熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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心を痛めてしまう雪

2人きりでのお出かけをする中でアサヒに気を遣わせてばかりの事実を受け止めたユキ。彼女はアサヒの元に戻ろうとしたタイミングでチャラそうな雰囲気の男5人に囲まれてしまう。

 

「(どうしよう、逃げ道を封じられちゃった)」

 

今現在、ユキはトイレのある細い路地のような場所にいるせいで周りに人が殆どおらず。しかも、自分よりも明らかに体格のある高校生〜大学生前後の男5人相手なのでどうしても精神的に圧迫されてしまっていた。

 

「ねぇねぇ、君。可愛いね!」

 

「俺達と遊ばない?」

 

「1人で遊ぶなんてつまらないでしょ?」

 

「お兄ちゃん達が一緒に遊んであげる」

 

男達はユキを完全に玩具として連れ回すつもりであり、その感情を感じ取っていたユキはそんな彼等の様子に恐怖心が芽生える。

 

「け、結構で……」

 

「もう、またまた〜君みたいなレベルの高い可愛い子なんて早々いないんだよ?」

 

「ひっ……」

 

ユキは遠慮しようとした瞬間、それを悟った男達はしれっと彼女へと少しだけ詰め寄る。これにより、ユキの心の中の恐怖心は更に駆り立てられた。

 

「い、いえ……友達もいて。兎に角私、1人じゃないんです」

 

ユキとしては最悪強硬手段に出られても自分の身体能力であれば返り討ちにする事もできるとはわかっていたが……その考え以上に男達からの悪意の目線に耐えられなくなってきてしまう。

 

「マジ!?友達もいるんだ!」

 

「じゃあその子も含めて遊ぼうぜ」

 

「大丈夫大丈夫。俺達5人いるからさ。ちょっと増えても問題無いんだ。だから一緒に行こ?」

 

しかし、ユキが断っても男達はユキを誘うのをやめない。それどころか遊びの相手が増えてラッキー程度に思われているのか、喜んだような声を上げつつユキの気持ちに反して更に詰め寄ってきた。

 

「止めてください!」

 

「えー?そんな事言わずにさー」

 

「君みたいな子。滅多にいないんだよ。それに、まだ中学生っしょ?今からそんなに綺麗なんだからこれからもっと綺麗になれるよ」

 

「その顔つき、絶対育ちが良い子でしょ?だから1人で歩き回るのはきっと危ないからさ」

 

ユキの意思に反してどんどん距離感を無理矢理詰めようとする男5人。ユキの心の恐怖はそれに比例して大きくなっていく。

 

「い、いや……」

 

「すっかり怯えちゃってるねぇ。……大丈夫。お兄ちゃん達が側に寄る悪い虫達から守ってやるから」

 

ユキの脳裏に浮かぶのは幼い頃、自分よりも年上の男達に取り囲まれて痛ぶられていたあの時の事だ。強くなった今なら5人相手でもどうにかはできるかもしれないが、恐怖で怯えている上にカバトンやランボーグでは無いただの一般人を攻撃するのは今のユキには難しかった。

 

「じゃあ、まずはお前から……いただきまーす」

 

「ッ!!」

 

ユキの体は恐怖で小刻みに震え、このままでは自分は攫われてしまう。そう思った瞬間だった。

 

「なっ!?」

 

「……何勝手に他人の連れに手を出してるんすか。俺より年上なのに常識も知らないで」

 

その時、ユキに手を出そうとした男の腕が突如として後ろから伸ばされてきた者に掴まれる。そして、その腕を引かれる形で男は後ろに引っ張られると男は思わず目を見開いた。

 

「テメッ……このガキ……」

 

「えっ……」

 

そこにいたのは先程の洋服売り場に残っていてここにはいないはずのユキの連れで大切な人。虹ヶ丘アサヒだった。

 

「腕を掴んで引っ張ってしまったのはすみません。でも、この子は俺と一緒に来ていたんです。勝手にナンパしないでもらえます?」

 

「おいおい、人聞きの悪い事言わないで貰えるかな?俺達は1人でいるこの子が危ない目に遭わないようにしていただけなのにさ」

 

「そうそう。というか、お前の方こそこの子の連れだって嘘言ってるくせに何を偉そうに……」

 

ユキを取り囲む男達はアサヒが割り込んだ事で先程とは打って変わり、あからさまに嫌そうな顔つきになる。それを見たアサヒは溜め息を吐いた。

 

「はぁ……要するに俺は邪魔だからどっか行け……そういう解釈で良いですか?」

 

「ふーん、よくわかってるじゃん」

 

「子供だからって俺の事を舐めたツケ、高くつきますよ?」

 

その瞬間、アサヒは男の腕を掴んでいた腕に力を込めて締め上げる。そしてそれは、中学生が発揮するパワーを遥かに上回っていた。

 

「ッ!?痛ででっ!?」

 

「ば、馬鹿な……相手はたかが中学生のガキだぞ!?」

 

「……そうですね。……で?」

 

そのままアサヒは更に力を強めると流石に仲間がやられて黙ってはいられないのか。他の男達4人が一斉に襲いかかる。

 

「ふん!」

 

しかし、次の瞬間。アサヒは自分が後ろにバックしつつその勢いで掴んでいた男を自分が今いた場所まで引っ張るとアサヒのいた場所に向かってきた4人と引っ張られた男が思い切り衝突。そのまま倒れ伏してしまう。

 

「「「「「ぐはあっ!?」」」」」

 

そして、5人が纏めて倒れたのを見てアサヒはもう良いだろうとばかりに手を離すとすぐにその後ろにいたユキの手を優しく握ってから男達の正面に戻った。

 

「ぐ……ガキが……」

 

「調子乗るんじゃねーよ」

 

「はぁ、見てわかる通りユキは知らない奴等に詰められて嫌がってるだろ。ナンパするつもりなら女の子の気持ちの一つぐらいは見て理解してほしいんだけど」

 

「ッ……テメェ、言わせておけば!」

 

アサヒは呆れたように倒れた男を見下ろす形で話しかける。勿論中学生相手にこんな事をされれば相手も心中穏やかというわけにはいかない。そのため、怒りが込められた顔つきでアサヒを睨んでいた。

 

「構わん。そこの女を連れて行くためだ。さっさとコイツを……」

 

「じゃあ、正当防衛って事で良いですね」

 

アサヒはユキを安心させるために一時的に繋いでいた手を一旦離すと構えを見せる。

 

対して5人はまだ懲りずにアサヒを潰そうとするとアサヒはその攻撃を全て見切って回避。1人1発、合計5発分をカウンターのみで当てると5人全員を返り討ちに。

 

流石にここまでやられてようやくアサヒの実力がマグレでは無いと理解したのか。5人はユキを連れ去るという行為自体が無理ゲーであると悟りつつあった。

 

「ど、どうなってやがる」

 

「あんまりここで喧嘩沙汰にするのも嫌なのでそろそろ諦めてもらえませんか?」

 

そう言ってアサヒはスマホを片手に出すと警察に電話をかけようとする仕草を見せる。すると、男の中の1人が悔しそうに声を荒げた。

 

「お前はこの子の何なんだ!」

 

「そうだ!そっちの女もあれだけ暴力をしたお前に全然怖がってないし!」

 

「普通に考えて俺達だけを怖がるなんておかしいだろ!」

 

男達がそう問い詰める中、アサヒは溜め息を吐きつつどう答えるべき迷った。もし変な答えを返してユキが嫌がればこれみよがしに自分の事を非難して更に襲ってくるだろう。ただ、だからと言って中途半端な返しではまた難癖つけて殴ってきそうだったのでアサヒはチラッとユキを見る。

 

「ッ……」

 

「……」

 

そこには怖さからか、ユキはずっとガタガタと震えてしまっており、アサヒは覚悟を決めるとユキにそっと話しかけた。

 

「ユキ、俺に合わせて」

 

「えっ?」

 

その瞬間、アサヒは躊躇する事無くユキの手を繋ぐ。しかもそれは恋人繋ぎという物であり、当然のようにユキは驚きと共に困惑の感情が流れる。ただ、アサヒが事前に合わせてほしい事を言っておいたおかげかできる限りリアクションは抑えていた。

 

「ッ……」

 

「「「「「なっ!?」」」」」

 

「俺はこの子の……ユキの彼氏だ。一緒に遊ぶ女の子が欲しいのならこの子じゃなくて他を当たってくれ」

 

アサヒの言葉に男5人は驚きのあまり唖然としてしまう。そして、男達はユキの反応を見る。そこにあったのはアサヒに惚れた女の子のように顔を赤くしつつそっとアサヒへと寄り添うような仕草を見せており、今の話が嘘では無い事を裏付けた。

 

「これでもあなた達は他人の恋人を奪おうと言うのか?それならそれで、こっちにも考えがありますよ」

 

そうアサヒは言い切ると目の前の光景が信じられないのか、唖然とする男達。彼等が完全に正気を取り戻す前にアサヒはそっとユキに話しかける。

 

「ユキ、走るよ」

 

「うん」

 

アサヒはユキの了承を得ると急いでその場から逃げ出す事に。その際、2人の耳に男達がどうにか呼び止めようとする声が聞こえた気がしたが、これ以上彼等に関わっても碌なことが無いために2人は無視して全力疾走する事に。

 

それから暫くして。ユキとアサヒはそれなりに人がいる通りの所に出てくると2人は荒くなった呼吸を整える。

 

「「はぁ……はぁ……はぁ……」」

 

そして、その呼吸がある程度落ち着いたのを見計らってアサヒはユキへと話しかけた。

 

「ユキ、大丈夫か?」

 

「えっ。う、うん……」.

 

ただ、未だにユキの恐怖心は抜けてないのか、震えは止まって無いようで。アサヒはそれを感じ取るとユキを気遣うように声をかける。

 

「ひとまず、そこのベンチで休もう。まださっきの男達から植え付けられた恐怖が抜けてなさそうだしな」

 

「ッ……うん。ごめんね……」

 

ユキはまたアサヒに気を遣わせてしまった事に罪悪感を感じながら彼に促されるまま、近くにあった休憩用のベンチに二人で腰掛ける。

 

それからアサヒはユキの手をずっと握っていた。勿論恥ずかしさもあったのだが、ユキに安心感を与えつつ落ち着けさせるにはこれが一番だと考えてユキが嫌がらない限りは敢えて繋ぎ続ける事に。

 

「……ユキ、ユキが大変な時に側にいてやれなくてごめん」

 

「ッ!そ、そんな……謝らないでよ。元々は私の……」

 

ユキはアサヒに謝らせてしまった事が申し訳ないのか。すぐに自分が悪いのだと訂正しようとする。そんな時、ふとユキは何故あの時助けに来られたのかを疑問に思って問いかけた。

 

「ッ、そういえば……なんでアサヒ君は私の所に駆けつけられたの?アサヒ君と別れる前……あの場所にいてって言っちゃってたのに」

 

「ああ、その事か?……これが教えてくれたんだ」

 

するとアサヒが出したのは自分のスカイトーン。そしてそのスカイトーンは薄く光っており、何かと共鳴しているようだった。

 

「あっ、もしかして」

 

ユキはアサヒのスカイトーンが光っているのならとばかりに自分の分のスカイトーンを出すとそれが同じように光っており、ユキはある答えに辿り着く。

 

「ッ、やっぱり……バーニングサンが教えてくれたの?」

 

「ああ、厳密にはユキがヤバい事を諭してくれたブリザードがバーニングサンに連絡を寄越してくれて。そこから繋がる形で俺も話を聞いたんだ」

 

「そうだったんだ。……ブリザード、教えてくれててありがとう」

 

『ええ。ユキがかなり危険な人達に絡まれていたし、ユキ1人でどうにかできそうだったら放置するつもりだったけど……流石にあれはどう見てもナンパの男達だったから』

 

『実は、私達。スカイトーン同士で連絡を取り合ったりとかもできるんだ。だから私達2人は情報を共有できたのよ』

 

「そう……なんだ」

 

ユキはバーニングサンとブリザードが何故今まで2人がバラバラのスカイトーンにいるはずなのにお互いの存在を認識していたのか。ようやく腑に落ちる事になる。

 

「ユキ、改めてだけど。もう大丈夫だからな?」

 

「うん、アサヒ君……助けてくれて、ありがと……」

 

するとユキはお礼を言ったにも関わらず、未だに何かを我慢しているようで。アサヒはそれを見ると両手を広げつつ優しく話しかけた。

 

「ユキ、その……俺で良かったら。我慢せずに話してくれて良いんだよ」

 

「ッ……!」

 

ユキはアサヒが自分を受け入れてくれると聞いて、ずっと我慢していた気持ちがとうとう崩壊。自分からアサヒの胸に飛び込む形で泣き始める事に。

 

「うぅ……ああっ……怖かった……怖かったよぉ……」

 

ユキが泣くのに合わせてアサヒはそっと彼女の頭を撫でて安心感を与える。そして、ユキの感情は我慢していた分強く爆発すると暫くの間アサヒの胸の中で恐怖の感情を発散。その間、アサヒはユキの事を優しく受け入れ続けた。

 

一応補足しておくが、この間にアサヒはユキへとやましい事は何一つしておらず。ユキの隣に寄り添う事に徹する事になる。それから暫くして、ユキが落ち着いて話が出来るようになると早速彼女はアサヒへと謝った。

 

「アサヒ君……ごめんなさい。私のせいでこんな……」

 

「良いよ。大体、悪いのはユキが断ってるのに詰め寄ってたアイツらだし」

 

「でも、私のせいでアサヒ君はあの人達に攻撃されて。怪我しなかったから良かったものを……」

 

「あのくらいの奴、今更相手にもならないよ。むしろ、それが出来るくらい体が鍛えられたのはユキやソラのおかげだし」

 

アサヒとしては、春休み前の自分だったらあの場面に持ち込まれた時点で5人にリンチにされたのは間違いなかっただろうと考えており。あの場面を切り抜けられたのはむしろユキやソラと一緒にトレーニングをしたからと思っている。

 

「あ、それと俺の方こそごめん。勝手に彼氏だなんて言っちゃって……ユキにだって気持ちがあるのに……」

 

「ッ!?そ、そんな事なら気にしなくて良いよ!!むしろ……私は、アサヒ君と……」

 

するとユキはそこまで言いかけたタイミングで言葉を止めてしまう。アサヒはその様子を見てまだユキは気持ちの整理が付いてないのだと判断してそれ以上は聞かなかった。

 

「(……ついアサヒ君とお付き合いしたいって言いかけちゃったけど、でも……今の私なんかにアサヒ君の隣を独占する資格なんてあるのかな)」

 

そしてユキの方はアサヒの予想した通り、まだ自分の気持ちをアサヒに伝える覚悟ができておらず。どうしても心の中で遠慮してしまう自分がいた。

 

「(……ただでさえ今のお出かけだってアサヒに気を遣わせっぱなしで、リードさせっぱなしで。私は優しくされてるだけ。このままじゃ、アサヒ君にずっと甘える事になっちゃう)」

 

アサヒの隣にいたいと願う度にユキの顔つきはまたどんどん落ち込んだものに変わってしまっており、どうしてもネガティブな感情が前に出てきてしまう。

 

「(そんな私が、私みたいなダメ女が……アサヒ君を独り占めなんて傲慢な事……許されるわけがないし、許されちゃいけない。私がもっとアサヒ君のために尽くせるようにならないと……)」

 

「(不味いな、ユキが完全に責任を強く感じ過ぎてる。どうすればユキが純粋な笑顔を見せてくれるんだ……?俺は、ユキに何をしてあげれば良い?)」

 

一方のアサヒもこのままではユキにとって嫌な記憶としてこのお出かけが残ってしまう。どうにかしてユキの気持ちを楽しみお出かけの方に持っていきたい。アサヒはそう考えていた。

 

こうして、先程のナンパ未遂事件をキッカケにまた2人の気持ちは気不味い方向に傾いてしまう事になる。

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