の覚悟の重さを知ると共に、このままではシャドーに敵対視されてしまうのも時間の問題だと考える。そしてそうなってしまえば……あげはは確実にやられてしまうだろう。

 

「(早く……立たないと……)」

 

「(手遅れに……なっちゃう)」

 

4人はシャドーが心変わりしてあげはを狙ってしまう前にどうにかしようと立ちあがろうとする。しかし、まだ体へのダメージは抜けてくれないためにその場から動ける状態には至らない。

 

「……なるほど、それがお前の覚悟か」

 

「ッ……」

 

「そうだよ……これが私の……」

 

「ならば良いだろう!お前の事を戦士として認めてやる」

 

「えっ?」

 

シャドーがそう言ったのに対し、あげははいきなり自分への認識を変えてきたシャドーへと困惑する。そして、事態はプリキュア達が考える最悪の方向に傾いてしまう。

 

「……戦士であるならば、俺に斬られる覚悟もしてもらうか」

 

「「「「なっ!?」」」」

 

「ッ……」

 

シャドーは改めて刀を構え直すとあげはを完全に敵の1人だとカウントしてしまう。今までシャドーがあげはを狙わなかったのはあくまで彼女の事を戦えない一般人だと認識していたからだ。

 

そして今、シャドーはその認識を改めた。あげはの事を認めた上で、戦士を相手にするつもりで彼女を倒そうとしてしまう。

 

「どうした?あれだけの覚悟を示しておきながら……まさか今更戦意喪失したなんて言わせないぞ?」

 

「ッ……そんなわけ無いでしょ。私は……ましろん達を……」

 

あげははそう言ってこそいるが、いざシャドーから敵対的な視線を向けられてしまうとやはりどうしても尻込みしてしまう。同時に自分がプリキュアに覚醒できていればという気持ちが出てきた。

 

「そうか。なら、文句は無いな?」

 

「シャドー止めろ!」

 

「あげはさん、逃げてください!」

 

「あげはちゃん!!」

 

「ダメーッ!!」

 

シャドーはそのまま容赦無く一般であるあげはへと構えた刀を振り下ろそうとする。……その瞬間だった。

 

“お願い、止めてっ!!”

 

「……は?」

 

突如としてシャドーの脳裏に響いたのは女の声。そしてそれはシャドーが今回の戦いで聞こえてくるのを待ち望んでいた声でもあった。

 

「やっと聞こえてきたか……この声の正体は……うっ!?」

 

シャドーは念願が叶ったと言わんばかりにその声に耳を傾けようとすると突如としてシャドーの頭へと電流が流れ込んだように頭が痛くなってしまう。

 

「ぐ……ううっ、何だ……これ……」

 

「シャドー……?」

 

「アイツ、いきなりどうしたんだ……」

 

その様子を見ていたプリキュア達はシャドーの変化に困惑。先程まで完全にあげはを斬るつもりだったシャドーが頭を抑えて苦しんでいるのだ。

 

「ぐ……お前は、誰なんだ……何故俺の中にこんな声が響くんだ……」

 

シャドーがそう呟くが、その答えは返ってこない。ただ、その代わりにシャドーの脳裏にある光景が浮かび上がってくる。

 

“ぐ……ううっ……”

 

その光景の中には1人の少女がいた。その少女はボリュームアップした黄色い髪にプリキュアのような衣装を着ており、少女の周りには無数のランボーグが存在している。

 

『ランボーグ!』

 

“……まだ……まだ……”

 

少女の体はランボーグからの数の暴力に晒されたせいか酷く傷ついており、息も荒げていた。

 

『ランボーグ!』

 

“ッ……!!”

 

ランボーグはそんな少女へと容赦無くエネルギー砲を放とうとする。勿論少女はこのままむざむざとやられるわけにはいかないために両腕をクロスさせて攻撃に耐えようとする。しかし、その攻撃が当たる直前。

 

“危ない!!うわぁああああっ!?”

 

“えっ……”

 

黄色い衣装の少女の目の前に割って入る形で少女への攻撃を引き受けてしまった別の少女がいた。そして、そんな物を見せられた黄色い衣装の少女の顔は絶望に染まる。

 

“あ……あぁ……。何で、何で……”

 

黄色い衣装の少女を庇った別の少女は傷つき、倒れてしまう。その様を見せつけられた黄色い衣装の少女が慌てて駆け寄る中、ランボーグからの攻撃は更に継続されそうになる。

 

““はぁああっ!””

 

だが、そのタイミングで2つの影が飛び込んでくるとランボーグ達を次々に蹴散らしていく。その2人は……スノーとサンライズに力を与えた2人。

 

キュアブリザードとキュアバーニングサンであった。どうやらこの4人はプリキュアとしてのチームらしい。ブリザードやバーニングサン、そして黄色い衣装の少女を庇って倒れた少女。この3人の行動を見て黄色い衣装の少女の中にとある強い気持ちが浮かび上がる。

 

“(今の私じゃ……皆に迷惑をかける……強くならなきゃ……強く、強く……)”

 

黄色い少女は仲間と思われる少女達に庇われ、その仲間達が傷つく様子を見せつけられる現状が嫌になる。そして、彼女の中に生まれた過剰なまでの強くなりたい気持ちは少しずつ暴走を始めてしまう。

 

ただ、シャドーの中に浮かんだのはここまで。そのため映像が途切れると彼の頭の痛みは更に強くなる。

 

「がああっ……何故だ。俺は……私は強くなったはず……」

 

「ッ……シャドー、何があったんだ……?」

 

「わからない。だけど、確かなのは……」

 

「うん、シャドーは過去に何かあったんだ」

 

“もうあんな思いは沢山なの……”

 

「なのに、なのに何で……」

 

「今の声……」

 

「シャドーの中から女の人?みたいな別の声が聞こえる……まさか!?」

 

するとシャドーの中で響いていた女の声はその場にいたプリキュア達やあげはにも聞こえるようになっていた。そして、スノーとサンライズはこの現象に心当たりがある。

 

そして、それを裏付けるようにスノーとサンライズのスカイトーンが共鳴を始めていた。

 

「スノーとサンライズのスカイトーンが……」

 

「どういう事ですか!?」

 

一方でスカイとプリズムはこうなっている理由がまだ今ひとつ掴めておらずに困惑。その瞬間、シャドーの纏っている闇の禍々しい力に突如としてチカチカと点滅するように黄色い光の力が発現し始める。同時にシャドーの姿もそれに合わせるように別の姿へ。

 

その姿というのがシャドーが脳内で見た黄色い衣装の少女であった。そして、プリキュア達はシャドーの姿の変化を受けて思わずある仮説が浮かぶ。

 

「嘘……シャドーが……」

 

「プリ……キュア?」

 

「これがアイツの本当の姿なの?」

 

しかし、シャドーの中にある力は安定していないのか。少しだけプリキュアに似た少女の姿になったものの、またすぐにシャドーとしての姿に戻ってしまう。

 

「そんなはずは無い……俺はシャドーだ……弱い自分なんてもう要らない……私は、私は……もう守られるような立場じゃない!」

 

シャドーは自分の過去を振り切るようにして無理矢理正気を保つと再度手に構えた刀を先程まで自分が攻撃しようとしていたあげはへと構えた。

 

「俺は、シャドーだ……。信じられるのは己の強さだけ……そして、立ち塞がる者は全て潰す!」

 

シャドーはそのまま生身のあげはへと刀を振り下ろそうとする。ただ、そのタイミングで4つの影が動き出すとあげはとの間に割って入り、同時のパンチを繰り出す。

 

「「「「はぁああっ!」」」」

 

「ッ!?」

 

シャドーは咄嗟に刀でそのパンチを防ぐと彼は苛立ったような目線を向ける。

 

「チッ……」

 

「悪いな、流石にあれだけ時間があったら動けるようになる」

 

「もうこれ以上はやらせないよ!」

 

「ぐ……だが、お前達如き……俺が本気になれば……」

 

“ダメだ!!それをしたら、俺は……俺は後に引き返せなくなる!”

 

すると今度はシャドーの脳裏に青年の声が聞こえてくる。その声はシャドーにどこか似ているような声だった。同時にシャドーはまた頭に痛みを感じて手で頭を抑える。

 

「ぐっ……またこんな……。これでは戦いどころでは……ッ」

 

シャドーは先程から聞こえてくる謎の声の影響で戦いをするどころの気持ちでは無くなってしまう。そして、当然こうなると彼が取る選択は一つだ。

 

「プリキュア、今日の所は勝負を預ける」

 

「ッ、待って!!」

 

シャドーはプリキュア達に背を向けるとそのまま撤退。それを見たあげははシャドーへと声をかけようとするが、彼はそのままどこかに飛び去ってしまっていた。

 

「……シャドー……」

 

あげははシャドーの事を心配したような顔を浮かべており、彼がいなくなってモヤモヤとした気持ちを抱える。

 

勿論、先程自分が狙われた時は恐怖を感じて足がすくんでしまった。しかし、それでもあんなシャドーを目の前にしてあげはは彼の事を放っておきたく無い気持ちが出てきたのである。

 

「……シャドー、あんなに苦しそうにして……どうにか、どうにかできなかったのかな」

 

同時にあげはの中にはまた何もしてあげられない自分への情けなさが浮かんでくるのだが、今はそんな事を考えている場合では無い。シャドーがいなくなったという事でプリキュア達も含めてまずは上空のランボーグに挑む事に集中せざるを得ないのだった。




また次回もお楽しみに。
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