熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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ツバサとヒョウの歓迎会をやろう!

アサヒへのプレゼントを選ぶために買い物をした日の夜、ユキは一人悩んでいた。あの後、あげはからの提案が頭を離れなかったユキは結局プレゼントを選ぶことができず。あげはには申し訳ない事をしてしまったと落ち込んでおり、悩みを抱え込んでしまう。

 

「私がアサヒ君と二人きりでお出かけ……。そんなの、今の私がやって良い事なの?」

 

ユキの心は揺れていた。そもそも彼女としてはアサヒを独り占めして良いとは思っていない。アサヒに対して特別な感情を抱いているのは間違いないのだがそれがアサヒの事を好きという結論にまでは至っていないのだ。そんな中途半端な気持ちでアサヒを自分一人の都合で連れ回して良いのか。それは彼女としてはダメだと考えている。

 

「早くアサヒ君に対する気持ちに整理をつけないと……」

 

ユキの心は焦ってしまう。すると部屋の戸がノックされた。それは“おやすみなさい”を言いにきたソラである。

 

「ユキさん!入りますよ」

 

「あ、うん!」

 

ユキが戸を開けるとソラが目の前にいた。するとソラは浮かない顔をしたユキを見て気になったのか声をかける。

 

「ユキさん、どうしたんですか?」

 

「ふえっ!?な、何が?」

 

「また何か悩み事でもあるんですか?」

 

「……実は」

 

それからユキはソラに悩みを隠さずに相談した。それを聞いたソラはユキへと答えを返す。

 

「それならアサヒ君と二人きりで行ってきても良いと思います」

 

「え……で、でもアサヒ君に失礼だよ!それに私が、私なんかまだまだアサヒ君に釣り合う女の子になって……」

 

「そんな事ありませんよ。ユキさんは十分素敵な女の子です。もっと自信を持ってください」

 

ソラはストレートにそう言う。ユキは流石に恥ずかしいのか顔を赤らめた。

 

「それに、ユキさんは無理して変わらなくても今のユキさんのままで良いんですよ。アサヒ君もきっとそれを望んでいます」

 

「……今のままの私……」

 

ユキの脳裏に浮かんだのは自分といる時のアサヒの笑顔である。そして、それは今のユキに自信も持たせるには十分な内容だった。

 

「本当に私なんかで良いのかな。もし嫌われたら……」

 

「そのなんかって言葉はめっ!ですよ。それにもしアサヒ君がユキさんを泣かせたら私が何とかします。ヒョウだって心配してくれますし大丈夫ですよ」

 

ユキはソラの言葉に勇気づけられるとアサヒと二人っきりでのお出かけについて明日アサヒにお願いする事に。そして、翌日の朝。

 

「おはようございます!」

 

「おはよ、ましろちゃん」

 

「あ、おはようソラちゃん、ユキちゃん」

 

するとましろがソラへと耳打ちする。それは昨日のユキの件についてであった。

 

「ソラちゃん、ユキちゃんはどうだった?」

 

「はい。バッチリです」

 

実はソラがユキを慰めた件。ソラに慰め役をお願いしたのはましろだった。あげはからユキの買い物が上手くいかなかったという話を聞いたましろはユキが落ち込んでいると考えてユキを素直に慰められるソラにユキの相手を頼んだのだ。

 

するとユキはソワソワした様子でアサヒが来るのを待つ。しかし、アサヒはなかなか出て来ない。

 

「ま、ましろちゃん。アサヒ君は?」

 

「もうすぐ来ると思うよ。あ、それと何だけどユキちゃん。ちょっとユキちゃんやソラちゃんに相談したい事があるんだ。アサヒも巻き込むけど良いかな?」

 

「ッ……う、うん」

 

ユキは少し落ち込んだ様子になる。ユキとしては皆の前で二人きりでのお出かけの相談はやりづらい。そのため二人きりの状況を作ってから話したかったがひとまずお預けにせざるを得なくなった。

 

「お待たせ。皆」

 

そこにアサヒも到着して全員が揃ったのでましろは本題を話すことに。それはツバサ及びヒョウの歓迎パーティについてである。

 

「ええっ!?歓迎パーティ!!?」

 

「うん!新しく仲間に加わったツバサ君とヒョウ君のためにこれから頑張って行こうっていうパーティをしたいなって!」

 

「なるほど……てか、二人が仲間になってある程度経つけど今やるんだな」

 

「ま、まぁ。ここ最近は色々と忙しかったしね。でも、私は賛成だよ」

 

ユキが賛成の意思を示すとアサヒやソラ、そしてソラが抱くエルも同じく賛成という事になり、ツバサやヒョウの歓迎パーティをする事が決まった。

 

「良かったね!ツバサ君、ヒョウ!」

 

ユキがましろやアサヒとは別の方向を見てそう言ったのを見てましろが疑問を覚えてその方向を向く。

 

「……え?」

 

そこには部屋に置いてある二つの巣箱の中にプニバードの状態でいるツバサとヒョウがいた。

 

「ぼ、ボク達の歓迎パーティですか?」

 

「良いの?ユキ姉?」

 

「うわあっ!?二人共そこにいたんだ……まだ慣れないなぁ……」

 

するとツバサとヒョウはプニバードから人間の姿に変わるとましろやユキへと声をかける。

 

「あの、そんなに気を使わなくても……」

 

「ユキ姉に祝ってもらえるの凄く嬉しいよ!」

 

「ヒョウは少しぐらい遠慮してください」

 

ツバサはヒョウの肩を掴むが、ソラやアサヒはそんなの気にしていない様子である。

 

「気なんて使ってませんよ」

 

「えるぅ!」

 

「ああ。二人が加わってくれて賑やかになったしな。それに、これを機にもっと仲を深められたら最高だぜ」

 

二人にそう言われるとツバサもヒョウも嬉しさ満開である。そして、満場一致で賛成のために会が開かれる事に決定した。

 

「えるぅ!えるぅ!」

 

「早速準備だな!」

 

「ボク達も手伝います!」

 

「うん。折角だしね!」

 

するとツバサとヒョウの二人も準備を手伝うと言い出した。しかし、パーティの主役が準備するのはユキ達には抵抗があるようで……。

 

「ツバサ君とヒョウ君の歓迎パーティなんですからドーンと構えていてください」

 

「そうだよ。二人に手伝わせちゃったら……」

 

「大丈夫だよユキ姉!な、ツバサ」

 

「はい。ボク達としてもジッとしてられないんですよ。申し訳ないですし」

 

ツバサ及びヒョウの気持ちを聞いたましろはユキ達へと手伝ってもらう事を提案する。

 

「ソラちゃん、アサヒ、ユキちゃん。二人にも手伝ってもらおうよ。二人の希望を聞いてそれに沿った準備をすれば一番喜んでもらえるだろうし!」

 

「ましろの考えにも一理あるな。良し!」

 

「じゃあ決定だね!」

 

それからツバサとヒョウの意見を聞いて飾り付けの理想図が描かれていく。それは飛行機や鳥達をメインにした飾り付けであった。

 

「やっぱり二人には空がモチーフの飾り付けがよく似合うね!」

 

「じゃあ飾りはこれにするとして……」

 

「後は料理ですね」

 

「ツバサ君、何か食べたい物はある?」

 

「えっと、それでしたらヒョウの希望を聞きましょう」

 

ツバサはそこを敢えてヒョウに譲る事にした。それを聞いたアサヒ達は疑問を浮かべる。

 

「えっと、理由を聞いても良いかな?」

 

「……前に聞いたのですが、ヒョウは幼い頃からなかなか記念日に祝ってもらう事が無くて……。ヒョウの家族がヒョウを軽蔑しているのは皆さんもご存知だと思います。だからこういうぐらいヒョウの希望を聞いてあげて欲しいんです」

 

ツバサの言葉を聞いたヒョウはブンブンと首を横に振る。ヒョウとしてはツバサに譲ってもらうというのは何だかツバサに悪い気持ちなのだ。

 

「そんな、ツバサだって食べたい物とかあるだろうに……」

 

「いえ、今回はボク達二人の歓迎会です。ヒョウももっと自分の好きな事を言って良いんですよ」

 

「……じゃ、じゃあ……ヤーキターイを食べてみたい……」

 

ヒョウが言ったのはヤーキターイというましろやアサヒにとって聞いた事の無い料理であった。

 

「え?ヤーキターイ?」

 

「ソラちゃん達は知ってる?」

 

「プニバード族がお祝いの時とかに食べる料理の事ですね!」

 

「外はフワフワ。中はしっとり甘くて……ボクもスカイランドではお祝いの時によく食べてました。あ、でもヒョウは……」

 

「うん……父さんも母さんも俺のお祝いとかは素っ気なくて……祝われることはあってもヤーキターイを出してもらうとかはできなかったから……一度も食べた事が無いんだ」

 

ヒョウが言うには他の兄弟や親戚が祝われる時は出してもらえるらしいのだが、その時はヒョウはとにかくヤーキターイを食べさせてもらえなかったらしい。ここまで来るとヒョウの親の神経を疑うぐらいだとアサヒは憤っていた。

 

「今度スカイランドに行ったらカチコミにでも行ってやろうかな……」

 

アサヒがそんな物騒な事を口にする中、ユキはその場の空気を変えるために声を上げる。

 

「と、取り敢えずはヤーキターイを作るって事で良いかな?」

 

「ボクも久しぶりに食べたかったですし良いですよ!」

 

「あれ?でも作り方とかはどうするの?」

 

「そうですよ。私達、作り方とかは全然知りませんし……」

 

するとユキが小さく手を上げる。そして一同へと向かって声を上げた。

 

「えっと、私……ヤーキターイの作り方。何となくだけど……知ってるよ」

 

「「「「「……え?」」」」」

 

その場の全員が見事なハモリを見せてからユキはどうして知っているのかの理由を話す。

 

「実は幼い頃に出会ったヒョウを家に送り届けてからなんだけどね、私なりにレミさん……ソラちゃんのお母さんにプニバード族の村に連れて行ってもらって。それからプニバード族について調べたんだ。その時にヤーキターイの作り方とかも仲良くなった子達に教わったの」

 

それはユキがまたヒョウのような困り果てているプニバード族と出会った時に少しでも力になれるようにと独学ではあったが調べていたのだ。

 

「ユキさん、凄いです!」

 

「あ、でも私料理は苦手だから……作るのは自信無いけど……」

 

ユキは自信無さげに俯く中、アサヒがユキの肩に手を置くとユキはアサヒを見る。その目は笑っていた。

 

「大丈夫だ。ここには料理のエキスパート。ましろがいる。皆で力を合わせてヤーキターイを作ってみようぜ!」

 

「そうですよ!」

 

「ツバサ君やヒョウ君のためにも皆で頑張ろう!」

 

こうして、ヤーキターイを作る事に決まった一同だったが……早速一つ問題に直面した。それは材料である。

 

「えっと、生地はプニ麦粉。あんがプニの実だったから……」

 

「うん、スカイランドに行かないとまず手に入らないな……」

 

「うーん。どうすれば良いのでしょうか?」

 

「裏山に運良く落ちてたりしないかな?」

 

しかし前回のスカイジュエルとは違い、ミラージュペンによる反応を頼りにできない状況下であった。そのため、最悪材料探しだけで日が暮れてしまうだろう。

 

「皆、ヤーキターイの代わりになる物……これはどうかしら?」

 

するとそこに行き詰まったユキ達の元にヨヨがある提案を持ってきた。それはヤーキターイによく似たましろやアサヒの世界の食べ物であるたい焼きを作るという事である。

 

「ええっ!?ヤーキターイってこの世界のたい焼きそっくりだったんだ!!」

 

「でも、流石に材料が違うから同じ物を作るのは結構大変そうだよね」

 

「それでも私達は諦めません!二人のためにもヤーキターイをこのたいやき……というもので再現しましょう!」

 

ひとまずまずはたい焼きを作ってそれをツバサとヒョウに食べてもらう事から始めることに。そして、ユキ達によるヤーキターイ作りの第一歩が踏み出されることになるのだった。




また次回もお楽しみに。
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