ユキ達がスカイランドに向かう日の朝。ミラーパッドの調整が完了するのは夕方という事なのでこの日が正真正銘最後のチャンス。ユキ、アサヒ、ソラ、ましろの四人は街に向かっていた。そして、家にはツバサ、ヒョウが残ってエルの相手をする事になる。
「えるぅ……」
「今日はお家で遊びませんか?」
「天気予報で雨が降るかもって言ってたぞ」
「絵本、絵本を読みましょう!」
「それともお人形遊びとかどう?」
ツバサとヒョウの二人はエルの気持ちを靴から逸らすために必死に気を引こうとする。しかし、エルもそこまで鈍感では無い。靴が無い事に気がつくとツバサとヒョウに問いかける。
「える!え・る・る!」
ツバサとヒョウもこれには苦笑いを浮かべるしか無い。そして、ツバサは思わず愚痴をこぼす事に。
「あはは、ずるいですよ。皆さん……ボク達に損な役回りを押し付けて……」
「仕方ないだろ。俺も手伝うから一緒に頑張ろ」
「うぅ……」
ツバサとヒョウがどうにか時間を稼いでいる間にアサヒとユキは靴探し、そしてソラとましろは女性に靴を返すべく彼女を探し回っていた。
「アサヒ君、あった?」
「無いな……やっぱり昨日の夜こっそり調べたけど、結構レアな靴みたいで。どのお店もすぐには置かないみたいだな」
二人は手分けして街中に存在する靴という靴を探し回っていたのだ。だが、なかなか見つからずに二人は大苦戦。このままではエルを悲しませてしまう。
「どうしよう……もし見つからなかったら」
ユキは約束を破ってしまうかもしれないと不安に駆られる。しかし、アサヒはまだ諦めていない。
「大丈夫。きっと見つかるよ」
「うん!」
それから二人が再度捜索しようと思ったその時だった。二人の前に同年代ぐらいの一人の少年が現れたのは。
「ねぇ。君達」
その少年は暗い緑の髪色にましろよりも一回り背が高いアサヒとほぼ同じぐらいの身長。体には緑を基調とした私服を来ており、ズボンは灰色で真面目そうな雰囲気の少年だった。
「君は……」
「誰ですか?私達、急いでいるので」
「………君達が知りたい情報。俺は知ってるよ。もし俺に着いてきてくれたら君達の探している物の場所まで案内する。その代わり、少しだけその後に付き合ってもらうけど」
それを聞いた二人は顔を見合わせる。それはつまり、この人は探し物の靴が何なのか、またどこに売っているのかも知っていると言う事だ。
「本当ですか?……俺達を連れて行くための嘘じゃ無いですよね?」
「そこは信じてもらうしか無いね。もし無理ならこの話は無しだ」
二人はそれから少し考える。確かにこのまま着いていけば二人の探し物が見つかるかもしれない。しかし、懸念点がある。それはこの少年が怪しすぎるという点だ。そもそも二人共靴の事についてはまだ話してすらいない。そのため、何故この少年が知っているのかという話になる。
「……じゃあまずは聞きたいんですけど、あなたは俺達の探し物が何か知っているんですか?」
「靴でしょ?画像はこれ」
少年が手にしたスマホから見せられた画像は確かに二人が探す靴その物であった。ひとまずお互いの考えがすれ違っている可能性は消えたために次の話をする事に。
「じゃあ次はあなたは何者なの?どうやって私達の目的の物を知ったの?」
「俺が何者かまでは言えない。ただ、実は昨日君達が店から出てきた時に手にしている靴を見たのと、その少し前に一人の女性が悲しそうな顔をして出ていくのを見たからね」
「「……」」
二人はそれを聞いて迷うが、時間も刻一刻と迫っている。そのため、ひとまずはこの少年に着いていく事にした。
「わかった。案内をお願いするよ」
「お願い」
二人が頭を下げると少年は笑みを浮かべ、着いてくるように言う。それから三人が向かった靴屋さんにその商品は見つかった。
「あったよ!アサヒ君!」
「マジかよ……アイツの言った事、嘘じゃなかったんだ」
ひとまず二人は急いで購入まで済ませると店の外で待っていた少年の元に行く。
「お待たせ」
「君の言う通り、靴は見つかったよ」
「それは良かった。俺としても君達の役に立てて何よりだよ」
少年が安心したと言う顔つきでそう言う。するとユキが何かを思いつくと真剣な顔つきで彼へと声をかけた。
「ねぇ、あなた……どこかで会ったことある?」
「……うん?」
「何と無くだけど……君と昔会ったことがある気がして……」
「気のせいじゃない?俺は初対面だよ」
少年の言葉に嘘は無さそうだった。そのため、二人はそれ以上詮索はしない事に。
「じゃあ、俺の方にも付き合ってもらおうか」
すると少年は手を差し出すと二人の肩に触れた。そのため、二人はいきなりの事に驚いて飛び退く。
「ッ!?」
「な、何を……」
「うん。もう良いよ。時間を取らせたね」
二人はまるで訳がわからないと言った様子だった。そのため、混乱した顔つきである。今の行動だけでは少年の意図がまるで読めない。少年は何故自分達の方に突っかかってきたのか、どうしてもその理由が知りたかった。
「お前、本当に何なんだ?俺達と絡んで何が狙いで……ッ!?」
するとその時、二人の近くを突風が駆け抜けた。その間に二人は何とかそれを耐えるために構えるものの、二人は次の瞬間目を見開いた。風が吹いたことで怯んだ一瞬の隙。その間に少年の姿はいなくなっていたのだから。
「アイツ!?どこに行った!!」
「嘘。全く見えなかった……」
二人は少年を探す事を考えたがそこにましろからのメールが入る。それは靴を見つけたら街にあるももぞら空港に来て欲しいとの事だった。
「色々気になる事だらけだけど……」
「うん。今は二人の所に!」
その頃、ソラとましろの二人はソラシドモールの靴屋で女性を見つけると彼女から事情の説明を受ける。それはもうすぐ彼女の息子夫婦と孫が海外に行ってしまう事、昨日買おうとした靴は孫にプレゼントとして送るための物だった事、そして女性は会えば必ず泣いてしまうから息子夫婦達を悲しませるだけだと考えて行くのを断念した事を伝えた。
ソラとましろはそんな女性に靴を返して励ます。しかし、飛行機が飛び立つタイムリミットが近いために女性は間に合わないと諦めていた。そのため、二人はプリキュアとして彼女を飛行機が飛び立つ前に空港に送り届ける事にしたのだ。
尚、その時の送り方がプリズムが踏み台になってスカイが大ジャンプを連続でやるものだから女性はあまりの高さに驚くばかりだったが。
そして、彼女達三人は何とか空港に到着するとスカイとプリズムは変身解除。ソラ、ましろとして三人で空港の中へと入っていく。時間はまだ離陸前。ロビーに女性の探す人はいた。
「………」
女性は息子夫婦の元に行くのを躊躇しかけるが、ソラとましろは行って欲しいと後押し。女性は無事にファーストシューズを孫に手渡す事になった。その様子を見たソラとましろの脳裏に今までの出来事がフラッシュバック。二人の心には急に寂しさが募っていった。
「ソラちゃん、ましろちゃん、お待た……」
「え……」
アサヒとユキが連絡を見て辿り着くとソラとましろの二人が手を繋ぎながら涙を流しているのを見てしまう。そして、それが二人にとっての引き金だった。
「そっか……二人も同じ気持ちだったんだ……」
「うん。アサヒ君……出会えたあの時からずっと……側にいてくれて……」
するとユキの目にも涙が伝い始める。それを見たアサヒはユキの手を繋いだ。
「大丈夫。そこから先は無理に言わなくて大丈夫。俺も……同じ気持ちだから」
アサヒもユキの前では泣かないように決めていたが、彼のブレーキも壊れてしまった。四人は寂しさを紛らわせるようにする。
「アサヒ君……私、離れていてもずっと大好きだよ」
「うん。俺も愛してる」
こうして、四人はスカイランドに行く前の最後の仕事を終わらせた。そして、四人は合流すると虹ヶ丘家に戻る事になる。
「えるぅ!えるぅ!」
四人が帰ると虹ヶ丘家では新しいファーストシューズにエルが上機嫌になっていた。
「お似合いですよ、プリンセス!」
「同じ靴、よく見つかったよな」
「あー、それなんだけど。色々あってな。……気になる奴も出てきたし」
「え?」
「ううん。多分ただの杞憂だよ」
二人は一旦謎の少年については誤魔化すことにした。あまり余計な心配をかけたく無いからである。
「ほんと、お疲れ様だよ。皆」
「出かける時までまだ少し時間もあるし、ゆっくりして」
「ああ、そうする」
それから色々な準備を終えるとスカイランドに向かうメンバーであるユキ、アサヒ、ソラ、ましろ、ヒョウ、エルの六人がヨヨの元へ。残る組のあげは、かける、ひかるの三人はそれを見送る事になる。
「ヨヨさん、本当にお世話になりました」
「今までありがとうございました」
「ここに出会えた運命があったから」
「私達は楽しい時間を過ごせました」
「ふふっ。ソラさん。ボタンはあなたが押すと良いわ」
ヨヨに言われてソラがボタンを押すとミラーパッドから青い空間が出てくる。
「ましろん、お土産よろしく!」
「こっちの事は俺達に……」
『あ、あの!』
するとかけるの持つ灰色のスカイトーンのような物が光るといきなりアサヒの元へと飛び出す。
「え!?石が喋った!?」
「あー、かけるさん。ひかるへの説明は」
「うん。任せて」
『あの、私もいきます!連れて行ってください』
どうやらルーセントムーンはスカイランドに行くメンバーになりたいようである。ユキ達としても先代プリキュアのルーセントムーンが来てくれるだけでもありがたい話だったので受け入れる事に。
「じゃあよろしくね、ルーセントムーン」
『はい!』
『……ヒョウ。私の宿ったこの石、ユキに渡してくれる?』
するとライトピラーもユキに自らの宿った石を渡すように言った。そのため、ヒョウは頷くと首からそれを外してユキへと渡す。
「ユキ姉、お願い」
「うん。大切にするね」
「それじゃあ、気をつけて行ってらっしゃい」
行く前にやる事を済ませた一同はヨヨにそう言われると頷き、スカイランドへの道を進み始める。だが、この時の一同は知らなかった。スカイランドで起こる出来事についてを。
〜アンダーグ帝国にて〜
先程の謎の少年はどうやらアンダーグ帝国の一員だったようで彼はもう一人のメンバーと会っていた。
「どうだった?プリキュアと会ってきて」
「……バッタモンダー。少しガッカリだよ。キュアサンライズとキュアスノーは力を失ってる。折角楽しめる相手がいると思ったのに」
「まぁ良いじゃないか。三人だけなら楽勝だろ?」
「ああ」
そう言ってバッタモンダーと呼ばれた男は去っていく。そんな中、少年はある光景を思い出した。
「キュアスノー……いや、ユキ。俺は俺に恥をかかせたあの女を許す事はない。絶望のどん底に叩き落としてやる」
少年の目は復讐に燃え立つとそのまま歩いていく。彼らとプリキュアが邂逅する時も近い。
また次回もお楽しみに。