時は少し遡ってムーンライズとヒューストムがいなくなった直後。ランボーグが先制攻撃の水鉄砲を放ってくる中、オーロラがバリアを展開すると攻撃を防いだ。
「はあっ!」
「チッ。ランボーグ、さっさとアイツらを倒せ!」
バッタモンダーがランボーグに更に指示を出すとランボーグの攻撃に四人は散開。ひとまずオーロラが小脇に近くにいたらんことたけるを抱えると後ろに下がる。
「とにかく、ランボーグを止めましょう」
「この二人は私が安全なところに連れてくね!中の皆も安全な場所に!」
オーロラがそう叫ぶと保育園の中にいる園児達も中の先生が外へと避難させ始めた。
「おい、観客がいなくなったら意味無いじゃねーか。逃すな!」
バッタモンダーはランボーグに観客である園児達が逃げてしまわないようにまずはらんことたけるを抱えたオーロラへと水鉄砲を放つ。しかし、それが命中した瞬間には姿が薄く溶けて消えてしまう。
「なっ!?アイツら、どこに……」
バッタモンダーが驚く中、オーロラは氷雪拳の雪ノ型の能力で離脱するとひとまず園の入り口方面へと移動。そのタイミングで中にいた園児達が先生と共に逃げてくる。
「二人もすぐに逃げて」
オーロラはそこで二人を下ろすとそう言うが、たけるは嫌がったように声を上げた。
「えーっ!ぼくプリキュアのかつやくがみたいのに!」
「私も活躍を見てくれるのは嬉しいけど、そのためだけに二人を危険には晒せない。だからごめんね」
オーロラはしゃがんで優しく言葉をかけるとたけるは膨れっ面になりながらも頷き、らんこと共に園児や先生を追いかけていく。そして、オーロラは振り向くとランボーグへと向き合った。
「皆!行こう!」
「ランボーグ!」
ランボーグが水鉄砲を更に放つ中、それはオーロラが展開したバリアで自らを防ぎながらオーロラ自身へと注意を引き付けさせる。
「プリズム、今だよ!」
「はあっ!」
オーロラの方にランボーグの目線が釘付けになった瞬間。そこを狙ってプリズムが気弾を命中させていく。
「チャンスです!」
ランボーグが上から気弾を喰らって怯むとそこにスカイが飛び出して横から拳を叩き込む。
「ラン!?」
その一撃でランボーグはバランスを崩すとそこにウィングが空中からのドロップキックを命中させて地面へと叩きつけさせる。四人による連携でランボーグが地面の上で倒れ込む。その様子を見てあげはは傷ついたかけるやヒョウの元で二人を気にしつつ手応えを感じていた。
「やった!」
その時、一つの影がコッソリと保育園の入り口方面に戻ってきていた。オーロラに逃げるように言われたたけるが我慢し切れずに戻ってきてしまったのだ。
「プリキュアのつよいところをみるんだ」
その時、たけるの服の袖を後ろから引っ張る子がいた。それは、たけるがいない事に気がついて後を追ってきたらんこである。
「ダメだよ。プリキュアににげてっていわれたのに……」
「そんなこといっても、せっかくプリキュアをみるチャンスじゃん」
らんこが気がつかれないように小声で何とかたけるを連れ戻そうとするものの、たけるはらんこの注意を聞き流してしまう。
「ねえ、バッタモンダー。見せたい現実ってこれの事?」
そんな中、あげはは倒れて目を回すランボーグを見てバッタモンダーへと指摘をした。しかし、今回はバッタモンダーもムキにならず。冷静に答えを返す。
「まさか。観客が君だけになったのは残念だけど、今から見せてあげるよ」
バッタモンダーが指を鳴らす中、ランボーグはそれに応えて起き上がる。その直後、ランボーグの目線はプリキュアでは無く保育園の外の茂みにいるエルへと向くとターゲットとして捉えた。
「あっ!」
「あんまり弱い者虐めは好きじゃ無いけど……やっちゃえ」
バッタモンダーがそう言うとランボーグからの鉄砲がエルへと放たれた。エルは慌てて自分に飛んできた水鉄砲を躱すが、そう長くは保たない。
「プリンセス!」
「「エルちゃん!」」
「私も……」
スカイ、プリズム、ウィングが急いでエルの方をカバーするために移動する中、オーロラも能力である瞬間移動を使って追いかけようとする。しかし、オーロラは移動する寸前にバッタモンダーの笑みを見た。そのためにオーロラの直感が何かあると警報を鳴らす。
「待って、皆!行ったらダメ!」
……だが、オーロラはその直後後悔する。何故なら、これから起きるのは自分の瞬間移動及び、防御が間に合っていれば防げた事態だという事に。
「ランボーグ!」
ランボーグから放たれた黒いエネルギーことアンダーグエナジーが三人のプリキュアへと襲いかかるとそれは三人へと直接ダメージを与える事はせず。ただ三人を黒いアンダーグエナジーによるエネルギードームの中に閉じ込めたのみだった。
「皆!」
「プリキュア!」
「ッ……」
あげはやたける、らんこが息を呑む中、中に閉じ込められた三人のプリキュアは何とか脱出しようとする。
「閉じ込められた!?」
「こんな物!」
「くううっ……そんな、プリズムショットが出せない!」
三人の中で一番パワーがあるスカイが殴ってもびくともせず、プリズムがゼロ距離でのプリズムショットをぶつけようとするが、そもそもエネルギーそのものが発生しないためにどうする事もできず。
この状況下では助走が必要となるスカイとウィングの技も使えないのに加えて、スカイとプリズムの合体技も試みるがやはり上手く発動できない。
「あははっ!それはアンダーグエナジーを濃縮した球体さ。君らの力は使えない。脱出は不可能さ」
「……中からがダメなのなら私が外から!」
オーロラは瞬間移動で一瞬にしてドームの前に来るとフルパワーで技を発動させる。
「ヒーローガール!オーロラミラージュ!」
オーロラが五人に分身するとそれがドームを取り囲んで星型の紋章を描き、地面からオーロラ色のエネルギーが照射された。
「はぁあっ!」
「無駄無駄。その程度の出力じゃあ壊せないよ?」
バッタモンダーの言葉通り、オーロラの全力の浄化技でも破壊ができない。
「そんな……」
「オーロラでもダメだなんて」
「もうこうなったらムーンライズとの合体技しか……」
「おっと。それは無理な相談だな」
その瞬間、保育園の屋根の上に緑の竜巻が降り立つとヒューストムが戻ってきてしまった。
「ヒューストム!?どうして……ついさっきムーンライズと一緒にどこかに行ったはずじゃ……」
「ムーンライズはどうしたの!?」
スカイやプリズムがそう言う中、ヒューストムは手に持っていた傷だらけのアサヒを投げ捨てるとオーロラが慌ててそれを抱き止める。
「キュアムーンライズなら話をした後に俺が文字通り秒殺した」
「ッ、そんな……アサヒ君!しっかりして!アサヒ君!目を覚まして!」
オーロラが悲痛な声でアサヒを起こそうとするが、アサヒはかなりのダメージなのかピクリとも動かない。
「安心しろ。殺してはいない。ただちょっと眠ってもらっただけだ」
ヒューストムの言葉にオーロラは唇を強く噛み締めて悔しそうにする。 そんな中、その顔を見たバッタモンダーはプリキュアを煽るように話し始める。
「そう!それだよそれ!その顔が見たかったんだぁー!プリキュアーァアっ!」
嬉しさのあまりか顔芸まで披露するバッタモンダー。彼は勝ち誇ったかのようにあげはを指差して更に煽る。
「どうだ外野の女!これで僕の強さがわかっただろう?後は残ったキュアオーロラをどうにかしてプリンセスを手にすれば完全勝利さ」
オーロラは勝ち誇るバッタモンダーの話を聞きながら自分の判断ミスを呟いた。
「さっきの場面……私が躊躇せずに移動して先にバリアを展開してたら……あの攻撃は防げたかもしれない……。なのに、なのに私は……」
「オーロラ、今は気にしたらダメです!それよりもランボーグを……」
ウィングの言葉にオーロラは気持ちを取り戻すと一度アサヒを安全な場所に寝かせてから構える。
「こうなったのは私の責任……だから、私が絶対に何とかする!」
「おいおい。この絶望的状況から逆転できんのかよ」
するとヒューストムは一瞬にしてオーロラの前に移動するとオーロラが反応するより早く目を光らせてオーロラの動きを強制停止させた。
「なっ!?」
「はい、お前も無力化完了」
「そんな……体が動かない……どうして……」
「ムーンライズにもかけた技でね。これを喰らったら空気圧によって身動きが取れなくなる」
「……でも、それは私には効かない!」
その瞬間、オーロラは瞬間移動でその場から消えるとヒューストムの背後に出てきて蹴りを振り抜く。ヒューストムの技は対象の体へと空気圧をかける事でその圧力によって動きを封じる技。対象がその場から急に消えれば、その地点に密集した空気は抑える対象が無くなるのですぐに露散してしまう。
「はあっ!」
「……遅い」
しかし、ヒューストムにとってオーロラの瞬間移動は防げなくても攻撃までのモーションの間に対応する事は可能なわけで。
「ッ、そんな……」
オーロラの蹴りはヒューストムが手で簡単に受け止めてしまう。オーロラはすかさず気弾でヒューストムを追撃しようと周囲に展開するが、それが放たれる前に真上にオーロラが投げられるとヒューストムは後追いで追いついてから目に見えない速度で拳をぶつけた。
「うっ!?きゃああっ!」
オーロラはあっという間に五発程殴られると地面に撃墜されてしまう。彼女はたったそれだけの攻撃でかなり痛みを感じたのか、息を荒げていた。
「はぁっ……はぁっ……何で、前に戦ってからそんなに時間が経ってないのにどうしてこんなに強いの?」
「ふん。それはお前の体に直接響くように拳をぶつけたからな。今まではただ殴っていたのみだが、今の俺は自身の拳に体重移動も加えたより強いパンチを今まで以上の速度で打ち込んでいる。更に風の力で空気を振動させてよりお前の体へのダメージを倍増させたんだ」
ヒューストムの戦闘能力がこの短期間で上がった理由。それは、彼が自分の持つ特性を更に活かすトレーニングを積んだからだ。今までは自分の素のスペックに任せるのみで所謂才能に頼り切るタイプの戦闘スタイルだった。
その後、キメラングと共闘した時に教わったアドバイスを元に自分の力をより引き出す方向でトレーニングを彼は重ねた。その結果、自身の持っている能力の限界を更に上回る戦闘力を手にしたのだ。
「でも、こんな所で……負ける……わけには」
オーロラは何とか気合いで立ち上がると歯を食いしばって必死に痛みに耐えながら構えた。
「やっぱりすぐには諦めないか。でも、俺との差は明白。諦めな」
「嫌だっ!……私だって、わかってる。今の私なんかで勝つのは絶望的だって。それでも、私にだって譲れない物があるの!」
「チッ……ユキのくせに……あの時俺に恥をかかせたくせに……」
「……え?」
オーロラが目を見開く中、ヒューストムの目線がある方向に向く。そこにいたのはプリキュアがやられる姿を見て混乱するたけると恐怖に震えたらんこだった。
「そんな、さいきょうのプリキュアがこんな……」
「こわいよ……だれか、たすけて……」
その二人を見た時、ヒューストムは不気味な笑みを浮かべると手を翳す。オーロラはすかさずそれを止めるためにヒューストムの手へと掴みかかる。
「ダメッ!止めて!」
「おいおい、今のお前なんかで止まると思うなよ?」
ヒューストムは掴まれた手に竜巻を纏わせるとオーロラはその風でジワジワと体力を奪われていく。
「ううっ……」
「あの二人は君が逃げろと言ったのに戻ってきた愚か者だよ?大人しくその手を離せばお前はあの二人の代わりに痛みを受けずに済むのに馬鹿かな?」
「それでも……私は、あの二人を守る!そのための、私の力だから!」
しかし、オーロラの踏ん張りも虚しく、更に出力を高めたヒューストムの風に耐えきれずに吹き飛ばされてしまうとそのままたけるとらんこの前に叩きつけられてしまう。
「がふうっ!?」
「プリキュア……」
「オーロラ!」
「そんな……」
オーロラは傷だらけで何とか目を開くと二人の方へと痛みで震える体を何とか動かして小さく声をかける。
「お願い……逃げ……て」
そのままオーロラは力無く倒れると変身解除。そのままユキの姿で気を失ってしまう。
「ユキちゃん!」
プリズムの悲痛な声が聞こえる中、プリキュアが目の前で負けて気絶する様を見せられたたけるは腰を抜かしてしまう。らんこも目に涙を浮かべてその場でうずくまってしまった。
「あははっ!ヒューストム、よくやった。これで邪魔者はいなくなったぞ。……次はそこにいる観客達に絶望してもらおうか」
バッタモンダーは下衆な笑みを浮かべながらランボーグに二人を襲わせようとする。その瞬間、あげはが急いで割って入ると手を広げた。
「この二人には絶対に手を出させない!」
「お前一人で何ができるってんだ」
「いや、一人じゃない!」
「三人よ!」
そこに先程まで倒れていたかけるとヒョウが駆けつけるとあげはの隣に並んで手を広げる。これにより、非戦闘員である三人がヒューストム、バッタモンダー、ランボーグへと立ち向かうのであった。
ちょっと中途半端かもですが今回はここまでです。それではまた次回もお楽しみに。