シャドーから繰り出された一撃からムーンライトを守った者。それはかつてムーンライトの父親の手によって作り出され、ムーンライトと敵対。彼女との一騎打ちの末に敗れて消えた者……ダークプリキュアだった。
「あなた、どうして……」
「前に言っただろう。姉さんと私は月における光と影。月が光を浴びて何度も満ちるのと同じ……私に敗れ、二つに割れたこころの種が一つに戻った時……私の力の一部がその中に紛れ込んだ。……ずっと、もう一度会いたかったよ。姉さん」
「ね、姉さん!?」
ムーンライトはまさかの言葉に困惑。何しろ今までだったら自分を見た瞬間に殺しに来ていたダークプリキュアが自分の事を姉と呼んで慕っている。普通に考えて違和感だらけだ。
「チッ、この俺を差し置いて何をゴチャゴチャと!」
シャドーは自分が無視されたと考えてすかさず刀を構えつつ突進。対してダークプリキュアはその手にプリキュアが使うタクトと同形状かつ素体が黒、先端が赤になったタクトを出すとその一撃を受け止める。
「何!?」
「お前こそ誇り高い戦士であるなら姉妹の再会の時間の邪魔をするな!」
「なん……ぐはあっ!?」
シャドーが困惑しているとダークプリキュアが蹴りを叩き込んでシャドーを返り討ちにする。そして、ダークプリキュアはムーンライトと向き合った。
「ぐ、クソ……」
「何だかよくわからないけど、シャドーの事は一旦私達に任せて!」
「スノー!?アイツ、どう見ても悪役な感じだぞ!?ムーンライトは……」
スノーはダークプリキュアのために足止めを引き受けたような事を言ったためにサンライズは困惑。対してスノーはサンライズを安心させるように言う。
「大丈夫!……かつてのあの人はわからないけど……今のあの人から感じられる力はキラキラしてる気がするから!」
「ふふっ、そうね。……一度プリキュアの敵だった私ならわかる。今のあの子は警戒しなくても大丈夫よ」
そんなスノーに転生前は邪悪な存在としてプリキュアに敵対していたパッションがフォローを入れるとサンライズは納得する。そして、ミューズも頷くと4人が並んだ。
「だったら、感動の再会の邪魔なんてさせたらダメね。一緒に足止めしよう!」
「そうだな」
「皆、ありがとう!」
「む……ならば先にお前達から潰してやる!」
シャドーはムーンライト以外のプリキュアが相手になるのなら自分にも勝てるチャンスがあると考える。同時にムーンライトが戻る前に倒せば各個撃破になるわけで。シャドーはそういう意味ではこの状況をチャンスと捉えた。
「行くぞ、プリキュア!」
「「「「はぁあああっ!」」」」
シャドーとムーンライト以外の4人が再度戦いを開始する中でムーンライトはダークプリキュアに話しかける。
「……あなた、その感じだともう私を憎んでいないって事。一方的に憎んでおいて、それは都合が良すぎるんじゃない?」
「ああ、姉さんの言ってる事は何も間違ってない。私はあなたの父親。月影博士に作られ、姉さんを一方的に憎み……沢山の物を姉さんから奪った。今更許されるつもりなんて無い」
ムーンライトはそれを聞いて今にも殴りかかる気持ちを一旦堪える。ダークプリキュア側が心を入れ替えてもムーンライトがそれを許すかはまた別問題……。そもそも、ダークプリキュアのせいでムーンライトはあまりにも多くの人を失い過ぎた。実の父親と彼からの愛情、パートナーであった妖精、一時的とはいえ変身する能力に彼女のこころの花……ムーンライト視点だとこれだけの事をされた以上は到底許せるはずが無い。
「すぅ……ふぅ……。ダメね、前につぼみに言われた言葉、憎しみの連鎖は、どこかで断ち切らないとなのに」
「姉さん」
だが、ムーンライトは胸の中に湧き上がる激情を抑えるとダークプリキュアの元に歩いていく。そして、彼女の胸の辺りに軽く拳を当てた。
「私は他の人みたいに優しくないし、あなたの事を許すつもりは無いわ。……だけど、あなたを殺したい程憎むつもりも無い。だから、罪滅ぼしを願うのなら行動で示しなさい。それが私と2人で戦う事を許す条件よ」
ムーンライトはそう言ってダークプリキュアとの因縁を完全に押し留めると憎しみの連鎖を断ち切る。
「ああ。これからよろしく、姉さん」
「ええ、ダークプリキュア……って。やっぱりそれだと呼びづらいわね」
ムーンライトはダークプリキュアの事を許しては無いとはいえ、共闘自体は受け入れた。ただそうなると名前を呼ぶ時のダークプリキュアというのは呼びにくい。そのため、ダークプリキュアは仮として名前を変える事にした。
「そうか……。ならば、今日からはこう名乗ろう。
「ダークムーン。わかったわ。行くわよ、ダークムーン」
「ああ、よろしく頼む。ムーンライト」
こうして、2人は共に戦う事を誓い合うと他のプリキュアが戦っているシャドーの元に向かう。
その頃、4人のプリキュアはムーンライト達が戻ってくるまでの時間稼ぎをしていた。
「この俺をお前達だけで止められると思うな!」
「それでも止める!何としてでもだよ!」
「ならば受けてみろ!」
シャドーはそう言って連続での斬撃波を放つ。それに対してパッションはスピードで。ミューズはリズムに合わせる形で華麗なステップで避ける。ただ、スノーとサンライズはどうにかギリギリで避けるのが手一杯だった。
「ッ!?くっ……」
「ダメだ。俺達じゃ、あの2人みたいには……」
そんな2人を見たパッションとミューズは頷き合うとパッションが一気に加速しつつシャドーに接近。シャドーはそれを見てミューズの位置を警戒する。パッションが撹乱してミューズがその逆を突く。その先程までよく見せていた攻撃パターンを想定していた。
「はあっ!」
するとミューズが前に出るとシャドーへと正面から攻撃を仕掛ける。だが、当然シャドーはミューズを意識していたためにそれに対応した。
「正面から……だが無意味だ」
「本当にそう思うのなら、あなた……見る目が無いわよ」
「何?」
ミューズはシャドー相手に打撃で攻めるものの、シャドーはそれを捌きながら周囲への警戒を継続。そして、その警戒通りにパッションが後ろに回り込んでいた。
「ふん、結局いつも通り。それでは勝てないと言っただろう」
シャドーは正直期待外れと言わんばかりにパッションが来ると想定してミューズへと対応しようとする。
「はあっ!」
「そんな程度!」
ミューズが跳び上がってから落下の勢いを利用して繰り出したパンチに対してシャドーは手にした刀でそれを一撃で斬り裂く……が、突如としてそのミューズは消滅。シャドーが驚いた顔を浮かべる。
「何!?」
そして、シャドーが慌てて周囲を警戒するとそこには3人のミューズがいた。
「チッ!だったら月光・満月斬!」
シャドーはミューズ全員に攻撃すれば本物を倒せるとばかりに技を発動。閃光の後に無数の斬撃がミューズを襲う……が、攻撃を受けたミューズの姿が薄く溶けて消えるとそれらは全員ただの幻だった。
「馬鹿な……ッ、まさかこの4人は!」
「そう、全部偽物よ」
すると、シャドーはようやく自身の斜め前の空中にミューズがモジューレを片手に持った状態でいるのを見つける。これは先程も使っていたミューズの個人技、シャイニング・サークルの応用であり分身能力だけを有効利用した形だ。
「だあっ!」
「ぐはあっ!?
そこにサンライズが突っ込んでくると炎を纏ったまま彼に全力で体当たり。そのまま彼は後ろに吹き飛ばされた。そのままシャドーは手にしていた刀を取り落としてしまう。
「ぐ、クソ……」
「まだだよ!」
更にそんなシャドー相手にダメ押しとばかりにスノーが出てくると彼女が手を翳して氷の礫を発射。
「チッ、こんな物効くか!」
「ううん、これだけじゃ無いよ!」
更にスノーがそう言いつつ地面につま先をトントンと付けると突如として地面が凍結を開始。そのままシャドーの両脚を封じた。
「くっ……だが、この程度の拘束で俺を止められるわけが……」
「いいえ、この一瞬の隙が狙いよ!」
「な!?」
そこに連携のトリを任されたのは今回の一連の動きで一番最初に動いていたパッションだ。パッションは自慢のスピードでシャドーの前にやってくるとすかさず手にしたピックルンをリンクルンに使用。そこから飛び出したハートの形をしたハープのようなアイテムを手にする。
それから彼女自身の胸の四葉のクローバーの紋章から取り出したハートを上部に合体させてアイテムが完成。
「歌え、幸せのラプソディ!パッションハープ!」
その名もパッションハープ。彼女はハープの左側に存在する4本の弦を順番に弾いてからその後4本の弦を一気に弾く形で演奏。すかさずハープを上に掲げてから構えを取った。
「吹き荒れろ、幸せの嵐!プリキュア!ハピネス・ハリケーン!」
そして彼女がハープを手にしたままその場で回転。同時に無数のハートが竜巻を起こすように発生。パッションの回転に合わせる形でその速度が一気に加速。そのままパッションがハープを突き出すように翳すと無数のハートがシャドーの呑み込んでいく。
「がぁああああっ!?」
最後にシャドーを包み込んだ無数のハートが合わさった巨大なハートに彼が呑まれるとパッションは手にしたハープをフレプリの他の3人のようにクルクルとその場で回す。これにより、シャドーの体は浄化の光に包まれた。
そのまま爆発が起きるとシャドーの足元の氷が壊れてスノー達4人は集結。疲れた影響で吐いている荒い息を整えているとその煙の中からシャドーが立っていた。
「なっ!?」
「私の技でもダメなの!?」
「本当に、コイツしぶとすぎるだろ」
「ぐ……流石に今のは効いた。それでも、倒すには至らないがな」
シャドーはパッションの攻撃を耐え切ると反撃するために刀を構える。そんな時、4人の前に2つの影が降り立つ。勿論その2つの影の正体はムーンライトとダークムーンだ。
「ムーンライト!」
「ダークプリキュアも……」
「今はダークムーンだ。ここからは私達が受け持とう」
ムーンライトとダークムーンが構えを見せると4人はこの2人が味方であるというだけでかなり心強かった。
「ムーンライト、ダークムーン。お願い!」
「ああ」
「行くわよ、ダークムーン」
ムーンライトの声に合わせて頷くダークムーン。それに対してシャドーは一気に警戒心を高めた。勿論それはムーンライトがいるからだが、隣にいるダークプリキュア改めダークムーンとからもそのムーンライトと同じようなプレッシャーを感じたからである。
「(ッ……何だ、この2人。まるで、キュアムーンライトが2人いるようなプレッシャーは……)」
ただ、流石はシャドーと言うべきか。このムーンコンビを相手に寒気こそしたものの、すぐに気持ちを立て直して警戒心を高める。果たして、2人はシャドーを相手に勝つ事ができるのだろうか。
同時刻、影の兵士を倒しつつレインボージュエルのある中心部を目指すヒョウとミルキィローズはとうとうレインボージュエルが視界に入る程に接近していた。
「「はぁ……はぁ……はぁ……」」
ただ、2人共この時点でかなり消耗しており……特にミルキィローズの方はかなり辛そうにも見えてしまう。
「ミルキィローズ、少し休む?」
「いえ、平気よ。あなたの方こそ体力的に不味いでしょ。そろそろ休みを入れて。その間は私がどうにか……」
「「ッ……」」
2人共お互いを心配するあまり、意見がすれ違いを起こしてしまう。そして、2人は揃って少し不機嫌そうな顔を見せた。どうやら、自分は大丈夫なのに心配されるのが不満なようである。
このままではお互いを想うせいで平行線での意見でぶつかり合い、2人の間に揉め事が起きてしまう……そんな時だった。
「ッ!?また!」
「こんな時に……いえ、こんな時だからこそね」
するとレインボージュエルに近づかせたいと影の兵士がまた出てきてしまう。だが、もう少しでレインボージュエルに辿り着けるこの状況。2人には今更引き返す選択肢など無い。
「ミルキィローズ、2人で行こう」
「ええ、そうね……。この数を相手に繋がりなんてして負けたら元も子もないわ」
2人は僅かになった体力を振り絞るとレインボージュエルを確保するために目の前に湧き出した影の兵士達の中に突っ込んでいく。
「「はぁああっ!」」
これとタイミングを同じくして、サスケ、ベンケイ、オクニが同時に撃破されると目盛りが10個目に到達。そのため、後少しでエネルギーチャージが完了してシュラが来てしまう。
「皆、剣の破壊……頼むわよ」
だが、サスケ達のいた所は後は剣を破壊するだけで目的を達成できる。シャドーの方も頑張れば不可能は無いだろう。それでも万が一にもシュラが降臨してしまわないようにしないといけないプリキュア達。ここが正念場とばかりにヒョウとミルキィローズも気合いを入れ直す。
そして、このエネルギーチャージの様子を見た別空間のシュラは後少しで自らが降り立てると思ったのか……。邪悪な笑みを浮かべる。
「あと二つ。あと二つでこの世界は我の物……ククッ……フハハハ!」
シュラが降臨するまであと僅か。プリキュア達はそれぞれのやるべきことを進めるのだった。
また次回もお楽しみに。