熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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保育園での実習

それから時間が経ち、実習の始まる日。ソラシド保育園ではかける、あげは、ヒョウが園児達の前にそれぞれ保育士の服装で立っていた。

 

「皆〜。新しい先生を紹介するよ!」

 

「初めまして。私は聖あげは!まだ見習い保育士だけど、最強の保育士を目指しています。よろしくお願いします」

 

「僕は望月かけるです。あげは先生と同じでまだ見習いだけど、皆の心に優しく寄り添えるような先生になりたいと思っています。よろしくお願いします」

 

あげはとかけるが次々に自己紹介をする中、ヒョウの番が回ってくる。しかし、彼女は何故か何も言わない。

 

「……ヒョウちゃん?」

 

「ッ……ハッ!わ、わ、わた、私は雪宮ヒョウです!えっと、あげは先生やかける先生とは違って私は体験で今回の実習に参加する事になりましたぁっ!よ、よ、よろしくお願いします」

 

ヒョウは何故か緊張しているのか上擦った声色で上手く喋る事ができず。その割には体がガチガチになっているという訳ではないため、二人もいつもと様子が変だと思った。

 

「「「「「「よろしくお願いします!」」」」」」

 

とは言え、園児達の方もちゃんと返事を返したのと、園児から飛んできた声で話題が切り替わったので今は言わない事に。

 

「さいきょうだって」

 

「かっこいい……」

 

二人の女子園児が話す中、一人の男子園児がムッとした顔で手を挙げるとある事を言った。

 

「さいきょうはプリキュアだもん!」

 

「あ。プリキュアの事知ってるの?」

 

あげははその声を聞いて園児の元に近寄るとしゃがんで目線を合わせた。園児等の幼い子を相手にする時はできる限りしゃがんで目線を合わせた方が良い。保育士としての知識があげはにそうさせたのだ。

 

「うん!わるいかいじゅうとたたかってくれるとってもつよいヒーローだよ!」

 

「あたしもしってる!」

 

「ぼくも!」

 

どうやら園児達の中でも一定の知名度があるのか、プリキュアの話題は瞬く間に広がっていく。

 

「……!そういえば、君って確か……」

 

かけるがあげはと話した園児について見覚えがあった。それは前に河原でランボーグと戦った時にウィングが守った男の子であったのだ。

 

「ぼく、かわらでキュアウィングにたすけてもらったんだ。だからぼくもキュアウィングみたいにつよくなりたいんだ!」

 

「へぇ〜。ウィング喜ぶよ!」

 

「……あ」

 

「え?」

 

「え?」

 

かけるはこの時点で気がついた。あげはがプリキュアと知り合いだと言わんばかりの言葉を園児に言ってしまった事を。そして、あげはもやっとそれを理解する。ちなみにヒョウは未だに緊張が解けないのか会話に参加すらしてこない。

 

「プリキュアとしりあいなの!?」

 

「え?あげはせんせいってプリキュアなの!?」

 

「だってさいきょうなんでしょ?」

 

「そうなの?」

 

「あばばば……かける君、ヒョウちゃん、どうしよ……」

 

あげはが助けを求めるように二人に声をかけるが、かけるは手を頭に置くと仕方ないと言わんばかりにフォローした。

 

「えっとね。僕もあげは先生もヒョウ先生もプリキュアでは無いかな。でも、秘密の仲間みたいな感じだよ」

 

「そうそう。プリキュア活動を影で支える……みたいな?」

 

あげはとかけるがそんな事を言う中、園児達は当然のように歓喜の声を上げる。自分達にとってのヒーロー的存在であるプリキュアと接点があるとわかれば興奮するのも無理無いだろう。

 

それから一度話は終わり、実習の方に入っていく。ヒョウは知識の問題でそこまで難しい事ができないのでひとまずは子供の相手をする事に。

 

「ヒョウせんせい、あそぼ!」

 

「良いわよ。えっと、何する?」

 

「おままごと!せんせいはおかあさんのやくやって!」

 

ヒョウは三人の中で最年少という事もあって園児達の遊び相手になっていた。

 

「ヒョウせんせい?かおがへんだけどどうしたの?」

 

「ふぇ!?」

 

実はこの時、ヒョウは顔つきが完全に緩んでしまっており、いつものクールさはどこへやらと言わんばかりに園児達に癒されたような顔つきだった。

 

「な、なんでもないわ。さ、いっしょにあそびましょ」

 

ヒョウはすぐに園児達に適応。それから園児達と遊ぶ事になった。彼女はおままごとを終えると今度は男子園児達がやってきて怪獣ごっこを提案された。

 

「えっと、私が怪獣になれば良い感じ?」

 

「うん。まちをおそうようなこわいかいじゅうになって」

 

「オッケー。じゃあ、ガオー!この街は今日から大怪獣、ヒョウのも……」

 

「みんな、かいじゅうのヒョウせんせいをやっつけろー!」

 

「「「「おーう!」」」」

 

ヒョウが台詞を言い終わる前に園児達は五、六人でチームを組むといきなり彼女へと飛びかかって体の色んな所をくすぐり始めた。

 

「ひゃっ!?あははっ!な、何するの?」

 

「それ、まいったか!わるいかいじゅうめ!」

 

「ちょっ、そこはダメ、あははっ!く、くすぐったいじゃない!」

 

ヒョウはその場に倒れると脇や両脚、肩に首の周りまでくすぐられて完全に身動きが取れなくなってしまう。ただ、それでも園児達の攻撃は止まない。

 

「な、なんのこれしきぃ……ひゃははっ!」

 

園児達はまだヒョウが降参しないのを見て更にくすぐりの手を強める。ヒョウはそれに何とか耐え続けた。勿論、プニバードに戻るのも我慢しないといけない。いきなり先生がモフモフの鳥になれるなんて知られたら色んな意味でもっと大変だからだ。

 

「や、やめっ……ま、参ったわよ!降参、降参だって!」

 

「やったぁ!だいかいじゅうヒョウをたおしたぞー!」

 

園児達の楽しそうな顔を見て、ヒョウは満足そうだった。するとヒョウは園児に連れ回されてはあっちこっちで遊びに誘われる事になる。

 

「……ヒョウちゃん、何だか嬉しそうだね」

 

「うん。いつもより生き生きしてるっていうか。家の中のヒョウちゃんだったら絶対に見せないような顔もしてる」

 

ヒョウが幸せそうに園児と戯れるのを見てあげはとかけるの二人は話し合う。すると、そんなヒョウを遠巻きに見つめる一人の女子園児がいた。その子は他の園児が遊んでいるためになかなかヒョウの元に辿り着けない。

 

「あれ?あの子……俺とヒョウちゃんが庇った子じゃないか?」

 

かけるはその子を見て思い出すとあげはへと話しかける。女の子はモジモジとしており、上手くヒョウへと行くキッカケが掴めない。その間に他の園児がヒョウと遊んでしまうので彼女は遊びに参加できないのだ。

 

「ちょっと私、話しかけてくる。これからこっちの方をやらないとだし。それに、多分あの子はヒョウちゃんに話しかけたいんだと思うから」

 

「うん。お願い」

 

それからあげははその女の子の園児の元へと歩き出す。かけるはまた別の作業をしないといけないので別行動になった。

 

「ねぇ。ヒョウ先生と遊びたいのかな?」

 

いきなり隣にやってきたあげはに女の子はビックリしたように体を震わせると慌てて廊下に出てドアの向こうに隠れてしまう。

 

「あっ……」

 

それから女の子はチラッとドアの開いている隙間から顔を覗かせると恥ずかしそうに顔を赤くしていた。その顔をよく見ると緑色のボブカットをしており、緑色の瞳をつり目にしている。あげははこの特徴にどこかで見た事のあるような気がするが、構わず再度声をかけた。

 

「驚かせてごめんね。えっと、君の名前は?」

 

「か、かざなみらんこ……」

 

「……えっ!?」

 

「ッ!!」

 

あげはがその名前を聞いて驚く中、少女はあげはが驚いたので釣られるようにビクリと体を震わせてしまう。

 

「嘘、え?でも……偶然かな?え、えっと……らんこちゃん。好きな食べ物って何?」

 

あげははひとまずこのらんこという少女の事を知るために好きな食べ物について聞く事にした。

 

「……あ、アップルパイ。ママがたまにつくってくれる」

 

あげは恥ずかしそうに小声になりながらも答えてくれたらんこを見て何となく確信を持つ。恐らくは、彼女はこちらの世界の風波らんこという事だろう。どういうわけか年齢は思いっきり違うらしいが。

 

「らんこちゃん。先生、らんこちゃんの事をもっと知りたいな。だから、先生と少しお話ししよっか」

 

あげははひとまずらんこが怖がらないように座って向き合うとそのままの状態で話しかける。最初は怖がっていた彼女だが、少しずつあげはに打ち解けたのか隣にちょこんと座ると色々と話をしてくれた。

 

彼女は他の園児と比べて賢い事、運動面もできる事、好きな歌手はアイドルの春日うららと剣崎真琴である事。何でも、少し前に両親と一緒に見た歌番組の中で出てきた二人の綺麗な歌声に惹かれてすっかりファンになった事を教えてくれたのだ。

 

「……ひかる君から聞いてる向こうの世界のらんこちゃんにそっくりね。やっぱり、この子はこっちの世界のらんこちゃんって事かな」

 

「………」

 

らんこはキョロキョロと周りを見渡すと丁度ヒョウがフリータイムに入ったのか、一人で座っていた。らんこはそれを見て立ち上がると行こうとする。しかし、上手く話しかけられないのかヒョウの前で声をかけられずにいた。

 

「あ……うと、えっと……」

 

「ヒョウせんせい!こんどはこれしよ!」

 

「はーい!」

 

その間にも他の園児が割って入るとヒョウを連れて行ってしまう。それを見てらんこは声を上げようとするが、何かに怯えているのか結局黙って見ているしかできなかった。

 

「あっ……うぅ……」

 

あげはは一人で項垂れているらんこの所に行くとらんこへとまた質問をする事に。

 

「ヒョウ先生の所に声をかけたいのかな?」

 

「……うん。このまえ、かけるせんせいとヒョウせんせいにたすけてもらったからおれいがいいたくて」

 

らんこはヒョウにお礼が言いたかったのだ。かけるはこの場にいないので仕方ないが、ヒョウには言えると思っていた。しかし、彼女は話しかける事が怖いために上手く言い出せない。

 

「さっきかいたおてがみはプリキュアにだったから、ふたりにまだおれいをいえてなくて」

 

「そっか。じゃあ、先生が言っておこうか?」

 

あげはの言葉にらんこは首をブンブンと横に振る。どうやら自分の口で言わないとダメだと思っているらしい。

 

「でも、話しかけないと伝えられないよ?」

 

「こわいの……ほかのことはなすのが。わたし、きらわれたくない」

 

思えば、彼女はずっと一人ぼっちだった。他の園児が遊ぶ中、彼女はその輪の中に入れてもらえていない。イジメを受けている感じでは無いので恐らく彼女が入る意思を伝えられていないのだろう。

 

「……らんこちゃん。勇気を出さないとダメだよ。大丈夫。きっと皆優しくしてくれるから」

 

「……うぅ……」

 

しかし、らんこはそれでも踏み出せず。結局その日のらんこはかけるやヒョウに話しかけるチャンスが何度かあったにも関わらず、一度も話しかける事ができなかった。そんな彼女にあげはは考える。

 

「らんこちゃん。他の子とも仲良くできて無さそうだし。どうにかしてあげたいな……良し、こうなったらかける君に」

 

あげはは実習が終わって家に戻ったら思い切ってかけるにこの事を伝えて彼の協力を仰ぐ事に決めるのであった。




また次回もお楽しみに。
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