熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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受け入れ難いヒョウの気持ち

ユキとアサヒが夕焼けの空の下、2人は告白をして無事に恋人になるとキスをして気持ちを確かめ合う。これにより、ユキとアサヒの間に生まれた新たな愛情の絆。それから2人は手を恋人繋ぎにして家へと帰宅する事に。

 

「「ただいま!」」

 

「あっ。ユキさん、アサヒ君おかえりな……ええっ!?」

 

「ソラちゃん、どうし……あーっ!!」

 

ユキとアサヒを出迎えたソラとましろはまさかの展開にいきなり大声を上げてしまう。

 

そして、それは2人の視線の先。恋人繋ぎをして明らかに行く前と距離感が縮んでいるユキとアサヒの姿を見たからである。

 

「ゆ、ゆ、ユキさん!?もしかして……」

 

「あ、アサヒ……ユキちゃんと……」

 

「ああ。お互いに気持ちを伝え合って恋人になったよ」

 

「うん。これからはアサヒ君と恋人の関係になるよ」

 

ソラやましろは2人の気持ちをそれぞれ知っているだけにユキやアサヒが幸せそうに報告するのを聞いて自分の事のように喜んだ。

 

「「おめでとう(ございます)!(お)2人共!!」」

 

「「ありがと」」

 

ソラもましろも今回のお出かけで何かしら関係が進む事を期待していたが、まさかのお付き合いまで発展するとは思っておらず。何がそこまで2人の関係を進めたのかは気になっていた。

 

「アサヒ君、どうやってあのユキさんを堕としたんですか!?」

 

「ユキちゃん、アサヒ君に何をしてもらってお付き合いを決めたの!?」

 

「ええっ!?」

 

そのため、早速ソラとましろは2人へと今回のお付き合いに関する経緯を聞き出そうとする。ただ、いきなり2人に詰められた上に玄関で長々と立ち話をしているのに関しても色々とダメで。

 

「ソラさん、ましろさん。その辺にしてくださいよ。ボク達だってそんな状態になってたら気になりますって。ここから先のことは奥で話しましょう」

 

そのタイミングで玄関でずっと話し込んでいる4人を見かねて出てきたツバサからの指摘を受ける。そのため、ユキ達4人はこれ以上玄関にいるのはダメだと思ったのか。

 

「うっ、確かにそれもそうですね」

 

「あはは……ごめんね、2人共」

 

「はぁ……」

 

ソラとましろの2人はバツの悪そうな顔つきで謝ると大人しく4人で一緒に居間に向かう事に。その際、アサヒは恋愛脳になってしまっている2人にジト目を向けてから前を向くとそこにはツバサの隣……複雑な顔つきで自分の方を向くヒョウが立っていた。

 

「ヒョウ……」

 

「ッ……結局、こうなってしまうんだよな」

 

それからユキ、アサヒ、ソラ、ましろ、ツバサ、ヒョウ、そしてヒョウが抱いていたエルが居間に揃って今回のお出かけ……デートについての話を聞く事に。

 

「そっかぁ……色々と大変だったんだね」

 

「すみません、お二人共。カバトンが出たというのに助けに向かえなくて」

 

ソラ達としてはデート中に出たカバトンとランボーグに気づく事すらできなかった自分達の不甲斐なさを悔やむ。ただ、今回に関しては2人のデートを邪魔しないようにするという目的も絡んだ上での話。

 

それに、ソラ達が出てこないという事に関しても自分達が2人きりでのデートを所望したからの結果なのでソラ達への非は無いと言えるだろう。

 

「ソラちゃん、気にしなくて大丈夫だよ?そもそも私達だけで勝手に迎え撃っちゃったのはこっちだし」

 

「それに、ある意味俺達が付き合えるようになったのはカバトンのおかげでもあるからな」

 

「「「「あー……」」」」

 

アサヒがそう言うとヒョウやエル以外の一同が苦笑いを浮かべる。実際、ユキの気持ちを引き出せたのはカバトンの襲撃の時以降。そのためアサヒとしては不本意ながら、ユキとのデートが明確に好転したのはカバトンの出したランボーグの能力に苦戦した後。

 

そのため、カバトンの襲撃があったからこそユキの気持ちを引っ張り出す事ができたと見て取ることもできる。

 

「それにしても、アサヒって意外と大胆なやり方するよね。ユキちゃんがアサヒに気が無かったら色々危なかったかもよ?」

 

「ッ……い、言われてみればそうかもな」

 

アサヒは今日一日の事を色々振り返ると自分がユキに対してやってきた事はユキの気を引くためとはいえかなり大胆だったのではないのかと思ってしまう。

 

「でも、色々あったみたいですけど終わり良ければ全て良しです!ユキさんとアサヒ君。2人共こうして幸せそうな顔を私達に見せてくれるだけでも今回のデートには意味があったと思います!」

 

「あはは……それなら良かった」

 

「うん……あ、でも私。アサヒ君と彼氏彼女になったからと言って皆との時間を減らすなんて事しないよ」

 

すると、ユキはあくまでアサヒと付き合えたとしても他の皆との時間を目に見えて減らすという事はしないと宣言。

 

「俺もそうだな。今までも十分ユキとは長い時間一緒にいれるし、ソラ達との時間も大切だからな」

 

「ッ……でも、どうしてもお二人だけの時間が欲しかったらお話ししてくださいよ?」

 

「うんうん!私達だって2人の恋人としての時間を邪魔したくないし」

 

アサヒも元々ユキとの時間に関してはこの家で同居している時点で十分であったために、ソラ達に特段一緒にいる時間を長めにさせてほしいとは言わなかった。

 

「ボク達もできる限りの努力はします。ユキさんとアサヒさんが特別な関係になった以上、ボク達にだって2人の気持ちに合わせる義務がありますから」

 

「えるぅ!」

 

ただ、そうなるとどうしてもソラ達としては自分達に付き合わせるようで申し訳ないのか。ソラ達もユキとアサヒが恋人として何かをしたいと言い出した時は可能な限り合わせる事にした。

 

そんな時、ソラ達がユキとアサヒのお付き合いを認める旨を話しているとこの場にいるメンバーの中でただ1人。浮かない顔をする者がいた。

 

「ッ……」

 

「ヒョウ、あなたも大丈夫ですよね?」

 

ツバサがその者……ヒョウへと確認をするように話しかけると彼の反応は芳しい物とは言えず。それどころか、行き場のないやるせなさを隠すかのように拳を強く握りしめる。

 

「……ヒョウ?」

 

「ヒョウ君?」

 

ましろもヒョウに声をかけるとアサヒはどう声をかけようか迷う。ヒョウの葛藤は自分が原因なのはもう分かりきった事。それなら彼と話を付けないといけないのは自分だと思ったのだ。

 

「ヒョウ、あのさ……」

 

「待って、アサヒ君」

 

アサヒは自分が原因でヒョウの気持ちを乱しているのならと自分がヒョウと話をしようとした。

 

しかし、そんな時にアサヒに待ったをかけたのはユキの方で。彼女はアサヒより自分が行った方が良いと思ったのか、ヒョウの前に立つ。

 

「ヒョウ、話があるんだけど良い?」

 

「ッ……ユキ姉」

 

ヒョウはユキに話しかけれて少し慌てたような顔になると恐る恐る辺りを見渡す。そこにはユキとアサヒのお付き合いを受け入れるムードの中で自分だけ我儘を言っているような状況だったために気不味い顔を浮かべた。

 

「ヒョウ、私と一緒に私の部屋に来てくれる?」

 

「えっ。で、でも……」

 

「良いから、行くよ」

 

珍しくユキがヒョウの手を掴むと連れて行く。その際にユキは違和感覚えた。

 

「(ヒョウの腕……思ったより細い?それに、体重も何だか……ううん、今はそんな事よりも)」

 

ユキはヒョウを連れ出す際に思ったより抵抗が小さかった事に違和感を感じるものの、あまりそういう事を言うべきでは無いと思ったのか。それを口に出さず。

 

2人はアサヒ達と別れてユキの部屋に入ると2人共ユキのベッドに座って向き合う。

 

「ヒョウ、私がアサヒ君とお付き合いする事……本当は嫌だったりするの?」

 

「ッ……別にそういうわけじゃなくて」

 

「じゃあ、何で?」

 

ユキからの目線はそれなりに強かった。このような目をヒョウに向けるのは自分の正体を明かす前。アサヒと言い争っていた際ユキが本気で怒った時くらいである。

 

流石にその時と同じレベルというわけでは無いが、それでも明らかにユキからの強い憤りに近い感覚は感じられた。

 

「まだ気持ちが整理できないんだ。アサヒとユキ姉が付き合うって事を」

 

「……アサヒ君は、ヒョウの中ではそんなに信用が無いの?」

 

「ち、違……そんな事は」

 

ユキの言葉にヒョウはかなり気不味い顔になってしまう。このままでは普通に話すことも無理だと思ったユキは気持ちを一旦落ち着けて話す。

 

「アサヒ君は、ヒョウが思ってる程嫌な男の子じゃないよ。好きになった私目線だとあんまり信用ないかもしれないけど……私の目を差し引いても、ソラちゃんやましろちゃん。ツバサ君はお付き合いを認めてくれてる。それはわかるよね?」

 

「……うん」

 

ヒョウはユキの問いに小さく頷く。流石にその事実はわかってくれているらしい。

 

「ヒョウ。このままじゃ、私もアサヒ君も安心してお付き合いができないの。……だから、言いたい事があるならちゃんと言ってほしい。それでもし別れろって言われても別れるなんて事はできないけど……。ヒョウの気持ちを聞かないと私、どうしてあげれば良いかわからない」

 

「ッ……」

 

ユキはヒョウを心配したような様子であり、彼女はどうにかしてヒョウの気持ちに向き合いたい様子だった。ヒョウはそんなユキを見て罪悪感が湧き上がってくる。あれだけ幸せそうだったユキがこんなにも曇っている顔なんて見せたら……ヒョウも言わざるを得なかった。

 

「ユキ姉……俺は……ユキ姉がアサヒとお付き合いする事を否定したいわけじゃない。邪魔をしたいわけじゃない」

 

「うん」

 

ヒョウがゆっくり自分の気持ちを吐き出し始める中、ユキは静かにその言葉を受け止めていた。

 

「ただ、ユキ姉がどんどん遠い場所に行く気がして怖いんだ。俺だってユキ姉があんなに幸せそうにしている所、初めてで。自分がユキ姉の事を祝福しないといけない立場なのもわかってて」

 

ヒョウは寂しい気持ちを話しているからか。声は震え、自分でもどうすれば良いのかわからないような様子だった。

 

「でも、俺は……小さい頃にユキ姉に助けてもらった時の背中が……最近どんどん遠くなるのが辛くて。だから初めてアサヒの事を見た時もそんなユキ姉の側にいるアサヒが羨ましくて」

 

「そっか……私のせい……か」

 

「ッ……ち、違う。ユキ姉のせいなんかじゃ!?」

 

ヒョウは自分の我儘に付き合わせたせいでユキを落ち込ませたと思ったのか。慌ててユキの方をフォローしようとする。

 

「大丈夫。それはちゃんとわかってるから」

 

「良かった……」

 

ヒョウは自分のせいでユキがまた今よりもっと落ち込んでしまう事態にならなかった事に安堵の顔を浮かべる。すると、ユキはヒョウの気持ちを聞き届けたからか。いつもの優しい顔に戻るとヒョウへと話す。

 

「ヒョウ、私はそんなすぐに遠くにはいかないよ。確かに私はアサヒ君とお付き合いする事にはなるけどさ」

 

「うん……」

 

ヒョウはユキの言うことに頷くが、やはりどうしても気持ち的に辛そうである。

 

「……もしヒョウが辛いって思った時。できる限り寄り添えるようにする。アサヒ君もそのくらい許してくれるはずだから」

 

「……うん。ごめん、ユキ姉」

 

ユキにそう言われてヒョウはもう一度頷く。そんなヒョウの頭をユキは優しく撫でた。それから少しして。ヒョウは心の中で何となく気持ちの整理がついたのか、ユキの隣で立ち上がる。

 

「ユキ姉、寄り添ってくれてありがと。それと、迷惑かけてごめんなさい」

 

「うん。じゃあ、戻ろうか」

 

それから2人が居間に戻るとそこにはアサヒ達が待っていた。そして、ヒョウは居間に入るとアサヒの元に行く。

 

「……アサヒ、さっきは雰囲気を壊してごめんなさい」

 

「え?あ、ああ」

 

ヒョウはまずアサヒへと素直に謝る。自分が折角の空気感を壊したという事実は変わらない。まずはそこへの謝罪だった。

 

「……それともう一つ」

 

「もう一つ?」

 

アサヒはヒョウが続けて何かを言いたそうな様子だったので首を傾げつつもその話を聞く事にした。

 

「その、アサヒ。ユキ姉を虐めて泣かせたら……絶対許さないからな」

 

「ああ……大事にするって約束する」

 

ヒョウはユキがアサヒと付き合いたいというのは彼女自身の意思であり、自分にはどう頑張っても変えようが無い物である事を改めて確認。それならせめてユキがアサヒと幸せに過ごすのを願うくらいならやっても良いだろうと考えていた。

 

そして、ユキの事をアサヒにお願いするという意味も込めてこうしてヒョウはユキの事をアサヒへと頼んだ。それを聞いてアサヒはユキと話してもう大丈夫と感じ、それに応える形で頷く。

 

「……それじゃあ、ヒョウもオッケーを出してくれたって事で。ユキ」

 

「うん。改めて、私達はこれから恋人として歩んでいくから」

 

「はい!」

 

「えるぅ!」

 

「ヒョウ君もオッケーを出してくれて良かったよ」

 

ヒョウが悪くしてしまった空気が戻った所でもう一度場の空気はユキとアサヒのお付き合いを歓迎するものに変わる。こうして、ユキとアサヒの関係性は虹ヶ丘家でも公認の物となった。

 

そして、ユキとアサヒは新たな関係になったという喜びを胸に噛み締める事になる。

 

 

その頃、ソラシド市から遥か遠く離れた場所。そこには草むらの中を掻き分けるように一匹の小さな生命体がピョンと姿を表す。

 

「ナノ〜!」

 

その生命体は紫の球体に黄色い釣り目。大きな口が描かれた簡素な顔でその体の両側から蝙蝠の翼が生えていた。それらを一言で表すなら悪魔をデフォルメしたかのような姿である。

 

「ナノ……」

 

そして、その小さな悪魔のような妖精……ナノビョーゲンは目を赤黒く発光させると先程までただの妖精のような“ナノ”という言葉しか発していなかったのがいきなり普通の人間語を流暢に話す。

 

「ふふっ……もうすぐだ。もうすぐ俺の肉体が完成する。しかも誰の力も借りずに、だ。……オレの父さんの無し得なかったビョーゲンズが暮らしやすい世界……作り上げてみせる」

 

ナノビョーゲンはそう呟くと赤黒い発光が消えてただの黄色い瞳に戻るとまた何処かへと消えていく。

 

そしてこのナノビョーゲンこそが、これからユキ達の行手に立ちはだかる事になるのだが……。それはまだもう少し先の話だ。




また次回もお楽しみに。
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