ユキはソラの言葉もあってアサヒを2人きりのお出かけに誘う覚悟を固めた。そして、翌日の朝にアサヒを誘おうとするものの……彼は何故か寝不足な様子であった。
そんなアサヒが提案したのはこの場に揃っていないツバサ及びヒョウの歓迎パーティについてである。
「ええっ!?ツバサ君やヒョウ君の歓迎パーティ!?」
「ああ。この前新たに仲間に加わったツバサとヒョウ。一応フェアリーパークでの一件が挟まってしまったが、これから一緒に戦う仲間として一緒に頑張ろうっていうパーティをしたいと思ってさ。色々考えていたんだ」
「あっ。もしかして、アサヒ君が寝不足なのって……」
「そういう事だ」
どうやら、アサヒが寝不足になってしまったのは今回の歓迎パーティのための考えを巡らせていたら寝るのが遅くなってしまったらしい。
「そうだったんですね」
「私もアサヒには早く寝るように言ってたんだけど……こうなったアサヒは聞かないからなぁ……」
ましろはアサヒからの相談を受けたためこの事については知っていたが、寝不足の件までは知らなかった。なので相談を受けた際に考え過ぎによる睡眠時間の減少は避けるように言ったのだが……結局ダメだったようだ。
「それにしても、ツバサ君やヒョウ君が仲間に入ってからもう1週間経つんですね」
「歓迎パーティをするにしても今日みたいに土曜日にならないと無理だったから伸びてたんだと思うよ」
「だけど、遅くなったとしても私はパーティをやるのに賛成だよ」
歓迎パーティは準備や片付けの事も考えると平日にやる……と言うのは少し難しい。そのため、土日まで待った上で決行する事になった。その分、平日は少しずつ歓迎パーティに向けた計画を考える時間として使えたわけだが。
何にせよユキが賛成の意思を示すとソラやましろ、更にソラが胸に抱いているエルも反対する理由が無い。
「私もその歓迎パーティをやる案に賛成です!」
「うん。折角ならパーっと盛り上げよう!」
「えるぅ!」
そんなわけで、アサヒが企画したツバサとヒョウ。2人に向けた歓迎パーティをする事は満場一致で決まった。
「じゃ、決まりだな!」
「うん!良かったね、ツバサ君、ヒョウ!」
すると、ユキは突然他の3人とは別の方向を見てそう言うといきなりユキが変な方を向いたと感じたましろは疑問を覚えてその方向を向く。
「……え?ユキちゃんは何でそっちを……」
「ぼ、ボク達の歓迎パーティですか?」
「良いの?ユキ姉?」
ましろの視線の先。そこにあったのは居間の部屋に置いてある大きな木のオブジェクトとその場所に設置された二つの鳥用と思われる巣箱である。その巣箱の中に今回の歓迎パーティの主役であるプニバードの状態のツバサとヒョウが座っていた。
「うわあっ!?2人共そこにいたんだ……まだちょっと慣れないなぁ……」
「なるほど、これは注意しておかないと気がつかないな」
ユキ達が部屋の中で歓迎パーティの話を全部聞いていたツバサとヒョウは早速その話に食いつくと2人揃ってプニバードから人間の姿に変化。わざわざ歓迎パーティを企画してくれたユキ達へと声をかける。
「あの、そんなに気を使ってもらわなくても大丈夫ですよ?第一、ユキさんやソラさんはそういう会とか行ってないですし……」
「あー……じゃあそれも兼ねる?」
「ええっ!?」
アサヒはツバサから鋭い指摘を受けると今回のメインはツバサとヒョウにしつつもユキやソラがこの世界に来た歓迎パーティも兼ねる事にした。すると、ヒョウは嬉しそうに目を輝かせる。
「俺達の歓迎パーティって事は、ユキ姉に祝ってもらえるの!?凄く嬉しいよ!」
「ヒョウは少しぐらい遠慮してください」
ツバサは大はしゃぎするヒョウを諭すように肩に手を置くが、4人からしてみればそんなに言うほどは気にしていない様子である。
「気を使ってなんていません。やりたいです!歓迎パーティ!」
「えるぅ!」
「エルちゃんも賛成みたいですよ」
「うん。2人が加わってくれて賑やかになったし、それにヒョウはアサヒ君とまだ接するのは苦手でしょ?これを機にもっと仲を深められたら良いんじゃないかな」
ソラとエルが賛成意見を言っているとユキは未だに完全に仲良くできていないアサヒとヒョウの事を指摘。ヒョウも流石に痛い所を突かれたようで。
「うっ……それを言われたらユキ姉には言い返せないよ……」
ヒョウは複雑な顔つきを浮かべるが、どちらにせよ彼はパーティ自体には賛成派なので問題は無い。最後はツバサだけである。
「ツバサ君はダメかな?」
「えるぅ?」
「ダメってわけでは……嬉しいです!」
ましろからの問いにツバサはまだ遠慮していそうな感じだったが、あまり長々と遠慮しているとパーティが嫌だと受け取られかねないためにパーティ自体は嬉しい事として答えを返した。
何だかんだでツバサもパーティに参加させてもらえるというのは嬉しい物なのである。これにより主役のプニバードの2人も賛成をしたため、歓迎パーティは開かれる事に確定した。
「では、開催決定ですね!」
「うん!」
「えるぅ!えるぅ!」
「早速準備開始だな。早速俺が作っておいたパーティの計画ノートを使って……」
開催が決まったために早速ユキ達4人はアサヒが寝不足になってまで用意したノートを使用。それに沿う形で準備をしようとする。
「あ、ボク達も手伝います!」
「ツバサがやるって言うのなら俺にもやらせてほしいかな」
「「「「えっ?」」」」
すると、そんな時にツバサとヒョウの2人も準備を手伝うと言い出した。彼等もパーティのために色々動きたいのだろう。しかし、パーティの主役達がパーティの準備する……というのはユキ達にとって抵抗があるようで……。
「えっと、ツバサ君とヒョウ君の歓迎パーティなんですからお2人はドーンと構えていてください」
「そうだよ。折角2人が主役なのに準備まで手伝わせちゃうなんて……」
「大丈夫だよユキ姉!な、ツバサ」
「はい。ボク達としてもジッとしてられないんですよ。申し訳ないですし」
ユキ達は手伝わせる事に後ろめたさを感じ、逆にツバサやヒョウがやる気を見せているとそんな2人の気持ちを考えてましろは敢えて2人には準備を手伝っても提案する。
「ソラちゃん、アサヒ、ユキちゃん。折角2人もやる気を出してくれてるんだから手伝ってもらおうよ」
「えっ、でも……」
「遠慮する気持ちもわかるけど、逆にこれだけお願いしてるのを断ったら悪いし……それに、この2人の希望を聞いてそれに沿った準備をすれば一番喜んでもらえると思うんだ!」
ましろはツバサとヒョウの2人しかできない役割として、パーティの準備の際に必要な準備を彼等の意見を元に進める事で2人にとって最高のパーティにするという事を提案したのだ。
「なるほど、ましろちゃんの考えにも一理あるね」
「私もそれに賛成です!」
「わかった。俺もそれで良いよ。このノートは使えなくなっちゃうけど……」
「「「あっ……」」」
ただ、やはりツバサやヒョウの意見を聞くとなるとどうしてもアサヒが用意しておいたノートは使えなくなってしまう。
「そ、それじゃあ折角作ってもらったし……そのノートからも使える部分は使うって事で」
「ああ、そうしてもらえると助かる」
このままアサヒのノートを使わないだとアサヒが無駄に眠くなってしまっただけになりかねない。それを避けるためにも一同はツバサやヒョウの意見をベースにノートに記載した事が使えそうなら使う……という体制で行く事に決める。
「じゃあ改めて。皆で準備をするに決定だね!」
「「「「「「(はい)(うん)(える)!」」」」」」
それからまずはツバサとヒョウの意見を聞きながらアサヒのノートの空きページを使用する形で簡易的に飾り付けの理想図を描く事になる。
「ここに飛行機ですね」
「あれ、ツバサ。そこは飛行機よりも鳥にした方が部屋全体のバランスは良いんじゃないのか?」
「言われてみれば確かにそうですね……では、鳥に変更して。こっちに飛行機でお願いします」
「わかった」
アサヒとツバサが2人で飾り付けの事を話しているとヒョウは少しモヤモヤするのか。何かを言いたそうにする。
「ッ……」
「ヒョウ、どうしたの?」
「えっ!?ああ、ユキ姉……えっと。何でも無いよ……」
「そう?言いたい事があったら2人に話しかけに行って良いからね?」
ユキからフォローされてヒョウは少し申し訳ないような顔つきになってしまう。
「うん……」
そんな彼の様子を見ていたソラやましろは少し気になったのか。2人でコソッと話す。
「ヒョウ君、やっぱり遠慮気味だね」
「はい……もしかすると幼い頃に親から冷たくされたのを気にしているのでしょうか?」
前の繰り返しにはなるが、ヒョウはスカイランドのプニバード族の村で暮らしていた頃に親から他の兄弟達と比較されて冷たい対応をされていた過去がある。
そのため、普段は強気な言葉や行動をしていてもこういう時に一歩身を引いた動き方になってしまうのかもしれないと懸念したのだ。
「でも、私はそれとはちょっと違う気がする」
「違う……というのは?」
「何となくだけど、ツバサ君の方を気にしているって言えば良いのかな。よくわからないけどそんな感じがするんだよね」
ましろの言う通り、ヒョウの視線は少しツバサを気にする事が多く。その事からツバサに何かを言いたいのかもしれなさそうだった。
「じゃあ、ツバサ君に私から声をかけた方が良いですかね?」
「いや、もう少し様子を見よ。勝手に何かをしたらヒョウ君の迷惑になるかもだし」
ましろはヒョウがいつもと違う挙動をしているため、今は一度様子を見るべきだと考えていた。ソラもそんな彼女の意見に納得して同じく様子を見る事になる。
それはさておき、それから少しして。大まかな飾り付けのイメージ図は完成。その内容というのは先程の会話にもあった通り、ツバサが好きな飛行機や鳥達をメインにしつつヒョウのリクエストで多少のパーティっぽい要素の飾り付けを加えた物であった。
「こうして見ると2人には空を飛ぶ物を題材にした飾り付けがよく似合うね」
「そうかな……?」
「はい!それに鳥さんや飛行機?に囲まれてまるで自分達も空の上に来ているみたいです!」
「確かにそうかも!」
ソラは飾り付けのイメージからまるで自分達も空の上を飛んでいるような感覚を感じており、ユキもそれに同意する。その話はさておき、これで飾り付けは大方決定できた。
「じゃあ飾りはこんな感じでやるとして……」
そんなわけで、飾り付けの構成を終えた段階で今は午前9時の少し前。それからパーティ企画は次の段階へと移行する。
「後はパーティで食べる料理ですね」
「ツバサ君、ヒョウ君。何か食べたい物はある?」
パーティ料理……それは読んで字の如くパーティで出される料理の事だ。その種類はパーティの題材に合わせて多種多様。何ならパーティの名前に料理名前がそのまま使われることもある。例を挙げるなら鍋パーティやたこ焼きパーティ等だろう。
余談はさておき、そんな感じでツバサやヒョウに今回のメインの料理を決めてもらう事にしたのだ。
「えっと、それでしたらヒョウの希望を聞きましょう」
「ッ、ツバサ……何で」
ツバサは話を振られた事際にその部分は敢えてヒョウに譲る事にした。それを聞いたユキ達は疑問を浮かべる。
「えっと、理由を聞いても良いかな?」
「……前に聞いたのですが、ヒョウは幼い頃から殆ど誕生日などの日家族から祝ってもらう事が無くて。ヒョウの家族がヒョウを軽蔑しているのは皆さんもご存知だと思います。だからこういうぐらいヒョウの希望を聞いてあげて欲しいんです」
ツバサはヒョウの両親がヒョウに優しくせずにむしろ彼を軽蔑していた事からあまりお祝い事をしてもらえてなかった事を説明。更に言えば先程の飾り付けの件では自分がメインで決めた分、料理の方はヒョウに決めてもらおういう形だ。
ただ、ツバサの言葉を聞いたヒョウは慌てるとブンブンと首を横に振る。どうやら、ヒョウとしてはツバサに譲ってもらうというのは何だかツバサに悪い気持ちなのだ。
「良いよツバサ。そんなに気を使わなくても……今回はあくまで2人の歓迎パーティなのに。ツバサだって食べたい物とかあるだろ」
「……いいえ、今回はボク達2人歓迎会。今の段階ではボクがやりたい事ばかりですし、ヒョウだって遠慮せずに自分の好きな事を言って良いんですよ」
ツバサにそう言われたヒョウは思わず頬を赤くしてしまう。その顔つきはヒョウは男の子のはずなのに何故か可愛らしい女の子のようにも思える物でもあった。
「ッ……じゃ、じゃあ……ヤーキターイを食べてみたい……」
「そっかぁ、ヤーキターイかぁ」
「なるほど、ヤーキターイだな」
「「って、うん?ヤーキターイ?」」
ヒョウが顔を赤くしつつも言い出したメインの料理。それはヤーキターイという名前の物である。しかし、残念ながらそれはこちらの世界に存在しない物だったため、アサヒやましろは思わず首を傾げてしまうのだった。
また次回もお楽しみに。