スロットランボーグの力に押されたスノーとサンライズ。どうにかサンライズの機転でその場から撤退する事に成功。そして、一時的とは言えプリキュア2人に逃げられたカバトンはと言うと……。
「ぐぐ……やっと目が戻って……んん!?」
「ラン?」
「はぁあああ!?アイツら何処に消えたのねん!?」
当然のように目を潰されている間に目の前からいなくなったプリキュアへと怒りを露わにするカバトン。ただ、今回に関してはランボーグがまだ生き残っているために彼は一旦落ち着く。
「ぐぬぬ、逃げるなんて良い根性してるのねん。ランボーグ、逃げたあの2人を探せ!最悪この施設を壊せば出てくる!何としてでも見つけて倒すんだ!」
「ランボーグ!」
この施設を盾にしている以上、プリキュア側はランボーグを浄化しないといけない。そう考えたカバトンは最悪プリキュア側を施設破壊で呼び寄せられるという事を脳内で思考しつつランボーグに攻撃を指示するのだった。
一方で逃走したスノーとサンライズの内、スノーを抱えていたサンライズは少し疲れて息切れしていたが、どうにかソラシドモール内でランボーグから離れた地点の細い路地に入る事ができた。
「はぁ……はぁ……」
「………」
ただ、スノーはかなり気不味い顔をしており、それは自分のせいでサンライズに走らせた事による後ろめたさが原因である。
「……さ、サンライズ?」
「何?スノー」
「え、えと……」
スノーはサンライズに聞かれてどうやって話すべきか迷ってしまう。ただでさえ戦い前に気を遣わせていた所に自分の焦りが原因でここまでの失態を招いたのだ。彼女から話を始めにくいというのも仕方のない話なのかもしれない。
「……はぁ」
「た、溜め息!?」
サンライズはそんなスノーに溜め息を吐くとスノーは唖然としてしまう。そして、サンライズはスノーから言いにくいのなら自分から話を始める事にした。
「……スノー、俺のやってた事は間違いだったのかな」
「え?」
「俺は、今日のお出かけ。ユキの方から持ちかけてくれたのが嬉しかった。あれだけ他人から嫌われる事を恐れていて、誰に対しても一定の距離を保とうとしていたユキが俺と2人だけでお出かけを提案してくれて」
サンライズはあくまで自分はスノーを責めるためにこうして話しているわけでは無いという事を示すためか……先程までのスノーの焦りによる失態を強い口調で責めるということはしなかった。
むしろ、その逆。少しでもスノーが責任を感じないように気を遣っているようにも見えてしまう。
「ッ……ち、違うの……私は、アサヒ君に気を……」
「やっぱり、俺が気を遣いすぎたんだよな?」
「あっ……」
スノーはサンライズに言葉を誘導されたと悟ったが、もう遅い。彼女はどうやってサンライズへと弁明すればと考える。
「え、えと……そういうわけじゃ……」
「……スノー。俺だってスノーに落ち込んでほしくて色々気を付けていたわけじゃないんだ。そのくらいはわかるよね?」
「うん……。でも、私みたいな存在のために……サンライズに神経を張らせていたんだと思うと……」
スノーはまたいつものように自分を下げて話を進めようとする。サンライズはこのままだといつも通りの堂々巡りだと考えるとスノーの手を掴んだ。
「スノー、俺はスノーの事を対等な相手だって考えてる。少なくとも、スノーに自己嫌悪してほしいがためにこんな事はしてないんだ。俺は、俺はスノーが心配で」
「ッ……」
それを聞いたスノーの瞳に涙が浮かぶ。彼女は何とかサンライズに答えを返そうとするが、どうやって返すのが彼にとって良いのか浮かばない。
「(どうしよう。このままじゃまたアサヒ君を苦しめる……。嫌だ、嫌だ嫌だ……。私の選択が全部裏目に……)」
「スノー。俺は、俺はどうやってスノーに接すれば良い?」
「えっ……」
「普通に接しても何処でスノーにとって嫌な事を言っちゃうかわからない。気を遣って接しようとしたらスノーは自己嫌悪に陥っちゃう。スノーにとって、俺はどう接してくれるのが良いんだ?」
スノーはサンライズから問われて頭の中がグチャグチャになってしまう。サンライズとしてはスノーを傷つけたくない気持ちが強いものの、今のままでは何処でスノーにとっての地雷を踏むかわからない状態で。その影響で気を遣って接していたものの、それさえもスノー自身が気を遣ってほしくないと来た。
「私……私がサンライズに望むこと……」
こうなった以上はスノーに直接接し方を言ってもらわないとどうしようもできない。スノーもこれだけサンライズに迷惑をかけておいて自分の意見を言わないのはダメだと思っているのか。どうにか答えを絞り出そうとする。
「わた……私は……」
しかし、こういう時に限って答えというのは纏まらない。先程から自分のせいでサンライズが困ってしまっている事、お出かけ中にリードされっぱなしである事、更に大好きな人に嫌われたくない素直な自分の気持ち。
それらが複雑にスノーの心を掻き乱してしまう。その結果、彼女は答えが出せなかったのだ。
「あ、ああ……はぁっ……はぁっ……はぁっ……」
スノーはいつの間にか呼吸が荒くなるとグチャグチャに掻き混ぜられた気持ちの中でどれを優先させれば良いのかわからずに混乱。しかも、サンライズを待たせたらまた彼を困らせるという思いがこの混乱を何倍にも増幅させてそれが思考を纏めることを阻害。
しかも答えを出すのが遅くなればなるほどサンライズを困らせるという事に繋がる。そのまま締め付けられるような胸の痛みも始まると余計にどうするべきなのかわからなくなってしまう。
「(どうしよう……どうしよう……答えが全然出てくれない。このままじゃ、アサヒ君は私に愛想を尽かしてしまう。アサヒ君が私の隣からいなくなるなんて……そんなの、そんなの嫌!でも、どうしたら私が1番納得できるのかな……)」
スノーは心臓の鼓動が強くなると息も苦しくなってきて、更に緊張感や気持ちが急激に不安定になった事で吐き気まで感じるようになり始めた。このままでは不味い。
「(アサヒ君が好きで、好きで……仕方ないのに。そのアサヒ君をこんなに困らせて。私なんか……私なんか……)」
一周回って自己嫌悪の気持ちが強くなったスノー。このままでは負の連鎖が続くせいで状況は悪化の一途を辿るのみ。サンライズはそんなスノーの様子を見ると深呼吸する。
「すぅ……ふぅ……」
「ッ、さ……サンライズ?」
「ごめんね」
その瞬間、サンライズはスノーをそっと抱きしめると背中を優しく撫でる。それを受けてスノーは目を見開くと慌て始めた。
「えっ……さ、さ、サンライズ!?な、な、な、何で……」
「スノー……。改めてだけど。俺はスノーの事を苦しめたくてこんな事をやってるわけじゃない。スノーはどう思ってるのか、どうしたいのかを俺に全部理解するのは難しい」
「ッ……そ、それは私がちゃんと話せないのが原因で」
スノーはサンライズの話を聞くとまたサンライズは自分に非があると言い出そうとしてると思ったのか。慌てて責任はちゃんと話せない自分にあると言おうとする。すると、サンライズはスノーの体を抱きしめていたのを一旦話すと落ち着いて話し始めた。
「……俺はさ、スノーともっと気軽に話せるようにしたい。勿論、今すぐ自分の全部を話してほしいとは言わない。……だけど、今のままは嫌なんだ」
「サンライズ……」
スノーはサンライズの気持ちを聞くと一旦落ち着いて考える。今1番彼に伝えないといけない事。それは自分が今、サンライズにどうして欲しいのかという事だ。
「……私、サンライズに嫌われるのが凄く怖い……」
「ッ!!」
スノーはかなり遅くなってしまったが、震える声でようやく自分の気持ちをサンライズへと吐露。それを聞いてサンライズはやっとスノーが自分から気持ちを話してくれた事に安堵する。
「私がこの世界に来てから、今日までずっとサンライズに助けられっぱなしで。せめて今日くらいはサンライズに恩返しがしたかった。そのくらい、私にとってサンライズは太陽みたいな温かい存在なの!」
スノーの瞳からポロポロと涙が流れると悔しそうに拳を握りしめ、涙のせいでグチャグチャになった顔のまま気持ちを吐き出した。
「……だけど、だけど私は今日のお出かけでもずっとサンライズにリードされっぱなしで。本当なら、本当なら私がお礼を言う立場なのに!せめて、せめてもっと私がサンライズのために尽くさないといけなかったのに……」
しかし、実際はスノーの思った通りに行くどころか……全てが上手く行かずに空回りしてしまう。サンライズが今回のお出かけをリードしてスノーは全部自分に合わせてもらっていた事に気がついた時点でスノーの中にあったプランが壊れてしまっていたのだ。
本来なら今回のお出かけは自分の気持ちを確かめるための物。同時にサンライズに日頃のお礼をするための物だった。だからスノーの中では今回のお出かけをサンライズにリードされてしまうとそれが達成できないのである。
「……私……やっぱりサンライズの隣にいるなんて……そんな事できない……。そんな私の勝手な気持ちなんて通るわけがないよ!」
「そっか……スノーは俺の事……」
スノーはそれを聞いてサンライズに完全に気持ちが知られたと確信したのか。小さく頷く。
「サンライズ……私、私……」
スノーはサンライズにバレた以上、もう隠すなんてできない。スノーはサンライズに助けを求めるような顔を見せていた。
「お願いサンライズ……私は、私は、どうすれば良いか教えて……。サンライズの事、大好きだって今なら言える……でも、でも私なんかに受け入れてもらえる資格なんか無い。だから、だから……」
「……それが、ユキの本心なんだな」
「うん……私はアサヒ君が……好き……。でも、お付き合いしてなんて言う資格は私みたいなダメ女になんて」
ユキの瞳はアサヒを見る事ができなくなってしまっており、視界は涙で濡れてしまっている。このままではまたスノーは話さえもできないほどに混乱しかねない。
そのため、サンライズは覚悟を決めるとこれ以上スノーとの並行線のやり取りをできないと思ったのか。彼女に話しかける。
「スノー!」
「ッ……」
「……改めてだけど、スノーは俺の事が好きなんだよな?」
「……うん」
サンライズはスノーに改めて彼女の本当の気持ちを確認。彼女はサンライズに聞かれた以上、答えないわけにはいかないと頷く。すると、サンライズはスノーを落ち着かせるために最後の手段に出た。
「……これがユキの気持ちに対しての俺の返事だよ」
「え?サンラ……んっ!?」
その瞬間、サンライズはスノーへと自分の唇を捧げる。スノーは突然の事に脳内は混乱。同時にサンライズはスノーの後頭部辺りをそっと触るとスノーがすぐに逃げ出さないように固定する。
そして、いきなりキスという行為をされたスノーの思考は一瞬で好きな人相手からの不意打ちキスという物に完全に上書きされて停止。そこからはある意味蹂躙だった。
一応補足しておくと、今回のキスはファーストキスだった事もあって浅い方のキスである。
「「はぁ……はぁ……」」
それから約20秒後。2人はキスを終えると物理的に唇を塞がれた事で荒れた呼吸を整えていた。
「さ、サンライズ?何で」
「言っただろ?これが俺の気持ち。……スノー、お前は自分に資格が無いとか色々言ってるけどさ。結局それは本心を殺した上での言葉だろ?」
「それは……そうだよ」
「だったら、俺はその意見を否定する。……それだけユキが好きだから」
「ッ……!」
サンライズ……アサヒは本当だったらここでキスなんてする予定では無かった。折角のファーストキスはもっと状況を作ってやりたかったのだ。
それでも今のスノーは普通の説得では効果が無いと判断したサンライズはここまで踏み込んだのである。……自分と大好きな人のファーストキスを奪ってまで……だ。
「スノー、俺はスノーの気持ちを受け入れたよ」
「ッ……」
「気を遣わせるとか、自分はお付き合いするのに相応しくないとか。そういう話は今は一旦無しにして。スノーの本当の気持ちはどこにあるの?」
「私は……私は……」
サンライズのキスで先程まで考えていた余計な事はスノーの中からすっかり駆逐されており、そのおかげで彼女はサンライズに迷いない気持ちで自分の気持ちを話した。
「サンライズの……隣にいたい」
「やっとその気持ちを素直に出してくれたな」
「うん……」
その瞬間、ランボーグが近くに来た影響で大きな音が鳴り響くとその叫び声も聞こえてきた。
「ランボーグ!」
「……ッ!カバトン達が私達を追って……」
するとサンライズはそっとスノーの手を握ると彼女は少し頬を赤くしつつも受け入れる。そのまま2人はランボーグに立ち向かう事に決めた。勿論今度は2人でである。
「スノー、一緒にやろう。俺達2人で連携すればきっと勝てる」
「うん。それと、さっきは私1人で先走っちゃってごめんね……」
「気にするなよ。お互い焦る時くらいあるからな」
サンライズはスノーの謝罪を笑って受け入れる。そして、2人の間には今まで以上の強固で特別な絆ができあがった。
「さ、2人で一緒に倒して……話し合お」
「うん!私も、ちゃんとアサヒ君に気持ちを伝えたいから」
それからスノーとサンライズは今後の関係性を戦いの後に必ず話し合う事を誓い、2人で一緒に新たな一歩を踏み出す事になるのだった。
また次回もお楽しみに。