熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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選抜リレーと選手決め

らんこや出久との出来事があってから数日の時が経った。今現在、ユキやアサヒ達は学校でのホームルームの時間である。

 

「さて、今日から体育祭の練習が始まるわけだが。まずは選抜リレーのクラス代表を決めたいと思う」

 

担任である雑木林が話し始めたのはあと数週間後に迫った体育祭での競技についてだ。それを見てワクワクとした顔つきになるソラ。やはり彼女は体を動かすことが得意なだけあってこの時を待ち望んでいるようである。

 

「(ソラの奴、やっぱりと言うか……めっちゃ楽しみにしてるし)」

 

「(でも無理も無いよね。体育祭ってまるでスカイランドでの村の祭りみたいな物だし……)」

 

ユキとアサヒに関しては二人揃って似たような事を考えていた。それだけソラがワクワクしているのを見て気になったからである。

 

すると早速雑木林が選抜リレーの選手の推薦についてクラスの人々に問いかけると軽井沢が手を挙げて意見を言った。

 

「はい!女子の選抜リレーの選手の中の二人はソラ・ハレワタールさんとユキ・ハレワタールさんが良いと思います!」

 

それを聞いた瞬間、ユキの顔が凍りついた。しかも他のクラスメイト達はその案に賛成なのかユキとソラを持ち上げ始める。

 

「良いね!」

 

「この二人なら優勝間違い無しだよ!」

 

「頑張って!」

 

「やってくれるかな?二人共」

 

雑木林もクラスの中での意見が纏ったために二人の意思を確認する事に。とは言っても、この状況だと二人がやるような感じだが……。

 

「はい!選ばれたからには一生懸命頑張ります!」

 

ソラはやる気満々と言った所で立ち上がると快くそれを承諾。ただ、彼女はまだリレーが何なのかわからない。そのため、クラスメイトへと問いかけた。

 

「あ。ところで、リレーって何ですか?」

 

「え!?ソラ、リレー知らないのかよ!」

 

ソラのまさかの答えに驚いて叫ぶひかる。その瞬間、アサヒがひかるの背中を軽く叩いた。

 

「ひかる、お前は知らない理由について何となくわかるだろ」

 

「……あぁ、そっか。ソラはユキと一緒にスカイラ……」

 

ひかるはうっかりスカイランドと口走りそうになったためにアサヒはひかるの口封じのために素早く口を塞いで代弁する。

 

「えーっと、スカンディナビア半島出身だったよな……。あ、でも確かリレーってヨーロッパの国にもあったよなー。それが伝わらないぐらい辺境の土地から来たんだよね……あはは……」

 

少々強引だったが、何とかアサヒは無理矢理誤魔化すと話を区切った。それと同時にましろはソラやユキに説明を始める。

 

「リレーって言うのはね。普通の駆けっこじゃなくて、チームで走るスポーツだよ。バトンを持って走って、次に走る人へとバトンを渡すの」

 

「ああ!ラルーの事ですね!スカイラ……」

 

「スカンディナビア!スカンディナビア半島の方にもあったんだよね!名前は違うけどラルーとして!」

 

ソラもソラでまたスカイランドと言おうとしたためにユキが急いでフォロー。所々怪しい感じだったが、特にクラスメイトも気にする事も無かったためにその場は乗り切った。

 

「それで、ユキちゃんはやるの?」

 

仲田はそうユキへと問いかける。ソラはリレー選手を受けると宣言したが、ユキはまだ返事をしてなかったからだ。

 

「うえっ!?え、えっと……」

 

ユキはまだ迷っている様子だった。リレーの選手については強制されてやる物では無い。そのため、一旦話は保留になるかに思われた。しかし、ソラのこの直後の発言が話の流れを一変させる事に。

 

「……あの!私からお願いなのですが、私と一緒に走るリレー選手として……私の方からもユキさん。そして……ましろさんを推薦しても宜しいでしょうか?」

 

ソラのその言葉を言った直後。迷っていたユキ、そして普通にしていたましろはいきなり指名されたせいで叫んでしまった。

 

「「え?……えぇーっ!!?」」

 

「待って待って!私、走るのそんなに速く無いよ!?ユキちゃんはまだ良いかもしれないけど、もっと走れる人がやった方が……」

 

しれっとましろにまで推薦されたユキ。唖然とする彼女を他所にソラは黒板の前に移動するとそこにある文字を書いた。

 

「リレーにおいて、確かに足の速さは重要な要素だと思います。ただ、それよりも重要なのがこれ!バトンパスです!」

 

バトンパス……。それはそれまで走っていた選手が次の選手にバトンを渡すという一見単純な物に見えるが、これがかなり重要となる。バトンを渡す際にバトンを落とす事や落とすのを恐れてスピードダウンするとその間に他のチームの選手に抜かれる危険性が高まってしまう。

 

そのため、スムーズなバトンパスをするのがこのリレーにおいて重要だと言える。

 

「このバトンパスをスムーズに行うためにもましろさんやユキさんの力も必要なんです!」

 

「えぇ……」

 

ましろは完全に弱ってしまった。しかもクラスメイトの空気も少しずつましろをリレー選手にする流れになってきている。つまり、ましろも断りづらいのだ。

 

するとユキは一度深呼吸をすると立ち上がってましろの元に行くとましろへと手を差し出した。

 

「ユキちゃん?」

 

「……ましろちゃん。私もやるから一緒に頑張ろう。ね!」

 

ユキは何とか笑顔を作り出すとましろへと手を差し伸べる。リレー選手を勇気を出してやる事にしたユキを見てはましろも踏み出す事を恐れられない。そのため、ましろはその手を取って立ち上がる。

 

「もう……ユキちゃんも頑張るって言うんだから私も断れないよ」

 

そんな感じでましろとユキもリレー選手へと決まった。そんな中。アサヒの近くからボソボソと声が聞こえてくる。彼がその方を向くとそこには喜ぶ他のクラスメイトを他所に不満そうな顔つきをしているクラスメイトが見えたからだ。

 

「……」

 

「それじゃあ、男子リレーの方は……」

 

アサヒがそのクラスメイトが不満のオーラを出すのを見ていると話はトントン拍子に進んでいる事に気が付かず。いつの間にやらアサヒは男子選抜リレーの最終走者……アンカーに推薦されてしまっていた。

 

「じゃあ、男子選抜リレーのアンカーは虹ヶ丘アサヒ君にお願いするという事で良いかな?」

 

「……へ?」

 

結局アサヒもこの話を断れずに引き受ける事になった。ちなみに、彼をアンカーに推薦したのは他ならないひかるである。

 

それからその週の週末。PrettyHolicの二階にあるカフェスペースでユキ、アサヒ、ソラ、ましろ、ツバサ、あげは、エル、ヒョウ、かける、ひかるの十人が通路を挟んだ二つのテーブル席に座って話をする事に。

 

「へえーっ。ましろん凄いじゃん!リレーの選手だなんて!」

 

「あはは、半ばソラちゃんやユキちゃんに引っ張られる形だったけどね」

 

「ましお、がんばえ!」

 

エルもそう言ってましろを応援。そんな中、ユキは一人少し暗そうな顔をしていた。

 

「ユキ姉、どうしたの?」

 

「もしかして具合でも悪い?」

 

ヒョウやかけるが心配する中、ユキはその視線に気がついて慌てて取り繕う。

 

「え?ううん!何でも無いよ!平気、平気。ちょっと昔の事を考えてただけ」

 

ユキの言葉に一同はそれ以上言及はしなかったものの、ユキにはリレー……と言うよりはスカイランドでやったラルーで何か失敗をしてしまったのかと考える。そうでもしなければいきなり暗い顔なんてしないからだ。

 

ユキも他の皆が自分が落ち込んだのに気づいて遠慮してくれたのが申し訳無かったのか、自分から言うことに。

 

「……あのね、実は私。昔ラルーの選手として選ばれた時に出たんだけど、その時大事な場面で転んじゃって」

 

どうやらユキがラルーの時にやったやらかしは重要な場面でのミスだった。しかも、ユキは最終走者だったので取り返す事もできずにチームは負けてしまったのだ。

 

「私ってさ、ほら。結構周りからの期待を重く受け止めちゃうでしょ?だから今回もリレーのアンカー役をやるって言われて少し不安になったんだ」

 

つまり、今のユキは他の人からの期待の視線に応えないといけないという思いと前の失敗を引き摺ってしまわないかという不安が交錯してしまっているという事だ。

 

「大丈夫ですよ!今から特訓すればきっと上手くいきます!」

 

「ああ。ユキ、俺達もそのトレーニングに付き合うから」

 

「勿論、ましろちゃんのトレーニングも一緒にね」

 

一同はリレーの特訓にはやる気十分。その言葉にユキも頷くと微笑んでから気合いを入れる。

 

「よーし。こうなったら皆で一番を取るために頑張ろう!」

 

それからユキ達は数週間後に迫ったリレーのためのトレーニングをするために各自で準備を始める事になった。

 

その頃、ソラシド市から少し離れた山の奥。そこでは山の空気が震えており、その中心部へと行くと洞窟の中で一人、瞑想をする者がいた。

 

「すぅー……ふぅ……」

 

「プリキュアのいる街から気配が無くなってどこに行ったかと思ったらここにいたのかよ。ヒューストム」

 

どうやら瞑想をしていたのはヒューストムだったようでそこにやってきたのはバッタモンダーである。

 

「……邪魔だ。失せろ、バッタモンダー」

 

「おいおい。まさかと思うけどプリキュアに怖気付いたんじゃ……」

 

その瞬間、ヒューストムはあまりにもバッタモンダーが立てる雑音が鬱陶しいと感じたのか。彼へと鋭い眼光を向けて睨んだ。

 

「ヒッ……」

 

「誰が怖気付いたって?」

 

「お、お、お前だよ。なんか俺の知らない間にこの世界にいきなり現れた変な科学者と弛んでたらしいし。そいつに変な事を吹き込まれたんじゃないのかなと」

 

「ああ。確かキメ、キメ……キメランコだったか?いや、なんか名前が混ざったな。まぁ良い。あのマッドサイエンティストとか言われてた奴とは確かに会った」

 

ヒューストムは瞑想を解かずにバッタモンダーの相手を程々にする。そんな中、バッタモンダーはヒューストムへと手を置くと彼へと話を続けた。

 

「へ、へぇーっ。だったらお前も強くなったんじゃねーか。また協力してアイツらを……」

 

「断る」

 

ヒューストムは即答でバッタモンダーの提案を拒否。それから彼は続けていく。

 

「アイツに諭されて俺にはまだ先があるとわかったんだ。それを極めさせろ」

 

「チッ。だったら今回は俺一人でプリキュアを潰してやる。分け前をくれと言っても知らないからな!」

 

そう言ってバッタモンダーは去っていった。その様子を一瞥したヒューストムは溜息を吐く。

 

「やれやれ。あの馬鹿。一人じゃ今のアイツらには勝てない。しかもキュアムーンライズの方はアンダーグエナジーによる謎の強化もあるからな。多分、あのバッタはほぼ何もできずにやられるだろう……それにしても、あのキメランコの言う通りだな」

 

ヒューストムはここ暫くのトレーニングで自分の力が確かに強くなったのを感じていた。彼も少し前に出会ったキメラングとの会話をヒントに自分を少しでも強くしようとしていたのだ。

 

「ったく。あの野郎に言われてやっと気付けたのが本当に癪に触る。しかも、ユキの彼氏だったか?アイツにも先を走られたせいで無性に苛立ちが溜まっているが、そのお陰でパワーアップそのものは成功しそうだな」

 

ヒューストムはそれからブツブツと呟きながら再度集中力を高めて己の中の力をコントロールする。そして、それはまた空気の流れを作り出すと山全体の大気を震わせながら巨大な気配へと変えていくのであった。




また次回もお楽しみに。
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