熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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カバトンの油断 ヒョウの戦い

その頃、ランボーグ内部へと再度侵入していたツバサとヒョウ。2人は人間態に変化するとカバトンと共にいるエルを探す。

 

「ツバサ、エルちゃんはどこにいると思う?」

 

「うーん、カバトンの事だから自分のアジトに連れて行くと思うけど……」

 

しかし、もしカバトンが既にそのアジトに帰ってしまった影響でこの場がもぬけの殻になってしまったのだとしたらハッキリ言ってもう打つ手無しだ。

 

何しろ、カバトンにはワープ能力がある。もしランボーグ内部からいなくなられたら自分達だけで無くプリキュアも追跡不可能となって詰んでしまう。

 

「お願いだからまだ転移する前でいて……」

 

「ッ、静かに」

 

ツバサとヒョウはランボーグの中をできる限り音を立てないようにして移動するとツバサは自分達の進む先に何かの気配を感じた。そのため、ヒョウに静かにするように言う。

 

「ッ……うん」

 

「この先で何が……」

 

それから2人が移動した先。曲がり角を曲がった所にあったのはランボーグの制御室へと続く扉の前のちょっとした広めの空間であり、カバトンはそこでエルの閉じ込められたシャボン玉を近くに浮かせると何やら呪文を唱えていた。

 

「カバババ・カバカバ・カーバババ・ガバガバ・トトトントン・カーバカバカバ・カバトントン!」

 

すると、カバトンが謎の呪文を唱えるごとに額にある黒い宝石に怪しい赤い光が結集していく。そして、その力が最大にまで高まるとカバトンはとうとう目の前に紫のゲートを開いた。

 

恐らくそれがカバトンの言うアンダーグ帝国へと繋がるトンネルの入り口だろう。すると、カバトンはその前で膝を着くとそのトンネルに向かって話し始めた。

 

「お聞きください!プリンセス・エルを遂に捕まえました!これからそちらに連れて行きます」

 

「ッ、やばい!?逃げられるぞ」

 

「でも、今行ってもエルちゃんを取り戻せる保証は……」

 

ヒョウはこのままではカバトンに逃げられてしまうと焦るが、ツバサはまだ今無理に行っても勝ち目が無いという事で一旦様子を見るように促す。そんな中、カバトンはそのままエルを連れてアンダーグ帝国へ続くゲートへ……。

 

「……なので!約束通りも〜っとTUEEEパワーをくださいなのねん!」

 

「「ガクッ!?」」

 

入る前に何故か連れて行った後の報酬の交渉を始めてしまっていた。恐らく、会話の相手というのがカバトンの上司のようで。恐らくカバトンがスカイランドやこの世界にエルを捕らえに来たのもその者から命令なのだと2人は理解する。

 

尚、その様子をツバサとヒョウに見られているとは梅雨知らずのカバトンは完全に報酬の交渉で夢中になっており……2人が小声で話しているのも先程滑ってしまったのにも気がついていなかった。

 

「あと美味しい食べ物も100年分欲しいのねーん!あ。約束は10年分でしたけど、そこは……まぁ……俺の頑張りを評価して欲しくて!あとむっちゃ居心地の良いマイホームが欲しいのねん!」

 

このように色々と自分の欲をベラベラと喋っているカバトン。それが欲しいのならさっさとエルを連れ去って献上してしまえば良いのだが……そんな単純な事にも気がつかないくらいに油断しまくっている今がチャンスだとツバサやヒョウは認識して頷き合う。

 

「ヒョウ、今のうちに」

 

「ああ」

 

それから二人はエルを助けるために曲がり角を曲がるとエル達は2人の気配を感じて嬉しさのあまり声を上げる。

 

「える?えるぅ!」

 

「「しーっ!」」

 

今のエルの声で危うく気がつかれるかに思えたが、やはりカバトンは報酬交渉に夢中という事で……結局気がつく事は無く。2人が指を口元に当ててエルに静かにする事を促すと彼女もまたそれを真似して口元に指を当てて静かにする事を了承した。

 

「しーっ!」

 

それから2人はカバトンにバレないように忍び足で行くとエルをシャボン玉から解放。ツバサがエルを抱える形で救出する。

 

「フッカフカのベッドに〜!食べ物が沢山入る冷蔵庫!そうなると、俺様専属シェフも欲しいのねん、あとあと……うん?なんかさっきから後ろが騒がし……へ?」

 

「「「(あっ)(える)!」」」

 

だが、残念ながらカバトンにバレなかったのはここまでだった。彼はエルを助け出した際のシャボン玉の破裂音でエルを取り返された事に気が付いてしまう。

 

「あん?」

 

「やばっ!?これでも喰らえ!」

 

「え?ちょっ……ぶっ!?」

 

ヒョウは咄嗟に自分達の方を向いたばかりで唖然とした様子のカバトンの顔面へと全力で拳をぶつける。幾らパワーの差があっても流石に不意打ちで顔面をやられればカバトンでもタダでは済まない。

 

そのままカバトンはバランスを崩し、自らの丸い体で船内をゴロゴロと転がると壁に激突してしまう。

 

「のわあっ!?ぷげっ、ぶふうっ!?」

 

「ツバサ、今だ!」

 

「うん!」

 

ヒョウの機転でカバトン相手に時間を稼いだ瞬間を狙い、二人揃ってその場から逃げるべく走り出す。一方のカバトンは僅かにダメージに顔を歪めたものの、まだまだ健在ですぐに追いかけてきた。

 

「ぐぬぬ、この俺様の顔面を殴るとは……待てやこの赤ちゃん泥棒!」

 

「「いや、お前に言われたくない!!」」

 

「良いから待つのねん!」

 

カバトンからのブーメラン発言に2人は走りながらツッコミで返すと一目散に逃げる。ただ、この場所は横には逃げ場の無い一直線。単純に走っただけでは追いつかれる。現にカバトンは少しずつ距離を詰めてきていた。そんな時、ヒョウはツバサへと声をかける。

 

「ツバサ、ここは俺に任せて先に行って!」

 

「でもそれじゃあヒョウが……」

 

「大丈夫。俺でも少しなら時間を稼げるし、2人がここから脱出できれば後はプリキュアがどうにかしてくれるから」

 

ヒョウはそう言うものの、先程はカバトンを相手にした際に不意打ちだった上に顔面を攻撃したから一瞬だけとはいえ倒せたのである。真正面からやり合えばどうなるか、その前の惨敗ぶりから容易に想像がついた。

 

「無茶ですよ!だって相手は……」

 

「うん……無茶なのはわかってる。だから、後は任せたよ」

 

「ッ……まさかヒョウ、最初からそのつもりだったんじゃ」

 

ツバサはヒョウにそう言われて何かを察する。それは、先程エルを助けた際にヒョウがエルを抱くのをツバサに任せるような素振りを見せたのはこのためであると。最初からカバトンとの追いかけっこになった際に自分が足止め役を買って出るつもりだったのだ。

 

「……ヒョウ、お願いします……」

 

「うん、任せて」

 

「えるぅー!!」

 

ツバサは断腸の思いでヒョウにカバトンの相手をお願いすると彼は頷き、その場に踏み留まる。そんなヒョウを見て彼を見捨てたく無いとツバサは考えるが、それでも今は逃げるしか無い。そして、ツバサの苦しい心境を代弁するかのようにエルが叫ぶ事になる。

 

「良かった……さて」

 

「待てぇ!!お前ら、折角の勝ち逃げのチャンスを……許さないのねん!」

 

ヒョウが改めて自分達が走っていた方とは反対側を向くとそこには自分達を追ってきていたカバトンが必死の形相で向かってきていた。

 

「許さないのは俺達の方だ!」

 

「ふん、さっきあっさり俺様に負けたくせに生意気なのねん!」

 

カバトンは自分に立ち向かってくると見るとヒョウを狙いに突進してきた。これはヒョウ程度の相手ならただの突進で十分だと思っているからだ。現にスカイランドではカバトンの突進だけで肩を組んで守りを固めたスカイランドの兵士達のバリケードを一撃粉砕している。

 

「YOEEEくせに邪魔なのねん!」

 

「ッ……!」

 

その瞬間、ヒョウはチラッとある場所を見るとそこにある物を確認。同時にある作戦を思いつく。

 

「良し、これに賭ける!」

 

その瞬間、ヒョウは後ろに飛び退きつつポンと音を立てて非力なはずのプニバード姿を変える。勿論今回も先程と同じように煙幕を張った上でだ。

 

「ぶっ!?」

 

その煙幕はまたもやカバトンの視界を奪うが、今度のカバトンは先程の件もあって警戒を怠らなかった。そして、また自分の顔面に何かをしてくると読んで構える。

 

「へん、何度も同じ手を喰らうとでも……」

 

しかし、ヒョウの狙いは頭では無い。何しろ彼も先程まで何度もカバトンに対して頭を狙う形で攻撃している。そのため今回も頭狙いだと確実に対処されてしまうと読んでいた。

 

「こっちだ!」

 

「むっ、わざわざ自分の居場所を言ってくれるとは。お前がお馬鹿さんで助かったのねん!」

 

カバトンはヒョウが煙幕の中で声を出して居場所を教えてくれた事に笑みを浮かべるとその方向へ飛びかかろうと踏み込む。……だが、カバトンが足を踏み出した瞬間。何故か足元がツルリと滑ってしまうとカバトンの体が宙を浮く。

 

「……へ?」

 

カバトンが思わず唖然とする中、彼は何故滑ったのかわからずに困惑。しかし、答えは単純だった。その答えというのは何故かこのランボーグの船内に落ちていたバナナの皮である。

 

「うわあっ!」

 

「やった!」

 

ヒョウは上手くカバトンが引っかかってくれたとガッツポーズをする。この辺りはヒョウがしっかりと周りを見て何か使えるものが無いか確認。それから作戦を考えて行動したのに対し、カバトンはエルを取り返す事で頭がいっぱいであった。

 

加えて、カバトンが先程の一件でヒョウの事を恐るるに足らない存在だと思って油断したために決まった一発である。

 

「誰なのねん!こんな所にバナナの皮をポイ捨てした奴!……俺か!?」

 

「本当にお前って馬鹿だよな?さっさとエルちゃんを連れて自分のアジトに帰ってたら良かったのに」

 

どうやらカバトンが踏んで滑ってしまったあのバナナの皮は先程自分がポイ捨てした物のようだった。そんなカバトンが自分でボケて自分でツッコミを決める中、先程発生した煙が消えると人間態へとまた戻ったヒョウがカバトンの前に立つ。

 

「ぐぬぬ……だが、お前の力はさっき見た!お前みたいな雑鳥なんてさっさと倒してやるのねん」

 

「良いのか?雑鳥って侮ってると痛い目を見ると思うぞ?」

 

「だったら、まずは俺様の攻撃を受けるのねん!」

 

カバトンはさっさとヒョウを始末するために強烈な拳を繰り出してきた。しかし、ヒョウはそれをどうにか躱す。

 

「むっ、雑鳥のくせに少しはやるのねん。だったらこれでどうだ!!」

 

「っと!よっ!ほっ!」

 

カバトンは最初の一発を避けられたためにヒョウに向かって何度も何度も拳を放つ。しかし、それらは全て避けられてしまう。

 

「っ!コイツちょこまかと!!」

 

「(ッ、ユキ姉とソラさんが庭でやっていた組み手でのトレーニング。動きだけでもちゃんと見てて良かった……。これならギリギリだけど避けられる!)」

 

どうやらヒョウはユキやソラのトレーニングを見てその動きをトレースしたらしく。まだ彼女達の精度には遠く及ばないが、自分の事を舐めてかかっているカバトンの攻撃を回避するには十分だった。

 

そして、それからもヒョウはカバトンからの攻撃をことごとく躱し続けていく。

 

「なっ!?なんで避けるのねん!」

 

「馬鹿正直にお前の攻撃を受ける奴がいるかっ!それに、俺は時間を稼げば勝ちなんだ。お前とまともにやり合うつもりはない!」

 

カバトンはヒョウの言葉にイライラを募らせる。だが、カバトン自身もそれはちゃんとわかっている。このままヒョウに時間を稼がれたらツバサやエルには逃げられてしまう。そして、2人にプリキュアの元へと逃げ込まれたら自分の有利は一気に崩壊する。

 

「クソッ!だったら!俺様の奥の手なのねん!」

 

「お、奥の手!?」

 

すると、カバトンの奥の手と聞いてヒョウは何が来るか分からずに身構えてしまう。その間にカバトンは尻をヒョウへと向けた。

 

「ッ!?」

 

ヒョウは何故か自分へと尻を向けてくるカバトンが何をやらかすのかが分からずに困惑。しかしその瞬間、カバトンへと容赦無くオナラを放出。ヒョウはそれを顔面へとまともに喰らってしまう。

 

「うわあっ!?」

 

カバトンの使った奥の手ことオナラ攻撃をまともに喰らってしまったせいでヒョウはあまりの臭さに悶絶。咳き込んでしまう程だった。

 

「うぐっ……こんなのやって良い事じゃねーだろ……ゲホッ、ゴホッ……」

 

「へっ、何をしようと勝てば良かろうなのねん!今度こそ終わりだ!」

 

ヒョウがオナラの悪臭に苦しむ中、カバトンはヒョウにできた隙を突くかのように拳を振り上げる。

 

「ッ!!」

 

ヒョウはこうなってしまってはカバトンからの攻撃を回避することができず、それを受けてしまいそうになる。……その瞬間、突如としてヒョウの首から下げられていた石のカケラような物が何かに共鳴して発光した。

 

「えっ……」

 

「な、何なのねん!?」

 

そして、黄緑のオーラはカバトンの攻撃からヒョウを守るかのようにカバトンの事を一撃で吹き飛ばす。

 

「ぶはああっ!?ぐへっ……」

 

「……え?」

 

ヒョウもこれには驚いており、何が何だかわからないと言った顔つきを浮かべる。

 

「な、何これ……」

 

ヒョウがいきなり何かに反応を示した自身の首飾りに困惑。だが、カバトンが吹き飛ばされて転がった今が逃げるチャンスでもある。

 

「流石に2人はもう逃げたよね……」

 

ヒョウはもう時間稼ぎをするのは十分だという事でカバトンに背を向けるとその場から逃げ出した。

 

「あっ!待つのねん!逃げるなこの卑怯者!」

 

「だからそういう言葉をお前だけには言われたくないんだよ!」

 

カバトンはヒョウを卑怯者だも罵るが、普段から卑怯な事をやりまくっているカバトンへとまたブーメランという形で投げ返す。こうして、ヒョウは自分も脱出するべく最初に侵入する際に少しだけ割った窓ガラスの場所に向かうのだった。




また次回もお楽しみに。
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