靴屋さんから虹ヶ丘家に戻ってきた一同。エルはお気に入りの靴が手に入って大満足で寝る中、ソラは先程の女性の事を絵に書いて浮かない顔をしていた。
「断るべきでした……」
「……」
ソラの言葉にユキも無言で頷く。そして、ソラは更に言葉を続けていく。
「きっと、何か事情があったんです。それなのに……未熟」
「今度どこかで会った時に改めてお礼を言おう」
「そうですよ」
ましろとツバサからの提案にソラは首を横に振った。そして、ある事を言い出す。
「いいえ!今すぐあの人を探しに行って靴を返しましょう!」
「うーん、確かにそれが正論ではあるけど、エルちゃんはどうするの?」
ヒョウの言う通り、エルは完全に靴を気に入っている。今取り上げればエルは必ず泣き喚き駄々をこねるだろう。
「その時は私が街で探してくる」
「俺も行くよ。二人で探せばきっと……」
するとそんな中、何かの波動が響いてきた。そして、六人がそれに気がつくと波動のした方向を向く。
「ッ!今の何?」
「ヨヨさんの部屋の方から……」
「今は行くしか無いか」
六人はエルと共にヨヨの部屋の扉を開けるとその中に入った。そこにあったのは部屋の奥に見える青い輝きを放つ何かの空間である。
「おばあちゃん大丈夫?」
「「「「「「!!」」」」」」
六人が驚く中、ヨヨとかけるがミラーパッドから発せられる青い空間を見つめており一同が入ってきたため振り向いた。
「トンネルの入り口」
「色は違うけど、私達がここに来た時と同じ……」
「エルちゃんが歩いた時にヨヨさんが伝えようとしていたのはこれの事なんだ」
「約束通りに完成させたわよ」
かけるが手伝いヨヨが完成させたのはスカイランドに繋がるトンネルの事であった。
「えるぅ〜!」
するとエルが早くスカイランドに戻りたいとばかりに手を伸ばして声を上げる。しかし、ユキとアサヒは何かを思ったのか暗い顔つきに変わった。
「これでエルちゃんをスカイランドに、お家に返してあげられます!」
そして、ヨヨはスカイランドにいる国王、そして王妃と通信を行うとトンネルが繋がったと報告する。
『トンネルが繋がった!?それは真か。ヨヨ殿!』
「はい。王様」
『どこだ?どこからプリンセスは帰ってくるのか?』
『ヨヨさん、一刻も早く……』
「お二人共、落ち着いてください。安全のために少しばかりミラーパッドを調整する必要があります」
『どのくらいかかりますか?』
「ええ……」
ヨヨは王妃からの言葉を聞いてからユキ達をチラリと見ると王妃へと答えを返した。
「明日の夕方には」
『おお。頼みましたぞ』
『プリンセス、待っていますよ』
「えるぅ!」
その言葉を最後に通信を終えたヨヨ。そして、彼女がユキ達に向けて大事な話をする事になる。
「さて、皆聞いて頂戴。アンダーグ帝国はこれからもきっとエルちゃんを狙ってくるでしょう。戦いの場所はこのソラシド市からスカイランドに移る。……でも、ましろさんにアサヒさん、かけるさんはスカイランドでは暮らせない。……ここにはいないひかるさんもね」
それを聞いた一同はハッとする。それはつまり、今まで一緒に暮らしてきた大切な友達との別れを意味していた。
「ソラシド市で学校に通わないといけない。勉強もしないといけない。それに……」
「ランボーグがエルちゃんを襲ってきたら私、トンネルを使ってすぐにスカイランドに助けに行くよ!」
「……俺はもうプリキュアにはなれないけど、避難誘導とかぐらいならできる。だから俺も力になれる所はなるさ」
ましろ、アサヒがそう言うとヨヨも頷くと共にそうして欲しいと付け加える。だが、それでも運命は変わらない。どうしても友達とは別れないとならないのだ。
「そうね。そうして頂戴。でも、一つ屋根の下。皆で暮らすのは明日でお終い。寂しいけれどね」
「える?」
ヨヨの言葉にまだその意味がわかっていないエルが首を傾げる中、ヨヨが更に提案する。
「ここにはいないあげはさんにひかるさんを呼んで夜はご馳走にしましょう」
「えるぅ!」
無邪気なエルはそれに喜ぶ中、他の面々は素直にそれを喜べずにいた。かけるも内心は複雑な想いである。それから一同が解散になるとユキはましろへと話しかけた。
「ましろちゃん」
「何?」
「………お料理、手伝っても良い?ましろちゃんに色々教えてもらった今ならきっと……できる気がする」
「うん!良いよ!」
ユキはこの世界に来てからましろに料理を教わり、少しずつ腕を上げていた。今ならテンパる事なく料理を作ることができる。そして、その日の夜。二つの机を縦に並べた状態でそれを囲んでユキ達は食事を摂る。そんな中、あげはとひかるが口を開く。
「そっか。帰っちゃうんだ」
「エルちゃんをお家に帰してあげる。そのために頑張ってきたんですから」
「それはそうだけどさ……」
「多分、並行世界ではらんこさんもきっと寂しがっているんだろうな……」
「あはは、ひかる君はすっかりらんこちゃんにご執心だね」
「やれやれだ」
そんな事を言う間にあげははましろやアサヒへと声をかける事になる。
「ねぇ、ましろんにアサヒ。明日どうするの?」
しかし、二人は固まってしまうと返事が僅かに遅れてしまう。それを気にしたあげはが声を上げた。
「……二人共?」
「「へ!?ああ!」」
「明日は一緒にエルちゃんを送り届けて、ちょっと観光だけしてから帰ってくるよ!丁度学校もお休みだしさ!」
「スカイランドには俺達の知らないような物が沢山ありそうだしな。あはは……」
二人がそう言う中、あけばは無言でそんな二人を見ていた。そして、ご飯を食べ終わった後。それぞれが順番にお風呂に入るという事になった。そんな中、ツバサがヒョウへと声をかける。
「ヒョウ、今日は一緒に入りませんか?いつもバラバラですし偶には」
「あー、ごめん。俺は一人で入らせて欲しい。……恥ずかしいし」
ヒョウがそう言う中、ツバサは疑問符を浮かべる。別に一年間一緒に過ごした仲なのだから今更恥ずかしがる理由があるのかと気になった。しかし、ヒョウの目は聞かないでほしいの一点張りだったために断念する。
「ねぇ、かける君」
「あげはさん?」
「……一個、お願いがあるんだけど」
かけるはあげはから何かを言われるとそれに頷き、受け入れる。そして、時間は経ち皆が順番にお風呂に入ってからあっという間に就寝時間になってしまう。
「ぐがー。ぐがー。ぐがー」
とある一室ではかける、アサヒ、ユキが寝ており、その中でかけるが大きないびきを立てて寝ていた。そのため、アサヒとユキは眠れずにいる。ちなみに他の部屋はツバサ、ヒョウ、ひかるの三人とソラ、ましろ、あげは、エルの四人で別れていた。
「……かけるさんってこんなにいびき凄かったっけ?」
「初めてじゃないかな……あ。でも、今日は忙しそうだったし疲れたのかも」
二人がそう話す間もかけるのいびきは続く。二人の心は少しずつ心細くなっていた。
「本当にこれで最後なんだよな……」
「うん……。でもさ、私達。離れていてもお互いが大好きだよね。だから……」
「ああ。二人でまた会って……いつか幸せになろ」
それにユキは頷くがそれでも目の前に迫る別れにどうしても気持ちが入らない。そんな二人を見たかけるは薄目でチラリと見ると叫ぶようにいびきをかき始めた。
「ぐがーっ!ぐがーっ!」
「もう、これじゃあ眠れないよ」
「……てかこれわざとだよな?」
しかし、アサヒとユキはかけるが二人に何をして欲しいのか何となく理解すると二人はアイコンタクトを取る。
「ちょっと外に出よっか」
「うん。そうだね」
二人が外に出ていくとそのタイミングで廊下でソラやましろと出会った。
「あ、ソラちゃん」
「ましろも」
「あはは、偶然タイミングが合っちゃったね。実は……」
「あげはさんが物凄いいびきをかくものですから外に行こうと」
それを聞いて二人共デジャブを感じるが取り敢えずは外に出ると夜の星空を見上げながら話をする事になる。
「初めて来た時は魔法の世界かと」
「そんな事言ってたね」
「ソラちゃん、凄いテンパってたし」
「ユキもでしょ。まぁ、俺達もいきなり現れた二人にびっくりしたし」
「あはは。でも何だか今はここがもう一つの故郷みたいに思えます。そんなに長い間暮らしたわけじゃないのに」
二人で話しているとソラはハッと我に帰ると三人に謝ることにした。
「ハッ!ごめんなさい!またすぐに遊びに来ますから!」
「うんうん!」
「明日、靴を譲ってくれた人を探しませんか?」
二人がそう言い合う中、アサヒとユキはそんな二人を見つつユキの方が小さくアサヒへと問いかける。
「……アサヒ君」
「ユキ?」
「手……繋いでも良い?私……どうしても……」
その顔は心細くて堪らないと言わんばかりでアサヒはニッと笑うと頷く。
「良いよ。ユキ……」
それから二人は手を繋ぐとユキは必死に何かを堪えていた。そして、そんなアサヒもユキのその感情のトリガーを引いてしまわないようにできる限り平静を保つ。そんな中、あげはとかけるは部屋からその様子を見ていた。
「……これで良いんだよな?あげはさん」
「うん、ありがと。でもさ……四人共良い子達すぎるよ」
「……大切な人との別れだしもっと感情的になってたら良いと思うんだけどな」
二人がそう言う中、四人は寂しさを必死に堪えているように見えてならなかった。やはりどうしてもこの辺りは相手を想うばかりに自分がちゃんとしようと思うのは仕方ないのかもしれない。
そして、ひかる達の寝る部屋ではひかるが一人らんこの事を考えながら熟睡。そしてツバサとヒョウの二人も人間の姿の状態のまま別々の布団で寝ていた。
「らんこしゃん……むにゃむにゃ」
「ねえツバサ。起きてるか?」
「はい……」
「ツバサはスカイランドに戻ってどうするの?」
「……ボクはプリンセスの騎士になるのでやっぱり王城に勤めますかね」
「良いな……多分俺はスカイランドに居場所なんて無いよ」
それを聞いて思い出す。ヒョウは元々エリートの家に生まれた出来損ない扱いをされている子だと。
「そんな事は無いと思いますよ。ヒョウだって……」
「……ツバサは優しいな。こんな落ちこぼれの俺とも仲良くしてくれて」
「ヒョウ。……ボクと一緒にプリンセスを守る仕事をしませんか?」
それを聞いてヒョウは目を見開く。まさか自分がそんな事に誘われると思わないからだ。
「………良いの?」
「はい、ボクもヒョウと一緒ならきっと何だってできる気がしますし」
それを聞いたヒョウはツバサの布団に移動すると手を繋ぐ。その顔はわずかに赤かった。
「ヒョウ?」
「ごめん……今日はこのまま寝させて」
それから夜は更けていく。それぞれの一夜が終わり、翌日の朝になるのであった。
また次回もお楽しみに。