ツバサの歓迎会の翌日。アサヒとユキの二人はソラシドモールにやってきていた。その距離は近く、周りから見ればまるで恋人のようである。
「ユキ……どこか行きたい所はある?」
「う、うん……服を見たいな」
アサヒはユキをエスコートする形で案内しており、ユキはそんなアサヒに連れられるままに恥ずかしさを押し殺しつつ歩いていた。ひとまずレディースのコーナーに行くとユキはこちらの世界の服を改めて見ていく。
「改めて見たけどこっちの世界にも沢山の種類の服があるんだね」
「そうだな。何着か着てみるか?」
「うん!」
それからユキのファッションショーが始まった。興味を持った服を次々と試着していく。するとその中でスカートの長さが短く、ユキの生脚が多く露出する物や肩出ししている物も着る。ユキが恥ずかしそうにしていたが、アサヒに見てもらうために頑張って着た。
「どうかな?アサヒ君」
「……それはダメだな」
アサヒは即答で露出の多い服を拒否。ユキはアサヒに否定されて落ち込んだような顔つきになる。
「やっぱり私は……」
「そうじゃねーよ。そういう露出が多い服は家とかで着る分には良いよ。でも、他の男にユキの肌とかをジロジロみられるのは俺としては気分が悪い……。せめて買うなら家着にしてくれ」
アサヒからの言葉を聞いたユキは少し硬直してから言葉の意味を理解。顔が真っ赤に染まると恥ずかしさのあまりにすぐに着替えをしてしまう。
「(……ごめんな。でも今のユキ。すっごく可愛かった……。本当は褒めたかったんだけどな)」
アサヒとしては今の場面でユキを褒めるつもりだった。しかし、他人にユキをジロジロ見られるような事はされたくないと思ってしまう。
「やっぱ俺はユキが好きなんだな」
アサヒがボソッとそういう中、ユキは着替えが終わって出てくる。そして二人はまた別の場所へと移動を開始した。
「アサヒ君……さっきは……」
「いや、俺も頭ごなしにユキの気持ちを否定した。ごめん」
「ううん。アサヒ君が私の事をちゃんと考えてくれていて嬉しい」
それからアサヒは続いて映画へと見に行く事にした。当然スカイランドから来たユキは映画を知らない。そのためにアサヒは映画について説明する事にした。
「えっと、テレビよりも大きな画面と音で映像が見られるって事で良いのかな?」
「大体はそんな物だな。えっと、ユキが見たいジャンルとかある?」
「……じゃ、じゃあ。これとか?」
ユキが選んだのはラブストーリー系の物だった。アサヒはそれを見て一応ユキに確認を取る。
「これか。えっと、これは恋愛系の映画だけどユキが見たい物に合う?」
「うん。……色々と参考になるかもだし」
ユキの言う参考というのは何のために使うのかアサヒは少し気になったがユキの見たい物という事で行く事にした。
そして、映画の座席選びにポップコーンやドリンクについて。アサヒはユキが知らない事を幾つも教えた。それから二人で映画を観るとユキは満足したような顔つきになる。
「ユキ、どうだった?」
「とても面白かったよ!それに……まさかあの人かあんなに積極的に行くとは思わなくて……」
それから二人はモールを歩きながら映画の話で盛り上がる。アサヒはユキの幸せそうな顔を見て内心嬉しかった。
「(ユキがお出かけを楽しんでいるようで良かった。このまま何事もなくユキには良い思いをして帰ってもらいたいな……)」
するとアサヒはユキを相手にし続けて緊張感が出てきたせいかトイレがしたくなってしまう。
「ごめんユキ、トイレの間少しだけ待ってくれるか?」
「うん。良いよ」
それからアサヒは一度トイレに入ってから用を済ませて出て行こうとする。この間時間にして僅か五分足らず。その間に事態は急変する事に。
アサヒがトイレから出てくるのを待っているユキは一人考え事をしていた。それは、アサヒに対する自分の気持ちについてだ。
「アサヒ君、私のために色々と頑張ってくれてる……。私の行きたい所に行かせてくれたり、映画を教えてくれたり……ちゃんと私が楽しめるように案内してくれている。……嬉しいな」
するとユキの心にポカポカと温かい気持ちがとめどなく溢れてきた。アサヒといるこの時間が楽しいとユキは思い始めたのだ。
「アサヒ君……。もっと一緒にいたいな……。でも、この気持ちをアサヒ君に伝えたら迷惑するんだろうな」
ユキが少し落ち込んだ気持ちになるとユキの前に三人の人影が現れた。
「ッ!?」
ユキが慌てて顔を上げるとそこには自分よりも背の高い高校生ぐらいのチャラそうな格好をした人が三人でユキを壁に追い詰めて囲む。
「ねぇねぇ、君。可愛いね!」
「俺達と遊ばない?」
「今一人でしょ。一緒に行こうぜ」
ユキは三人を見て恐怖心が芽生える。いきなり現れてこのような事を言われれば当然困惑するし怖くなるだろう。
「い、いえ……友達がいますから」
「マジ!?友達もいるんだ!」
「じゃあその子も含めて遊ぼうぜ」
しかし、ユキが断っても男達はユキを誘うのをやめない。それどころか遊びの相手が増えてラッキー程度に思われているのか更に詰め寄ってきた。
「ねぇ、連絡先交換しよーよ」
「君みたいな子。滅多にいないからさ」
そう言ってユキへと手を出そうとする。その時だった。アサヒがトイレから戻ってきたのは。
「あの、すみません。この子は俺の友達なので」
すると男であるアサヒが割り込んだからか男達はあからさまに嫌そうな顔つきになる。
「あん?チェッ。友達って男かよ」
「こんな奴よりも俺達の方がイケてるし〜」
「雑魚はさっさと向こうに行けよ」
そういって男達はアサヒを追い出そうとするために手を伸ばす。しかし、アサヒはその腕を掴むと思い切り力を込めて締め上げる。
「ッ!?痛ででっ!?」
「おい。ユキは嫌がってるだろ。女の子の気持ちの一つぐらいはしっかりわかってやれよ」
「ッ……テメェ、言わせておけば!」
「というか、お前はこの子の何なんだ!」
男達がそう問い詰める中、アサヒは一度溜息を吐いてからユキをチラリと見やるとユキは怖さからかガタガタと震えている。するとアサヒは躊躇なくユキの手を繋ぐ。
「俺はこの子の……ユキの彼氏だ。女の子が欲しいのなら他を当たってくれ」
そうアサヒは言い切ると唖然とする男達を置き去りにするとユキへと声をかける。
「ユキ、歩けるか?この場から離れるよ」
「う、うん」
ユキは涙目になっている中、アサヒはユキに促すと二人でその場から急いで逃げていく。そして、ある程度離れてから近くにあった休憩用のベンチに二人で腰掛けるとアサヒが震えが止まらないユキを気遣うように声をかける。
「大丈夫か?ユキ」
「アサヒ君……怖かった……怖かったよぉ……」
するとユキはアサヒへと抱きつくと堪えていた涙を流して泣き始めた。ユキにとってはかなりの恐怖だったらしい。アサヒはユキを優しく撫でるとユキの気持ちが落ち着くまで付きっきりで相手をした。
「アサヒ君……ごめんなさい。私のせいでこんな……」
「良いよ。悪いのはアイツらだし。あ、それと俺の方こそごめん。勝手に彼氏だなんて言っちゃって……ユキの方こそ嫌な気持ちになったよな」
するとユキは頭をブンブンと横に振る。アサヒはユキのそんな反応を見て安心したのかホッとした。取り敢えず嫌がられてはいなかったみたいだ。それから落ち着いたユキはアサヒへと提案した。
「アサヒ君。そろそろアサヒ君の行きたい所に行こ?」
「え?良いのか?」
「うん。アサヒ君にばかり気を使わせるわけにはいかないよ」
ユキがそう言ってアサヒの手を引く。それを見たアサヒはユキの気持ちがちゃんと落ち着いたと感じ取り、それからアサヒの行きたかった場所。カラオケへと向かった。
それから二人でカラオケで歌っていると嫌な雰囲気がいつの間にか無くなっていく。
「ユキ。楽しい?」
「うん!あの、さっきはありがと。私、アサヒ君に助けられてばかりだね」
「いや。ユキにはちゃんと楽しんでもらいたい。昨日ユキは勇気を出して俺を誘ってくれた。だったらユキを精一杯楽しませられるようにするのは当然だよ」
「そっか……。アサヒ君は優しいな……」
するとユキは胸の鼓動がどんどん早くなるのを感じた。そして彼女の気持ちはある感情に染まっていく。
「(……あれ?何でだろ……。アサヒ君の事を考えただけで胸がどんどん高鳴って……)」
そして、カラオケも終わりアサヒとユキはソラシドモールを出るとPrettyHolicへと向かっていく。それから店の中に入るとユキのためのメイク道具を見る事に。
「アサヒ君。良いの?こんなに私の事ばかり……」
「良いよ。今日はユキのために何でもするって決めてるし」
「で、でも……」
ユキはアサヒに無理をさせていると遠慮しようとする。しかし、アサヒの気持ちは変わらない。
「……俺はユキに笑って欲しい。ユキは笑っている時が一番可愛いし、その方がユキにとって最善だと思うからだよ」
ユキの胸はそれを聞いて更により一層高鳴る。そして、ユキはこの感情が何なのかとうとう自覚した。
「(そっか……私。アサヒ君に惚れているんだ……。アサヒ君が異性として大好きなんだ。私の事をちゃんと見てくれる人だって、信頼できる人だって思っているんだ)」
ユキが自分の気持ちに整理がとうとう付いた。自分はアサヒに恋している。そう自覚すると同時にユキにはある感情も湧き上がる。
PrettyHolicでの買い物も終わり、アサヒとユキはカフェに寄ると二人は頼んだ飲み物を飲みつつ雑談をしていた。そんな中、アサヒはユキに向き合うと真剣そうな顔つきを向ける。
「ユキ。俺、ユキに言いたい事があるんだ」
「……え?」
するとアサヒはユキへと自分の気持ちを包み隠さずに言う事にした。そして、それはアサヒがユキへと歩み寄るために必要な事である。
「ユキ、俺はユキが異性として好きなんだ。ユキといると心が温まるんだ。今日もユキの笑顔を見るだけで満足した気持ちになれて……。だから、俺と付き合って欲しい。ユキの事は絶対に俺が守るって約束する。どんな時でも側に寄り添って支えるから」
アサヒは顔を赤くしながらそう言った。アサヒからの熱烈な告白を受けたユキは驚いた様子であり、そして少しだけ考えた彼女はアサヒへと赤くなった顔を向けつつ告白に対する返事を返す事に。ユキは赤くなった顔つきをそのままにアサヒの気持ちに向き合うべく告白の返事を言葉として言うのであった。
また次回もお楽しみに。