ランボーグから脱出後、エルを無事に逃すためにスリングから飛び降りたツバサとヒョウ。2人の脳裏に走馬灯が流れる中、ヒョウがいち早く生きる気力を取り戻すとツバサを説得。
するとその時、2人の体が紫のオーラに包まれると体の落下がいきなり止まった。
「「えっ!?」」
「えるぅ!」
2人はいきなり自分達が落ちなくなった事に困惑する。普通なら空中にいる際に自分の力で飛行できなかった場合、そのまま落下するのがオチだ。このため2人は何故こうなったのかがわからずに困惑。そしてエルの声が聞こえたという事で2人揃って上を見た。
「これって……」
「うん、きっとエルちゃんの力だ」
そして、2人の視線の先。そこでは自分達のすぐ真上までエルが浮かぶスリングを移動させた状態で2人に向かって手を翳していた。その影響でエルは自らの体や2人のプニバードに対して紫のオーラを発現させており、力を発揮していたのがわかる。
「えるぅ……!」
「エルちゃんには不思議な力があるって事は聞いてたけど……」
「うん、実際に他人に対して使ってる所を見るのは初めてだ」
今までエルが使っている能力でツバサやヒョウが実際に目にしたのはせいぜい自分の乗るスリングを浮かばせる程度。そのため、こうして他人の体を浮かせる程の能力を使ったのを見たのは初めてだった。だが、驚いている暇は無い。
「えるぅう……」
「エルちゃん……俺達を助けようとして」
「ッ、でもそれじゃあ……!!」
エルの力のお陰で2人は落下せずに済んでいるが、その間エルは2人の制御に集中しているせいでその場から動くことができておらず。そうなるとカバトンからしてみたら彼女は格好の的になるという事を意味する。
『ぐへへっ、何だかよくわからないけど追いついたのねん!』
同時に3人の上に大きな影が発生するとランボーグが丁度3人のすぐ上に被さるようにやってきてしまう。当然そうなるとエルを逃がしたいプニバードの2人はエルに逃げるように声をかける。
「エルちゃん、ボク達の事は良いから!」
「そうだよ!このままじゃ……」
「えるる!」
プニバードの2人はエルへと逃げるように促す。そうしないと自分達がエルを逃がそうとしてきた意味が無くなってしまう。
しかし、エルは自分だけ逃げるのは嫌だとばかりに首を横に振って拒絶。この様子から、エルは何が何でも2人を助けるつもりだった。
「エルちゃん……」
「くっ……せめて、俺達が自力で逃げられるだけの力があれば……」
2人はエルを守る立場でありながら自分達のせいでエルがその場から逃げられない状態に陥っているのが悔しく思えてしまう。もし仮に、今エルが力を解除してしまえば当然2人は落下死する。万が一2人生き残れたとしてもここまでカバトンに接近を許した以上、エルの方は無事に逃げ切れる保証が無い。
『掃除機光線……発射!』
そうこうしている内にカバトンは完全にエルの真上に到着したのをランボーグの下側に付いているカメラで確認。すかさず彼女を捕まえるための交戦を発射する。
同時にエルの体へと先程同様にランボーグの下側に存在する出入り口付近からトラクタービームが照射。その光に当てられたエルの体は吸い込まれ始めた。
「える!?える!?えるるぅ!!」
エルは驚きつつもどうにか自分が使っている能力は維持。そのためツバサとヒョウは落下せずに済んだものの、どちらにせよエルが完全にランボーグの中に入った時点で彼女の力が消えて詰みとなる状況は変わらない。
「「エルちゃん!?」」
『ぎゃーっはっはっは!ばーか!そんな脇役放っておいてさっさと一人で逃げておけば良かったのになぁ!』
ツバサとヒョウは為す術無く取り込まれていくエルの姿を見て叫ぶ事しかできず。同時にカバトンは先程2人が飛び降りた時点で逃げに徹すれば良かったものの、逆に2人を助けようとして捕まりかけているエルの姿を見て彼女を嘲笑う。
『ぎゃーっはっはっは!ぎゃーっはっはっはぁ!!』
カバトンは自分の勝ちだと言わんばかりに高らかに笑い、エルを馬鹿にした。そして、カバトンに嘲笑われたエルの顔を見てツバサとヒョウは目を見開く。
「「……ッ!」」
「えるぅ……」
同時にエルの更に下側にいるツバサとヒョウの顔に小さな水滴が当たる。……それは、エルが流した涙であった。エルは自分が連れ去られる事よりも目の前で困っていたツバサやヒョウを助ける事を優先。その結果、自分が連れ去られそうになって自分の無力さが悔しかった。同時にこのままでは自分は大好きな皆の元にいられなくなる。
それが悲しくて辛かった。そんな感情が湧き上がったエルの涙を見たツバサとヒョウは心の中に少しずつエルの事を馬鹿にするカバトンへの怒りが湧いてきた。それは、自分達が他人から馬鹿にされた時以上の強い感情として心の底から感じたものだ。
「「やめろ……」」
『あ?』
「「エルちゃんを……笑うなぁああっ!」」
ツバサとヒョウは胸の中に浮かんだ強い気持ちを一気に叫んだその瞬間、奇跡は起きた。
「える!?」
突如としてツバサの胸にオレンジの光が宿り、ヒョウの首から下げられていた石のカケラも再度ミントグリーンの輝きを放つとそれがヒョウの体を包み込んでいたのだ。
その光は先程までシャドーと交戦し、彼が撤退したタイミングで少しだけ失われた体力を戻るまで休んでいたスノー達4人のプリキュアやあげはの元にも届いていた。
「この輝きって!?」
「プリキュアの……輝き!」
「ツバサ君……ヒョウ!」
「2人共、やるじゃん!」
そして、プリキュアの4人がその様子に驚いているとあげははいち早く今が最大のチャンスだと考える。恐らく、ツバサとヒョウの変化にカバトンも気がつくはず。今なら地上に目を向ける暇は無い。
「皆、今ならカバトンは2人に気を取られてる。それに、エルちゃんを捕まえるために少しだけ位置も下がってるし……これならきっと届くよ!」
それを聞いた4人は頷くとすぐに空にいる3人を助けるための行動を開始しようとする。そんな時、スカイが声を上げた。
「あの!」
「スカイ?」
「……皆さんにお願いがあります!」
それからスカイ以外の4人は彼女からの頼みを聞くとそれを受け入れるように大きく頷いた。
そして、地上でそんなやり取りが起きている間にも上空ではカバトンが青ざめた顔を見せる。
「嘘だろ……?あんな雑鳥達が……プリキュアになるっていうのか!?」
カバトンがこの事実を受け入れたく無いと言わんばかりに混乱。ただ、当の2人の方はそんな奇跡が起きているという事実を自覚するよりも先に自分の覚悟を口にした。
「プリンセス……もし、ボクに最期の時が訪れたとして。その時に思い出すのはボクを笑った人達の顔じゃ無い。プリンセス、ボクを守ろうとしてくれたあなたの顔です!」
ツバサは胸に手を当てると目の前で困っているエルを助けたいという夢中な気持ちで彼女に話しかける。
すると、ツバサの胸の覚悟が具現化するようにそれはミラージュペンへと変化。そのまま彼の手に握られる事になる。
「でも、それは今じゃない。だってこれからはボクがあなたを守るんだから!」
「えるぅ……」
ツバサのエルへの気持ちに彼女は驚いたような顔を浮かべる中、ヒョウもまた強い気持ちが胸の中にあった。
「エルちゃん……ユキ姉……俺は弱いよ。でも、まだ俺の心は折れたりなんてしてない。まだ俺の価値を見出したわけじゃないし、これから沢山努力する必要はある。……だけど、こんな俺でも皆の力になりたい!」
ヒョウの方はエルへの直接的な気持ちでは無いものの、自分が憧れた存在であるユキのように誰かの力になりたいという想いを力強く決意として露わにする。
そして、それに呼応するかのように彼を包んでいたミントグリーンの光は覚醒の時を迎えた。同時にヒョウの胸の内に声が響いてくる。
『……ありがと!私の事を目覚めさせてくれて』
「(ッ……今のは……)」
ヒョウは急に聞こえてきた声に混乱しているとその声はヒョウとは違って少女の声だったものの、性格は彼と同じで強気なのか……。カッコ良い系の少女の声が更に聞こえてきた。
『その強い気持ちのおかげで……私は長い眠りから目覚める事ができた。感謝するわ』
「あなたは……一体」
『っと、今は説明している時間は無いわね。……ヒョウ、一時的にはなるけど、私の力の一部を使えるようにするわ!』
ヒョウが少女からの言葉に混乱する中、その少女はヒョウの体に更なる光を宿すと彼女の中から出ていたミントグリーンのオーラが強く輝き出す。
「チィッ!2人揃って調子に乗るな!プリキュアをこれ以上増やされてたまるかなのねん!」
カバトンはどうにか気持ちを戻すとこの覚醒しそうな2人をこれ以上調子に乗せないため、何としてでもエルを吸い込む必要があると考える。
「ランボーグ、もっと強く吸い込むのねん!」
そして彼はまるでゲームで押し合いになった際にボタンを連打するかのように掃除機光線の火力をアップさせる目的でボタンを連打。これにより、ランボーグは掃除機光線の威力を強化させる。
「ランボーグ!」
「えるぅ!?」
「プリンセス!?しまった、これじゃあ……」
これでは幾らツバサがプリキュアの力に覚醒した所でエルからスカイトーンを受け取れなければプリキュアになる事はできない。このままではエルを奪われてゲームオーバーだ。
「ひろがる!サンライズブレイク!」
すると、そのタイミングでカバトンは自分達の元にグングンと迫る何かを見つける。それはプリズムのプリズムショット、サンライズのサンライズブレイクを足場にしてランボーグに接近するスカイとスノーの姿であった。
「チッ、今更お前達に邪魔されてたまるか!!ランボーグ、バリア起動だ!!」
カバトンはエルを捕まえるために少しだけ高度を下げてしまった事を後悔するが、どちらにせよ合体技を使えないその2人ではバリアを破るのは不可能だとばかりにランボーグへと呼びかける形でバリアを起動させる。
「ランボーグ!……ラン!?」
「なっ、何でバリアの力が……」
だが、ランボーグの展開したバリアは何故か弱体化していた。こんな事になっている理由はただ一つ。
「この力……もしかして、この石の……!」
どうやら、ヒョウが纏ったオーラ……恐らく石に宿っている少女の力によってランボーグのバリアの効力が阻害されているらしい。
「ヒーローガール!スノーインパクト!」
「ぐぬぬ、だがバリアを突破できなければどうにも……」
このタイミングでスノーがスノーインパクトでスカイを更に前に飛ばす。これなら十分にスカイのパンチが届く射程圏内だ。
「スノー、サンライズ!受け取った力……使わせてもらいます!」
だが、その時。スカイがパンチを繰り出すために右腕を後ろに引くとその体に赤と白の凄まじいエネルギーが浮かび上がる。これはスノーとサンライズの合体技。エレメントスクリューの力だった。ただ、スカイはそのあまりのパワーに顔を歪める。
「くうっ……」
「ッ、やっぱりエレメントスクリューの力を1人で受け止めるなんて……」
あげははスカイが苦しんでいるのを感じて辛そうな顔を浮かべた。こうなっている理由は先程このジャンプをする前にスカイがした提案が原因である。
〜回想〜
「時間が無いので端的に言います。スノー、サンライズ。私にエレメントスクリューを使ってください」
「「なっ!?」」
「そんな、あんなのを受けたらスカイの体が……」
「そうだよ!それにスカイはここまででかなり……」
プリズムやあげはは今のスカイのコンディションでエレメントスクリューを受け止めるのは危険だと考えて反対。しかし、スカイの決意は揺るがない。
「お願いします!」
「……わかった。やろう」
「でも……」
「私達からもお願い、スカイを信じてあげてほしい」
スカイの熱意を受けて発動者であるスノーやサンライズは今のスカイなら受け止められると確信。そのため彼女の気持ちを後押しした。
〜現在〜
そして、スカイは自分が言った通りにジャンプする直前にエレメントスクリューをその身に受けてからジャンプを決行していたのだ。
「絶対に……届かせる!はぁあああっ!」
するとスカイの気持ちに応えるようにエレメントスクリューの炎と氷の力はスカイの体に馴染むとその姿を巨大な蝶のように変える。
「プリキュア!エレメント・エクスプロージョン!!」
それはプリキュア5が前にシャドウを倒す際に使ったファイブエクスプロージョンのような技であり、その威力でランボーグのバリアを粉々に粉砕。同時にスカイの拳が命中した。
「のわぁあああっ!?」
「届いた!」
「やった!」
「ああ、これが俺達の絆の技だ!」
「スカイ……良し!!」
その様子に他のプリキュア達は喜びの声を上げ、あげはもガッツポーズをする。そして技の威力による余波でランボーグはやられこそしなかったものの、その体を制御する機械に火花が走ると機能が次々と故障。一部の機能を残して壊れてしまった。そして、その影響でエルを吸い込んでいた掃除機光線も停止する。
「あ、あり得ねぇ……」
「エルちゃん、今です!」
そして、光線が止まればエルも力を行使できる。スカイに促されたエルはそのまま紫の光を収束。ツバサに向かってその光が放たれた。
「ぷいきゅあああっ!」
ツバサはエルからの光を受け取ると手にスカイトーンとして収まる。その色は夕焼けのようなオレンジ色で翼のような絵が描かれていた。
「ツバサ、行けぇえっ!」
「プリンセス・エル……あなたのナイトが参ります!」
ヒョウはその光景を見て声を上げると同時にツバサはその体を変身の光の中へと包み込む事になる。
今回、ヒョウの持っている石が覚醒して台詞を発したのでイメージCV表記をしておきます。
ヒョウの石に宿った謎の声……高垣彩陽さん
また次回もお楽しみに。