ナンパからどうにか逃れたユキとアサヒ。ただ、ユキはまたアサヒに助けてもらった事で自分はアサヒの足を引っ張りっぱなしな現状を思い知らされて苦しんでしまう。
「(どうしよう……今の私なんか……アサヒ君とこうやって2人でいるなんて烏滸がましい事をして良いのかな……。アサヒ君は私なんかの相手をして、疲れてないかな)」
「(ユキ、かなり悩んでる。どうしよう……俺が今のユキにしてあげられる事って、何だろう)」
2人共相手の事を考えすぎるあまり、負の連鎖にハマりつつあった。特に、ユキの方はアサヒに助けてもらっているだけに罪悪感が強く。どうすれば自分がアサヒを助け、この場面をリードできるのかと思い悩んでしまう。
2人は先程から座っているベンチで考えを巡らせているとアサヒは深呼吸した。
「すぅ……ふぅ……。ユキ」
「な、何かな……」
そのままアサヒはユキへと話しかけると彼女の返事はどこか緊張して余所余所しい。それでも話をしないといけないと思ったアサヒはそのまま続ける。
「ユキは……どうしてそんなに今日のお出かけ中に申し訳なさそうにするんだ?もし俺に話して解決する事なら……」
「ッ……」
ユキはアサヒにそう言われた瞬間、ドキリとしたように肩を震わせる。しかも、それだけでは無く明らかに言いづらそうな顔つきで俯いてしまった。
「え、えと……ッ……」
「そっか……。ごめんな、言いづらい事を……」
「ッ!?ま、待って!アサヒ君」
ユキは焦ったような顔でアサヒの言葉を遮ってしまう。アサヒはそれを聞いてどうすれば良いかわからずに困ってしまった。気持ちを聞きたくても言うことができない。
かと言って先程のように自分が聞くタイミングを誤った事を謝罪しようとしたらそれも待ってほしいと来た。アサヒはユキの気持ちをどうにか理解しようと思考を巡らせるが、答えは出てくれない。
「ユキ、さっきからどうしたんだ」
「そ、それは……」
ただ、今のユキとしてはもうこれ以上アサヒに気を遣わせるような真似をしたくないという想いだけが先行してしまっている状態で。どうするのが1番アサヒに気を遣わせない事に繋がるのかわからずに必死に考えていた。
「(どうしよう……きっと何を答えてもアサヒ君に気を遣わせる。もうこれ以上アサヒ君の手を煩わせたく無いのに……幾らアサヒ君が好きだからって何でもかんでもアサヒ君に頼り切るのは)」
「(何でいきなり気持ちを話してくれなくなったんだ……これじゃあ、俺がどう対処すれば良いかわからない……)」
アサヒもユキがいきなり黙り込んでしまったため、どうするのが彼女と接する上での正解かがわからなくなってしまう。
「なぁ、ユキ。俺は別にユキの事を困らせたくて言ってるわけじゃ……」
「ッ!え、えと……それは私もわかってて。でも……」
ユキはそこまで言いかけて詰まってしまう。これでは会話にすらならない。アサヒはどうにかユキを元気付けて明るい顔を見せてほしいのに先程から話そうとしてはユキが気不味そうな顔をして話が止まってしまう。その現状がもう2〜3回は続いている。アサヒとしてはユキの考えが聞きたいのに話してくれないのでは理解すらできない。
「(何でユキはこんなに話してくれないんだ。そもそも何でユキは俺に気持ちを話しにくくなった?原因を探さないと……さっきまでの行動を思い出してみるか)」
アサヒはユキが困っているのは先程までの動きが原因だと考えると一つずつ行動を遡っていく。
「(どうしよう……またアサヒ君に気を遣わせて……。どうしたら、どうしたら私はアサヒ君に気を遣わせずに済むの?何かを言ってもダメで、言わなくてもダメ……。私、このままじゃ……アサヒ君に愛想を尽かされちゃう。……そんなの絶対に嫌!)」
アサヒが過去を遡って考える間にもユキの焦りは頂点に達しつつあった。このままでは折角ここまで良い雰囲気で進んでいたはずのお出かけが台無しである。
そして、アサヒもそれは同じ気持ちだ。折角ユキに楽しんでもらうために自分がリードしないといけないと気を張っていたのにユキの本音が聞けないまま気不味い終わり方なんて嫌だった。
「ユキ、言いづらいのはわかるけどちゃんと話してほしい。もし俺に足りない部分があったらそれを直すから。だから……」
「ッ……違う……」
「えっ?」
アサヒはこれ以上は埒が明かないと考えると多少強引だったとしてもユキの本音を引き出そうとする。すると、彼女はその言葉に首を横に振って否定。そしてユキは今にも泣きそうになりながらも、覚悟を決めたような顔でアサヒの方を向いた。
「違うの……悪いのは、いつまでもアサヒ君に気を遣わせるくらい情けない私の方で……」
「気を遣わせる……?」
アサヒはユキの言葉を聞いて足りていなかった自分の考え方のピースが埋まりかけたその時だった。
「ランボーグ!」
「「えっ!?」」
突如としてどこからともなくランボーグの叫び声が聞こえてくる。2人はその声に驚いたような顔を浮かべると慌ててそちらの方を向く。
「今の声……」
「ああ、間違いない。ランボーグが出たんだ」
それから2人は今しようとしたお出かけをする上で必要な話し合いを後回しにする事に決定。すかさずその場から移動を開始するとランボーグが現れたと思われる場所へと走り出す。
何故このソラシドモールにランボーグが出る事態となってしまったのか……話は数時間前……カバトンがゲームセンターに入った事から始まる事になる。
「おお、面白そうなゲームがた〜っくさんあるのねん!」
カバトンはここ最近プリキュアに負けてばかりという事とシャドーが行方不明になった件が合わさって不機嫌な時が多かった。そのため、何かしらの娯楽をやりたい気持ちが強かったのである。
「まずは体を動かすとするのねん」
カバトンはボウリング場に向かうと受付で申請し、2ゲームをやる事に。すると、早速彼は早着替えで動きやすい服……いつもユキ達と対峙する時の服になった。
「ふっふーん。あんなヒョロヒョロとしたピンなんて1発で倒しちゃうのねん」
尚、この時は何故か街で暴れる際と同じ服装だったのに周りの人にはバレなかった模様。恐らく暴れる際はランボーグを絡ませるため、人々の目はそちらに集中する都合であまり見られておらず。結果的にそんな事情もあってバレなかったようである。
「さぁ、行くのねん!」
そしてカバトンはボールを投げると凄まじい勢いでボールが転がっていき、そのままど真ん中のストライクへ……かと思った瞬間。突如ととしてボールが左へと逸れていくとピンに当たる直前にガーターに落ちてしまう。
「……はぁ!?」
カバトンは慌てたような様子で2回、3回、4回とボールを投げ続けるが……残念ながらどれもガーター落ちという残念な結果に。
「待て待て待て!何で?何でこうなるのねん!」
説明しよう。ボーリングを投げる際のコツとて、ボールをリリースする瞬間に手のひらが左側を向いてしまっている場合……どうしてもボールが左側に逸れてしまいがちになるのだ。
カバトンは先程からリリースの瞬間の手のひらは左側を向いてしまっている。しかもそれをフォームが原因だと気がついてないためにムキになってしまい……結果的にガターを量産するというループに陥ったのだ。
「ムッキーッ!何で!何でなのねん!かれこれ10回は投げてるのにどうなってるのねん!」
カバトンは全くもってピンに掠りもしない現状にイライラする。ただ、そこで一旦止まると他の人の投げるフォームを見てみた。
「……あん?そういえばよく見たら真っ直ぐ投げられる脇役共は腕が真っ直ぐピンに向かっているのねん。まさか……」
それからカバトンは先程までとは違って手のひらまで真っ直ぐ投げる事を意識すると元々カバトンのボールはスピードがあったのも相まってボールは割と真っ直ぐ向かっていく。そのまま少し右側だったものの、ボールが当たった右半分のピンは一撃であっさり倒された。
「おおっ……なるほど、真っ直ぐ投げるのがコツなのねん!?それなら……」
それからというもの。投げ方のコツを掴んだカバトンは毎回ストライク……とまではいかないが、最低限ピンに当てられるようにはなった。
「こうなったら、ストライクを量産できるようになるまでやってやるのねん!」
カバトンはボウリングにどハマりするとそこから約2時間程楽しむ事に。そして、とうとうボウリングを終えた彼は少し遅めの昼食を摂りながら……ボウリングにハマったのを後悔していた。
「ああ……もうすっかりお金が減ってしまったのねん……」
どうやらボウリングにハマった際に調子に乗って投げ続けた結果……手持ちのお金を殆ど使い果たしてしまったらしい。
「このままじゃ、金欠になっちゃうのねん。……こうなったら!」
カバトンはある事を思いつくとゲームセンター内にあるコインゲームに目を付ける。
「確かさっき見た時、このコインゲームのコインをメチャクチャ持ってる奴がいたのねん。これなら、手持ちのお金を何倍にも増やせるはず……グフ、グフフフフ!」
カバトンはコインゲームのコインを大量に入手する事で短時間で楽に儲けようと思ったらしい。
そんな浅はかな考えの元、カバトンはコインゲームのコインを入手すると早速ゲームを開始。
「来い、来い、来い、来〜い!」
カバトンはまるでギャンブル依存症にでもかかったかのようにコインを大量に注ぎ込むとどうにか当てようとする。
「あと一つ、あと一つ揃えば大当たりなのねん!」
今現在、カバトンはスロットで2つ7を揃えており、あと一つで777という大当たり……そんな時だった。
「7!7なのねん!7、7、7〜!!」
そして、カバトンの祈りが着替えるとうとうスロットが止まるとそこに映された出目は……彼の望んだ数字、7であった。
「いよっしゃあああっ!」
その瞬間、大当たりになった事で大量のコインがコインの放出口から湧き出るとカバトンはそれをコインをいれるための籠へと入れる。その籠が満タン近くにまで増えると彼は上機嫌だった。
これで今日一日で溶かしてしまったお金を補填できる。何ならプラスに持っていく事もできるかもしれない……そう思ったカバトンは完全勝利を確信するとそれを持って店員の方に向かった。
「おい、お前」
「へ?俺ですか?」
カバトンは店員の青年に話しかけると彼はキョトンとしたような顔を浮かべる。その直後、カバトンは手にしたコインの籠を店員の前に差し出すと店員はカバトンが何をしたいのかを理解した。
「ああ、なるほど。コインを機械に預けたいんですね。それでしたら……」
「ズコーッ!?違うのねん!これをお金に換金しろって事なのねん!」
しかし、店員の反応はカバトンの望むものでは無かったために思わずズッコケてしまう。そのため、彼は半ば怒ったように声を荒げた。
「……お客様、ゲームで使用するコインはお金に換金するのは不可能なんですよ。なので、それはちょっと……」
「はぁああ!?な、何でなのねん!!」
「そういう決まりなんですよ」
そして、カバトンはここで致命的なミスをやらかしてしまう。それは、ゲームセンターのコインゲームで得られるコインはリアルのお金として換金する事が不可能であるという点だ。
そして、それを履き違えたままゲームを楽しんだ結果……カバトンは更に所持金をロストしてしまう事に。このままではただでさえ少なくなったカバトンの所持金が底を突いてしまう。そのため、彼は起死回生の一手を打つ事にした。
「ぐぬぬぬ……だったら強硬手段しか無いのねん!カモン!アンダーグエナジー!」
そして、その起死回生の一手というのがいつも通りの強硬手段であった。カバトンが地面に手を置くとアンダーグエナジーが放出。それらがコインを使用したスロットマシーンに吸い込まれていくとそれがランボーグに変化する。
「ランボーグ!」
『うわぁあああっ!』
ランボーグは天井が高めな通路の方に移動する形で出現すると人々の悲鳴が響き渡る。
「にゃーっはっは!コイツにここをメチャクチャにされたくなかったら黙って金を出すのねん!」
そのままカバトンは自らの所持金確保するために人々を恐喝するという割と最低な行為に踏み切ってしまう。
カバトンはランボーグを呼び出して自分が優位に立ったと考えたのか。上機嫌な様子を見せているとそこにランボーグの出現を察知したユキとアサヒが到着する。
「いた!ランボーグと……」
「バカトン!」
「えっ……?」
「誰がバカなのねん!!」
アサヒは久々にカバトンの名前呼び間違えを披露。カバトンはバカだと罵られて怒りを露わにする。
「バカはバカに決まってるだろ!折角俺達が2人きりの時間を過ごしてたのに邪魔しやがって!シャドーに逃げられたボッチがよ!」
「何だと!?お前さっきから生意気なのねん!」
カバトンは名前間違えで怒ったところに、気にしている所を更に抉られて頭に更に血が昇ってしまう。そんな様子にユキはオロオロとしていた。
「え、えと。アサヒ君もその辺に……」
「っと、悪いな。こんな奴関わるだけ時間の無駄だし」
「あぁん?何だと!お前らこそ2人でイチャイチャしてる所を見せつけるような感じで来やがって!」
「ええっ!?」
アサヒはこれ以上は絡んでも仕方ないとばかりに言う中、喧嘩を売られたカバトンはそうも行かず……。2人がイチャイチャしてる事を前提で話を進めてきたためにユキは驚いてしまう。
「ユキ、やるぞ!」
「う、うん。そうだね!」
こうして、2人はカバトンをどうにかするために変身を開始。彼の暴挙を止めに動くのだった。
また次回もお楽しみに。