ツバサとヒョウの歓迎会を行う上でプニバードの2人が食べたい料理を作るべく希望を聞いたユキ達。するとヒョウが言い出したのはヤーキターイという物だった。
「えっと、ヤーキターイか」
「こっちの世界にそんな食べ物は無いから多分スカイランドの食べ物だよね。ソラちゃん達は知ってる?」
アサヒやましろはヤーキターイと聞いてもイマイチピンと来ていないようで。そのためスカイランド組の2人へと質問する。
「ヤーキターイね。知ってるよ」
「確か、プニバード族がお祝いの時とかに食べる料理の事だったと思います!」
「なるほど、伝統料理的な物か」
どうやらスカイランドにもその土地に伝わる伝統料理的な食べ物があるらしい。
「でも私も詳しくは知らないんですよ」
「ユキ姉やソラさんが知らなくても仕方ないよ。ヤーキターイ自体、本来ならプニバード族しか知らない物だから」
どうやらスカイランドでもプニバード族だけの料理なようで。他の者が知らなくても仕方のない事なのだろう。
「何しろ、外はフワフワ。中はしっとり甘くて……凄く美味しいんですよ!最後に食べたのは、ここに来る少し前だったなぁ……」
するとツバサはヤーキターイの味を思い出すと思い入れが深い物なのか……。前に食べた一番新しい記憶が浮かんでくる。
「ボクの絵が、コンクールに入選して。父さんと母さんが凄く喜んでくれて!」
ツバサの父親はコンクールに出せる程の立派な絵描きだ。その血を継ぐツバサもまた、絵は得意である。そして、ツバサの絵が入選したのをキッカケにお祝いとしてヤーキターイを食べたのだ。
「あの時、皆で食べたヤーキターイはとっても美味しかったなぁ……」
「ッ……」
「そういえばツバサ君とヒョウ君はもうずっとこの世界にいるんですよね」
ツバサがヤーキターイの話をすると少しだけヒョウは気不味そうな顔を見せてしまう。するとソラからの言葉にツバサはある事を思い出したのか声を上げた。
「あっ、ホームシックとかじゃ無いですよ。両親とはヨヨさんのミラーパッドで連絡を取れてますし」
ツバサが言う連絡を取れているというのは恐らく前に裏山にスカイジュエルを取りに行った後、ユキ達が知らない所でコッソリと連絡をしたのだろう。そんな時、ツバサは隣にいるヒョウの気不味そうな顔に気がつくとすぐに彼の事情を話す事に。
「ボクもスカイランドではお祝いの時によく食べてました。あ、でもヒョウは……」
「うん……父さんも母さんも俺のお祝いとかはいつも素っ気ないんだ。ほら、俺って家では無能扱いだっただろ?」
「ッ!?さっきからヒョウ君がヤーキターイの話をしてなかったけど、もしかして……」
本来ならプニバード族であるヒョウはヤーキターイを知っているはず。何なら庶民のツバサが食べているのだから当然名家生まれのヒョウが食べられないはずがない。そしてそれはつまり……。
「うん。……俺の場合は家族から祝われることはあってもヤーキターイを出してもらうとかはできなかった。だから今まで生きてきた中では一度も食べた事が無い」
「う、嘘だろ」
「酷い……」
それからヒョウが言うには他の兄弟や親戚が祝われる時は出してもらえるらしいのだが、その時はヒョウはとにかくヤーキターイを食べさせてもらえなかったらしい。ここまで来るとヒョウの両親の親としての神経を疑うぐらいだとアサヒは憤っていた。
「クソッ、トンネルが開通してプニバードの村に行けるようになったらカチコミにでも行ってやろうかな……」
「アサヒ、良いんだ。結局俺はあの両親から見たらその程度の認識なんだから」
アサヒがそんな物騒な事を口にする中、ヒョウはこれ以上アサヒが怒る必要は無いと彼を宥める。そして、ユキはその場の空気を変えるために声を上げた。
「え、えっと。じゃあ今回はヒョウのリクエストでヤーキターイを作るって事で良いかな?」
「ボクも久しぶりに食べたかったですし良いですよ。それに、ヒョウにもあの味を知ってもらいたいです」
「私達も勿論賛成です!」
先程のヒョウの話を聞いた今、反対意見を述べる者など1人もいない。そのため、歓迎パーティのためのヤーキターイ作りが決定する。ただ、早速ヤーキターイ作りの上での大きな問題にぶつかった。
「あれ?でも作り方とかはどうするの?」
「そうですよ。私達、作り方とかは全然知りませんし……。ツバサ君達も知らないんだよね?」
「はい……実はボクも知らなくて」
ヒョウはヤーキターイを食べる事すらできてないため作り方も知らないのは仕方ないとして。どうやらツバサもわからない様子を見せていた。
「どうしよう、これじゃあ作りようが……」
「……あ、あのさ」
するとユキが恐る恐ると言わんばかりに小さく手を上げる。そして作り方の問題で悩む一同にある事を言う。
「えっと、私……ヤーキターイの作り方。何となくだけど……知ってるよ」
「「「「「……え?」」」」」
その瞬間、まさかの作り方を知っているという彼女の発言にその場の全員が見事なハモリを見せる。その直後、ユキはどうして知っているのかの理由を話し始めた。
「実は幼い頃に出会ったヒョウを家に送り届けてからなんだけどね、その時にレミさん……ソラちゃんのお母さんにプニバード族の村に連れて行ってもらって。後日プニバード族について調べたんだ。その、それからもう一回プニバード族の村に行った時にヤーキターイの作り方とかも仲良くなった方に教わったの」
どうやらユキはプニバード族しか知り得ないヤーキターイを作り方も含めて知っているようだった。その理由として、当時のユキはまたヒョウのような困り果てているプニバード族と出会った時に少しでも力になりたい気持ちがあったようで。
独学ではあったがヤーキターイの作り方を調べていた。更に言えば、調べた後に実際にプニバードの村に行って一度作ったらしい。
「ユキさん、凄いです!」
「あ、でも私料理は苦手だから教えてもらった時は大失敗して。……だから作るのは自信無い……」
ただ、その際に試しで作った時はユキの料理の下手さが災いして黒焦げにしてしまい失敗。そんな事もあって作る事に関しての自信は無かった。そんなユキが俯く中、アサヒがその肩に後ろから手を置くと思わず彼女は振り返る。
「大丈夫だ。ここには料理のエキスパート。ましろがいる。皆で力を合わせてヤーキターイを作ってみようぜ!」
アサヒはユキに向かって微笑むと彼女もそれに合わせて微笑む事になり、同時にソラやましろもやる気になっていた。
「そうですよ!」
「ツバサ君やヒョウ君のためにも皆で頑張ろう!」
こうして、ヤーキターイを作る事に決まった一同。するとアサヒがユキにそのヤーキターイの完成形について聞き、それとタイミングを同じくしてヨヨがミラーパッドを持ってやってくる。
「それで、ヤーキターイっていうのはどういう形なんだ?」
「えっと……魚の形をした焼き菓子みたいな物かな」
「へぇ、それって何だかたい焼きみたい」
「ふふっ、良い予想をするわね」
ましろはその話を聞いてヤーキターイをたい焼きに近い物だと想像。それを聞いてその場に来ていたヨヨは彼女に話しかけつつ手にしたミラーパッドにヤーキターイの写真を映し出す。
「これがそのヤーキターイよ」
「「……えっ?」」
「そう!それですよ!」
「ああ……いつも目の前で見るだけしかできなかったヤーキターイ……」
するとツバサやヒョウがその画像が正しい事を口にし、アサヒとましろは思わず唖然としてしまう。
「本当にたい焼きその物だね……」
「ああ、でも逆にその方が助かるよ。俺達がよく知ってる食べ物なら作るのもやりやすい」
「うぅ、でもまさかプニバード族だけに伝わる料理が……この世界で当たり前に食べられる物だったなんて」
アサヒが比較的作るのが簡単そうな料理であった事に安堵の顔を浮かべていると同時にツバサは衝撃の事実に思わず項垂れてしまう。それはさておき、気を取り直して一同は今度こそヤーキターイ作りをしようとする。
「ま、まぁ話はこの辺にして。そろそろヤーキターイを」
「あ……でも待って。こっちの世界にヤーキターイの材料、あったかな」
「「「「「あっ」」」」」
ユキの一言に一同は思わず我に返ってしまう。ヤーキターイ作りの際に決して避けて通れない問題……それはヤーキターイを作るために必要な材料である。
「えっと、確か生地はプニ麦粉。あんがプニの実だったから……」
「うん、スカイランドに行かないとまず手に入らないな」
プニ麦粉、プニの実は双方共プニバード族が住んでいる場所付近にしか無さそうな名前の物であった。そしてそれはソラシド市側では絶対に手に入れる事はできない事を意味する。
「うーん。どうすれば良いのでしょうか?」
「裏山に運良く落ちてたりしないかな……」
「厳しいと思う。スカイジュエルの時はそれがエネルギーを秘めた物だからペンが反応したけど、流石にただの木の実や作物には反応してくれないだろ」
アサヒのいう通り、前回のスカイジュエルとは違って今回はミラージュペンによる反応を頼りにできない。下手したら最悪材料探しだけで時間を浪費する上、落ちている可能性自体が低い物なので見つからずに終われば最悪である。
「それなら一旦たい焼きを作った方が良いかも。ツバサ君もヒョウ君もたい焼きは食べた事無さそうだし、試しにそれを食べてみるっていうのは」
「なるほど、そこからヤーキターイ作りのヒントを得るという事か」
「でも、多分それだとかなりの長丁場になるよ?俺達のために良いのか?」
ヒョウは自分達のためだけにそんなにもユキ達の時間を使っても良いのかと問いかける。ただ、彼女達からすればそんなのは些細な問題だった。
「それでも構いません。“一度やると心に決めた事は絶対に諦めない。それがヒーロー”!ですからね!」
ソラがどこからか取り出したヒーロー手帳を見せながらそう言うとユキ達も頷く。
「元々2人のための会なんだからそのくらい大丈夫!」
「それに、何だか楽しそうな予感もするしな」
「皆さん……」
ユキ達が自分達のために頑張ってくれる様子を見せてくれたため、ツバサやヒョウは自分達もやる前からできないと突っぱねるわけには行かないと決意を新たに固める。
「それでは、二人のためにもヤーキターイをこのたいやき……というもので再現しましょう!」
こうして、一同はたい焼きを作ってそれをツバサとヒョウに食べてもらう事から始めることになった。
「この金属の魚があるのは何ですか?」
「これはたい焼き器って言って名前の通りこの魚の所に生地を流し込んだらたい焼きの形に焼けるんだ」
「これなら毎回同じ物を作れて便利だよね。多分手作業で魚の形を作るのって大変だと思うし」
ユキやソラ、ツバサ、ヒョウのスカイランド組がたい焼き器の便利さに感心していると早速ましろが主導する形でたい焼き器を使った普通のたい焼き作りをやる事に。
「えるぅ……」
「ごめんね、エルちゃんにはまだ早いかな……」
「大きくなったらまた一緒に作りましょう!」
「える!」
料理の間は万が一エルが料理中の場所に来てしまわないようにするため、ヨヨに預かってもらう形にしている。なのでエルは自分だけ蚊帳の外だと羨ましそうな声を上げていた。
そこにソラが今度一緒に作る事を約束したので一旦はエルの気持ちも落ち着く事になる。
「良い匂いがしてきましたね!」
「この待ち時間がたまらないぜ」
「上手くできたかな……」
するとたい焼き器で焼く際にセットしたタイマーが鳴り響き、たい焼きが完成。早速それをツバサとヒョウに食べてもらう事になった。
「完成!これがたい焼きだよ」
「見た目はヤーキターイと全く同じですね」
「これがこっちの世界のヤーキターイことたい焼きかぁ……ゴクリ」
ヒョウは今にも食べたそうな目で見ていた。取り敢えず二人の前に置くとそれぞれ手に取って食べようとする。
「「あー……ん?」」
「「「「じーっ………」」」」
すると、2人がたい焼きを食べようとするその様子をユキ達四人はじーっと見つめ始めた。
「「「「じーっ………」」」」
「え、えっと……」
勿論そんな事をされれば2人共食べにくくなってしまう。それでも食べないと感想は言えないのでツバサがヒョウへと促す。
「「「「じーっ………」」」」
「ツバサ、こうなったら一緒に」
「う、うん」
2人は一緒に食べれば大丈夫とばかりに2人で同時に食べてみると口の中に甘いあんこの味が広がる。
「お、美味しい……俺……ヤーキターイを食べるの初めてで……」
「一応それ、たい焼きだからな?」
ヒョウはその瞬間、口の中に広がる甘い味に思わず涙が出てしまう。一応これはたい焼きだとはいえ、性質的にはヤーキターイに近い物だからか余計に心に来るものがあるのだろう。
「あはは。でも……ヒョウはずっと辛い気持ちをしてきたんだからもうここでは我慢しなくて良いんだよ」
「う、うん……はむっ」
ヒョウが感動で涙を流すのを見たユキがよしよしと頭を撫でる。ヒョウはユキの優しさとたい焼きの美味しさに心を奪われてしまった。そして、ツバサの方はソラやましろから質問される事に。
「どうかな?」
「どうでしょうか?」
「……美味しいです!」
そして、ツバサの方もたい焼きの味は口に合ってくれたようで思わず笑顔が浮かぶ事に。
「と言う事は……」
「ヤーキターイと同じ味かな?」
しかし、2人の問いにツバサは首を横に振る。この感じだと流石に全く同じ味といわけでは無かったようだ。
「そ、それは……」
「そっかぁ」
「やっぱり違いましたね」
「あ。でも、美味しかったですし十分ですよ」
ツバサはたい焼きのままでも十分美味しいという事を言うが、まだこの時点でヤーキターイ作りの方はあくまでスタートラインでしか無い。
「ううん。ここからがスタートだよ。このたい焼きとヤーキターイ。2つの味の違う点をツバサ君に教えてもらえば……ヤーキターイが作れると思うんだ!」
「なるほど!」
ヤーキターイの味をよく知っているツバサであれば、ヤーキターイとたい焼きの味の差がより明確にわかるはず。そのため、ツバサを審査員として味見をして貰えばヤーキターイの味に限りなく近い場所にまで行けると考えたのだ。
「ツバサ君、今の所だとどんな感じかな」
「えっと……生地の味は殆ど同じなんですけど、中の“あん”の味が……」
「じゃあ“あん”の材料を変えて色々と作ってみよう!」
どうやらツバサの舌によると中身のあんこが違うようで。ここからはその中身の試行錯誤の時間となる。
「今度は私達も手伝います!」
「あ、ボクも!」
こうして、ユキ達によるヤーキターイ作りのための楽しい楽しいお料理の時間が始まるのだった。
また次回もお楽しみに。