ユキ達がスカイランドに来た翌日。ましろ、アサヒ、ツバサの三人は街中にある食堂で食事を摂っていた。ただし、ツバサは上機嫌な様子で浮かれていたが。
「ツバサ君、冷めちゃうよ」
「ご飯どころじゃないですよ!王様が認めてくださったんですから!」
ツバサは興奮が冷めない様子で二人へと王様からの言葉を言い放つ。
「これからもプリンセスの側にいても良い!騎士として!」
「子守役としてじゃなかったか?」
「に、似たような物です!」
ツバサが恥ずかしそうに僅かに顔を赤くする中、ふとアサヒとましろに聞く。
「ところで、本当に要らなかったんですか?」
「何が?」
「ご褒美ですよ。折角のチャンスだったのに二人共“特にありません”って」
「エルちゃんがお家に帰れたんだからそれだけで十分だよ」
「元々ご褒美目的でやってきた事じゃないしな」
するとましろが何かを思い出すとアサヒは気になってましろへと声をかける。
「ましろ?どうしたんだ?」
「そういえば、おばあちゃんからスカイジュエルを頼まれていたからそれをもらえば良かった」
「うーん。別に大丈夫じゃないか?多分ここなら普通に買えるだろうし」
「ま、まるでボクが図々しいみたいじゃないですか」
ツバサが一人、後悔の顔つきになる中でアサヒとましろはここにはいない三人の事を考えた。
「そんな事よりだよ」
「ああ、多分そろそろだな」
「ソラちゃんとユキちゃん。ヒョウ君も上手くやれてるかな?」
その頃、ソラ、ユキ、ヒョウの三人はシャララ隊長に連れられて青の護衛隊の本部に移動していた。そして、扉が開けられると既に中で待機していた護衛隊の面々が副隊長であるアリリの号令の元、構えた。
「隊長に!」
「見習いの隊員を紹介する」
「ソラ・ハレワタールです!シャララ隊長に憧れてヒーローを目指しています!王様にお願いして皆さんの仲間にしてもらえる事になりました。未熟者ですが、一生懸命頑張ります!よろしくお願いします!」
「え、えと。ユキ・ハレワタールです。私は困っている誰かの助けになるために日々努力しています。人々の助けになるために精進します!よろしくお願いします!」
「ヒョウです。自分は皆さんのサポート役として後方支援を頑張ります。よろしくお願いします!」
三人が自己紹介を終えるとそのタイミングでソラやユキよりも数歳分歳上そうな二人の少女が声を上げる。一人は赤い髪にツリ目が特徴的であり、もう一人は黒髪をショートヘアに切り揃え、やや小柄な姿をしているものの、顔つきは大人びていた。赤髪の方はベリィベリー、黒髪の方はペギンと呼ぶ。
「……まだ子供ではないですか」
「しかも試験無しでの入隊」
二人が嫌味のようにそう言ってくるのを聞いてユキとソラは驚くとアリリ副隊長がそれを抑えようとする。
「控えろベリィベリー。ペギンもだ」
「……別の世界に行ってプリンセスを救ってきたとか、護衛隊に入りたくて嘘を吐いているのかも」
「それに、仮にプリンセスの件が本当だとしても入隊する人間の力を見もせずに勝手に試験を飛ばすなどあってはならないんじゃないんですか?」
二人の冷たい言葉にユキとソラは反論する。流石に今の言葉は許容できないからだ。
「私達、嘘なんて……」
「確かに試験を飛ばすのはやり過ぎたかもしれませんが……でも、プリンセスを救ってきたのは事実ですよ!」
「弱い奴を入れるなんて反対です。邪魔ですから」
「そんなに事実だと言うならちゃんと試験ぐらいは受けさせても良いんじゃないんですか?」
四人が一触即発の中、シャララ隊長はそんな四人の矛を収めさせるためにとある提案をする。
「それならベリィベリーはソラとペギンはユキと一対一で組み手を行えば良い。もしここでソラやユキが結果を出せなければこの話を無しにする。これなら文句はないだろう」
「た、隊長」
それを聞いてベリィベリーもペギンも頷く。そして、ユキとソラの二人も了承したので早速四人が移動すると外にあるトレーニング場に行った。
「まず最初はソラとベリィベリーだ」
シャララ隊長がそう言う中、ソラとベリィベリーの二人は前に出ると向かい合う。
「さぁ始めようか」
するとベリィベリーの着けているグローブに電撃が纏われると彼女は近くにある武器が置かれている場所を見て言う。
「好きな物を使って良い」
「フェアプレイ精神……。でも多分ソラちゃんは……」
ベリィベリーの言葉に対してソラは何も武器を取る事無く構えた。それを見たベリィベリーは侮られたと考えて苛立つ。
「後悔するぞ!」
「始め!」
シャララ隊長の号令と共に試合は開始された。すると早速二人が走っていき、まずベリィベリーが拳を振り下ろす。その一撃は一発貰うだけでもかなりのダメージになってしまうだろう。
「ッ……あのグローブ。戦闘用に調整されている。幾らソラさんでもアレを喰らったら……」
ソラはそんな攻撃を躱すと逆に拳を繰り出すが、それをベリィベリーも回避する。そして、電撃が纏われたグローブから電撃のエネルギー弾を放つ。
「ッ!」
ソラがそれを紙一重で躱す中、前に出てキックを繰り出す。それをベリィベリーが防御しつつ戦う。そこから二人が激しい戦いを繰り広げる中、ユキとヒョウが呟く。
「二人の力は互角かな……ううん。きっとソラちゃんが勝つ」
「そう信じよう」
そのタイミングでアサヒやましろ、ツバサが買い物で買ってきた食料品を持って入ってきた。
「ええっ!?何してるの!?」
「なっ!?どこから入った!!」
「ごめんなさい。これ、差し入れです!」
「これもです」
その間も戦いが続く中、ソラはましろの声に一瞬気を取られてしまう。そのため、動きが僅かに止まった。
「余所見なんて!」
そのタイミングでベリィベリーが放った電撃のエネルギー弾をソラはまともに喰らってしまう。
「ああっ!?」
ソラが吹き飛ばされると体に電撃が走ってしまう。そこに追撃をかけるべくベリィベリーが走り込むとトドメを刺そうとした。
「青の護衛隊は最強のチームだ!弱い奴に居場所は無い!」
そして、ベリィベリーからの拳の一撃が放たれようとする中。ソラはそれを回避すると態勢を崩した彼女の背後に回り込み、ソラが拳を寸止めする。
「……勝負ありだ」
シャララ隊長の言葉により試合終了。ソラの勝ちが確定した。ベリィベリーは負けの事実にその場に座り込む。
「……弱いとか、強いとか。大事なのは正しい事をしたいって気持ち。そうですよね。……あなたは間違ってます!」
「……ッ!」
するとユキは何かを思ったのか駆け出す。ベリィベリーが悔しさに打ちひしがれる中、ユキが二人の間に入った。
「ユキさん?」
「待って、ソラちゃん……。多分それは言い過ぎだよ?」
「……え?」
するとユキは振り向くとベリィベリーへと手を差し伸べる。そして、優しく話しかけた。
「ベリィベリーさんが強さに拘る理由はよくわかりません。でも、きっと自分の弱さのせいで何か辛いことがあったんですよね。……私はその考え方も一つの正しさだと思います」
「……ッ!同情なんて要らないっ!あなたこそ……ペギンを相手にする前に随分と余裕ね」
ベリィベリーはそのまま立ち上がると涙を流しながら去っていく。そんな中、ペギンが一人出てくると何も武器は手に取らずに構える。
「次はあなたの番よ。ユキ」
「はい!」
続けて第二試合。ユキとペギンの戦いとなる。するとユキはペギンへと声をかける。
「あの、あなたは武器を使わないんですか?」
「ええ。私に武器は必要無い。それに、武器無しの相手に武器ありで勝っても嬉しくないわ」
「随分と余裕ですね」
「……余裕よ?だって……」
「それでは、始め!」
その瞬間、シャララ隊長が開始の言葉を叫ぶ。次の瞬間だった。ユキの目の前にペギンの拳が顔面に迫っていく。
「ッ!?」
「私の間合いで隙だらけだし」
ユキは咄嗟に防御するが、次の瞬間には体は後ろへと吹き飛ばされると同時に腹に鈍い痛みが走る。
「ッ!?さっきの攻撃は顔のはず。何で……」
咄嗟に顔から腹に攻撃を切り替えたと思考するがそんなはずはない。何故なら先程の衝撃は顔を守った自分の腕にも走ったからだ。
「じゃあ……」
ユキがそう言う頃にはもうペギンは自分の前にまで迫っている。ユキは何とか横に跳んで躱すものの、そのタイミングで既にペギンの拳がまた迫ってくる。そして、ユキがそれを守る頃には今度はガラ空きの右脚に痛みが走った。
「な、何なんですか!?あの速さ!」
「俺達の目線でも見切るのでやっとかよ」
試合の外で見ているアサヒ達はペギンのあまりの速度に驚いていた、ペギンの攻撃はとにかくスピードが早いのだ。小柄な体に反してワンアクションで動く距離の長さ。更に一発目の拳から二発目の拳までの間隔が短い。そのため、一発目を防いでもすぐに二発目が飛んでくるのだ。
「何とか反撃を……」
「遅いわ」
そこからユキは体中を滅多打ちにされると激痛が走っていく。それからペギンが回し蹴りを繰り出したタイミングでユキはようやく反撃をする。
「氷雪拳……雪ノ型!」
するとペギンが蹴ったユキの体が薄らと溶けて消える。そして、ペギンが驚いている間にユキはようやく攻撃を一撃返した。
「はあっ!」
「……言ったはずよ。遅いって!」
だが、それはペギンに容易く防御されてしまう。そのままユキはまたペギンのペースに嵌るとタコ殴りにされてしまった。
「ゲホッ……ゴホッ……」
ユキは地面を転がると体に走る痛みに悶える。シャララ隊長はこれ以上やるのは危険と考えて止めにしようとした。
「ここまでだな勝負……」
「待ってください!」
ユキは痛む体を無理に動かすと立ち上がる。そして、まだ自分は健在だと訴えた。
「まだ終わってません」
「だが、最早勝負は……」
「私は……止めにしたくない!まだ、少しでもやれるなら……」
「良いわ。じゃあ、終わりにしてあげる」
次の瞬間、またペギンの姿が消えるとユキの目の前に迫る。ユキは何とか拳を繰り出して対応しようとするが、そのタイミングで攻撃は空を切った。そして、ペギンからの拳がユキの鳩尾に命中するとそのままユキは倒れて気を失う。
「ユキ!」
その時。アサヒが駆け寄ると倒れ込むユキを抱くようにして支えた。そんなアサヒを見てペギンが告げる。
「大丈夫よ。加減はわかってるわ。早く治療してあげて」
アサヒは頷くと急いでユキを近くにある護衛隊の医療室に連れて手当てをするのであった。
また次回もお楽しみに。