エルのホームシック問題を解決してから数日経ったある日の早朝。いつもならソラやアサヒと一緒に出かけるユキは一人で玄関口に立っていた。
「……ふぅ……。今日も……やろう」
その顔には疲労が滲んでいたが、それでも構わず走り出すユキ。腰には給水用のペットボトルが装着されており、それはちゃんと満タンだった。
「(この前のような醜態なんてもう晒したらダメ。……皆を守るなんて覚悟を決めておいて、あんな程度しか戦えないなんて……もう嫌だ)」
ユキは責任感を感じたような感情を無理矢理自分に言い聞かせるように呟くとランニング前から疲労感が既に体を襲っているものの、構う事なく走り出した。
さて、そんな彼女が出てから時間が経過。薄暗いソラシド市の街中では二人の軽快な息遣いが響いていた。走っているのはソラとアサヒである。やはりスタートのタイミングが違うからか、ユキとはバラバラだ。
それから二人はランニングを続けるとソラシド市を一望できる高台に到着するとソラは一人、地平線から覗いた太陽に向かって挨拶をする。
「おはようございます!」
そんな中、前だったら完全に置いて行かれていたアサヒがソラの近くで息を整えていた。
「ふうっ……少しずつだけどソラのペースにも慣れてきたぞ……」
「ふふっ、アサヒ君もナイスファイトです。後は……」
「ソラちゃ〜ん!」
ソラが先程まで自分達が走ってきた道を振り返るとそこに一つの影が見える。そこには一人遅れて走っていたましろがヘトヘトな状態で到着した。
ましろは元々運動が苦手である。そのため、二人に合わせて走るのも一苦労なのだ。そのため、二人はましろができる限り自分達を見失わないように合わせて走った。
「大丈夫ですか?」
「見ての通りだよ」
「ったく、ましろはタダでさえ運動が苦手なのにこんな無理して……」
「あはは……でも、ランニングして体を鍛えたら少しは三人のヒーロー達の役に立てるかなって。でも……千里の道も一歩からだからね」
「それってどういう意味ですか?」
ソラの質問にましろは水分補給をすると疲れ切った彼女の代わりにアサヒが質問の答えを返す。
「毎日コツコツ頑張らないとダメって事だな」
「……良い言葉です!」
ソラは言葉の意味が気に入ったのか、いつも持ち歩いているヒーロー手帳とミラージュペンを出すと早速ことわざをメモした。
「教えられた事をメモまでするってやっぱりソラって真面目だな……って、ん?」
アサヒが目を凝らすとメモに書いてある文字は何と平仮名だった。そして、続け様にそれを見たましろと共に二人揃って驚きの声を上げた。
「「えぇ!?」」
「ソラちゃん、いつの間に覚えたの!?」
「そうだよ、俺達の世界の言葉をちゃんと書いてるなんて……」
この世界に来たばかりの頃なんてこの世界の言葉を知らなかったのだ。そのため、いつの間にか言葉を習得していたことに二人共唖然とする。特にましろは手にしていたペットボトルから水が飛び出すほどに強く握ってしまっていた。
「一日五文字ずつ。毎日コツコツです!わからない時はユキさんと教え合ったりもしています」
「そうなんだね!」
「そういえばユキもここ最近俺に本を貸して欲しいって言ってたけど、ちゃんとこっちの世界の文字とかを勉強してるんだな」
どうやら、ユキもソラもどうにかしてこちらの世界に馴染もうとしているらしい。するとましろは二人が努力する様を見てある事を考える。
「私も毎朝ランニングを続けたらソラちゃんみたいに強くなれるかな?」
ましろからの言葉を聞いたソラは小さく首を横に振る。そんな彼女を見るとましろはソラから自分はどれだけやっても強くなるのは厳しいのだと才能の差を感じ、残念そうな顔をした。
「だよね……」
しかし、ソラはそんなましろの気持ちとは裏腹に違う事を考えていた。そのためにましろを励ますべく微笑みかける。
「いえ、そうでは無くて……ましろさんは今のましろさんのままで良いんです」
「……ソラの言う通りだ。ましろは優しいし、今のまま無理に強くなる必要は無いと思う。ただ、ましろが強くなりたいって言うのなら俺もそれを尊重するよ」
それを聞いてましろは少し驚くものの、今の自分でも大丈夫と言われて少し安心した気持ちになる。ただ、そんな中でソラの顔はふと深刻そうな物に変わるとこの場にいないユキの事を話し始めた。
「……ただ、やっぱり最近のユキさんが心配になります」
ソラの言葉にましろやアサヒも同意するように頷く。それは今ユキがこの場にいない事も関係していた。
ユキはここ最近、ソラ達よりも早くにランニングに出かけている。しかも、帰ってくる時間もソラ達より遅い。ユキがランニングにおいて手を抜く事は無いと断言できる。そのため、間違いなくランニングで走る距離を伸ばしているのだろう。
「ランニングだけじゃありません。自由にできる時間は少しでも強くなろうとトレーニングばかりやるようになって。……幾らユキさんが体力や根性を持っているからって、あんなにやってたらいつか……」
そう言って不安な顔をするソラ。実際、ここ最近のユキは頑張り過ぎていた。自分の自由時間の多くをトレーニングに割いて体へと負荷をかけ続けている。ただ、幾ら何でも中学生の未完成な肉体にそこまでの過負荷をかけるのは危険だ。
「……ユキさん、昨日も廊下ですれ違う時に相当疲れた顔をしてて。このままじゃ」
ソラが今のユキは精神的にも肉体的にも危険だと考えたその時。近くから荒い息が聞こえてくると一人の少女がフラフラとした足取りで走ってきていた。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
それは噂をしていたユキである。そんな彼女は顔を真っ赤にして足取りもフラフラとおぼつかない様子で走っていた。
「ユキさん!?」
「おい、大丈夫か!?」
「みん……な……うっ」
ユキがアサヒ達に気がつくと近づいてくる。しかし、あと少しという所でフラリと足がついて行かずに倒れそうになった。そんな彼女をアサヒが慌てて支える。
「ユキ、お前……」
「はぁ……はぁ……はぁ……大丈夫……このくらい……何ともない」
アサヒはユキを抱き止めて改めて確認すると彼女の体は汗だくであり、両脚はもう力が殆ど入らないとばかりにガクガクと震えている。この様子だと先程までユキは相当無理をして走っていたのだろう。
「そんなわけあるか!このままじゃ、本当に死ぬぞ!取り敢えず、ベンチで……」
「良い、そんな必要無い……」
アサヒはどうにかユキを休ませるべくベンチに連れて行こうとする。その瞬間、ユキは息切れしているにも関わらず慌ててアサヒの腕を跳ね除けた。
「え……?」
「大丈夫……はぁ、はぁ……私は平気……だから休まなくて良い」
その言葉にアサヒもましろも絶句。ここまで来ると今のユキはもう何かに取り憑かれているようにも見えてきた。そんな彼女がランニングに戻ろうとするとソラが立ちはだかる。
「ソラちゃん……ランニングするから……退いて」
「……良い加減にしてください!ユキさん、今の状況わかってるんですか!?」
「……え?」
ユキが目の前にいるソラがかなり怒っていることに違和感を感じる。そして自分の体をふと見た。そこには両脚が震え、体中が汗でベタベタになっている事に気がついた。
「あ……れ?いし……きが……」
そして、自分の体が疲れ切っていると自覚。同時に一度に凄まじい疲労感が体を襲うと同時に崩れ落ちて気絶してしまった。
それから暫くして。ユキが目を開けると何かの車両の中にいた。隣では自分の事を心配そうに見るましろもいる。
「う……ここは……」
「タクシーの中だよ」
「たく……しー?」
ユキはこの世界に来てから初めて乗る乗り物に困惑していると同時にましろに詰め寄られた。
「どうして……どうしてあんな無茶をしたの?」
ましろの顔はとても深刻そうな目をしていた。彼女にはユキが何故ここまでして無茶をやらかしたのかが理解できなかったのだ。尚、ここにいないソラやアサヒは帰りのランニングをしつつ帰宅中であった。ましろはユキの付き添いで乗っている。
「この前、私はランボーグ相手に負けたでしょ」
「……え?」
ましろは言っている意味がわからなかった。あの時確かにユキはランボーグ相手に劣勢だったものの変身解除には至ってないので完全に負けては無いと思ったのだ。
「……あんな、あんな情けない姿を……もう見せたく無いの。役立たずだって、他の人から思われたく無くて」
ユキからの言葉にましろは驚く。他人からの目をそんなに気にしないといけない理由がわからなかった。するとユキは弱々しい声で話を続ける。
「私、昔ね……自分が弱いのを理由に友達から責められたの。……私はそのまま友達に捨てられちゃった」
「ッ……」
ましろはユキの話を聞いて絶句する。まさかそんな酷い事をする人間がいるとは思わないからだ。普通に考えてそのような事をする人間など最低である。しかももっと驚いたのがその時のユキの考え方だ。
「……でも、そうなったのは私が弱かったから。だからあの人達は何も悪くない。悪いのは全て私。私にもっと力があったらきっと普通に接してくれたはずなの」
そう言ってユキは悔しそうに涙を流す。ましろはユキからの説明を聞いて怒りを覚えた。ユキにこんな考えを植え付けた人達が許せない。ましろは本来心優しいのだが、それでも今回の事ばかりは許容できないだろう。
「最低だよ….…こんな弱い私なんて。ましろちゃん達も無理に私を庇わなくて良いよ。今の私に庇う価値さえも無いから」
「ユキちゃん……何で……そんな……」
ましろはユキがあまりにも自分を卑下するのを聞いてどうしようもできなかった。彼女にどう声をかければ立ち直ってくれるか、全くもって見えなかったのである。
そして、それと同時に思い至る。ユキがプリキュアになってランボーグを浄化したあの時。ユキが相当喜んでいた理由はここにあったのだと。
「あ、そろそろ着くね。ユキちゃん、少し座ってて。色々と済ませないとだから」
ましろはタクシーの料金を支払う。ましろの財布の中身は何とか足りたために降りるとユキの方の扉を開けてから彼女に肩を貸した。それからどうにか家に到着すると遅れてソラとアサヒも到着。
ランニングに行った全員がシャワーを浴びて汗を流してから朝食ができるまでの間にユキはソラに叱られた。
「あんなに無理して……私達皆心配したんですよ。わかってるんですか?」
「でも、私。弱いんだよ?強くなるために死ぬ気で頑張らなかったら……いつかきっと」
「お二人はユキさんが思っている人達みたいに冷たくありませんよ?」
「それは……そうだけど」
ソラからの正論にユキは悩んでしまう。……ユキもちゃんとわかっていた。二人はかつて自分を虐めた人達とは違うのだと。それでも、ユキにはどうしてもかつての恐怖心が残ってしまっていた。
「ユキさん、アサヒ君とましろさんは絶対に裏切りません」
「そんな都合の良い事……あるのかな」
「私はそんな気がします」
ソラに言われても尚、ユキはどうしても信じ切る事ができなかった。ユキにとって幼い頃からずっと一緒にいたソラや、ソラの家族以外の人間を完全に信頼するのは難しくなるくらいにユキの心は追い詰められていたのである。
「……二人共、ご飯できたよ」
「はい。今行きますね。ユキさん」
「……うん」
ましろがご飯の完成を知らせに来たために二人は話を一時中断。朝食を食べるために席に着く。しかし、ユキはかなり落ち込んだ様子でご飯になかなか手がつかない様子だった。
「ユキちゃん、食べないと力が出ないよ?」
「わかってる……でも……」
ユキはそれからようやくご飯に手をつけると食べ始める。だが、やはり気持ちは晴れない。少ししてご飯を食べ終わる頃。アサヒがエルにミルクをあげていた。
「ぷはあっ!」
「良かった……俺があげてもちゃんと飲んでくれた」
「あはは……アサヒ、緊張し過ぎだよ」
するとそんな時、一台の車が虹ヶ丘家へとやってくる。その車は黄色いハマーであり、そこから降りた人影はウキウキな様子で虹ヶ丘家のチャイムを押した。
「あれ?こんな朝早くから誰だろう?」
「私が行く……ああっ!?」
虹ヶ丘家の中に響くチャイムの音。ユキは自分が行かないといけないと思って立つと歩こうとした瞬間、足の力が抜けてよろけてしまう。どうにか近くの椅子を掴んで転ぶのは免れたが、まだ体力が十分に戻ってない様子である。
「ユキ!?」
「無理したらダメだよ!」
慌ててアサヒとましろがフォロー。それからユキを着席させると代わりにソラが出ていった。それから少しして。ましろは喋ってる相手の声き聞き覚えがあると感じ取る。
「あれ?この声って……」
「まさか……」
ましろが行ったのを見てアサヒも着いて行こうとするとユキがアサヒの袖を引っ張った。
「アサヒ君、私も行って良い?」
アサヒはユキに頼まれて少し躊躇の気持ちが湧く。今、ユキは動こうとして転びかけたばかり。行かせたら絶対に途中で転ぶだろう。
「お願い……」
「ああもう!わかったから。……絶対に肩から手を離すなよ?」
ユキはどうしてもと言わんばかりの顔をしたのを見てアサヒは根負け。エルをヨヨに預けると彼女に肩を貸した。
それから二人は玄関にまで移動。するとそこにいたのは栗毛のロングヘアーにピンクを基調とした服を着たギャルのような女性だった。
「あ、やっほー。アサヒ……ってえ!?誰その子!もしかしてアサヒの彼女……」
「違うから!!あげは姉、いきなり会うなりそんな事言うなよ……」
「え〜?久しぶりに会った幼馴染のすぐ隣に知らない女の子。しかも凄く可愛い顔してる子がいたら誰だって彼女って普通思うじゃん」
「……え?」
アサヒはあげは姉と呼んだ人からそう言われると我に帰る。そう、今のアサヒはとユキに肩を貸してる影響でかなり密着している。そうすれば彼女の体温とかも間近で感じるし、彼女への意識も強くしてしまう。
ただ、ユキの方は体力切れで歩くのがやっとな状態なために今の状況を深く考えるどころでは無い。
「(そういえばユキって小柄だし可愛くて、しかも髪も綺麗だし丁寧に手入れしてるんだろうな……って、何考えてるんだよ俺は!!)」
「アーサーヒ?何ユキちゃんで変な妄想してるの?」
「違うし!何でそうなるんだよ!」
「と言うより、今ユキさんは休まないとダメなんです!何で連れてきてるんですか!」
「いや、これに関しては俺じゃなくてユキに言ってくれ!」
アサヒは必死に弁明すると何とか三人の誤解を解いた。そのため、一度居間に移動し、座って話をする事になる。
「えっと……改めて聞きますが、どちら様ですか?」
「そういえば自己紹介がまだだったね」
すると女性はタブレットを出しつつ画面を開いた。それから紙芝居風に説明を開始した。
その話は数年前、ソラシド市に住んでいた二人の女の子と一人の男の子の物語である。かつて、ましろとアサヒ、あげはの三人はご近所同士で友達になっていた。しかし、あげはは親の都合で引っ越す事になり泣き出してしまう。そのまま彼女は家出するとどこかへといなくなってしまった。
女性はそこまで話を進めた所でましろがストップをかけたために自己紹介に移る。
「私は聖あげは!18歳!血液型はB。誕生石はペリドット!ラッキーカラーはベイビーピンク!最近のブームはイングリッシュティー・ラテ・ウィズ・ホワイトチョコレート・アド・エクストラホイップ!はい、そっちのターン!」
あげはと名乗った女性は自己紹介を終えるとソラやユキ、エルへと自己紹介をしてもらうべく話を回した。
「初めまして!この家でお世話になっているソラって言います!」
「私はユキです……この子はエルちゃんって言います」
「えるぅ!」
三人が一通り自己紹介を終えたというわけで、早速あげはが三人への質問を投げる。
「三人はこの街の子?」
「いえ、ユキさんやエルちゃんと一緒に別の世界から来ました!」
「「(……あれ?)」」
それを聞いたユキ、アサヒの二人はいきなり硬直。何しろ、早速息をするように自然にソラが正直に自分達が別の世界から来た事をカミングアウトしたのだ。そして、同時にあげはは“別の世界”という単語に怪訝な顔をした。
「別の世界……?」
「ターイム!」
あげはがそう言った所でようやく我に帰ったましろは慌ててタイムを発動。すかさずソラへと見せるように指でバッテンを作ると自分の口に当てる。
「ソラちゃん……普通にスカイランドの事、言っちゃったね……」
「あまりにも自然過ぎる暴露に俺も反応が遅れた……」
「そ、そうでした!大騒ぎになるからスカイランドの事やエルちゃんがプリンセスだって事は内緒にするって皆さんと決めたのに!」
「プリンセス?」
「える」
「それもダメーッ!」
ソラは自分のやらかしを自覚すると慌ててまたうっかりして内緒にすべき事を全てあげはの前で言ってしまう。本当にソラには隠し事ができないらしい。そのためアサヒは頭に手を当てて呆れ、ユキは唖然とするとましろが言ったらダメとばかりに叫んだ。
「しまったぁあ!あげはさん、今耳にした言葉は綺麗さっぱり忘れてください!」
「え〜?隠し事〜?」
あげはが自分だけ除け者にされてると感じたのか、口を尖らせつつ不満そうな顔つきになる。
「ごめんね、あげはちゃん。でも、友達の秘密は言えないよ……」
「本当にごめんね、あげは姉。ただ、ちゃんと言える時になったら話すから」
そんな風にアサヒやましろに言われたあげは。そして、この事はどうしても秘密なのだと察すると気持ちを切り替える。
「オッケー。でも、いつか話せる時になったら言ってくれると嬉しいな。って訳でよろしく!ソラちゃんにユキちゃん、それに……エルちゃん!」
「えるぅ〜!」
「あははっ、可愛い〜!」
エルは初対面のあげはにも懐いている様子なのか、抱き抱えられると嬉しそうにしていた。
そして、いつの間にか虹ヶ丘家の庭に移動していたヨヨは二羽の鳥と向かい合って座っていると前に置かれている紅茶を飲んでいた。
「ふふっ、運命がまた動き出したようね……」
場面が再び戻って虹ヶ丘家の中。あげはが時計を見るとまだ用事まで時間がある事を確認してからある提案をした。
「あ、そうだ!ちょっとの間だけユキちゃんを借りても良いかな?」
「「「「……え?」」」」
それからユキは自分の部屋にあげはを案内するとそれだけで疲れたのか、どうにかベッドの上に腰掛けるとあげはが隣に座る。
「……ユキちゃん、単刀直入に聞くね。どうしてそんなに辛そうなの?」
「ッ……」
ユキは初対面のあげは相手に言って良いのか不安になったが、あげはからの真剣な眼差しに根負け。あげはにも嫌われたく無いという恐怖からスカイランドやプリキュアの事を上手く隠しつつ事情を説明した。
「そっか。強くなりたいんだね」
「はい……」
「……でも、私はそんなユキちゃんが心配だな」
「どうして?私とあげはさんは初対面。どうしてそこまで気にかけるんですか?」
それを聞くとあげはは過去にあったある出来事を思い出してからユキの質問に答えた。
「ユキちゃんが一人で何だか寂しそうな感じをしていたからかな」
「………」
ユキはあげはに自分の気持ちを言い当てられて狼狽えるが、それでも尚、あげはを振り切るようにして自分の気持ちを隠す。
「大丈夫ですよ。心配していただきありがとうございます」
「……やっぱり、そう簡単に打ち明けてくれないよね」
あげはに言われてユキは気不味そうな顔をする。それから少し無言の時間が過ぎるとユキはまた弱々しい声であげはに話をした。
「……私、怖いんです。いつか、信じていた人達に捨てられるのが」
「ふうーん。でもさ、ソラちゃんやましろん、アサヒがそんな事をする人に見える?」
「わかってます……私の考え過ぎだって。でも……でも……」
ユキの心はぐちゃぐちゃになっていた。このまま放置すると精神が崩壊すると感じたあげは。そのため彼女はユキを抱きしめるとそっと頭を撫でた。
「大丈夫。私が思うに、ユキちゃんは凄く真面目で頑張り屋さん。……ユキちゃんの気持ちをちゃんと見てくれる人は沢山いるから。ユキちゃんは一人じゃないよ」
それを聞いてユキはほんの少しの安心と大きな不安に悩まされる。自分のせいでまた友達に不安を与えてしまったと。このままでは自分の事を不審に思われてしまうと考えてしまう。
「(……私はどうしたら……)」
「っと、じゃあそろそろ行く準備をしないとだね!」
するとあげはが立ち上がると同時に出かけるための準備へと行ってしまう。残されたユキは今回も一人で悩みを溜め込んでしまうのだった。
また次回もお楽しみに。