熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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諦めかける2人 走馬灯に感じた想い

カバトン相手に時間稼ぎをしたヒョウはそろそろ先に逃げていたツバサとエルが脱出した頃だと考えつつ移動。

 

「(2人が脱出さえしてくれれば俺達の勝ち……。俺が逃げる手段は無いけど、最悪プリキュアを信じて飛び降りれば……)」

 

ヒョウとしては先に逃したツバサとエルが今の段階でプリキュアの元に逃げ込めていれば時間稼ぎとして大成功と考えていた。もしそこまで行かずとも、ランボーグから離れて地上へと向かっていれば自分達を助けようと動いてくれているプリキュアが気がつく。

 

「兎に角、カバトンはまたすぐ追ってくるはず。早く行かないと……」

 

ヒョウは謎の力でカバトンを吹き飛ばしたと言っても結局はその場凌ぎでしか無いため、完全に逃げ切るために自分達がランボーグに侵入する際に開けた窓ガラスの小さな穴を目指す。

 

「ッ!?何で……」

 

しかし、ヒョウの考えとは裏腹に……彼が窓ガラスの小さな穴を潜り抜けるとそこには先に脱出したはずのツバサとエルがまだ立っていた。

 

「ば、馬鹿!?何で逃げなかったんだよ!」

 

「やっぱりボク達はヒョウを置いて逃げるなんてできません!」

 

「える!」

 

どうやらツバサもエルもヒョウを1人ランボーグの船内に残して逃げるという選択肢は取れなかったらしく。この場所で待ってくれていたのだ。しかし、ヒョウは焦ったような顔つきを見せる。

 

「俺がカバトンにやられてたらどうするつもりだったんだよ!」

 

「そんなの、ボク達が助けに戻るだけですよ!」

 

ツバサの言葉にヒョウは自分を待ってくれた2人の心の温かさを感じつつも、今の状況からしてそんな事してる余裕は無いという気持ちも浮かぶ。

 

「ッ……ああもう!さっき俺が一回カバトンをダウンさせてきたけど、アイツだっていつまでも倒れてるわけじゃないんだ!早く行かないと……」

 

「どこだぁっ!」

 

「「「ッ!?」」」

 

3人が話をしているともう先程のダウンから復活してしまったのか……。カバトンが3人捕まえようとして声を荒げつつ追ってくる音が聞こえる。

 

「もう起きたのか……」

 

「ッ……エルちゃんだけでも」

 

「そうだな。エルちゃん!」

 

「さぁ、行って!」

 

ヒョウはこういう時に限って復活が早いカバトンに顔を顰めるとツバサの方に視線を向ける。対してツバサもカバトンが迫ってるとなると3人揃っては厳しいと判断。自身の力で空中に浮いたスリングに乗っているエルへと逃げるように促す。

 

「える!?」

 

「ダメだ。俺達は一緒には行けない」

 

「うん、エルちゃんは一人で逃げるんだ」

 

「えるぅ!」

 

ツバサとヒョウは最優先で避難させないといけないエルを逃して自分達が残るという手を取ろうとする。しかし、エルは2人をこのまま残しては行けないと首を横に振った。もし、ツバサかヒョウがプリキュアであれば任せる事もできたかもしれない。

 

だが、2人共カバトン相手には非力な一般人でしか無い。そのため、余計にエルは自分だけ逃げる事ができないのだ。

 

「見つけたぁっ!」

 

「「いっ!?」」

 

3人がそんな風にモタモタしていると、タイミング悪くカバトンが到着。すかさずプニバード2人が侵入するために開けた小さい穴を無理矢理通り抜けようとしてくる。

 

「もう逃げられないの……あれ?ふんぬぅ……」

 

ただ、カバトンの図体がデカいお陰でプニバードや赤ちゃんなら余裕で通れる穴に引っかかるとそこを通り抜けるのに大苦戦。そのため、まだ少しなら猶予がある状態だった。

 

「エルちゃん、お願い。早く行って!」

 

「俺達は置いて行って良いから!」

 

「えるぅ!」

 

ツバサとヒョウは逃げるならもう今しか無いと必死に訴えるものの、エルもやはり譲る気が無い。そのため、このままでは3人纏めて捕まってしまうと考えたツバサはヒョウを見る。

 

「ヒョウ、こうなったら……」

 

「ッ……仕方ない……」

 

それからヒョウは隙間を抜けようとするカバトンの方を向くと無理矢理抜けようとするカバトンが更に力を込めている所だった。そして、同時に窓ガラスには少しずつ外側に向かってヒビが入っていく。

 

「ぬぅ……あっ!半分抜けた!」

 

すると少しだけガラスにヒビが入って穴が拡大されたのか……カバトンの体が上半分だけ抜けてしまう。そして、このままでは窓ガラスを破壊してでも通り抜けられると思ったヒョウ。彼は咄嗟にカバトンに向かって跳び上がる。

 

「これでも、喰らえっ!はあっ!」

 

「へ?おまっ……のはあっ!?ぶひっ!?」

 

するとヒョウ渾身のドロップキックがカバトンの顔面に突き刺さると抜けようとしてきた彼を押し戻すと同時に勢いでランボーグの廊下の壁へと叩きつけさせる。

 

これによって少しだけ時間を稼ぐとヒョウはプニバードに変化。ツバサに投げ入れてもらう形でエルのスリングへと彼は収まる。

 

「ヒョウ、行きますよ!」

 

「ありがと!」

 

「後はボクが!」

 

そして、ヒョウがしっかりとスリングに乗ったのを確認したツバサはそのスリングに掴まってぶら下がる。

 

「えるぅ!」

 

そのままエルは2人が乗ったのを確認して逃走しようとする。……しかし、先程ツバサが乗っただけでも重量オーバーだったのに今度はヒョウも含めた3人分。そうなると先程以上にスピードが出ない上、スリングがフラフラと真っ直ぐ進むのも難しそうな感じだった。

 

「えるるぅ……」

 

「ダメだ!?やっぱりスピードが出ない!」

 

「ッ……1人乗りのスリングに3人乗ってるから……」

 

「痛ててっ、あの暴力小僧め……このまま逃げられると思うななのねん!」

 

カバトンはヒョウのドロップキックで痛みと共に船内に押し戻されたのを利用するとノロノロとしたスピードで逃げようとしている3人をもう一度捕まえるべく何処かへと移動。

 

「エルちゃん、これ以上スピードは出ないのか?」

 

「えるぅ……」

 

エルとしてもこのままでは捕まるためにもっとスピードを出したかったが、どれだけ頑張ってもこれ以上の速度は出ないらしく。カバトンが復活するまでの時間のアドバンテージを全く活かせていない。

 

「アイツらは……まだ近くにいるのねん!」

 

その間にもカバトンは操縦席に戻ってしまうとすかさず操縦用のレバーを操り、ランボーグを手動で動かした。そのスピードはツバサ達3人がスリングで逃げるよりも圧倒的に速い。

 

「えるるい!」

 

「ぎゃーっはっはっは!そんなノロノロスピード、すぐ追いつくのねん!」

 

カバトンは再度エルを捕まえるのも時間の問題とばかりに高笑いし、同時にツバサやヒョウもこのままではスピードの差ですぐに追いつかれてしまうと考える。

 

「(このままじゃ、折角エルちゃんを解放したのに……)」

 

「………」

 

すると、ツバサはある事を考えつくとそれを実行に移すための覚悟を決めた。そして、同時に彼はヒョウやエルに話しかける。

 

「ヒョウ、エルちゃんをお願い」

 

「ツバサ?」

 

「エルちゃん……逃げて」

 

その瞬間、ツバサはスリングから両手を離してしまう。エルが逃走するための脚であるスリングのスピードが遅いのはそこにかかっている重量がオーバーしているのが原因だ。ツバサはそれならば自分がそこから離れればかかる重量が減って素早く動けるようになると判断したのである。

 

しかし当然ながら、空の上に浮いている物体から手を離したツバサが重力に逆らうことなんてできない。また、ツバサは空を飛べないので飛ぶ事でその場に留まるという事も不可能。……ならば、手を離した瞬間に彼の体が落下を開始するのは当然の答えだった。

 

「えるるぅ!?」

 

「ツバサ!?はあっ!」

 

エルがツバサが1人で落ちた事に悲痛な声を上げる。ただ、ツバサにとって誤算だったのは彼が飛び降りた直後にヒョウもスリングから飛び降りた事であった。

 

「えるるぅ!?」

 

「なっ、ヒョウ!?」

 

ツバサやエルはヒョウまで飛び降りた事に驚いており、そのヒョウはすかさず人間の姿に変化。ツバサの元に急降下姿勢で向かうとすかさずその手を掴む形で体勢を変え、彼の元に辿り着く。

 

「ヒョウ、どうして……」

 

「お前だけ行くなんて水臭いだろ……行くなら俺も一緒だ」

 

ツバサはそんなヒョウを見て嬉しさを感じつつも、こんな窮地に陥っても尚自分が空を飛べない事に虚しい気持ちになってしまう。

 

「……そっか。ありがと、ヒョウ」

 

「うん……」

 

「……結局、空を飛ぶなんて……できなかったな」

 

「俺も……実家を飛び出してから何一つ成し遂げられなかった」

 

2人はこのままでは自分達が高所から落下死してしまうのを何となく察しており、自分達の持っていた夢は叶う事無く儚く散ってしまったのだと感じ取る。

 

「「ッ……」」

 

そのまま2人はせめて怖い思いをしないようにと諦めの意味も込めて目を瞑る。そのまま落下の勢いに身を任せた2人だったが、同時に彼等の脳裏にある光景が浮かんだ。

 

“ぎゃはははっ!”

 

“プニバード族は飛べない鳥だぞ?”

 

“じゃあ俺は、目からビームを出しちゃおっかな?”

 

ツバサの方に走馬灯として浮かんだのは幼い頃、自分が空を飛ぶという夢を周りのプニバード族の仲間達に話した際の事だった。

 

その事をどれだけ必死に伝えても、他のプニバード族の仲間は面白いジョーク程度にしか思っておらず。ツバサの夢をただひたすらに嘲笑った。

 

プニバード族にとって飛ぶというのは絶対にあり得ない夢物語。ツバサはそれでも足掻き続けたが、こんな時になっても飛ぶ事ができない自分が情けなかった。

 

一方、ヒョウの脳裏にも同じように走馬灯が映し出される。それは、ユキとプニバードの村の外で初めて出会って助けられた後の事。

 

「……家出した時はお前みたいな奴は野垂れ死ぬと思っていたが……」

 

「本当、出来損ないのくせに悪運だけはあったみたいね」

 

ヒョウを連れてユキとソラの父親がプニバードの村の彼の家へと送り届けると出迎えたヒョウの両親は早速彼の事を役立たずだと蔑んだ。同時に自分達の元に戻ってきたのを悪運が強いとまで言う始末である。

 

そして、当然家族がヒョウへと冷たい対応をするのを見たユキは思わずヒョウの両親へと必死に訴えた。

 

「どう……して……どうしてそんなこと言うの!ヒョウは、ヒョウは役立たずなんかじゃない!ヒョウは、ヒョウは強いんだよ!」

 

「くくっ、強い子であるなら私達の家から家出する必要は無いでしょう?」

 

「こんな弱虫などを庇うなんて……あなたも見る目が無いわねぇ」

 

ユキからの言葉を聞いたヒョウの家族はそんなユキさえも嘲笑う。そして、ヒョウはあの時、自分を庇ってくれるユキが罵倒されるのを黙って見ているだけしかできなかった。

 

そしてそのユキもヒョウの両親から揃って罵倒される中、震える体でヒョウの家族へと声を張り上げていた。

 

「ヒョウを馬鹿にしたらダメだよ!どうして……ヒョウのお父さんもお母さんも、ヒョウを大切にしないの!?」

 

ユキは涙目になりながらも必死にヒョウの両親を説得しようとしていた。勿論幼い頃なので感情に訴えるしか無いのだが、それでも自分の存在を認めてくれるというだけでもヒョウにとってはユキの存在は救いと言えたのだ。

 

例え両親が自分の事を否定したとしても、世界のどこかにはこんな自分をちゃんと見てくれる人がいるという事をユキは教えてくれた。その日から、ヒョウの中にユキの事を慕う気持ちが芽生えたのだ。

 

そして、同時にヒョウは閉じていた目を開ける。今の走馬灯を見る中で自分は……まだ死んではならないと本能で察したのだ。

 

「ツバサ、俺達はまだ何も終わってない!諦めるな!」

 

ヒョウは自分も落下をする中でツバサの体に手を置いて揺らしつつ声を上げた。自分が死ぬべきで無いのならツバサだって同じ事。2人揃って生きて帰らなければ意味が無いのだ。

 

「ッ……ヒョウ。でもボクたちプニバード族は」

 

ツバサはヒョウに揺らされた事で目を開けつつ彼の事を見るが、その視線は生きる事さえも半ば諦めたような物だった。しかし、ヒョウは更にツバサへと強く呼びかける。

 

「そんな事で諦めるな!飛べなかったって諦めてこのまま黙って死ぬつもりなら俺は許さない!」

 

「でも、ボクはあんなに頑張ってきたのに……結局、こんな窮地に陥っても全然ダメで……」

 

「だったら……尚更胸を張ってよ……。努力を怠って、ボーッとこの一年を過ごしてきた俺なんかよりも……ツバサは、ツバサは頑張ってきたんだから……。だからその一年の努力を否定しないでほしい……」

 

ヒョウがツバサの心に強く響せるように話しかけると最後にもう一言呟くようにある事を言った。

 

「エルちゃんの騎士になるんだろ……。こんな所で、こんな所でエルちゃんを見捨てたらダメだろ……」

 

ヒョウの顔には涙が浮かんでおり、そっとツバサの事を優しく見る。そんなヒョウの顔を見てツバサは少しだけ顔つきが赤くなった。自分でも何故そんな顔になったかはわからない。ただ、ヒョウのその言葉のおかげでツバサはまだ希望を持つ事ができた。

 

「そうか……ボクは……まだやれる。こんな所で……終わりたく無い!」

 

「えるぅーっ!!」

 

その瞬間だった、エルの叫び声が聞こえると共に2人の体が紫色のオーラに包まれる。同時に落下していたはずの動きが止まると体が少しだけ空中に浮くのを感じた。

 

「「ッ!?」」

 

そして、2人が咄嗟に叫び声を上げたエルの方を向くと彼女は自分達を助けるためにその力を使っている事を確認する事になる。




また次回もお楽しみに。
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