熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

170 / 254
本編をお待ちの方、すみません。今回も番外編となります。時系列的にはユキやアサヒ達がスカイランドに滞在している途中で、プニバード族の村に滞在してから都にまた戻ってきて尚且つバッタモンダーが爆弾ランボーグを召喚する前の話となります。


シャララ隊長の憧れの人

ユキやアサヒ達がスカイランドにやってきて数日後の事。今現在、ユキはペギンとのトレーニングに励んでいた。

 

「はあっ!」

 

ユキは青の護衛隊の人に支給される個別の武器……彼女の場合はベリィベリーやペギンのような強化グローブを手につけてペギン相手に一対一の組み手をしていた。

 

「相手の動きを読んで、それを上回るように動く!そんなのじゃ、私には当てられないよ!」

 

「はい!」

 

ユキは生身の状態でペギンと対戦している。肉体を鍛えなければ、プリキュアになっても大した力は得られない。ソラも近くでベリィベリーと組み手をしていた。この二人は力が拮抗しているのか、互角の勝負となっていたが。

 

「ユキ、まだ動きが遅いよ!もっと早く!」

 

「ッ、はい!」

 

ユキは何とかペギンへと一発でも当てようとするが、その度にペギンはユキの動きが丸わかりと言わんばかりに躱していく。一応ペギンは縛りとして防御はしても反撃はしていなかった。それでもユキは手も足も出ないのである。

 

「そこまで!トレーニングを終える」

 

そこにシャララ隊長からの言葉が響くと一同はこの日のトレーニングを終えて青の護衛隊の建物へと戻っていく。その中の休憩のための場所ではヒョウがマネージャーのように水分やタオル等を準備して待っていた。

 

「お疲れ様です」

 

「ヒョウ、随分とサポーターとしての姿が様になってきたな」

 

「ありがとうございます!これからもこのまま……」

 

「そんなに畏まらなくて良い。もっと気さくに話してくれ」

 

ペギンにそう言われてヒョウも肩の力を抜くと二人で話を始めた。護衛隊に馴染むヒョウの姿を見てユキが自分のタオルで汗を拭いているとそこにアサヒが来た。

 

「お疲れ、ユキ」

 

「アサヒ君?どうしてここに?」

 

「えっと、今日の朝シャララ隊長に招待されてね。この時間に来るように言われたんだ」

 

「シャララ隊長にですか!?」

 

するとそこに同じく休憩中のソラもやってくると驚いたような顔になる。ソラやユキはこの話を聞いていないので何故呼ばれたのか気になった。

 

「理由って何か聞いてないの?」

 

「いや、それが来て欲しいと一言伝言されただけだからなぁ」

 

アサヒがそんな風に返すとそこにアサヒを呼び出した張本人であるシャララ隊長が歩いてくる。

 

「三人共揃ったな」

 

「三人共ですか?」

 

「って事は、私達も」

 

「ああ。アサヒ、ユキ、ソラ。君達三人に話しておきたい事がある……だが、その前に。アサヒ。私と一対一だ」

 

シャララ隊長は三人を連れてまたトレーニングの場所に出るとアサヒを向かい合わせてから自分は青の護衛隊用の剣を手にして構えを取る。しかもそれは実践用の剣であった。

 

「シャララ隊長!?」

 

「アサヒ君はトレーニングしてるとは言ってもまだ……」

 

アサヒはユキやソラと出会ってプリキュアになれるようになったぐらいからトレーニングを積んでいるとは言え、まだユキやソラの領域には達していない。あくまで常人より少し強い程度である。つまり、普通にやったらシャララ隊長相手に太刀打ちすらできない。なので、ユキやソラは慌てたような顔になった。

 

「アサヒ、お前はプリキュアの力を使って良い。……全力で相手をしてくれ」

 

「わかりました。確認ですが、本気で良いんですよね?」

 

「ああ。ルールはどちらかが攻撃を当てるまでの一本勝負だ。全力で来い」

 

シャララ隊長の目は本気であり、アサヒもその目を見て手を抜くのはダメだと察するとすぐにプリキュアへと変身。キュアムーンライズとなる。

 

「日暮れにひろがる輝く月!キュアムーンライズ!」

 

ムーンライズは構えを取ると二人はそれなりの距離を置いて睨み合う。そして、審判としてソラが開始の合図を言うことになった。

 

「それでは、始めっ!」

 

その瞬間、ムーンライズはバックステップを踏むとシャララ隊長を見ながら更に距離を置く。そのまま周囲に光弾を生成するとシャララ隊長を取り囲むように放った。

 

ムーンライズは剣の達人である彼女を相手に近距離戦は確実に不利になると読んで後ろに下がって踏み込みからの剣の振り抜きが届かない間合いに外れてから気弾を生成。そのまま全方位からの包囲射撃を放つ。

 

「(ムーンライズの攻撃の手が早い……このままだと、剣を振り抜くより早く弾が到達する)」

 

ユキはムーンライズのこの一手で彼が有利に戦況を運ぶと考えた。シャララ隊長が防御に回るのならムーンライズは気弾による手数で攻めれば良いし、もし反撃してもムーンライズは次の気弾をより早く放てる。むしろ、今の包囲射撃はシャララ隊長を動かすための物。体勢を崩せば、ムーンライズの次の攻撃が刺さる。

 

だが、次の瞬間。ムーンライズは目を見開いた。シャララ隊長を包囲するように放った気弾は何かの斬撃が光ったかと思うと全て叩き切られてしまったのだ。

 

「ッ!?」

 

しかも、彼女はまだ剣を構えたままで何かのアクションをしたわけでは無い。なのに、攻撃は全て撃ち落とされてしまったのだ。

 

「だったら!」

 

ムーンライズはすかさず次の気弾を生成して放とうとする。するとシャララ隊長はそのタイミングで剣を振るう。

 

「え!?何故このタイミ……」

 

「ぐあっ!?」

 

ソラが言葉を言い切る前にはムーンライズへと何かの攻撃が通ったのか、彼が吹き飛ばされると地面を転がって痛みに悶えていた。

 

「な、何だ!?今のは……」

 

シャララ隊長はムーンライズへと攻撃を当てために剣を納刀すると倒れた彼の元へと歩いて行って手を差し伸べる。

 

「大丈夫か?」

 

「は、はい……今の、どうやったんですか?」

 

「私がこの青の護衛隊に入ったばかりの頃に教わった一撃必殺の太刀だ」

 

ムーンライズは変身を解くとシャララ隊長の手を取って立ち上がり、そこにユキやソラもやってくる。

 

「凄い!凄いです!シャララ隊長!」

 

「外から見てる私達も全く太刀筋が見えませんでした。あれ、どういう仕掛けなんですか?」

 

「……仕掛けは特に無い。ただ光の速さで飛ぶ斬撃波を放っただけだ」

 

「だから全く見えなかったんですね」

 

「ああ。……この技は私の師匠から教わった技だ」

 

シャララ隊長は三人を連れてまた休憩所に戻ると四人で一つのテーブルを囲んで座った。

 

「シャララ隊長にも師匠がいたんですね」

 

「それってどんな方だったんですか?」

 

「……あの人は、私がヒーローを目指した憧れの人だった。私が幼い頃、山の中で遭難してしまった私はある男性に救われた。とは言ってもあの人は当時10代後半に入るぐらいと言った所になるが」

 

「「「えっ!?」」」

 

三人はその言葉を聞いて驚く。それはつまり、自分達より少し年上にはなるが、そのくらいの年齢でもう既にヒーローとしてシャララ隊長が憧れを抱くぐらいの実力を持っていたということだ。

 

「何にせよ、私は危険な動物に襲われそうになった所を助けられた。しかも、彼はその動物を一切傷つける事なく私を助けた」

 

シャララ隊長は当時、その男の優しさと強さに憧れてヒーローを将来は目指そうと志した。そして、念願の青の護衛隊に入った時にはその憧れの人が隊長をしていたらしい。

 

「私はそれから今の君達ぐらいの年頃に護衛隊に入ったんだが、彼は駆け出しの新人だった私に良くしてくれて。色んな事を教えてもらえた。今さっき見せた剣も彼の剣技の中の一つに過ぎない」

 

「その人ってどのくらい剣技があったんですか?」

 

「……さぁ。少なくとも、私がその全てを見る事はできていなかったと思う。そのくらい彼の実力は隊の中でも頭三つは抜けていたからな」

 

恐らくシャララ隊長の憧れの人は今の彼女の数倍は実力が上になると、シャララ隊長は言う。

 

「……私は彼から色んな事を学ばせてもらった。ヒーローとしての心得や戦うための技。……青の護衛隊がどういう立ち位置で、護衛隊の隊員として必要な心構え」

 

シャララ隊長にとって彼の背中はとても遠く、追いかけ甲斐のある物だった。

 

「シャララ隊長にも憧れの人がいたんですね」

 

「ソラちゃんがシャララ隊長に憧れたように……」

 

「だが、あの人は約十数年前。具体的には君達三人が生まれる少し前ぐらいに突然隊長の座を私に譲って引退した」

 

その言葉を聞いて三人は驚く。恐らく、シャララ隊長の憧れの人は当時まだ年齢的には三十代に入るぐらいと予想される……そうなるとあまりにも早すぎる引退となるだろう。

 

「そんな、その人はまだまだ若い年齢じゃないですか!」

 

「どうしていきなり……」

 

「私も疑問に思ってその人に聞きに行った。だが、彼は頑なに理由を言おうとしなかったんだ。結局、その人は宣言通りそのまま護衛隊を離脱。私への引き継ぎを終えたその日に何も言わずに護衛隊からも、そしてスカイランドの都からも去って行った」

 

正直、シャララ隊長は引き継いだ当時はまだまだ護衛隊に入って数年の若手の一人に過ぎない。当然周りからの反発もあった。それでもシャララ隊長は何とか実力と結果で周囲を納得させる事で隊の混乱を抑え込んだ。

 

「何故あの人がいきなりいなくなったのか。……隊長に就任して、混乱が収まった後に王様へ先代の隊長について聞いてみたのだが、王様も王妃様も答えを濁すのみで何も真実を伝えてくれなかった」

 

「となると、下手すると王族絡みの問題になるのか」

 

「それでも無責任じゃないですか!シャララ隊長がどれだけ大変な目に遭ったのか……。せめて理由の一つでも説明するべきだったんじゃ……」

 

アサヒが冷静にそう考えるが、ソラは納得できないとばかりに声を上げる。

 

「今となってはそれも聞けない。彼はそれから少ししたある日を境に行方不明になってしまったからな」

 

「もうスカイランドにはいないって事ですか?」

 

「もしかするとソラシド市に何かの拍子で移動して世界のどこかにいるとか?」

 

少なくともスカイランドにいないというだけなので可能性を挙げ始めるとキリが無いだろう。

 

「とにかく、私は隊長としてあの人に任された以上。あの人の分まで最後までやり通す所存だ。ソラ、ユキ、そして……アサヒ。これからも頼んだぞ」

 

「「はい!」」

 

「……って、俺もですか!?」

 

「ああ。頼むぞ」

 

シャララ隊長にそう言われてアサヒはこそばゆい気持ちになりつつも、頷いた。それから三人はシャララ隊長と別れて去っていく。そんな中、アサヒはふと疑問に思った。

 

「あれ?そういえばどうして隊長は俺を呼んでこの話をしたんだ?話すだけならユキやソラだけでも良いだろ……」

 

彼が首を傾げる中、シャララ隊長は自室に戻るととある宝石を手にしていた。それはソラからもらった青いハートのスカイジュエルに瓜二つの形をして、尚且つ色が突然変異で変化したと思われる赤い色合いのスカイジュエルを手に持っている。

 

「……やっぱり、虹ヶ丘アサヒ君を見ているとあなたの面影を感じてしまいます。……もしかして、アサヒ君はあなたの息子さんなのでしょうか……」

 

シャララ隊長はそう小さく呟いてから赤い方のスカイジュエルを手に取ると名残惜しそうに眺める。それは、彼女の憧れの人がと初めて出会った時にまたいつか自分に出会った時のための目印にして欲しいと彼からプレゼントされたスカイジュエルであった。

 

「またお会いしたいですよ……アポロ隊長」

 

シャララ隊長はそう言って一筋の涙を流す。それから数日後。スカイランドの都にバッタモンダーが呼び出した超巨大な爆弾のランボーグが出現。シャララ隊長も行方不明になってしまうと共にアサヒもアンダーグエナジーに侵される事になるのであった。




次回は本編に戻ると思います。それではまた次回もお楽しみに。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。