熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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悲しみの涙 ヒョウの気持ち

ヒョウの両親が去って行った後、ようやくアサヒはペギンへと文句を言う事になった。

 

「ペギンさん、どうしてあんな人達に頭を下げているんですか!」

 

「……ヒョウの両親はお金持ちの名家。加えて王城への出資を行ってくれている。このスカイランドの影の実力者なんだ」

 

それを聞いてアサヒは息を飲んだ。それはつまり、例えスカイランドの王城に勤める人々だったとしてもヒョウの両親に下手に逆らう事ができないという事である。王様や王妃様、エルぐらいなら意見を言えるだろうが、ただの護衛隊の一人という立場では何も言えないのだ。

 

「でもそれじゃあ……」

 

「ああ。私だってヒョウが蔑ろにされている今の現状が良いとは思わない。……それでもこの現状を変えられる可能性があるとすればそれはヒョウ自身なんだ」

 

「俺達には黙って見ているだけしかできないと」

 

ペギンは悔しそうな顔つきになりつつ頷く。そして、その頃ヒョウは一人泣いていた。

 

「ううっ……うう……こうなるから、こうなるから来たくなかった。私は役立たずだから……」

 

そこにユキが到着するとヒョウへと話しかける。それはヒョウの事を心配した様子だった。

 

「ヒョウ……大丈夫?」

 

「見ての通りだよ。私、やっぱりダメな娘だった」

 

「そんな事無いよ!ヒョウはダメな娘なんかじゃ」

 

しかし、ヒョウは立ち直る事ができない様子だった。余程両親からの言葉がショックだったのだろう。

 

「ヒョウ、ごめんね……」

 

「ユキ姉が何で謝るの?ユキ姉は何も悪くなんか」

 

「ううん。私は悪い事をしたよ。……ヒョウの事をずっと男の子だって思い込んで」

 

ユキは申し訳なさそうな顔になる。彼女としてはヒョウの事を間違えた認識で接してしまった事を悔やんでいるのだ。

 

「……それは私が勝手に取り繕っただけ。寧ろ男として見てもらえてよかった。……私は弱いから。私の家は名家でそこ生まれの人が弱い人間なんて思われたらきっと見下される。だから男に成り切って少しでも強いって見せたかった」

 

ヒョウはそう言うものの声は震え、目からは涙がとめどなく溢れていく。

 

「私なんか、私なんかあの家にいちゃいけないの。家族として認められてはいけない」

 

「そんなはず無いよ!ヒョウは、ヒョウだって家族として認められるべきで……」

 

「ごめんユキ姉。少しだけ一人にさせて」

 

「………わかった。無理だけはしたらダメだからね」

 

「ユキ姉に言われても説得力無いけど……でも、心配してくれてありがと」

 

その日の夜、ヒョウは一人で泣いた。そして思い出される過去の日々。ヒョウはとにかく辛い気持ちに耐え続けてきた。家族から課せられる教育が上手く習得できなければその度に無能だと言われる。なまじ他の兄妹達ができるのだから余計に自分ができない事に劣等感を感じていた。

 

「私には何で何もできないんだろ」

 

ヒョウは隠れて努力した。それでもできないことの方が多く。家族からは人では無く物同然に扱われる。他の兄妹達が温かいご飯を食べている間は自分は食べさせてもらえず、いつも残った僅かな冷飯のみを食べていた。

 

誕生日等のお祝いなんてされた事も無い。自分という存在は家族にとっては邪魔者でしか無いと察していた。

 

「……私のいる意味って何だろう」

 

ヒョウはいつか家族を見返すために一人家出をする。その中でボロボロになり、倒れた自分を偶々家族旅行のためにプニバードの村の近くにまで来ていたユキに拾われて助けられた。

 

ユキはダメな自分に優しく接してくれる。当時は知らなかったが、ユキもこの時辛い思いをしていた。それでも彼女は自分よりもヒョウを優先。彼女を心配して助けたのだ。その時、男の子に見られたという誤解こそあったがヒョウはその方が好都合とその日以来男のフリをした。

 

「ヒョウをいじめないで!ヒョウのおとうさんもおかあさんもなんでヒョウをだいじにしないの!」

 

ユキは幼いながらもヒョウの両親に面と向かって反発した。ヒョウはそんなユキの背中を見て憧れることに。その後、ユキはソラの両親達によって引き取られてしまい彼女の説得も無駄に終わってしまった。

 

「私を見てくれるのはユキ姉とプニバードの友達だけ」

 

ヒョウは一時期人間不信に陥りかけたが、頼れる姉のようなユキの存在とプニバードの友達のおかげで辛うじて踏みとどまれたのだ。それ以降、ヒョウはまた親に物扱いされる日々になったが数年後にはまた家出。それから嵐の中でソラシド市に落ちてそこで同じプニバードのツバサと出会った。

 

「初めまして、ボクはツバサ」

 

「わた……俺はヒョウ」

 

最初の方はそこまで仲が良かったわけじゃない。それから一緒に日々を過ごす中で彼には夢があるとヒョウは知った。

 

「空を飛ぶ?」

 

「うん。ボク達プニバード族でも空を飛びたいなって……無理な話かもだけど」

 

「ううん!無理じゃない!俺は行けると思う!」

 

努力するツバサの姿勢にヒョウは心を打たれた。だから、ツバサの夢は自分の夢として応援する事に決めたのだ。それから一年経ってユキがソラシド市に、虹ヶ丘家に来た時は驚いた。

 

「(ユキ姉!?何で……もしかして、ユキ姉も……)」

 

それからユキと虹ヶ丘家に住むアサヒが仲良くするのを見ていると何故か嫉妬の感情が沸くようになる。姉と慕うユキがアサヒに取られたような気がしてならなかったからだ。

 

そして、ツバサとほぼ同時にユキ達の前にまた姿を現して現在に至る。ヒョウはダメな自分をいつも隠していた。見せてしまえば侮られるから。だから強気な自分を作り上げて虚勢を張る。

 

「なんだ……私、幼かったあの日。ユキ姉に助けられてから何も成長してない。ただ逃げてただけ……」

 

ヒョウは悔しさのあまり拳を握りしめて泣く。目が充血して赤くなるがその感情は止まらない。嗚咽を漏らして吐きそうになるが必死にそこは我慢した。

 

そして、夜は更けていき、翌日の朝。また前日同様に土砂の撤去を行っていた。

 

アサヒとユキもプリキュアになって手伝っている。作業も青の護衛隊や現地の人々の頑張りもあってあと少しで終わる。

 

「皆、最後の一踏ん張りだ!」

 

「「「「「「おお!」」」」」」

 

人々は助け合い、力を合わせて土砂を退けていく。ヒョウは女の子だとわかった以上、無理に力仕事を手伝わなくて良いと言われた。しかし、彼女はやると言って聞かず。フラフラになりながらも手伝う。

 

「ヒョウ?大丈夫か?疲れたのなら休憩を……」

 

「要らない……私は大丈……」

 

その瞬間、ヒョウの足がガクンとなると倒れ込む。それを慌ててユキが受け止めた。

 

「休んで、ヒョウ」

 

「良いよ。まだ私は……」

 

「良い加減にして!ヒョウ……お願いだから、これ以上一人で思い詰めないで」

 

ユキにそう言われてヒョウは俯く。そして、ユキへと言葉を返した。

 

「そんなこと言ったらユキ姉だって」

 

「やっとわかったの。私が無理してた時、周りがどう思ってたか。……私は考え無しだった。皆私を心配してくれてたのに全部突っぱねてしまってたって。だからヒョウには同じ事をして欲しく無い。お願いだから休んで」

 

「……ッ。ごめん……」

 

それからペギンの指示でヒョウは数十分の休憩が与えられた。その間にちゃんと体力を回復させる事を通達され、ヒョウは従う。

 

「ペギンさん、ありがとうございます」

 

「良いのよ。……あの子も辛い思いをしているってわかってたのに私の方こそ今までほったらかしにしてすまない」

 

ペギンが謝る中、ヒョウは暗い顔で下を向いているとそこにヒョウの両親が現れる。

 

「クソ娘、何そこで休んでいるんだ?」

 

「ッ……父様、母様」

 

「あなたにそう言われると虫唾が走るわ。まぁ、そんな事は良いとして。何勝手に休んでいるの?」

 

「それは……」

 

ヒョウはペギンに休むように言われたからと言おうとするがそれを断念。ペギンに迷惑をかけないように無言で仕事に戻ろうとする。

 

そんな時だった。突如としてヒョウの前に緑の竜巻が発生するとヒューストムが降り立つ。

 

「お前はヒューストム!」

 

「……何だよ。プリキュアになれない雑魚の方のプニバードだけか」

 

「ッ……」

 

ヒョウはこのままでは不味いと思った。近くには一般人の両親。アサヒとユキは働いていてこの事態に気づいていなかった。ライトピラーの力はユキに渡してしまったから手元には無いので自分も戦えない。

 

「ちょっとアンタ!いきなり現れて何の用だ?」

 

「そうよ。私達を誰だと思ってるの?」

 

ヒョウの両親がそう言う中、ヒューストムは無言で手を翳す。ヒョウはその時何が起きるか予想がついて咄嗟に飛び出した。

 

「危ない!」

 

ヒョウが両親を突き飛ばすと自分はヒューストムから放たれた竜巻に巻き込まれて近くの壁に激突。体に痛みが走るとグッタリとしてしまう。

 

そして、一歩間違えれば自分達の方にそれが来る状況だったためにヒョウの両親は戦慄。そのまま腰が抜けてしまった。

 

「あ、あぁ……」

 

「ふん。自らを犠牲にして毒親を守るとか意味わかんねぇ」

 

「子が親を守るのは当然だろ!何を言って……」

 

それを聞いた途端ヒューストムは溜め息を吐く。それからまた手を翳した。

 

「お前ら、自分達が何で無事なのかわからないのか?お前らは親としてあの子に何をした?それなのにあの子はお前らを守ったんだぞ?そのありがたみもわからないとか控えめに言ってクズか?」

 

「うるさいわ!あなたこそ、その物騒な態度を……」

 

次の瞬間、二人の脇を風の弾丸が掠めると地面に着弾。二人は恐れ慄く。

 

「「ヒッ!?」」

 

「……はぁ。柄にもなく良い事を言ったが。もうこの二人。死なないとわからないみたいだな」

 

そう言ってヒューストムが指鉄砲を構えた時だった。ヒョウがフラフラと両親を守るように前に出てきたのは。

 

「やめろ……。私の家族に手を出さないで!」

 

「何故?昨日お前らの会話を風の便りでコッソリ聞いてたがそいつらはお前を蔑ろにしたんだぞ?娘を娘とも思わずにゴミ扱いして」

 

「そうよ。でも、私は……私は、まだ父様と母様に認めてもらってない!」

 

「……あ?」

 

「私、ダメな愚娘だけど。いつかきっと認めてもらうために今まで頑張ってきた。だから、だからこんな所でいなくなって欲しくない!私にとってはこんな私を産んでくれた親だから!」

 

ヒョウの言葉にヒューストムは苛つく。そのためヒューストムは笑みを浮かべた。

 

「ならお前から殺してやる。そうすればキュアオーロラは深い傷を心に負うだろう。まぁ、そのバカ両親は知らないけどな?」

 

そう言ってヒューストムがエネルギー弾を撃とうとしたその時だった。いきなり目の前にキュアオーロラが現れるとヒューストムへと拳を叩きつける。

 

「やあっ!」

 

「!?」

 

更にヒューストムが飛んだ先にムーンライズも出てくると回し蹴りをぶつけた。

 

「がっ!?」

 

「危ねぇ。ヒョウ、大丈夫か?」

 

「うん。ありがと」

 

「皆、大丈夫か?」

 

そこにペギンも駆けつけると構える。そして吹き飛ばされたヒューストムを見据えるのであった。




評価が……欲しい。入れてもらえると参考になりますのでよろしくお願いします。また次回もお楽しみに。
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