熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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気持ちに蓋をして苦しむ雪

ユキがアサヒのためにプレゼントを選ぶべくソラシドモールに買い物へと行ったその日の夜。虹ヶ丘家のユキの部屋では彼女が1人で悩みを抱えてしまっていた。

 

「あげはさんにはつい勢いでやるって言っちゃったけど……よくよく考えたらアサヒ君と2人でお出かけだなんて……そんなの、そんなの完全にデートだよ……」

 

どうやら、ユキはこのタイミングになってようやく自分がやろうとしている事がデートへのお誘いだという事に気がつく。

 

「うぅ……。でもあげはさんの前で言っちゃった手前、今更無しになんてできない……」

 

ユキはアサヒとデートする事をあげはの前で堂々と言ってしまっている。しかもその代わりとしてプレゼントをその場で選ぶ事を断念したため、このままではあげはにもらったアドバイスも無意味になってしまう。

 

要するに、彼女に無駄な時間を取らせただけという最悪な展開となるわけだ。

 

「……だけど、私がアサヒ君と2人きりでのお出かけ」

 

ユキは頬を赤らめつつアサヒという自分が特別な気持ちになれる相手との2人きりの時間を想像。それだけで彼女の胸の奥が温かくなるのを感じ取った。

 

「ッ……!ダメダメダメッ!そもそも私みたいなのにアサヒ君が優しくしてくれたのは、私が弱っていた所を助けるためだけの物。それに、私みたいなダメな子がアサヒ君を独り占めだなんて……そんなの許されちゃいけない」

 

ユキは幸せ気分になった所でそれを首を横に振る形で無理矢理振り払うとその感情をすかさず否定してしまう。彼女の心は揺れていた。そもそもユキとしてはアサヒを自分の欲のせいで独り占めして良いとは思っていない。

 

「私みたいなのが思い上がって、アサヒ君は私が独り占めして良い相手じゃない。そもそもアサヒ君は私の物じゃないよ。だから、アサヒ君は私の隣にいたらいけない……いけないのに」

 

そんな時だった。ユキの瞳から薄ら涙が浮かぶと零れ落ちる。同時に胸の辺りにキュッと締め付けられる痛みが走ると思わずその辺りを抑えてしまう。

 

「ッ……なんで、なんでこんなに。苦しいの……。私はアサヒ君とはただの友達でしか無いのに。そんな私がアサヒ君を独占だなんて……うっ!?」

 

ユキは無理矢理心の奥底から湧き上がってくる気持ちを抑えようとすればするほどに逆に胸が悲鳴を上げるように苦しんでしまう。その間に少しずつ呼吸も荒くなるのを感じた。

 

「はぁ……はぁ……なんで、胸が痛い……。くうっ」

 

ユキはどうにか痛みに耐えると何故このような事になるのか必死に考える。しかし、考えても全くもって良い答えは出てこない。……いや、その答えについてはちゃんと辿り着いていた。

 

ただ、それでもこのような答えなんて出してはいけないと全力で目を逸らそうとしてしまう。

 

「(ダメ……ダメ……こんな感情。私みたいなのに許されちゃダメ。お願い、お願いだから落ち着いて……)」

 

ユキは祈るように痛みに耐えると自分の感情の矛盾を感じ取る。今の自分はアサヒに対して特別な感情を抱いているのは間違いない。しかし、それはアサヒの事を好きという結論には到達していなかった。……否、意図的にその答えを避けてしまう。

 

「そんなわけない。そんな事思ったって辛くなるだけ。だから、だから違うの……うっ!?……はぁ、はぁ」

 

ユキは必死に見えている答えから目を逸らし、今の中途半端な気持ちでアサヒを自分一人の都合で連れ回して良いはずが無いと考える。

 

……ただ、今のユキはその気持ち以上に己の想いに蓋をして無理に無くそうとしていた。その瞬間、己の気持ちに素直にならなかった代償として凄まじい胸の痛みが彼女の襲ってしまう。

 

「ううっ……。こんな気持ち、早く無くなればいいのに。そうすれば、きっとアサヒ君にもこれ以上迷惑をかけなくて済むのに……あうっ!?ううっ……」

 

ユキの心は悪循環に陥っていた。アサヒへ向けた気持ちを無理に抑えつけて蓋をして閉じ込めようとする度に胸は反発して苦しみを訴えてしまっているのだ。それを止めるために彼女が焦って抑えようとすればする程それ以上の痛みが返ってくる。

 

このままでは気持ちの悪循環のせいで心が壊れてしまいかねない。そんな時にユキの部屋の扉が開けられると慌てた様子でソラが入ってくる。

 

「ゆ、ユキさん!?大丈夫ですか!?」

 

ソラは丁度ユキに“おやすみなさい”を言いにきた所だったのだが、ユキの部屋をどれだけノックしても返事が無く。それどころか胸の痛みに苦しむような声が聞こえてきたために慌てて部屋に入ってきたのだ。

 

「ソラ……ちゃん」

 

「まずは落ち着きましょう。深呼吸できますか?」

 

「すぅ……ふぅ……。すぅ……ふぅ……」

 

ユキはソラが乱入して深呼吸するとどうにか気持ちを落ち着ける。それからソラはユキが落ち着いた所で事情聴取をする事になった。

 

「あの、ユキさん。あんなにも苦しい声を出して大丈夫なんですか?」

 

「ッ……今は落ち着けたから大丈夫。だけど……」

 

ユキはソラが来てくれたおかげでどうにか落ち着けたものの、このままでは危険な状況は変わらないと考えて俯いてしまう。ソラはそんなユキの不安を感じ取ると話しかけた。

 

「あの、また何か悩み事でもあるんですか?」

 

「……うん。実はね」

 

それからユキはソラ相手に隠し通すのは無意味かつ、先程の声を聞かれた以上は隠しても彼女に更なる心配をかけると考えてひとまずは悩みを隠さずに相談する事に。

 

「そうだったんですか。アサヒ君とのお出かけで迷ってたらこんなにも苦しくなってしまったと」

 

「うん。……私は、アサヒ君と2人だけのお出かけなんてしても良いのかな。気持ちも纏まってない今のまま行ったってアサヒ君に失礼なのに」

 

「……」

 

それを聞いたソラは少しだけ考えると真っ直ぐにユキの方を向いて素直に自分の意見を話す。

 

「それならアサヒ君と2人きりで行ってきても良いと思います。というより、行かないとダメですよ」

 

「え……で、でもそんなのアサヒ君に失礼だよ。私が迷う所なんて見せたらきっと不安に思っちゃうし。それに、私がアサヒ君を独り占めして連れ回すなんて……そんなの、そんなの許されちゃいけな……あうっ!?」

 

「それですよ。今ユキさんが行かないとダメと言った理由は」

 

「え?」

 

ソラはユキがアサヒと2人でお出かけする事を自分で否定する度に胸の痛みを受けている所を指摘する形で声を上げる。そして、ソラは自分の意見を話した。

 

「今だってユキさんはアサヒ君とのお出かけを自分で否定する際に胸の痛みを受けていました。その痛みを受けるのは自分の気持ちを偽っている証拠ですよ」

 

「で、でも私なんかがアサヒ君といて良い理由に……あ……あぁっ」

 

「ほら、またこうなってるじゃないですか。根本的にユキさんはアサヒ君への気持ちを我慢したらダメなんですよ。まずは気持ちを整理するためにも一回行ってきてください。話はそれからです」

 

「うぅ……」

 

ユキはソラに言われてようやく自分でアサヒとのお出かけを否定するのを止める。すると、先程まで来ていた胸の痛みもピタリと止むと彼女は目を見開く。

 

「……ユキさんは否定するかもしれませんが、あなたは十分素敵な女の子です。学校で沢山告白とかラブレターを貰っておきながら否定なんてさせませんよ」

 

「うええっ!?な、何でその話に……」

 

「そのくらいユキさんは魅力的だって事です!これ以上否定したら私でも怒りますよ」

 

「ええっ!?」

 

ユキはソラが自分に対して怒ると言い出した事に困惑。しかし、これは実際その通りだろう。学校でユキが沢山告白やラブレターを貰っている時点で自分に魅力が無いなんて言葉を言うのはお門違いも良い所。他の女子からしたらキレられても文句は言えない。

 

ソラとしては他の人が認めているのにいつまでもウジウジとしたユキの態度は幾ら姉妹同然に育った相手でも納得ができなかった。

 

「ユキさん、もう一度言いますね。あなたは十分魅力的な女の子です。もっと自信を持ってください。というか、そろそろ持ってくれないと許しませんよ」

 

「ソラちゃん……ごめんなさい」

 

ソラはストレートにユキへと言うと流石に申し訳ないと感じたユキは思わず謝ってしまう。ユキの誠意が見えた所でソラは改めて優しい声色に戻ると彼女の手を取って励ます。

 

「それに、ユキさんは今のユキさんのままで良いんですよ。アサヒ君との気持ちで悩むのならきっと彼はそれでも構わないときっと思ってくれます」

 

「今のままの私で良い」

 

「そうです!それに、今回のお出かけで気持ちを整理して、答えを出せば良い。それだけで今回のお出かけは意味がある事になるんです」

 

それを聞いてユキは小さく頷くとその脳裏に自分といる時のアサヒの笑顔を思い浮かべる。その優しい笑顔と温かさは今のユキに自信も持たせるのには十分だった。

 

「私、自分の都合で勝手に連れ回して。アサヒ君と2人でお出かけして良いのかな」

 

「そのくらい、皆許してくれますよ。それに、もしアサヒ君がユキさんを泣かせるなんて事態になったら私が何とかします。きっとヒョウだってそんな事になったら黙ってはいませんし大丈夫ですよ」

 

「あはは……それはそうかも」

 

ユキは自分が泣く事態になった際、ヒョウがアサヒに対して怒り狂ったような顔つきで彼に説教する様子が容易に思い浮かぶと思わず苦笑いしてしまう。

 

「……そっか。気持ちを整理するためのお出かけ……うん。それならまだ気持ち的に楽かも」

 

「はい!私もアサヒ君とのお出かけが決まったら全力で応援します!」

 

「ありがと、ソラちゃん」

 

ユキはソラの言葉に勇気づけられるとこの日はもう夜も遅いため、アサヒとのお出かけについては明日になってから本人に直接お願いする事に決めた。そして、迎えた翌日の朝。

 

「ッ!んんっ……」

 

ユキは目を覚ますと顔を洗ったり髪を整えたりして服も着替えると胸がドキドキするのを抑えるように手を胸に当てる。

 

「すぅ……ふぅ……。うん、今日はアサヒ君をちゃんと誘う」

 

ユキは深呼吸して気持ちを落ち着けるとアサヒにお出かけの誘いをする覚悟を決め、階段を使い一階に降りていく。

 

「おはようございます、ユキさん!」

 

「おはよ、ソラちゃん!」

 

そこでは既に起きていたソラが居間におり、ユキはソラと挨拶を交わす。そんな時にましろもやってきた。

 

「あ、おはようソラちゃん、ユキちゃん」

 

「「おはよう(ございます)。ましろ(さん)(ちゃん)!」」

 

そのまま彼女とも挨拶をした2人。ユキはそのまますれ違うとましろはその場に残っていたソラへと耳打ちをする。その内容は勿論昨日のユキの件についてであった。

 

「ソラちゃん、ユキちゃんはどうだった?」

 

「はい!バッチリです。アサヒ君をお出かけに誘うと言いました」

 

実はソラがユキを慰めた件。ソラに慰め役をお願いしたのはましろだった。ましろはユキが苦しんでいた所をましろが見たわけでは無く。これはタイミング的に偶々ではあったものの、あげはからユキへとお出かけを提案したという話を聞いたましろはユキの事なので1人でまた悩んで溜め込むと予想。

 

そうなる事も先読みし、ユキを素直に慰められるソラへとユキの相手を頼んだわけだ。その結果は大成功である。

 

「あ、でもすぐに誘うのは厳しいかも」

 

「え?それってどういう事でしょうか」

 

「あのね、実は朝から皆にお願いしたい事があって。もしかするとユキちゃんがお誘いをする前に話が始まるかもしれないんだ」

 

ましろは少し申し訳ない気持ちでその話を持ち込むとソラはキョトンとした様子になる。それから2人はユキの方を向くと彼女はソファーに腰掛けたまままソワソワした様子でアサヒが来るのを待っていた。

 

「アサヒ君……早く来ないかな」

 

しかし、こういう時に限って起きるのが遅いのか。アサヒは中々部屋から出て来ない。

 

「アサヒ君、起きてこない……あの、ましろちゃん。アサヒ君は?」

 

「え?うーん。多分もうすぐ来ると思うよ」

 

それから数分後、ようやくアサヒは起きてくると少しだけ疲れたような顔で三人に声をかけた。

 

「おはよ、皆」

 

「おはようございま……って!?アサヒ君どうしたんですか!?」

 

「そうだよ!何でそんな」

 

まさかの目元に少しだけクマを作った状態で出てきたアサヒにユキだけで無くソラも驚いてしまう。

 

「あはは、やっぱりそうなっちゃうよね……」

 

「ましろさん、何か知ってるんですか?」

 

「うん、実は昨日アサヒから話があって」

 

ユキやソラがいきなり寝不足のような雰囲気を出しながら起きてきたアサヒを思わず心配してしまう。

 

「(ッ、ダメだ……。今のアサヒ君をお出かけになんて誘えない。少しアサヒ君が休んでちゃんとしたタイミングじゃないと)」

 

そして、今のアサヒのコンディションを見たユキは思わずお出かけの誘いをするのを断念してしまう。理由は当然今のアサヒの顔つきだ。彼は少し夜更かししてしまったのか普段以上に眠そうなのである。

 

「えっと、アサヒ君。どうしてそんなに寝不足なんでしょうか?」

 

「ああ、ちょっとある計画を立ててたら寝るのがつい遅くなってさ」

 

「「計画?」」

 

アサヒは眠たさで思わず欠伸をしてしまうと夜更かししてまで何かの計画を立てていたとカミングアウトする。その計画という単語に2人は首を傾げると疑問の視線を送った。

 

「それじゃあ、早速発表するよ」

 

「「ご、ゴクリ……」」

 

アサヒは夜更かしして立てた計画としてある事を発表しようとすると2人は思わず息を呑む。

 

「俺が夜更かししてでも立てた計画。それは……」

 

「「それは……?」」

 

「ツバサとヒョウの2人の歓迎パーティをやろうって事だ」

 

「「か、歓迎パーティ!?」」

 

アサヒの出した提案。それを聞いたユキとソラの2人は思わず驚きの声を上げる。こうして、ツバサとヒョウの2人のための歓迎パーティの実行委員会が立ち上げられるのだった。




また次回もお楽しみに。
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