シュラが降臨してしまうまで残り目盛り数5。しかも彼の配下である四剣刃を相手に苦戦してしまうプリキュア達。しかし、それでも彼女達は諦めない。
「まだ……まだっ!」
「ほう。まだ立つ事ができるか」
「あなた方の好きにさせるわけにはいきません!」
「ふ〜ん?これだけやっても立てるだけの力はあるのね」
「アンタ達なんかに……この世界を奪わせるなんてさせるわけ無いでしょ!」
「へぇ、やる気十分か。ならもう一度そのやる気をへし折ってやるよ」
サスケ・ベンケイ・オクニの3人を相手に啖呵を切るのはそれぞれのチームのリーダーであるピーチ、ブロッサム、メロディの3人。そして、スカイも同じように声を上げる。
「いいえ、ここからは私達の番です!」
そして、最後の方面であるシャドーの方もプリキュア達が立ち上がろうとするのを見て彼は刀を構える。
「む……しぶといな。この俺の技を受けてもまだ動けるだけの元気があるとは」
「……なぁ、シャドー。お前、やっぱ変だぞ。いつもなら俺達と戦うのを嬉々とした様子でしていただろ。それなのに、こんな殺戮マシンみたいな無表情で淡々と戦うのは……お前らしく無い!」
「何を言うかと思えば……俺は何も忘れてなどいない。シュラ様のため、邪魔をしようとするお前達という存在を排除するだけだ」
サンライズからの言葉も虚しく、シャドーは平然とした様子で今の状態を受け入れていた。
「マジか……。全然思い出さないな……。これ下手したら他人の空似的な感じでシャドーとは別人だったりするのかな?」
「ううん。確かに本人は否定してるけど、あの素早い対応力に手に持っている太刀。それを振るうキレ。どう見てもシャドー本人以外あり得ないよ。いつもと違うならそれはあの黒い仮面だけだし……」
サンライズはあの黒仮面の男の否定っぷりにシャドーとは別人説を考えるが、幼い頃からトレーニングをしてきたスノーの目は誤魔化せないのか。あの黒仮面の男はシャドーだと断定する。
そして、そんな2人のやり取りにパッション達は気になった点を挙げていく。
「そういえば、さっきから話しているその黒い仮面……普段のシャドーは着けてないの?」
「そうだな。黒い仮面は今日初めて着けていた」
「……だとしたら、それが原因でおかしくなってるなんて事は無い?」
「「……あっ!」」
2人はムーンライトからの鋭い指摘を受けて“ハッ”とする。言われてみれば、シャドーが記憶を無くしたような発言をし始めたのは黒い仮面を装着した後。そして、サンライズは先程黒い仮面に邪悪な力が強く宿ったのを見ている。
これはつまり、シャドーの異変の正体はあの黒い仮面の中にあると考えるのが正しいだろう。
「なるほど、確かにその視点は無かったかも」
「だとしたらやる事は一つね。あの黒い仮面……アレを破壊すればシャドーを正気に戻せるかもしれないわ」
ミューズの言葉に2人は頷く。ただ、正気に戻した所で一つ問題がある。それは、シャドーは洗脳される前もスノーやサンライズ達プリキュアの敵であるという点だ。
もし仮に洗脳解除後も自分達と戦うなんて言い出したらもっと面倒な事になりかねない。
「まぁ、仮にシャドーを正気に戻せてもアイツに退いてもらわないといけないけどな」
「だったら、仮面の破壊と並行してシャドーにダメージを与えないとね」
「うん。皆、頑張ろう!」
「勿論よ!」
「そうね!」
スノー達5人はダメージを振り切って立ち上がる。そして、シャドーの後ろに控える剣を早めに破壊するためにもまずは彼を撤退に追い込む方向で動き始めた。
対してシャドーもまた立ち向かってきたプリキュア達を見て僅かに顔を歪める。
「チッ、あくまで俺を倒すつもりか。ならば、こちらも全力で潰すまで」
同時刻。シャドーを抑え込むためにスノー達が動き始めたタイミングでスカイ達が対峙するベンケイとの戦いも再開されていた。
「「「「はぁあああっ!」」」」
「ふむ、立ち上がったのは褒めてやるが……そんな雑な戦い方では我を倒すのは不可能だ!」
ベンケイはスカイ達4人が力押しとばかりに4人で正面からただ連続攻撃を仕掛けるだけだったために大剣で防御するのみで攻撃を全て受け切ってしまう。
「例え私達の攻撃が通じなくたって!!」
「前向きな気持ちさえあればいつか届くって信じてるから!」
「ふん。根性論で我を倒せると思うな!」
ベンケイは目を光らせると4人の足元から岩の棘を生やして貫こうとする。ただ、これはスカイが地面を踏み込んだ瞬間にそれを察知した。
「下です、皆さん!」
「「「オッケー!」」」
ピーチ、ベリー、パインの3人はそれを受けてバラバラに跳び上がるとピーチがベンケイの裏側、ベリーが左側、パインが右側に陣取るとスカイと合わせて4人での同時キックを放つ。
「「「「プリキュア!コンビネーションキック!」」」」
「効かん!」
すると、ベンケイはまさかの大剣を真上に放り投げた上で攻撃をまともに受ける。ただ、やはりその強靭な耐久性は健在なのか。あまり効いていなかった。
「ふははははっ!そんな物では傷一つ付かないぞ、プリキュア!」
「本当に固い……」
「どこかに弱点は無いんでしょうか……」
「そんな物を探しても無駄だ。何しろ、この俺に弱点と言える場所など存在しない!」
ベンケイは自らの肉体が持っている絶対的な防御力に自信を持っていた。同時にそれを使えばどんな攻撃も抑え込めてしまうと。
「ぬん!」
「「「「うわぁああああ!?」」」」
そのまま4人を押し返すと先程投げ上げてから落ちてきた大剣をキャッチ。すかさずそれを振り抜く。
「ッ!!」
それのターゲットにされたピーチはギリギリで回避するとベンケイから一旦距離を取る。それに合わせて他の3人も一箇所に集まった。
「どうする?このままでは埒が明かないぞ?」
「あの防御力を崩すための何か……」
「だけど、ベンケイに弱点みたいなのは無さそうです。一体どうすれば……」
スカイがどうやって弱点の無いベンケイを崩すべきなのかわからず、ひたすら打開策を考える。ただ、このままでは彼を倒す前に時間が来てしまう。
そんな時だった。ピーチは笑顔を浮かべるとベンケイを見ながら3人に話しかける。
「……だったらさ。弱点が無いなら……作っちゃおうよ。その弱点を!」
「えっ?弱点を作る……」
「なるほどね。流石ピーチ」
「それならきっとどうにかできるよ!」
スカイが困惑する中、ピーチ、ベリー、パインの3人は早速動き出す。それを見たベンケイはすかさずそれを迎え撃つために大剣を地面に突き立てた。
「無駄だ!」
その直後にピーチ達の足元からエネルギーが噴き出すとその姿を呑み込む。
「他愛も無いな……ッ!?」
ただ、ベンケイが3人を一瞥した瞬間。そのエネルギーを突き破る形でピーチ達3人は飛び出すと一気に距離を詰めていく。
「チッ。だが、その程度でどうにかできると思うな!」
ベンケイは地面に突き刺した大剣を引き抜くとすかさずそれを上段に構えてから振り下ろす。すると、太刀の威力によって衝撃波が発生。3人の元に向かって飛んでいく。
「「「はっ!」」」
だが、3人はこれにも対応する形でベリーが斜め前方向にジャンプ。ピーチがサーカスの輪くぐりのような体勢でジャンプしつつ飛び込み。パインがスライディングで斬撃波を回避。
「何だと!?」
「凄い、こんなにも息ピッタリと」
「だ、だがこんなにも近づいたら……」
スカイが3人のチームワークに感心しているとベンケイはプリキュア達を止めるためにすかさず手にした大剣でその射程内の3人を薙ぎ払おうとする。
「遅いよ!」
「「「プリキュア!トリプルアタック!!」」」
しかし、もうここまで接近するとベンケイが太刀を繰り出すよりもプリキュア達が攻撃する方が早い。ベンケイが自身の右側から大剣を振おうとするとその関係で前に出てしまっている彼の左肩を目掛けてベリーの急降下キック。前に飛び込んで体勢が低くなっていたピーチを下からのアッパーカット。
そしてスライディング体勢からすかさず起き上がったパインの上段蹴りの3人同時攻撃がベンケイの無防備な左肩に集中的に突き刺さる。
「むぐあっ!?」
「ッ!ベンケイの防御力を突破した!?」
流石にここまで至近距離かつ3人同時。そしてベンケイの不意を突いた同じ場所への一点集中攻撃を受ければ彼も涼しい顔はしていられないらしい。そのためベンケイの顔が歪むと彼が後ろに押し戻される。
「チィッ……この我に痛みを与えるとは。だが、お前達の攻勢もここまでだ。ここからは再び我の番だ」
「「「くっ……」」」
だが、この程度でやられる程ヤワでは無いと言わんばかりにベンケイは3人からの同時攻撃に耐え切ると先程プリキュア達に大ダメージを与えた技を使おうと彼は構える。
「不味い……ここは私がカバーを……」
スカイは突出してしまった3人を助けるために唯一自由に動ける自分が飛び出そうとした。だが、少し前まで傍観者になってしまっていたせいで今から飛び出しても間に合わない。
「今度こそ終わりだ。剛力・巨岩ざ……ぐうっ!?」
その瞬間、ベンケイが両手で構えた大剣を振り下ろそうとした時。突如としてベンケイの左肩に痛みが走ると揺らいでしまった影響か……必殺の一撃が露散してしまう。
「ぐ、これは……」
「えっ!?」
スカイはいきなりベンケイが体勢を崩した事に驚いたような顔を見せる。そして、ベンケイは苛立ったようにピーチ達を睨んだ。
「まさか、お主達……」
「そうよ。あなたのその固い体に弱点が無いから弱点を作らせてもらったわ」
ベンケイの防御力は絶対的。だから正面からただ攻撃をするだけでは簡単に凌がれてしまう。しかし、ベンケイもその絶対的な防御力に自信を持っているからこそ生じる彼の油断。
その油断を突く形でベンケイの体の同じ場所をピンポイントで集中攻撃。一箇所だけに局所的なダメージを与える事で弱点が無かったベンケイの肉体に大きな弱点となり得る場所を作り出したのだ。
「チッ……まさかこんな事になるとは。しかもよりにもよって厄介な場所に……」
しかも、プリキュア側が狙ったのは大剣を振るう上で必要な肩という部位だ。これだけで左腕は大剣を握る上での大きな足枷となる上にあの大剣を片手持ちになったらなったらでその威力は大きく落ちてしまう。
「まさか、このような事になるとは」
「凄い連携力です。あんなにピッタリのタイミングで一箇所を集中攻撃するなんて」
スカイはピーチ達の連携能力の高さに驚きを見せると自分も彼女達に負けていられないと意気込む気持ちが強くなる。対してベンケイの方は大剣を構えつつも明らかに先程以上に苦しそうな顔を見せていた。
「だったら私がやるべきなのは!」
そのタイミングでスカイは意を決して飛び出すと一気にベンケイへと接近。高速での拳の連打を放つ。
「チッ!!」
「だだだだだだっ!」
スカイの攻撃はベンケイに対してそこまで大きなダメージにはなり得なかったものの、片方の腕を実質使用不能にされたベンケイはスカイのスピードに着いて行けず。
「はぁあああっ……だっ!」
すかさず隙を見つけてベンケイの大剣を真上に蹴り上げると彼の手から完全に手放させる事に成功する。
「皆さん、今です!」
「ナイスだよ、スカイ!2人共」
「そうね。完璧に決めるわ!」
「うん!」
ピーチ達はスカイがベンケイに大剣を手放させたチャンスを物にするべく一気にベンケイを倒しにかかった。
同時にピーチ達3人はその手にピックルンと呼ばれるそれぞれハートの形をしたピンク、青、黄の鍵を手にするとそれを使用。変身アイテムであるリンクルンを開錠した。
すかさず青い部分をスキャンするとそこから魔法のステッキのようなアイテムが飛び出す。ただし先端の形状は個々で異なり、ピーチはピンクのハート。ベリーは青のスペード。パインは黄のダイヤ型をしていた。
3人はこのアイテム、キュアスティックを手にするとそれぞれが構えを取る。
「届け、愛のメロディ!キュアスティック・ピーチロッド!」
「響け、希望のリズム!キュアスティック・ベリーソード!
「癒せ、祈りのハーモニー!キュアスティック・パインフルート!」
そのまま3人はスティックの棒部分に存在する丸い宝石のような物を手元から先端に向かう形でなぞり、先端の装飾が発光。手にしたスティックを振りながら先程と同じ掛け声を叫ぶ。
「「「悪いの悪いの飛んで行け!」」」
「プリキュア!ラブサンシャイン!」
「プリキュア!エスポワールシャワー!」
「プリキュア!ヒーリングプレアー!」
「「「フレッシュ!」」」
3人はそれぞれハート、スペード、ダイヤを描くようにスティックを動かすとその紋章が電撃のようなエフェクトと共に具現化。その後、手にしたキュアスティックを前に突き出すようにして一気に解き放つ。
「お、おのれ……喰らってたまるかぁああっ!」
ベンケイは飛んできた紋章の型をした3つのエネルギー弾を真正面から受け止める。しかし、左肩を負傷して力が思うように入らず。更にはその部分が弱点となってベンケイの体に浄化の光を通してしまっていた。
「ぐうぅうう……」
「「「はぁあああっ!」」」
それでもベンケイはどうにか踏み留まろうとするが、少しずつ押され始めた現状は変えられず。その体を包み込むように三色に発光する光のハートに包まれた。
「ぐぁあああ!?」
「「「行っけぇええええっ!」」」
そして、3人が手にしたスティックをクルクルと回すとベンケイの体へと一斉に浄化の光が流れ込む。
「シュワシュワァアアア」
ベンケイは最初こそ防御力でどうにか耐え凌ごうとするが、一部が弱点と化してしまった今。その圧力に耐えられるはずもなく。ベンケイの体は崩壊を始め、その姿が3人の技に包み込まれて完全に消滅する事になるのだった。
また次回もお楽しみに。