ソラシド市の某所、おでん屋の屋台ではカバトンが一人落ち込んだ様子でおでんを食べていた。
「ヤバい……ヤバすぎるのねん。次にしくじったら俺は……」
カバトンが思い出すのは以前彼の上司が使った雷が落とされた影響でひしゃげた貯水タンクの事である。
「はぁ……ランボーグじゃプリキュア達には敵わない。もうあの奥の手を使うしか……」
カバトンがそんな事を考えているとその近くを通りかかったユキ達プリキュア組とヒョウが見えた。
「おばあちゃんのお使いが終わったら、プリホリのカフェでお茶して行こうか」
「はい!あそこのスイーツは絶品です!」
「へぇ……行きましょう!」
「あ、私パフェ食べたい!」
「じゃあ俺は……」
「あ〜、楽しみ過ぎる〜」
するとカバトンが幸せそうに話すユキ達に苛立っていくとユキ達の前へと飛び出した。
「ぐぬぬ、アイツら!もう我慢できねぇ!」
そして、六人の前で変装を脱ぐとその姿を現す。そのため、六人は一気に緊張感を高めた。
「苛つくぜ。苛ついてしょうがねーのねん!こっちはいよいよヤバい事になってるってのによ!」
「ヤバい?どういう事です?」
カバトンは苛立った様子のままソラの問いをバッサリと切り捨てた上に彼女を指差した。
「うるせぇ!そもそもぜーんぶお前が悪いのねん!」
「あ?」
「プリンセス・エルを攫おうとしたあの時、お前さえ邪魔しなければ……あれからやる事成すことがまるで上手く行かねえ!お前は俺の疫病神だ!お前さえ倒せば全部上手くいく!」
カバトンの八つ当たりとでも言うべき物言いにユキは前に出るとカバトンへと文句を言う。
「そんな、ソラちゃんは悪くなんか無い!そもそも悪いことをしたそっちのせいでしょ!」
「そうです、逆恨みも良いところですよ!」
「で、お前は何の話をしに来たんだ?まさか恨み言を言うためだけにここに来たつもりじゃねーだろ」
「ああ。キュアスカイ……いや、ソラ!お前に決闘を申し込むのねん!勝負は三日後、最強にTUEEE奥の手でお前を倒してやるのねん!」
カバトンの提案。それはソラとの一騎打ちだ。それを聞いたましろやヒョウは反論する。
「それ、俺達に受けるメリットが何も無いんだけど」
「そうだよ!ソラちゃん。そんな勝負、受ける必要は無いよ!」
「嫌とは言わせねぇ!もしお前が勝ったらもうプリンセス・エルには手を出さないって約束してやる!」
それを聞いた一同は驚く。これを言う程にカバトンは決闘に拘っているという事だろう。
「その言葉に嘘はありませんね?」
「ああ。(……どうせ負けたら俺は始末されちまうんだからな)」
それを見たユキはカバトンの様子が何かおかしいと思い至る。しかし、その正体まではわからないために追求する事はできなかった。
「良いか、これは最終決戦だ!首を洗って待ってろ!」
カバトンがそう言うとその瞬間、どこからともなく声が聞こえると何かが落ちてくる。そこに現れたのは半ばパワーの制御が効かなくなったシャドーであった。
「おいカバトン。お前だけ一人決闘とはな。俺も混ぜろ」
「シャドー……」
「俺の相手はキュアサンライズ、キュアスノー。お前ら二人だ。特にキュアスノー。戦いの中で余計な事を言ったお前に教えてやる。その行為が大切な物を一瞬にして奪われる事に繋がるとな!」
「アサヒ、ユキ姉、どうするの?」
「俺はやる。お前との決着も付けたかったしな」
「私も。絶対にあなたを救ってみせるから」
それからカバトンとシャドーはどこかへと去っていく。こうして、三日後に決闘をするという事で一同は合意する事になったのだった。その日の夕方、虹ヶ丘家では六人が揃って話し合う事になる。
「ソラちゃん、アサヒ、ユキちゃん。本当に大丈夫なの?」
「私達が決めた事ですし……。それに、この先エルちゃんをスカイランドに送り届けてもカバトンに狙われている限りは安心できません」
「それは同意見だな。ここでちゃんと終わらせるべきだ」
「うん。それに、あんなに苦しんでるシャドーをそのままにできないよ」
「でもあんな奴の言う事を信じて良いのでしょうか」
ツバサの言う通り懸念もある。カバトンが約束を守るのかということと、彼の奥の手についてだ。勿論ブラフの可能性もあるにはあるが、あの様子だとそれは無いと思うべきだろう。
「カバトンの目はいつになく真剣でした」
「じゃあ、奥の手もハッタリでは無さそうだね……一体どんな手を使ってくるか」
「……どんな手かはわかりませんが、それでも勝つのが」
「ヒーローだよね」
ましろはソラの言葉を言ってから一同に向かって自分の気持ちを伝えた。
「皆、心配なのは私も一緒だしこうなったらソラちゃんを応援しようよ!決戦まで三日間あるし、私に良い考えがあるんだ!」
「あ、もしかして……」
「うん!特訓だよ!」
それを聞いて一同はやる気になる。しかし、ヒョウは一人呟いた。
「……シャドーにはそれで勝てるの?」
それを聞いて一同の動きが止まる。思い出してほしい。以前山で戦ったシャドーの強さはサンライズとスノーが束になっても勝つどころか足元にさえ及ばなかった。加えて二人の技も無効化し、通用せず。たかだか三日間普通に特訓した所で勝ち目が無いのは容易に想像がつく。
「シャドーの強さは規格外なんだぞ?どうやってアレを超えるんだ?」
「それは……」
すると二人の持つスカイトーンが光り輝くと中から薄い幻影の状態で二人のプリキュア……キュアバーニングサン、キュアブリザードが姿を現す。
「あなた達は!」
「先代のプリキュアですよね?」
『シャドー対策についてだけど、アサヒとユキは私達がトレーニングを付けるわ』
「「え!?」」
『……君達は自分達のトレーニングをして欲しい』
「でもそれならソラちゃんも一緒に……」
『……それは無理よ』
「どうして?」
『これから二人には私達の作る特別なフィールドの中で特訓をしてもらうわ。ただ、そこに入れる外の人間は最大でも二人までなの』
つまり、アサヒとユキがトレーニングのために入ったらそれ以外の面々は入る事ができないのだ。
『アサヒ、ユキ。これは私達からの試練です。……乗り越えられますよね?』
「「はい!」」
二人は迷う事なくそう返し、二人はその空間でのトレーニングをする事になった。
翌日、ソラ、ましろ、ツバサ、ヒョウ、エルはあげはの車に乗せてもらう事になった。ただ、荷物もある関係で例によって定員オーバーなのでヒョウはキュアライトピラーの能力制御のトレーニングも兼ねて空を飛びながらの移動である。
そして、外出組が出て行った後、アサヒとユキは虹ヶ丘家の庭に出るとそこに異次元のゲートが開く。どうやらその中でトレーニングをするようだ。
「ここがトレーニング空間?」
「って本当に何も無いな……」
するとそこにキュアバーニングサン、キュアブリザードの二人が実体として揃っていた。
「よく来たわね。ユキ・アラーレに」
「アサヒ・マブシーナ」
「それで俺達にここで何をさせるんですか?」
「……そうね、取り敢えずあなた達には二人ペアにして実践形式で戦ってもらうわ」
すると二人が手を翳すと空間が切り替わると共にフィールドが荒野へと変化した。
「それと言っておくけどこの空間は外界とは時間の流れが違う。ここでの二日間は実質約一週間分のトレーニングになるわ。ただ、君達の体の成長は二日分しか変化しない」
「私達はここの制御に力を使うから戦えない。だからこの子達があなた達の相手よ」
二人が指を鳴らすと二人の前に六人の戦士が虹の輝きと共にその姿を現す。
「「デュアル・オーロラ・ウェーブ!」」
「「デュアル・スピリチュアル・パワー!」」
「「デュアル・スピリチュアル・パワー!」」
「その掛け声は!?」
「光の使者!キュアブラック!」
「光の使者!キュアホワイト!」
「輝く金の花!キュアブルーム!」
「煌めく銀の翼!キュアイーグレット!」
「天空に満ちる月!キュアブライト!」
「大地に薫る風!キュアウィンディ!」
そこに現れたのは以前異空間から現れた敵であるダークネス達と戦ったプリキュア達だった。ただし、キュアブルームとキュアブライト、キュアイーグレットとキュアウィンディはそれぞれ同一人物なので普通ならここに揃うはずが無い。これはつまり……。
「実体のあるホログラム?」
「そうよ。この六人と順番に戦ってもらうわ」
するとユキは何かに気がつく。それはブラックとホワイトの衣装だ。
「……あれ?ブラックとホワイトの着ている服が違う?」
「よく気付いたわね。そう。この二人は旧式のキュアブラック、キュアホワイト。……あなた達のレベルに合わせて新式にも変化できるわ。まぁ、とは言ってもまだ今のあなた達には旧式で十分相手になると思うわよ」
「え……」
ユキがキョトンとする中、アサヒは何となくその理由を知っていた。何故なら彼は既に実感している。一緒に共闘したあの時、明らかに自分達とのレベルが違うという事実を。
「さて、あなた達も変身しなさい。時間は有限よ」
それを聞いて二人は頷くとミラージュペンを構えて光に包まれる。そして、プリキュアへと変身した。
「静かにひろがる白い雪景色!キュアスノー!」
「夜明けにひろがる眩い朝日!キュアサンライズ!」
二人が降り立つと最初に前に出てきたのはキュアブラックとキュアホワイトだ。まずはこの二人が相手である。
「時間としては三十分毎に交代。それを取り敢えず四セット終わるまで行うわ」
つまり六時間ぶっ通しでの戦闘である。二人にとっては地獄のようなトレーニングになるがこのくらいで折れるようならシャドー相手に勝ち目は無いということである。
「先に言っておくけど個人技は禁止。使って良いのはあなた達の持ってる合体技だけ。これはブラック達にも個人技が無いからフェアにするためよ」
「それじゃあ、面倒な説明はこのくらいにして……よーい、初め!」
その瞬間、ブラックとホワイトは二人からすればとんでもないスピードで突っ込んできた。
「「ッ!?」」
そこから繰り出される重い一撃に二人は何とか対応するものの、それでも何発も受けられるような技では無いとファーストコンタクトで察する。
「だだだだっ!」
「やぁああっ!」
更にブラックとホワイトはそれぞれサンライズとスノーを激しく攻め立てる。相手はホログラムのため体力という概念が無い。もちろんオーバーダメージを受ければ怯むとかはあるが、それでも疲れが無いのは相手にとって圧倒的に有利なポイントだろう。
「「はあっ!」」
勿論二人も何もできないわけじゃない。何とか隙を見つけて反撃を開始する事になる。こうして、サンライズとスノーは圧倒的格上とのマッチアップをするのであった。
また次回もお楽しみに。