熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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雪の向ける恋心

アサヒが男子組に詰められてユキへの想いをぶちまける事になる少し前。屋上では下駄箱で声をかけた仲田、吉井と彼女に連れ出されたユキ、ソラ、ましろが話をしていた。

 

「つむぎちゃん?るいちゃん?どうして私達をここに?」

 

「ふふっ。実はね、ここに来てもらったのは他でも無いユキちゃんに話があるからなんだ」

 

「えっ?ユキさんにですか?それなら私やましろさんはいなくても……」

 

吉井から用件をカミングアウトされたソラは困惑気味な声を上げる。彼女の言う通り、ユキに話があるのならソラやましろは必要ないはず。

 

だが、この時仲田と吉井は教室の男子組と示し合わせている状態だ。なので、ソラやましろに教室に行かれては困るのである。

 

「まぁまぁソラちゃん。きっと私達にも聞いてほしい話なんじゃないかな」

 

「そうなんですね。わかりました」

 

尚、ソラにこの状況を継続させるように勧めたましろも仲田、吉井達とグルである。だからこそ彼女は地味にユキやソラの逃げ道を遮断するように屋上のドア側に立っていた。

 

「え、えと……私に質問というのは?」

 

ソラとましろの方で着々と話が進む中でユキは自分に用事があると聞き、少し不安そうな顔を見せる。何しろ、自分はこの2人に対して何かをやらかしたというわけではない。

 

だからこそ何を言われるのかがわからないという事で余計に不安が募っていたのだ。

 

「じゃあ、単刀直入に聞くね」

 

「う、うん……」

 

ユキはソラやましろがいてくれなかったら不安で今にも逃げ出してしまいそうだったが、彼女達の目の前で自分を一方的に責めるなんて事は無いはずだと考えつつ話を聞く事になる。

 

「ユキちゃん、アサヒ君の事どう思ってるの?」

 

「えっ?あ、アサヒ君の事!?」

 

ユキはいきなりこの場に唯一いない虹ヶ丘家での同級生の同居人、アサヒの事を問われて困惑。そんな仲田からの質問に追い打ちをかける形で吉井が更に聞いた。

 

「もしかして、アサヒ君の事を異性として意識してたりする?」

 

「い、異性として!?」

 

ユキはそう言われてよくよく考えてみると自分は今まで無意識だったとはいえ、アサヒに近い距離感で接してきた事を思い出す。

 

「(た、確かに今までアサヒ君と近い距離感で接してて。しかもそれはただの男友達って言うには距離が凄く近くて……ふぇえ……)」

 

ユキの脳内は少しずつアサヒの事で頭がいっぱいになっていくと今までの己の行いを一つずつ思い出していく。

 

アサヒにおんぶされた事、お姫様抱っこされた事、手を繋いだ事、アサヒに自分の食べかけのソフトクリームを食べてもらった事、どれを思い出してもその距離感はただの男友達と言い切るには明らかに近い……近すぎる。

 

「あー、その感じだと色々心当たりありそうね」

 

「ふ、ふえぇ……そ、そ、そ、そんな事は……」

 

ユキは可愛い顔つきを更に赤くして恥ずかしそうにしていた。彼女の肌は割と白い方で色白の部類に入るのだが、その肌がすっかり赤くなってしまうとアサヒとの時間を思い出してモジモジとしてしまう。

 

「(うぅ……そう考えると私って女の子として色々はしたない事をしてたのかも。で、でもアサヒ君を前にしたらやっぱり我慢できなさそうな気がするし)」

 

ユキはクラス……いや、学年内でモテる方である。顔良し、スタイル良し、勉強も良し、性格良し、当然ながら運動も良し。そう考えるとユキは男から見ると学校ものアニメでよくあるようなクラスの完璧女子委員長と言えるようなレベルのハイスペックガールだ。

 

「そういえば、ユキさんはこの学校に来てから何度も告白とかされてましたよね」

 

「う、うん。でも……その度にお断りしてる。アサヒ君以外の男の子から付き合ってほしいって言われると昔の事を思い出して……」

 

ユキはそう言った所で少し顔色が悪くなってしまう。どうやら、幼い頃に自分がフッた男の子から受けた報復が原因でユキには男子からの告白とお付き合いするという行為に大きなトラウマができてしまったようだ。

 

そんなわけで学校内ではユキに対して恋に落ち、彼女に告白しては断られて玉砕するという者も日に日に増えつつある。

 

「そっか。まぁ、ユキちゃんが告白されまくってるのはさておくとして。ここ最近ユキちゃんってアサヒ君の事偶に目で追うでしょ?」

 

「言われてみたらそうかも……。それにアサヒ君の隣なら安心する気持ちだって……」

 

「うんうん!あとはアサヒ君と一緒に暮らしてるし何かしらあるのかなって」

 

仲田と吉井の質問に対しての答えでユキがアサヒに対して特別な何かを感じているという事は少しずつわかってきた。そこで一歩踏み込んだ事を問いかける。

 

「……ううん。多分、皆が思ってるような事は何も無いよ。あくまで私はアサヒ君にいつも通り接してるだけだし」

 

「えっ、アレでいつも通りなの?」

 

「そうだよ。……だから家で何か特別な事してるわけじゃない」

 

それを聞いてましろは納得の顔つきを見せるとソラはキョトンとした顔になり、仲田と吉井は頭を抱えたくなってしまう。

 

何しろ、外から見たら明らかにユキとアサヒの距離感は近く。最早恋人と言っても差し支えない程だ。しかし、ユキ視点だとそれはアサヒに対する接し方としてごく当たり前。そして、この距離感はアサヒと出会ったあの時から殆ど変わってない。

 

だからこそユキはアサヒへのあの距離感はあくまでごく自然かつ普通なのである。よって、仲田や吉井達に言う程の特別な何かでは無い判定になってしまうのだ。

 

「……それに。確かに私はアサヒ君に変えてもらった。ダメだと思い込んでいた自分を前向きにさせてくれて……アサヒ君には凄く感謝してるよ」

 

「なるほどなるほど」

 

「じゃあ、仮にだけど。ユキちゃんにはアサヒ君とお付き合いしたい気持ちとかってあったりする?」

 

そう言われてユキは頬を赤くしつつも少し気不味そうな顔を見せる。それからユキは自分の中の気持ちを整理して話す事にした。

 

「お付き合いしたい気持ち……うん。少なくとも、アサヒ君に対してだったら全然嫌な気持ちは無いし。多分普通に男女としてお付き合いできると思う。それに、アサヒ君の事を見てるとドキドキする事はあるよ」

 

「「おお〜っ!」」

 

「じゃあ、ユキさんはアサヒ君が好きって事になるんですか?」

 

ユキは頬を赤らめつつ、アサヒとのお付き合いに関しては彼女の言葉から可能ではあるという事を提示されたために少なくとも脈ありとして見なす事はできそうである。……しかし、ユキは少しだけ不安そうな顔になると呟いた。

 

「でも、私なんかにはアサヒ君とお付き合いする資格なんて無いよ」

 

「「「……えっ?」」」

 

「どうしてなんですか!?」

 

まさかの完全に脈ありの流れからのユキの気持ちでどんでん返しをされてその場にいたソラ達は困惑してしまう。

 

「……確かにアサヒ君はカッコいいし、私を変えてくれた恩人。感謝はしてもしきれない。お礼もその内したいと思ってるくらい。多分、他の男の子に向けてる感情とは違う気持ちもある」

 

「えっと、じゃあどうしてお付き合いできないの?」

 

ましろはユキの言葉に困惑したような声で反応。今までの流れだとユキはアサヒとお付き合いできるような形で尚且つ彼に特別な感情を抱いてそうな感じだった。なのに、ユキが自分でその線を否定した事に疑問になったのである。

 

「……今の私が持ってるこの感情がアサヒ君に恋してるかって言われたらまだ自分でもよくわからなくて。それに、今皆に言われて無理に好きって気持ちとして断定するのは違う気がするの。……そんな中途半端な気持ちでお付き合いするって言ってもアサヒ君に対して失礼だよ」

 

「うぅ……そっかぁ……」

 

「じゃあ。アサヒ君に対しては特別な気持ちを持ってて、それが何なのか迷ってるって所かな?」

 

「うん……それで良いと思う」

 

ユキの方からの話を聞いたソラ達は今の現状的に見ると彼女の気持ちはまだアサヒを完全に好きになってるわけではない。とはいえ、アサヒの事を特別扱いする程には彼の方へと気持ちは寄りつつある。

 

恐らくあと一押しか二押し。2人の仲が深まる何かがあれば案外すんなりと言ってくれるかもしれないが、どちらにせよ今はまだまだ友達以上恋愛対象未満と言った感じだった。

 

「あ、でもアサヒ君となら普通のお付き合いができるっていうのは全然無理して言ってるわけじゃなくて。むしろ、私の中では出来たら良いなって気持ちも湧いてるくらいで」

 

繰り返すが、ユキはアサヒに対して特別な気持ちを抱きつつあるのは確かな事実。だからこそ、彼女はまず自分の気持ちを整理すべきと考える。

 

「……だから、もう少ししたら気持ちにも整理が付くからちゃんとした結論は待っててほしい」

 

「オッケー。私達としても深く踏み込むつもりはないからね」

 

「ユキちゃんもゆっくり考えれば良いよ」

 

「うんうん。あ、それとソラちゃん。この事は」

 

「は、はい!アサヒ君には内緒ですね……。頑張って秘密にします!」

 

ユキの答えに4人は頷くとこの事はアサヒに対しては秘密にすると約束。ソラに関しては隠し事が苦手ではあるが、これがバレるのは色々と不味いのでどうにかバレないように自分の中で抑える事を誓うのだった。

 

「皆、わざわざありがと」

 

「ううん。私達の方こそ答えてくれてありがとうね」

 

「もしユキちゃんがアサヒ君とお付き合いしたいって気持ちになったら私達もできる限りの事をするから!」

 

「うん!」

 

そんな感じで女子組が教室に戻るとアサヒが疲れ切った顔つきで机に突っ伏していた。どうやら、彼も彼で男子組にたっぷりと詰められたらしい。

 

それからユキとアサヒ、そしてソラがいないタイミングでましろがそれぞれの結果を聞く。この話し合いにソラを入れても良かったが、ひとまずはこの作戦を考えた者達だけの情報共有だ。

 

「なるほど、総合するとまだアサヒの一方通行って感じかな」

 

「でもさ、ユキちゃんもあと少しで虹ヶ丘君の事を好きになるのは間違いないと思うよ」

 

「そうそう。毎日あれだけベタベタしてたら意識せざるを得ないでしょ。むしろ、何で今までお付き合いしてないのかが不思議なくらいだから」

 

「確かに。デートとかしたらすぐにくっつきそうだよね」

 

「アサヒの方はそろそろユキさんに対してのアピールとかも始めそうな雰囲気だしな」

 

一同の意見は概ね2人のどちらかが告白し、お付き合いをするのは時間の問題であるという答えに落ち着いた。しかし、その一方でましろの中に一つ懸念点がある。それは先程もあったユキのトラウマについてだ。

 

今現在、ユキもアサヒもまだ相手からの恋愛感情、若しくはそれに近い感情には気づいていない。だがそれも時間の問題だろう。ただし先程説明した通り、ユキの場合は過去に恋愛関係から虐めに発展した前例がある。

 

そのため、ユキは男子との恋愛に臆病になっている可能性があった。実際、彼女の中にはまだ当時の記憶がトラウマとして強く残っている。もしお互いの感情に気がついたとして。ユキの方はそのトラウマのせいでアサヒと付き合うことができないのではないのかという気持ちが抜けなかった。

 

「とにかく、今の俺達にできるのはあの2人を応援する事だ」

 

「そうだね。私も2人の気持ちを尊重してあげるべきだと思う」

 

「それにしても羨ましいな。あんなにもお互いの事を想い合ってるんだからさ」

 

結局、今回のユキとアサヒについての話し合いは双方の様子を見つつその気持ちを応援するという形で纏まる事になる。

 

それから時間が経って放課後。ユキは1人でましろの元に話しかけに行った。

 

「ましろちゃん」

 

「うん?ユキちゃん、どうしたの?」

 

「えと……昨日の放課後、皆で先に帰っていてもらっても良いかな」

 

ユキの話を聞いたましろは首を傾げる。彼女はこの後、特段何かの予定は無かったはずだ。そのため、わざわざ1人で帰ると言ったことに困惑する。

 

「急にどうしたの?もしかして偶には1人で帰りたくなったとか?」

 

「あ、別にそういうのじゃなくて。……今朝言ってたプレゼント探ししようと思ってて」

 

ましろはユキからの詳しい事情を聞いて納得したような様子を見せる。これに関しては確かに先程話をしていた事ではあった。

 

「プレゼントか……ユキちゃん、もし良かったら私も手伝おうか?2人には先に帰ってもらうようにお願いして」

 

「へ!?え、えと……その。気持ちは嬉しいんだけど、今日は1人で選びたい。それに、ましろちゃんに変に迷惑をかけたくなくて」

 

ユキの頬は赤くなっており、恐らくアサヒのためだけに頑張る姿を見られるのは恥ずかしいのだろう。朝気持ちを言ってしまった以上は尚更。

 

「そっか。うん、わかったよ!でも、もし行き詰まったらメッセージを送ってね。それと、私はユキちゃんに頼られる事。迷惑だなんて全く思ってないよ」

 

「ッ!?う、うん……」

 

ユキはそう言って1人で手早く片付けを済ませるとさっさと1人で帰ってしまう。

 

「ユキちゃん、本当に健気だよね。多分、好きな人やそれに近い人を見つけたのが初めてで。そんな気持ちを抱かせてくれたアサヒのために沢山頑張ろうとしてる。……アサヒ、ユキちゃんの気持ちに早めに気づいてくれると良いけど」

 

ましろはユキ本人が迷っているとは言っても遠からず彼女はアサヒの事を好きという答えを出すのを何となく察していた。そのため、すれ違いを起こさないためにもアサヒも早い段階でユキの気持ちに気がつくのを願う事になる。




すみません、この話のリメイクが結局2話で収まらなかったのでもう1話使わせてもらいます。それではまた次回もお楽しみに。
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