お風呂上がり事件から少し経ったある日の昼間。またいつものようにバッタモンダーがランボーグを呼び出してプリキュアはそれと交戦していた。
「ランボーグ!」
今回は釣り竿やリールをモチーフにしていた。ランボーグの近くには逃げ回る人々もおり、プリキュアである五人の中のウィングは避難誘導を優先させている。
「ああもう!こんな奴さっさと倒せないのかよ!」
「今は周りの安全を確保するのが先だから……」
「ムーンライズ、イライラするかもだけどちょっと我慢して!」
他の四人はとにかくランボーグの意識を自分達に向けさせる事で人々が襲われないようにした。そのため、反撃する事もできずに完全にランボーグのペースである。
「あははっ!どうした?プリキュア。避けるのだけは上手いな?」
ちなみにバッタモンダーは橋の上に座って高みの見物をしており、ランボーグが優勢のために調子に乗っていた。
「マジでアイツ……」
「ムーンライズ落ち着いて」
「怒ってる場合じゃありませんよ!」
ムーンライズのフラストレーションが溜まる中、オーロラは何とか彼のストッパーとしてオロオロとしながらも止めている。
「えるぅ……」
プリキュアが押され気味のため、離れた場所にいるエルはあげはの腕の中で不安そうな声を上げた。
「心配無いよ」
「プリキュアならきっとどうにかしてくれるから」
「信じよう。皆を」
あげは、ヒョウ、かけるがエルに優しく微笑んで彼女を安心させていく。そして、ウィングが護衛に入りつつ人々を逃す中での事。ランボーグの釣り針が近くの立て看板に命中。それが運悪く母親に連れられて一緒に走っている園児と思われる年齢の男の子へと飛んで行ってしまう。
「ッ……危ない!」
オーロラはそれを見て瞬間移動で割って入ろうとするが、ランボーグの釣り竿が飛んできたために釣り竿の方の対処をせざるを得ず。このままでは男の子は怪我をしてしまう。
「任せてください!はぁっ!」
次の瞬間。男の子に命中しそうな看板をウィングは蹴り飛ばし、彼を救った。
「大丈夫?さ、早く逃げて」
ウィングはそう言って男の子の頭を撫でると男の子は強いウィングに憧れの眼差しを向ける。男の子は近くにいた母親と共にその場から避難。周囲に人がいないかウィングが周りを見渡す中、ウィングの目に一つの光景が映った。
「ッ!!あれは……」
プリキュアとランボーグが交戦するすぐ近くに先程の男の子と同じぐらいの年齢の一人の少女がうずくまって泣いていたのだ。
「パパ……ママ……怖いよ……」
そして、その場所は少し遠い位置からプリキュアを見ていたあげは達三人にも見える場所だったために三人は慌てたような顔になる。
「ヤバっ、あそこ!」
「うん、しかも皆気づいていない……」
その瞬間、ヒョウは一人駆け出していた。すかさずかけるも飛び出す。あげははエルを抱いているので動けない。二人が少女を助けるために急ぐものの、やはり二人が生身なのと距離的な問題で到達までに時間がかかる。
「ランボーグ!」
ランボーグはまた周りに範囲攻撃を仕掛けるために釣り竿を振り回しては薙ぎ払おうとした。
「そんなのには当たらねーよ!」
ムーンライズがそう言うと同時にスカイ、プリズム、オーロラと共に跳ぶと攻撃を回避する。しかし、その回避した攻撃の直線上に女の子がいたため、一同はようやく事態に気がつく。
「あっ!」
「逃げてください!」
スカイが咄嗟に叫ぶが、震えている少女がすぐに逃げられるわけがない。園児のような幼い子なら尚更だ。
「(ダメ……このままじゃ間に合わない!)」
「(でもだからって諦められるか!)」
ヒョウとかけるは全力で女の子を守るために走るが、あと数歩足りない。それどころか今の二人は、女の子に攻撃が当たったらそのまま自分達も巻き込まれるような位置にいる。
「ヒョウ、かけるさん!」
オーロラがそう言う中だった。突如としてムーンライズ、オーロラから小さな光が飛び出すとムーンライズの方はかけるに、オーロラの方はヒョウへと入る。
その瞬間、二人は光のエネルギーに包まれると同時に気がついたら少女の前にまで到達していた。
「「ッ!?」」
更に二人が咄嗟に手を翳すと光によって構成された黄色とミントグリーンのバリアが展開。女の子に向かっていた釣り針の攻撃は弾かれるとランボーグはその衝撃でバランスを崩した。
「ランボ!?」
「な、何?今の……」
「急に何で……」
かけるとヒョウがいきなりの事態に混乱する中、駆けつけたウィングが到着すると女の子を抱き抱えてすぐに避難する。
「この子が最後ですね?」
「う、うん」
「後は皆さんに任せましょう」
「わかった」
ウィングは女の子を安全な場所にまで運ぶためにまた離脱。かけるとヒョウもこれ以上この場にいたらまた巻き込まれるので一旦先程の場所に戻った。
「皆さん!この辺の人達の避難完了です!」
ウィングが女の子を連れて行く傍らでそう叫ぶとようやく逃げるだけしかできなかったプリキュアに反撃のチャンスが巡ってくる。
「待ちくたびれたぜ。でも、ここからは反撃オッケーなんだよな?」
「うん。ランボーグを素早く……」
「うらあっ!」
その瞬間、ムーンライズは飛び出すと今までの苛立ちを全てぶつけるかのようにランボーグへと蹴りをぶつけると近くの土手に衝突させる。
「む、ムーンライズ!?」
「散々好き放題してくれやがって。ここからはお前らに地獄を見せてやるよ」
ムーンライズは先程までの防戦一方から一転。自身の周囲に気弾を大量展開。それからランボーグの周りへと気弾を放つとそれをすかさず追尾機能で包囲させて全方向からの一斉攻撃を仕掛けた。
「ララ!?」
更にそれだけでは飽き足らず。ランボーグへと爆発する気弾での爆撃を空中から浴びせるとランボーグを穴だらけにしてしまおうと言わんばかりの攻撃で蹂躙した。
「殺意高っ……」
「ムーンライズ、やりすぎだよこれ……」
「とにかく私達も!」
オーロラはムーンライズの気弾を援護するように氷雪拳の雪ノ型を使って自身の残像を展開。ランボーグはその残像に気を取られるとすかさずスカイとプリズムによる二人同時のキックがランボーグへと命中した。
「「はあっ!」」
「ラン!?」
「今だよ、ウィング!」
オーロラはランボーグが倒れてできた最大の隙を見逃さない。そのため、すかさず女の子を置いて戻ってきたウィングへと技の発動を促した。
「はい!ひろがる!ウィングアタック!」
ウィングの突撃がランボーグへと命中するとそのままランボーグはどうする事もできずに浄化されていく。
「スミキッタァ〜」
「ミラーパッド、オッケー!」
ランボーグを浄化した後のキラキラエナジーもスカイがしっかりと回収し、その場は収められる事になった。
そんな中、避難した場所からその様子を見ていた男の子と女の子は目を輝かせていた。ウィングに助けられた男の子はウィングに、ヒョウやかけるに助けられた女の子は二人に。それぞれ憧れの目線を向けていたのである。
それはさておき。プリキュアが勝ったため、バッタモンダーは唖然としながら様子を見ていた。また、あげははその場で喜びの声を上げる。
「やったやったぁ!流石プリキュア!」
「えるぅ!」
「ま、このくらい当然ね」
「あはは、でもひとまず無事に終わって良かったよ」
そんな風に平和に話す三人を見たバッタモンダーは怒りの声を三人へとぶつけた。
「おい!そこの外野三人衆!」
「はぁ?」
「えっと……」
「何の用?雑魚バッタ」
「雑魚バッタって何だ口悪女!」
バッタモンダーは自身への悪口を言ったヒョウへと声を荒げてからすぐに取り繕うと負け惜しみを口にする。
「言っとくけどまだ僕は全然本気を出してないからね?」
「………負け惜しみってカッコ悪いよ?」
「んなっ!?」
「あげはさん、その辺にしておこ?相手にするだけ無駄よ。あんな口だけ男なんてさ」
ヒョウがいつもはムーンライズことアサヒへと向ける容赦の無い毒舌をバッタモンダーへと向けるとバッタモンダーは完全に取り乱した様子で怒り狂う。
「お前、あんまり舐めた口で喋ってるとその内後悔するぞ?」
「……させてみなよ?できるものならね?」
「まぁまぁ、ヒョウちゃん。落ち着いて……」
かけるがヒョウを宥める中、バッタモンダーはそんなかけるを見てかけるへとターゲットを移す。
「そこの男も覚悟しておけよ!俺がちょっと本気を出したらお前なんかも一捻りだからな!」
「ええ……」
かけるは完全なとばっちりを受けて半ば困惑。するとあげははかけるへとフォローした。
「アイツ、一人じゃプリキュアに勝てないからって私達に八つ当たりしてるだけだから」
「ぐぬぬ……戦っても無い外野三人衆がイキがりやがって……お前ら、次は覚悟しておけよ!」
バッタモンダーは明らかにカッコ悪い捨て台詞を吐くと指を鳴らして撤退。それを見届けたあげはは呆れた様子で話す。
「だからカッコ悪いのに……。まぁ、さっきの場面。他の二人はともかく私は本当に何もできなかったんだけどね」
「そんな事無いと思うよ。少なくとも、俺はあげはさんがいるおかげで皆は安心して戦えてると思うし。むしろ、さっきの俺は考え無しに飛び出しちゃって逆にやられかけたから」
「それは私も同意です。あの力が急に湧き出てこなかったらきっと私達は自分の身を守るどころかあの子も救えなかったし」
かけるとヒョウが考え無しに助けようと飛び出してしまった自分達の行動を悔やんでいた。
「そんな事無いよ!」
「ボク達こそ、あの場面で先に気がつけずすみませんでした」
そこにオーロラ達五人がやってくるとそれぞれあげは達三人へと声をかけていく。
「あげはさんやかけるさん。ヒョウがいつもいてくれるから」
「私達は安心して戦えるんです」
「……珍しいわね。ムーンライズ。私の事を考えて真剣に言ってくれるの」
ヒョウはいつもとは打って変わって自分をフォローしてくれるムーンライズへとそう話しかける。
「俺を何だと思ってんだよ。……でも今回はヒョウが危険な目に遭ったのは俺達がちゃんと見てなかったせいでもあるからな」
「かけるさんも本当にすみません……」
「良いんだよ。俺達が勝手にやった事だし」
「はいはい。不毛な問答はここまでだよ。戦いも終わったんだし、反省はまたしよっか」
あげはがその場を仕切ったためにひとまず虹ヶ丘家に戻る事に。そんな中。あげはがある事を伝えた。
「あ、そうそう。皆にお知らせがあるんだ!」
「え?」
「俺とあげはさん。今度二人ペアで保育園での保育士の実習があるんだよ」
それを聞いて一同は目を見開く。それはつまり、二人が待ち望んでいた実践形式の実習という事だ。
「あげはちゃん、頑張って!」
「あ、でもかけるさんは大丈夫なの?授業の遅れとか……」
「うん。一応それも含めて今回二人でやる事になったんだ」
「それに、かける君。こう見えて勉強に関してはかなりできる方だから」
実はかける。元々数ヶ月分の遅れがあったにも関わらず、彼の持ち前の地頭の良さと彼自身の勤勉な性格のおかげであっという間に授業内容に追いついてしまったのだ。
「これでもまだ単位落としてないからね」
「……え?嘘だろ!?単位落としてないって……え!?」
「数ヶ月遅れのあの状況から相当巻き返したって事ですよね?」
何気に滲み出るかけるの凄さについて話していた所、ヒョウは一人。小さく声を上げる。
「あ、あのさ」
「ヒョウ、どうしたの?」
「私もその実習……参加しても良い?」
その言葉を聞いた途端。一瞬その場が凍りついた直後、大人組の二人を除いた一同の叫び声が響くのであった。
また次回もお楽しみに。