シュラとの戦いが終わり、レインボージュエルは元の場所に戻された。その後お昼は過ぎてしまったがプリキュアの変身者達はご飯を食べてからささやかなフェアリーパークでの時間を過ごす事になる。
「わぁ……!アサヒ君アサヒ君!見て見て!景色が小さく見えるよ!」
今現在、プリキュアメンバー全員で観覧車に乗っており、このゴンドラにはユキ、アサヒ、せつな、ゆり、エレンがいた。
「お、おう。そうだな……」
ただ、アサヒは念願のユキと一緒のゴンドラに乗れたにも関わらず何故か景色を見るのに集中できずにいる。理由は単純だ。
「(ゆ、ユキ……色々近いんだけど!?)」
何しろ、アサヒの目の前にはすぐ真隣で子供のようにはしゃぐユキがおり。アサヒに自然な形で手を繋いで彼に外を見るように言いつつその体を引っ張っているのだ。
「(こ、これ……ユキ的には無意識でやってるんだろうけどこんなの勘違いするって!?それに、ユキって可愛いから……って、ダメだダメだ!そんな欲丸出しにしてみろ。ユキになんて思われるか)」
アサヒは今にもユキの手を握り返したいのを必死に我慢。あくまで節度を保とうとする。そして、そんなイチャイチャ気味な2人を見せつけられているせつな達はちょっと気不味くなるわけで。
「ね、ねぇゆりさん」
「ええ……中々熱い物を見せられてるわね」
「熱々過ぎてこっちも胸焼けしそうなんだけど……」
せつなとゆりはこれで2人が付き合ってないのかと疑問に思える程に距離感が近いユキとアサヒに唖然とし、ハミィはそんな2人の仲良しっぷりにエレンへと問いかける。
「セイレーン、ハミィ達もあんな風にするにゃ?」
「やかましいわ!あんなの恥ずかしくてできないわよ!」
「「えっ?」」
「……あ」
ただ、エレンが恥ずかしがったタイミングでユキとアサヒも自分達が何をやってるのかを自覚。慌てて2人は離れると恥ずかしそうな顔でユキが謝った。
「ご、ごめんなさい!つい夢中で……私、アサヒ君になんて事を……」
「あ、謝るなよ。ユキだって悪気があったわけじゃ……」
「あ……ああ」
そんな風に顔を赤くしながらお互いの行動を謝り気不味そうにするユキとアサヒ。そして、空気を読めない発言をしてしまったエレンは凍りつく。
「今のはエレンが悪いわね」
「えぇ、わかってても言っていい時と悪い時があるわ」
「ちょっ、2人共!?」
「セイレーン、少しは空気読まないとにゃ」
「それをアンタが言うな!!」
尚、ハミィの天然ボケのせいでこうなったエレンはその元凶となった彼女からの諭す言葉に怒りをぶつける事になる。
それから場面はジェットコースターへ。その中で先頭車両の尚且つ前の方に乗っているのはソラ、ラブ、響の3人と何故かつぼみである。
「ちょっと何で私もこうなるんですか!?」
「仕方ないですよ、くじ引きでこうなっちゃったんだから……」
「うぅ……」
「もう、こうなったら文句は言いっこ無しだよ!」
「そうそう、楽しまなくっちゃ!」
迫り来るジェットコースターの出発時刻に未だに躊躇うつぼみだったが、ラブや響辺りは割とノリノリで乗り込んでおり。後乗ってないのはつぼみだけである。
「つぼみさん、もしよろしければ私が手を握りましょうか?」
「ふえっ、良いんですか?」
「はい!私も不安な時とか手を握りたいって思いますし。その方が安心できるかなって」
「すみません……お願いします」
その後、つぼみは観念してソラの手を握る形で乗り込むと早速ジェットコースターはスタートしてしまう。……ただ、やっぱり怖いものは怖いようで。ジェットコースターを降りた後のつぼみは一瞬魂が抜けかけてしまったが……これは余談なのでこれ以上言わないでおこう。
「つぼみも楽しめていて何よりですぅ!」
「どう見ても絶叫した後の魂が抜けかけてる顔なんですけど?」
シプレとコフレにも色々言われる中、場面は変わってコーヒーカップでは妖精の顔を模したカップに乗ったユキ達一同はクルクルと回るカップの上で楽しく話をしていた。
「これがコーヒーカップですか」
「初めて乗るけど楽しいな!」
「ふふっ、良かったわ。それにしてもあなた達ってあんまりこの世界では外に出かけたりしないの?」
そのカップに乗り込んでいたのはツバサ、ヒョウ、アコの3人であり、見事に小学生組で揃っていた。
「そうですね。少し前まで正体を隠していたもので」
「そう。でも、正体を隠してるのはちょっともどかしい気持ちにならない?」
「えっ?まぁそうだけど……」
するとヒョウは少しまだ何かモヤモヤした感じがするのか。一瞬だけチラチラとツバサを見ていた。
「やっぱりあなた達もそうだったのね」
「という事はアコさんも?」
「ええ。それなりに長い時間、生まれを隠して生活してる時があったわ。だけど、ちゃんと話した後はスッキリしたものよ」
「あー、それボクもわかります!ヒョウもですよね?」
「うえっ!?え、えと……うん」
「何でそんなに躊躇ったような言い方をするんですか……」
そんな風に小学生組が会話する中、隣のカップでは何やら悲鳴のような物が上がっていた。
「オラオラオラオラオラ〜ッ!」
「ちょっ、えりか回しすぎ!!うわぁああ!」
「あはははははっ!楽しいでしゅ〜!!」
「ちょ、そんなにやったら目が回るんや〜っ!?」
そこにいたのはえりか、美希、ポプリ、そしてタルトであり、そこではえりかがコーヒーカップを勢い良く回し過ぎているせいで美希やタルトが目を回してしまっていた。
「あの子達は何やってるのよ……」
「「あはは……」」
ちなみにこの後えりか、ポプリの2人もしっかりと目を回してしまう事になるのだった。
「わぁ……このぬいぐるみ可愛い!」
「こっちもどう?」
「良い良い!どれも可愛いよ!」
「える!えるぅ!」
「プリプ〜!!」
売店では妖精達のぬいぐるみが売られているエリアにてましろ、奏、祈里、エル、シフォンがその可愛らしさにメロメロになっており。彼女達もまた年相応の女の子な一面を見せていた。
そんな風にユキ達がパークを楽しんでいる頃、運営の方に戻っていたココ、ナッツ、シロップ、ミルクの4人の方は平和になったフェアリーパークに安心している様子だった。
「本当に平和に戻って良かったココ」
「そうナツ!やっぱり平和が一番ナツ」
「はぁ、もう私は休んで良いミル?流石に疲れたのミル」
「あれだけ戦えば仕方ないロプ……良いロプよ」
その中でもミルクはミルキィローズとして戦った消耗が大きかったのもあってこの日は休みをもらう事に。勿論ココ達も無理に働けという事は言わないので彼女は妖精態の控え室の方へと引っ込んでいくのだった。
それからもユキ達の楽しい時間は続いた。妖精のパレードにメリーゴーランド。アスレチックに数々の売店でのショッピング、更にここだけの美味しい食べ物。
その最中でユキとアサヒは恋人で無いはずなのにちょくちょく2人だけのイチャイチャを出してしまう。
「アサヒ君……その。これ、一口食べる?」
「ゆ、ユキ!?良いのか……?」
「うん……。折角2人で違うソフトクリーム頼んだから……」
今度はアサヒがイチゴソフトクリームを頼んだのに対してユキはミルクソフトクリームを頼んだのでユキが自分の食べさしを彼に差し出していたのだ。
「わかった。あむっ……」
「ど、どう?」
「美味しい……ありがと。ユキ」
「う、うん……」
ユキはほんのり頬を赤くしながらもそうやって言うとこの様子を見たえりかや奏辺りは思わずユキの思い切りの良さにコソコソと喋っていた。
「ね、ねぇ。本当にあの2人は付き合ってないんだよね?」
「そうらしいけどどう見ても付き合いたてのカップルみたいな事してない?」
「ね、あれで無自覚とか色々疑いたくなるんだけど」
そこに美希も来ると2人の親密さに胸焼けがしそうになってしまうのだった。
ちなみに、その様子を目の前で見せつけられたヒョウは嫉妬の炎で燃えまくっているようで……。
「アサヒィイイッ!ユキ姉からの好感度が高いからってやって良い事と悪い事くらい考えろって……」
「ちょっ、ヒョウ!気持ちはわかりますけど落ち着いてください!」
そんなハプニングやらが色々ある中で楽しい時間を過ごす一同。しかし、楽しい時間はあっという間に過ぎ去り……どうしても別れの時は来てしまうようで。
「あー、遊んだ遊んだ!」
「うん。チケットの幸せのゲージも満タンになったし、これで……ッ」
ユキはチケットに溜まった幸せのゲージと傾く太陽からとうとう帰る時間になってしまったのだと考える。
「もう帰らないとですね」
「うん。名残惜しいけど、そろそろ良い時間だし」
「それに皆幸せって感じの良い笑顔で。ここを十分楽しんだよね!」
ラブ、つぼみ、響が口々にフェアリーパークを堪能して満足した事を言うと一同は自然とそれぞれが住んでいる街に帰るためにチーム毎に分かれる形で集まる。
「あ、あの!また会えますよね?」
するとユキが寂しそうな声色でラブ達に話しかけると彼女達は微笑みつつ彼女の言葉に頷く。
「勿論よ!」
「なーに当たり前な事言っちゃうの!」
「私達はもう友達だから!」
「ッ……皆さん」
美希、えりか、奏の3人がユキの問いに明るい様子で答えを返すとユキも少し寂しさが和らいでいた。
「今日は一緒に遊んでくれてありがとな!」
「それと、バラバラになった友達を探してくれた事もだよ」
「ああ、それは私達もだから」
「お互い様って事で!」
「それに、遊んでいる時間も探していた時間も両方楽しかったわよ」
アサヒとましろが友達探しと遊んだ事へのお礼を言い、祈里といつきとエレンがそれに対する答えを返す。
一同は何だかんだで離れ離れ状態の友達を探していた時も楽しんでいた節があり、それから合流してアトラクションで遊ぶのも当然楽しかった。
「色々ありましたけど、またどこかで縁があったらまたよろしくお願いします」
「そうね。その時はまた楽しい時間を過ごしましょう」
「これからも辛い事は沢山あるでしょうけど、皆で笑い合うためって思えればきっと乗り越えられるわ」
ツバサ、せつな、ゆりがそう話をしているとヒョウの元にこっそりとアコが近づいてくる。
「あ、アコさん?」
「……ヒョウ。あなたとの時間、楽しかったわ。そんなあなたにアドバイス」
「えっ?」
するといきなりアコがアドバイスと言い出した事にヒョウは困惑したような表情を見せると彼女はこっそりとヒョウに耳打ちした。
「あなたにも事情は色々あるんでしょうけど、隠し事は早めに明かした方が良いわ。ヒョウちゃん」
「ッ!?ち、ちが……わた……俺は……」
ヒョウはアコにいきなり“ちゃん”呼びされた事に相当動揺すると慌ててしまう。
「ヒョウ?アコさんに何か言われたの?」
「別に。なんでもないわ。それと、あなた達2人も早く素直になりなさい。外から見てて色々とバレバレなのよ」
「「えっ?」」
すると今度ユキとアサヒに向かってそう言うと2人はいきなりの事に唖然とする。その間にもアコはさっさと響達の元に戻っていく。そんな様子に妖精組もそれぞれ声を上げていた。
「あ、響と奏みたいにハモッたにゃ!」
「2人共仲良しって事ですぅ!」
「いや〜仲良しって言うよりは……2人共お互いへの愛で溢れてるって感じやな」
「プリップ〜!ラブ〜!」
「ポプリもいちゅきへの愛でいっぱいでしゅよ?」
「その愛じゃないですよ」
どうやら妖精達からしてみても2人が両想いの状態なのは明らかであり、付き合うのも秒読み状態であるのは確かだと考えてしまう。
「それでは、そろそろ行きましょうか」
「うん!皆〜!また会おうね!」
「はい!それまでお元気で!」
「バイバ〜イ!」
「「皆、ありがとう!」」
こうして、最後の会話を終えた一同はチケットの効果を発動して転移を発動。それぞれの住む街へと戻っていく事になる。
その日の夜、ソラシド市の街中ではシャドーが1人屋上から街中をボーッと見ていた。脳裏に浮かぶのはスカイランドの街並みで自分と共に戦う4人の少女達との時間。
「まただ……何なんだこの光景は。俺が求めるのは力だけなのに」
戦いが終わり、変身解除した己の姿はユキやソラ、ましろと同じ中学生くらいの少女だった。そして、自分の元にやってきた3人の少女はそんな自分と同い年くらいの子ばかり。
1人だけ大人の女性だったが彼女だけ明らかに高貴な身なりをしており、少なくとも自分のような庶民がおいそれと隣に並んで良いのような様子では無かった。
「プリンセス……エル……様……はっ!!」
シャドーは思わず呟いたのはまさかの今自分が狙っているはずのエルの名前である。ただ、シャドーは慌てて自分の頬を叩くとその考えを振り切った。
「俺は、何を言ってるんだ。エル様だと?そんな人間、いるはずが……」
「そうだ、お前にそんな気持ちなど不要だ」
その瞬間、シャドーの後ろから1人の人間が姿を現す。それはローブを纏った影であり、その声色から男である事。またフードを被っているのと夜の闇の暗さのせいで顔はよく見えなかったが、淡々としたような声色で右目にはモノクルを掛けているのが辛うじてわかる程度だった。
しかし、シャドーには何となくその男が誰なのかは察したようで片膝をつく形で平伏する。
「あなた様は……何故ここに」
「お前が裏切ったと聞いてな。様子を見に来たまで」
「ッ……裏切りは認めます。仮面に操られたとはいえ、我が主を裏切った事。誠に申し訳ございません」
男からの追及に対してシャドーは素直に裏切り行為を認めると謝罪した。それを聞いて男は何やらその主と通信をしていたのか。少しだけ時間が空く。
「……良かったな。お前が素直に答えを返した事と、その誠実さに免じて今回は許すとの事だ」
「はっ!二度とこのような不祥事。起こさないと誓います!」
「良い心がけだ。……そんなお前に私からも聞きたい事がある」
するとローブの影は主との通信を切ると個人的にシャドーへの質問をしてるのか。彼は聞き返す。
「聞きたい事ですか?」
「ああ。……お前は力を求めるか?」
「ッ……それはどういう事で?」
「私の意図はどうでも良い。お前は力を求めるかと聞いている」
ローブの影はシャドーからの問いに一切答える事は無く。ただひたすらに彼に力が必要かと問いかける。そして、そう問われた彼の答えは最初から決まっていた。
「……ああ。俺は力が欲しい」
「ならば良かろう。アンダーグエナジー……召喚」
「ぐ……うわぁああああ!!」
その瞬間、ローブの影の足元からアンダーグエナジーが大量に召喚されるとそれがシャドーの中に吸い込まれていく。
シャドーは多量のアンダーグエナジーを浴びて意識が奪われる中でその脳裏に3人の少女と1人の女性の姿が浮かぶ。それは先程から浮かぶ過去の記憶に出てくる者達だった。
「皆……ごめんなさい……」
その言葉を最後にシャドーの意識は途切れ、彼にアンダーグエナジーを注入したローブの影もその様子を見届けてからどこかへと消えていくのであった。
また次回もお楽しみに。