ユキ達がスカイランドに行くためのトンネルを進む中、ユキは緊張した面持ちになっていた。
「ユキ、どうしたんだ?そんなに緊張して」
「ふえ!?え、えっと……」
「何か気になることでもあったんですか?」
ソラにそう言われてはユキも答えざるを得ず。正直に思った事を話す事にした。
「これから王様や王妃様に会うんだよね。こんないつも通りの服で良いのかなって。もっと正装に着替えるべきだったのかなって」
それを聞いてソラやツバサは完全に失念していたと思い至る。そして、頭を抱えた。
「しまったぁ!そういえばそうでした!」
「どうしましょう?このままじゃ失礼な事に……」
「いや、二人共。焦りすぎだからね?」
「そうだぞ。もっと普通な感じで良いだろ」
焦る二人にアサヒとましろが冷静に言う。ヒョウもそれをわかっているのか普通にしていた。
「別に無理に服を整えなくても大丈夫だと思うけどなぁ」
「ですがヒーローたる者、人前ではちゃんとした服装にしないと」
「やっぱりそうだよね!もっとメイクとかしてこれば……」
「だから気にしすぎだっての」
そんな風に話していると出口の光が見えてきた。そして、その先に見てたのはスカイランドの王様である。
「やばっ!ユキ!」
「危ない!」
咄嗟にアサヒはユキを引き寄せてお姫様抱っこをするとヒョウもポンと音を立ててプニバード形態へ。すかさずアサヒの肩にちょこんと乗る。しかし、ソラ、ましろ、ツバサの三人は対処が間に合わずに王様の上に落ちてしまった。
「あ、危ねぇ……大丈夫か?ユキ」
「ふえ!?う、うん……」
「おーい、二人で何イチャイチャしてるんだよ。あと、そこの三人も早く王様の上から退いてあげなよ」
ヒョウがイチャつく二人にツッコミを決めてからソラ達の方も指摘。結局不慮の事故という事でその場は済まされることになった。
「えるぅ!」
そしてエルはと言うと王妃の元へといつもの不思議パワーで飛んでいく事になる。
「お帰りなさい。プリンセス・エル」
「えるぅ!」
それから王様達は久しぶりの再会を喜ぶと共にエルが歩ける所を目の当たりにする。
「えるぅ〜!」
「歩いた!プリンセスが歩いたぞ!」
「えぇ、えぇ」
王様と王妃様がエルの成長を喜ぶ中、ユキ達はその様子を見て微笑む。そんな中、王様が六人へと話しかけた。
「そなた達、よくぞプリンセスを取り戻してくれた。深い愛情を持って我が娘の世話をしてくれた事心から礼を言う。そなた達が守ってくれたのはあの子の身の安全だけでは無い。笑顔だ」
「えるぅ!」
「ソラ、ツバサ、ましろ、ユキ、アサヒ、ヒョウ。あなた達はスカイランドのヒーローです」
それを聞いてユキ、アサヒ、ヒョウ、ましろは謙遜の言葉を返す。
「ヒーローだなんてそんな」
「そうですよ、当たり前の事をしただけです」
「はい。ね、ユキ姉」
「うん。私も誰かの役に立てて光栄です」
そんな四人の隣ではソラとツバサがヒーローという言葉の響きに嬉しそうにしていたが。
「「スカイランドのヒーロー!」」
四人は目を輝かせる二人に苦笑いをする中、ソラは王様に言うべき事があると首を振る。
「王様、エルちゃんを攫った者の事でお話が!」
「……まぁ待て」
「プリンセスが帰ってくるのを待ち望んでいるのは私達だけでは無いのです」
それを聞いて六人はキョトンとする。それから王様達が外に出るとそこにはエルの帰りを待ち望む人々でいっぱいだった。
「私達のプリンセスが戻ったぞ!」
「えるぅー!」
そんな様子を見て六人はやっとこの国に平穏が戻ったのだと実感する。
「めでたしめでたしだね」
「はい!」
「俺達はこのために頑張って来たんだな」
「うん!」
それから国民への話を終えてから別の部屋でゆっくりとアンダーグ帝国についての話をする事になった。
「うーむ、アンダーグ帝国は何故プリンセスを狙うのか」
「あなた」
「いや、すまなかった。この件は全て私が預かる。そなた達は安心して家に帰るが良い。親元でゆっくりと体を……」
王様はそう言うものの、ユキ達はそのまま引き下がるつもりは無いのか声を上げる。
「プリキュアの力!お貸しします!」
「私も!」
「ボクもです!」
「俺達もです!」
「うん。プリキュアになれなくなっても」
「きっと力になれますから!」
六人が意気込む中、王妃様は心配するような声を上げて不安そうにした。
「危険な戦いになりますよ」
「相手がどんなに強くても、正しい事を最後までやり抜く!それがヒーローです!」
「私も、誰かの力になれるのなら全力を尽くします!」
「ヒーロー……か」
すると後ろから声が聞こえて一同がその方を振り向く。そこにいたのは青を基調とした軍服のような物に身を包み、薄紫色の長い髪をハーフアップにした女性である。背中からはヒーローの象徴とも言えるマントが垂れていた。
「……ッ!」
その女性を見た途端ソラとユキは目を見開く。そして、女性が歩いてくる中、ユキ達六人は二手に別れると道を開ける。女性はチラリとソラとユキを歩きながら交互に見て王様達の前に跪いた。
「プリンセス、よくぞご無事で」
「戻ってくれたか」
「都を留守にしていた間とはいえ、プリンセスをお守りできず」
「いいえ、辺境の地の大火災。はるばる……」
王様、王妃様と女性が話す中、ましろとアサヒは目を見開いているソラとユキを見て疑問符を浮かべた。
「ユキ?ソラも……どうして」
「……本物だ」
「え、誰?」
「シャララ隊長……」
ツバサとヒョウは半ば興奮した様子であり、ツバサが更に言葉を続ける。
「シャララ隊長。スカイランドを守るヒーローチーム、青の護衛隊。シャララ隊長はそのリーダー。世界で一番強い剣士なんです!」
「こうして生で見るのは初めてだから」
「何だかよくわからないけど、凄い人なんだな」
アサヒがそう言う中、ツバサは握手して欲しいという気持ちが募る。するとソラは一人歩き出すとシャララ隊長の背中へと抱きつく。
「え!?」
「ソラちゃん!」
するとシャララ隊長がソラを見やると微笑んで話しかける。それはかつての記憶だった。
「大きくなったな、ソラ……それにユキも」
「「はい!」」
「あれからもう十年になるのか」
「「……はい!」」
そのやり取りを見てましろとアサヒは察する。かつてソラとユキが助けられ、ヒーローや人助けを目標にするようになったキッカケの人物がこのシャララ隊長だという事を。
「(あの人が……ソラちゃんやユキちゃんの憧れの……ヒーロー)」
するとシャララ隊長がふと何かを思い出すと王様へととある事を言うべきだと促す。
「王様」
「おお、そうだった。……ユキ・ハレワタール、虹ヶ丘アサヒ」
「「は、はい!」」
二人は王様に呼ばれるとビックリしたように肩を震わせるが、すぐに王様の前に並ぶ。ソラ達四人はそんな二人を見ていたが次の瞬間、王様の口からある事が言われる。
「君達二人は生まれて程なくしてにソラの家とましろの家に預けられたと思う。……実は君達二人は我々スカイランド王家と血が繋がってる遠い親戚同士なのだ」
「へぇ、親戚……」
「ん?親戚?」
「「「「「「ええーっ!?」」」」」」
その事実を聞いてアサヒやユキのみならずその場にいたソラ達も一緒に驚いた。
「嘘……アサヒとユキちゃんが……」
「王様達の親戚?」
「じゃあ、あの時のマブシーナって苗字は……」
「ああ。あなた達の本当の名前はユキ・アラーレ、アサヒ・マブシーナなんです」
「ッ……」
アラーレ家とマブシーナ家はスカイランド王族本家から別れた二つの分家であり、その末裔が二人なのだ。
「でもどうしてお二人は親元を離れてソラさんとましろさんの家に預けられたんですか?」
「確かにな。当時の二人が赤ちゃんだって事を考えたら」
親元を離れるのはよっぽどな理由が必要だろう。そしてそれは王様の口から明かされた。
「それは、理由こそ違えど二人の親は預けられた当時からスカイランドにいないからだ」
「……ユキの方は母親がユキを産んだ際にそのまま力尽きてしまった。更に父親もその少し前に病魔に冒されて他界してしまった。二人共元々丈夫では無かったからな。アサヒの方は母親が出かけている最中に行方不明になり、父親の方はそんなアサヒの母親を探すために探しに行ってそのまま戻って来なかった」
つまり、ユキもアサヒも親が育児ができる状況では無かったのだ。するとユキはポロポロと涙を流す。
「ユキ、大丈夫か?」
「うん……でも、もうお父さんもお母さんもいないんだなって……せめて、一度で良いから顔が見たかった……。抱かれるぐらいしかできなかったぐらいの赤ちゃんの記憶じゃ、何も覚えてないから」
アサヒはとにかくユキのフォローに回ることにした。まだアサヒの親は行方不明のため、会える可能性はある。だが、ユキの親はもう生きてすらいない。だからユキがどれだけ頑張っても二度と会えないのだ。
「ごめん。こんな所で泣いたらダメだってわかってるのに……」
「ユキ、おいで」
アサヒはユキを抱くと優しくさすってあげた。それから少ししてユキがやっと心の整理を終えると王様達に取り乱した事を謝罪。王様達もこれを許した。
「君達には本当に感謝している。だから一人につき一つだけそなた達の願いを叶えよう」
六人へと王様はそう言う。それから六人は自分の希望を言っていき、可能な限りそれは叶えられた。その日の夜、ユキとアサヒの部屋では二人が隣同士で座っている。
「……なぁ、ユキ」
「何?アサヒ君」
「俺達ってただの一般人じゃ無かったんだな」
「うん。まだ実感が湧かないよ」
二人が話す中、ユキの声は未だに震えていた。受け入れたとは言ってもやはり親と会えないのは精神的に相当キツイはずだ。それでも何とか頑張って平気な顔をしようとしている。
「ユキ。無理しなくても良いんだぞ。ユキは一人じゃない。だから」
「うん。でも、本当はアサヒ君だって混乱してるんでしょ?それなのに私だけこれ以上甘えるなんてできないよ……」
それから二人の中に気まずい雰囲気が流れる。ユキは更にアサヒへと問いかけた。
「アサヒ君はこれからどうするの?」
「どうって?」
「……私はきっとスカイランドに残る。アサヒ君はスカイランドの王族ってわかった今、こっちに来る選択肢もある。だからどうするのかなって」
「……いや、少なくとも学校が終わるまでは向こうにいるつもりだよ。流石にそれを放り出すわけにはいかない」
「そっか」
二人はまた無言になったが、互いに本当の別れが近いと実感すると心細くなり、手を繋ぐ。
「またこっちに来てくれるよね?」
「ああ。絶対に行く」
「待ってるから……」
「おう」
二人はそんな会話を交わしながらその日の夜を過ごす事になるのであった。
また次回もお楽しみに。