熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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頑張る大人組 ヒョウの心配

保育園での実習が終わってから虹ヶ丘家では大きな変化があった。それはあげはが家に引っ越して来た事である。平日の早朝。かけるが早めに起きて下の階に降りるともう既に誰か起きているのか、食器の音が聞こえて来た。

 

「ふわぁあっ……」

 

かけるが思わず欠伸をしながら部屋へと入るとそこにはエプロン姿で料理をしていたあげはがおり、彼女がかけるを見て声をかけてくる。

 

「おはよ!かける君」

 

「……あげはさん?……って、えっ!?」

 

かけるは最初、寝ぼけ眼であったものの。あげはが起きているのを見てすぐに目がパッチリと開いてしまう。

 

「あげはさん!?あれ?今日は授業お休みって……」

 

この日、かけるとあげはの二人は偶々授業の予定が入っておらず。そのため、かけるは早くから起きていたあげはを見て慌てた。

 

「えへっ。かける君が降りて来てくれて丁度良かった。ご飯や弁当を作るのを手伝ってくれる?」

 

かけるはそれから急いで部屋に戻ってエプロン姿に着替えるとそっと下に降りてあげはを手伝いながら彼女から理由を聞く。

 

「どうして準備してたの?」

 

「私、この家にお世話になる身になったから。少しでもましろん達が気持ち良く生活できるようにしたいなって。それに、ヨヨさんとかける君以外は皆まだ子供だし。もっと私が頼れる人にならなきゃって」

 

あげはのその言葉にかけるは彼女へと尊敬の気持ちを向けた。かけるはこの家にお世話になるようになった当初。引っ越しの件だけでなく、遅れた授業を取り戻すので手一杯でこの家の家事に貢献する事は殆どできなかったのだ。あげはだって引っ越したばかりで自分の事も忙しいはず。なのにここまで頑張る彼女を見たかけるは少しでも彼女の負担を減らそうと奮起する事になった。

 

「ふぅ……何とか皆が起きてくる前に完成できたね!ありがとう、かける君。正直、私だけだと間に合うか微妙だったから。助かったよ」

 

「いや、むしろこっちこそごめん。忙しいのにこんな……」

 

「良いの良いの。さ、皆が起きてくるまでに弁当の準備準備!」

 

「うん」

 

それから少ししてユキやアサヒ達中学生組とツバサ、ヒョウも目を覚ましてあげはとかけるが作った豪華な朝食を見て驚いていた。

 

「「「ふわぁああっ!」」」

 

「なんて豪華な朝食なんですか!?」

 

「あげはちゃんが作ったの?」

 

「凄い……しかも、エルちゃんの分も含めて十人分しっかりとある」

 

ユキ、ソラ、ましろが目をキラキラさせながら感嘆の声を上げる中、あげはは首を横に振った。

 

「私だけじゃないよ。かける君も手伝ってくれたから、私達二人で作った朝食だよ!」

 

「とは言っても俺は途中参加だったから半分以上はあげはさん作なんだけどね」

 

「だとしても十人分をちゃんと揃えるなんて……」

 

アサヒも驚きの目を向ける中、ヒョウは少し無言になって考え込んでいた。そして、そんな様子を見たツバサはヒョウへと話しかける。

 

「ヒョウ、どうしたんですか?」

 

「……二人共、無理してないかなって。あげはさんは特に……」

 

「え?」

 

「多分かけるさんは普通通りなのかもだけど、あげはさん。これだけの朝食を一人で作ろうと思ったらそれなりに早起きだったはずだし」

 

ヒョウが小声でツバサと話しているとあげははそんな二人の心配を他所に声をかけていく。

 

「皆、朝から美味しいご飯で気持ちをアゲてこ!」

 

「エルちゃんのサンドイッチも可愛いね!」

 

「かわいいえ!」

 

それから全員が大きなテーブル二つ分に広げられた朝食を囲んで定位置の席に着くとあげはが“いただきます”の音頭を取った。

 

「それでは皆で!」

 

「「「「「「いただきます!」」」」」」

 

「まーしゅ!」

 

それから早速ソラが食事を口に運ぶと一口食べる。その瞬間、あげはの愛情が詰まった朝食の美味しさが口の中に広がった。

 

「うーん!美味しいです!」

 

「あげはちゃん、料理上手だよ!」

 

「箸がめっちゃ進む!」

 

「美味しいです!」

 

中学生組が思い思いの感想を述べる中、ツバサも最初に何を食べようか迷う。

 

「何から食べようかな〜!」

 

「少年やヒョウちゃんって鳥だし、やっぱり野菜好きなの?大盛りにしておくね!」

 

そう言ってあげははサラダの入った食器を手に取ると二人の皿へと盛り始める。

 

「って、うわあっ!?ボクは野菜以外にも食べますから!」

 

「オッケー。じゃあサンドイッチやフルーツも大盛りで!」

 

ツバサが反論するとあげはは更に世話を焼いてツバサの皿へと次々とご飯を盛り付けていく。

 

「あはは、あげはさん。そこまでしなくても……」

 

「そうですよ!そのくらい自分でやれますって!」

 

かけるが優しくそう言うとツバサもそれに便乗するように声を上げる。そんなツバサとは対照的にヒョウは未だに考え込んだ様子だった。そのため、ユキはヒョウへと声をかける。

 

「ヒョウ?どうしたの?」

 

ユキが声をかけてもヒョウは返事さえもしない。それを見てアサヒはニッと笑うと考え込んでいるせいで周りの声が聞こえてないと踏んだのか、彼女を揶揄い始めた。

 

「またまた〜。どうせアレだろ?保育園の園児達に天使のような目を向けられてその興奮が冷めないんだろ。それに、最後に園児達に撫でられたんだし。そのまま保育園のぬいぐるみとして……」

 

その瞬間、アサヒは机の下の空間に存在する脚の脛を反対側に座っていたヒョウによって思い切り蹴り飛ばされる。しかもそれは“バキッ”というかなり痛そうな音まで鳴るほどに蹴られたために、アサヒは叫び声を上げて悶絶した。

 

「痛っでぇっ!?」

 

ただ、ヒョウはアサヒからのデリカシーの無い発言に対して暴力による反撃はしたものの、未だに言葉を使っての反撃はしなかった事から、話自体は聞いているのだと察せられる。

 

「ヒョウ、本当にどうしたの?」

 

「……ごめんユキ姉。心配しなくて大丈夫。ちょっと考え事をしてるだけだから。もし、私だけで手に負えなくなったら相談する。だからそっとしておいてほしい」

 

ヒョウはあまり答えないのは良くないと思ったのか、ユキへと答え、それを受けてユキは心配しながらもこれ以上の言及をやめる事にした。

 

「痛ってぇ……やっぱりお前、俺からの悪口にだけは反応しやがって。そんなのだから可愛く無いって言われ……痛だあぁぁっ!」

 

アサヒはまた余計な事を口走ったのでヒョウからの二回目の蹴りが彼の脛の全く同じ箇所に命中。アサヒは同じ箇所を二度も蹴られたので、あまりの痛さに今度は床の上で転げ回るのであった。

 

「アサヒ君……」

 

「流石に今のはアサヒが悪いよ」

 

「アサヒさん。あんまりヒョウさんを困らせたらめっ、ですよ」

 

ユキからは呆れた目線を向けられ、ソラやましろからも追撃を喰らったアサヒは蹴られた痛みに加えて精神的なダメージも喰らう事に。

 

「流石にもうやめておこうか。多分アサヒ君のライフポイントはとっくに0だし。オーバーキルだよ」

 

かけるも若干悪ノリ気味にそう言うとアサヒは何とかご飯の続きをするために椅子に座り直すとまた一同は食べ始める。

 

それからユキ達は朝食を終えると中学生組は準備のために二階に戻っていく中で、かけるとあげはは二人で片付けを進めていた。

 

「……手伝いましょうか?」

 

そこにヒョウが手伝いのために入ろうとする。だが、スペース的な問題で三人は入れないので二人は気持ちだけ受け取る事に。

 

「ごめんね、ヒョウちゃんのその気持ちは嬉しいけど」

 

「多分三人で食器を洗ったり片付けをするのは厳しそうだから。……その代わりにだけどさ。ツバサ君と一緒にエルちゃんの相手をお願い」

 

「わかりました」

 

ヒョウはそう言って戻っていくとエルの相手をしていたツバサの隣にしゃがむ。

 

「ヒョウ?」

 

「……ツバサ。私って役立たずなのかな」

 

「急にどうしたんですか?」

 

ヒョウがいきなり切り出した言葉にツバサは驚く。ヒョウはそのまま続きの言葉を言った。

 

「私ってさ。正直な所、周りに貢献する事が少ないし……家事だって任せっきりな事が多いから。プリキュアの方だって最近変身できるようになったばかりであまり役に立てなくて」

 

「ヒョウにしては珍しく弱気ですね」

 

「私は元々こういう性格よ。……アサヒ相手に強気に接してるのはただ見栄を張ってるだけ」

 

「……ボクはらしくないと思いますけどね。ここではヒョウの事を無能だなんて言う人はいませんし、プリンセスの隣で堂々とすれば良いんですよ」

 

「ひょーお、どうどう!」

 

ツバサの言葉にエルも便乗したのか、ヒョウを慰めようと舌足らずの言葉で励ました。

 

「ありがと、エルちゃん」

 

ヒョウはエルを抱き上げると頭を撫でる。そんな様子を見たツバサは思わず声を上げた。

 

「あっ!プリンセスを守るのはボクの役目です!」

 

「良いじゃない。エルちゃんは皆のプリンセスなんだから。ツバサが独り占めするのはプリンセスの騎士としての矜持に反するんじゃない?」

 

「そ、それはそうですけど……」

 

ツバサが慌てると中学生組が準備を終えたのか制服に着替えて下に降りてくる。そして、それを見送るためにかけるやあげはが移動したためにツバサやヒョウ、エルも玄関に向かう。

 

「はい、これ!」

 

「皆の分のお弁当だよ!」

 

あげはとかけるはそれぞれ四人に手作り弁当を手渡すと四人はそれを受け取って驚く。

 

「これは!」

 

「お弁当まで作ってくれたの?」

 

「昼食も楽しみになるね!」

 

「美味しくいただきます!」

 

四人が反応を示すとあげはは指ハートを作って笑顔を向け、かけるも微笑んで四人を応援する。

 

「ラブをいっぱい込めておいたからね!」

 

「学校、頑張ってね」

 

「ありがとうございます!」

 

「そろそろ時間だし、行こっか」

 

こうして、四人は学校へと出掛けていった。それを見送った四人はヒョウに抱えられたエルと共に家の中に戻っていく。

 

「さてと、かける君。私達は……」

 

「うん。早速始めよっか」

 

かけるとあげはは何かをするためにまた部屋へと戻っていく。そんな二人をヒョウは見届けながらやはり不安そうな顔になった。

 

「……やっぱり、あの二人……」

 

「ちゅばさ、ひょーお。あそぼ!」

 

ヒョウはあげはやかけるの手伝いをしようと思うが、エルはツバサだけで無くヒョウとも遊びたいらしい。

 

「ヒョウ……プリンセスもこう言ってますし、今はあんまり考えない方が良いと思いますよ」

 

「でも……」

 

「……ボクもヒョウと同じ気持ちです。なので、その事は後でちゃんと考えましょう」

 

ツバサにそう言われてはヒョウも頷かざるを得ない。そのため、ヒョウはツバサと共にエルの相手をする事になった。




また次回もお楽しみに。
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