あげはが早朝から虹ヶ丘家へと合鍵を使って突撃してくるとプニバードコンビがそれに対応。そこから更にユキ達はヨヨを残して全員で山登りのために車で移動する事に。
今現在は車での移動時間中であり、そのタイミングであげはは突如として上機嫌に歌い始める。
「どこまで〜も♪かっとばーせ♪ピヨピヨ〜ピヨ〜ピヨちゃん♪法定速度は厳守で〜♪ドライブ〜♪」
「あげはさん、普通に歌上手い……」
「言われてみたら、あげはちゃんって普通にアーティストとかやれそうなくらい歌えるよね?」
「えー?照れるなぁ」
あげはがましろやヒョウに褒められたからか、嬉しそうな表情を浮かべる。実際、今回はあげはが即興で作った物とはいえ上手かった。
「うーん、何だろう。今の話に信憑性があり過ぎて冗談に聞こえないんだが……」
すると、アサヒはあげはのアーティストの件について何処かで聞き覚えがあるようで。早速調べてみるとそこには○☆戯☆王・○ーラッシュ‼︎のアニメのEDを歌うアーティストの声優が映された。
「あー、なるほど。確かにこの人はあげは姉と声がそっくりなんだったっけ」
「えっ?私そっくりの声を出せる声優さんが本当にいるの!?」
あげはは冗談だと思っていたためにガチで自分の声とそっくりな声を出す声優がいるという事実に驚きの声を上げる。
「ああ。まるであげは姉の中の人って思えるくらいには……」
「ターイム!それ以上は色々とダメだからね!?」
ましろはメタ発言をし始めたアサヒへとツッコミを入れると制する事に。そんな中でユキが苦笑いしつつあげはへと声をかけた。
「あげはさん、歌を歌うなんてご機嫌ですね」
「うん!実際ご機嫌だよ。こういうのは楽しんだ者勝ちだからね!」
あげはの言葉にユキも納得したように頷く。すると、ましろは隣の席に設置したチャイルドシートに座ったエルへと話しかける。
「エルちゃん、座り心地どう?」
「えるぅ!」
エルは嬉しそうに答えを返すとチャイルドシートの座り心地を堪能していた。ちなみに、このチャイルドシートはいつの間にかヨヨか用意していた物で。その話を聞いた時もユキ達は揃って驚いたものである。
「むー……」
「ツバサ、あんまり膨れっ面のままなのも」
「わかってます……不機嫌なままなのは勿体無い事くらい」
ただ、この場の一同の中でただ1人。先程からあげはに良いように弄られてしまったツバサだけは不機嫌そうな様子を見せていた。
一同が車の中でそんなやり取りをする中、唯一会話にあまり参加していないソラは窓の外を見て興奮した声を上げる。
「一体、何て速さですか!?木や建物がビュンビュンです!」
「言われてみれば確かにスカイランドではここまで速く景色が飛ぶなんて無いから……」
車での移動により、飛ぶように過ぎていく外の景色を見たソラ。この世界に来たばかりの時に車の事を鉄の箱と揶揄していたため、スカイランドには車が無いという事がわかる。
そのため、ソラは初めて乗る車のスピード感に驚きと感激を感じていたのだ。
「ふふっ。ユキちゃんもソラちゃんも車に乗るのは初めてだったよね
「はい!スカイランドでは鳥さんが活躍してますから!」
スカイランドではこちらの世界のように機械の概念があまり無い。また、人間と鳥と仲良しという事もあって空だけで無く地上でも鳥が移動手段として活躍する場面が多いのだ。
「なるほど、って事はダチョウみたいな地上を走れる鳥がスカイランドでの地上の移動手段って感じかな」
「ダチョウ……が何なのかはわかりませんが、それで問題無いと思いますよ」
「いや、ダチョウを知らないんかい」
アサヒが物の例えとしてダチョウを出したが、スカイランドにダチョウはいないらしく。アサヒは思わずツッコミを入れてしまう事に。
「ちなみにダチョウの場合だと最高速度が時速70km。保てる速度が60kmだとしても30分〜1時間くらいは走れるんですよね」
「おぉ。じゃあ、スカイランドでそのダチョウみたいな鳥さんが移動手段として優秀なのも頷けるかも」
車には法定速度として一般道では最大60kmが限界という制限があるとはいえ……機械には生き物と違って疲れが無いという事を考えるとガソリンが保つかという話にもなるが最高速度の継続時間は車の方が長い事にはなるが。すると、ここであげはが話に介入してきた。
「鳥さんも良いけどさ、私のピヨちゃんもビュンビュンできゃわわ〜でしょ!」
「ん?ピヨちゃん?それってこの車の名前?あげは姉」
「そうだよ。私の自慢の愛車なんだから!」
それを聞いてソラはこの世界では車に名前を付けるのが当たり前なのだと思ったのか。興奮した顔を見せる。
「おぉ、この世界では車に名前とかも付けるんですね!確かに鳥さんにも個別で名前を付けてあげると愛着が湧きますし、そこは同じですか!」
「いや、多分車に名前を付ける方が少数派だと思うよ?ソラちゃん……」
「うん。私もあんまりそういう話は聞かないかな……」
あげはが車に名前を付けるのを聞いたソラは勘違いしてユキやましろ辺りにそうでは無いとツッコミを入れられた。すると、ツバサがまだ不機嫌そうな顔のまま、あげはへと声をかける。
「何でボク達は山に向かってるんですか?」
「まぁ、一応山に行くだけならましろさんの家にある山があるけど……そこじゃダメだったの?」
ツバサとヒョウの二人があげはに問いかける中、あげはは運転を継続しつつわざわざ遠くを選択した理由を話す。
「うん。偶には皆で遠出したいかな。私からしたらわざわざ隣町に迎えに来てる時点で遠出かもしれないけど、ましろんやアサヒ達にとって裏山だと近場になっちゃうからね」
「そっか、あげはちゃんは早朝に来てくれたけど……よくよく考えたらそんなに早くから起きてたんだ」
ユキ達はあげはがお出かけのためにわざわざ早起きして虹ヶ丘家まで車で来てくれた事に感謝の気持ちが湧いてくる。すると、あげはは後ろでソラの膝の上に座るツバサをバックミラー越しにチラッと見つつ彼を気にかけた。
「あ、あとそれに加えてだけど君達の事ももっと知りたかったというのもあるかな。少年、ヒョウちゃ……ヒョウ君」
「ッ……?」
「……むう。やっぱりヒョウだけ名前呼びでボクは少年扱いなんて何だか納得がいきません」
ヒョウはそれを聞き、何故かあげはが言い直した事に驚いたような顔を見せた。とはいえ、その顔つきはすぐに戻ったが。一方でツバサの方は少年呼びされたのが気に入らないようで。
「そもそもボク達を呼び分ける差は何なのですか」
「呼び分ける差かぁ。うーん」
あげははすぐに答えを返さずに焦らすかのような態度を取り始めると流石にヒョウの方もあげはがツバサの事を何故か少年呼びする事が気になった。
「あげはさん。俺の方からもどうしてツバサの事だけは少年呼びをするのか知りたいです」
「ッ……えっとね。まずヒョウ君の方は何となく末っ子みたいな可愛さを感じるから普通に名前を呼びたいって思ったかな」
「可愛さ?ヒョウが?」
アサヒはヒョウに可愛さを感じるというあげはの談に困惑。勿論アサヒから見た際に可愛さが無いかと問われれば頷く事はできる。……ただ、どちらかと言えば男の子であるヒョウには可愛さよりもカッコ良さの方が合うのでは?と思ったのだ。
「アサヒ、俺に可愛さが無いって結構失礼じゃない?後でケツバットな」
「いや、何でそうなるんだよ!?」
アサヒが思わず声を荒げるとそのタイミングで次のツバサの方の呼び方の理由へと移る。
「えっと、じゃあツバサ君を少年呼びするのは何で?」
「少年呼びの方?それは……何となくその方が良いかなって。私の直感」
「はぁ!?」
それを聞いたツバサは思わず普段なら年上に対して使わないような声を出すと更に不機嫌な様子を見せた。誰だってそうだが、何となくで変な名前呼びをされれば不機嫌になってしまう。今回のツバサの感情が湧き上がってしまうのも無理はない。
「はぁ……どうしてそうなるのかボクには理解できません」
「あはは、流石に私もこれはツバサ君に同意かな……」
「えー?少年呼びも可愛くて良いと思ったのになー。あ、あとそれと。ちょっと遅れてごめんね。アサヒ。ユキちゃん。お付き合いおめでと!」
あげはは自分の呼び方が受け入れられなかった事を残念そうにしつつ、続けてユキとアサヒのお付き合いについてを祝福した。
「あ、ありがとうございます。あげはさん」
「もしかしてましろ辺りから聞いた感じ?」
「ふふっ、それはアサヒの予想通りだよ。あ、でもアサヒ。お付き合いするからにはユキちゃんを泣かせたらダメだからね」
「ッ……揶揄うなよ、あげは姉……そのつもりだけどさ」
アサヒは気恥ずかしそうに顔を赤くしていると助手席に座るユキも頬を赤くする。あげははそんな風に2人の仲が極端に悪くなってない所からお付き合いは順調なのだと察していた。
「それはそうとしてなんだけどさ……」
「どうしたの?ましろ」
「いや、アサヒ。それ今どういう状況なの!?」
ましろは一瞬だけアサヒの方を向きつつ思い切りツッコミを入れる。先程からずっと言及していなかったが、今現在のアサヒはトランクの上に座っている……というわけでは無い。
「ああ、これ?先代プリキュアのバーニングサンやブリザードの力を借りて空中に固定されているって言えば良いのかな?」
「いや、どこをどうやったらそうなるの!?」
アサヒは体にバーニングサンの赤とブリザードの白のオーラを纏うとトランクの荷台から10cm程浮いた状態で胡座で空気椅子状態になっていた。
「だってよ。バーニングサン達曰く、直接荷台に座るよりもこっちの方が楽になるって話だしなぁ」
「まぁ、揺れが伝わらない分アサヒ君としては楽なのかな?」
バーニングサンとブリザードはサービスとしてアサヒが直接荷台に座る事による揺れを感じないようにしており、これによって揺れによる山登り前の体力消耗や酔いにより朝ご飯をシャッフルされてリバースする危険を無くしていた。
「でも、空中に浮いていたら前に吹っ飛んだりしないんですか?置き去りにされて車に無理矢理叩きつけられるとかも」
空中にある物というのはその場に留まろうとする原理……慣性の法則がかかる。そのため、空中に浮くだけだと車が進んでも自分が置き去りにされるのでその結果車に無理矢理押し付けられる構図が完成するのだが……そんな事も無かった。
「流石にそれも対策済みだと思いますよ?現にアサヒさんはちゃんとここにいますし」
「ああ。感覚的には空気の圧力でこの場所に固定されながら車の移動に合わせて同じスピードで動いているって言えば良いんだと思う。だから急ブレーキとか踏まれても問題は無い」
「中々便利ですね、それ」
ソラは先代プリキュアの力の利便性に感心しているとアサヒは少し困ったような顔を見せる。
「うーん。でもそんな言う程便利でも無いよ?だって……俺、この状態から一歩たりとも動けないし……何なら痒い場所とかあっても搔くとかできないんだ」
「えっ……そうなの?」
「もしかして……体ごと空気圧で固定してるから動けないのかな」
アサヒの今の状態は一見楽な状態に見えるのだが、残念ながらそんな事は無い。急ブレーキやカーブを含めた車の動きにオートで付いていく機能を備えているが故に体を完全固定しなければならず。瞬きや呼吸くらいはちゃんとさせてもらえるが、それ以外の一切の動くという行為ができない。
そしてそれは体勢を固定しないといけないのと同じで、長時間同じ姿勢でいる事による痺れとかも0には抑えられない。勿論、先代プリキュアの熱と寒さを扱える能力のおかげで体内の温度調整をリアルタイムで行う事はできるので普通に同じ姿勢をしているよりは肉体へのダメージを抑えているが。
「あとどのくらいかはわからないけど、結構キツイな。これ」
「ッ……帰りは私が代わろうか?」
「いや、帰りは横になれるように頼んでみるよ。その状態で固定できるなら座るよりもマシなはず」
アサヒは座るより、寝転がって楽な姿勢なら長時間固定しても問題無いと考えていた。そのため、ユキは申し訳なさそうにしつつもその意見を尊重する事になる。
「あ、そんな事を話している間に……見えてきたよ。らそ山!」
すると、そんな雑談をしている間に一同は目的地であるらそ山に到着。そして、駐車場に車を停めつつ車を降りると荷物を持って移動を開始する。
「着いた〜!」
「ありがとうございました、あげはさん」
「ふふっ、どういたしまして!」
ユキがあげはにお礼を言うとあげはは嬉しそうに頷く。そんな中で周囲を見渡すと丁度ゴールデンウィーク辺りの日付なのもあって人が多く。山の登山口付近は賑わっていた。
「結構人来てるね!」
「える?」
するとエルが何かに興奮したようにスリングから身を乗り出すようにして手を伸ばし始める。その様子に彼女を抱いていたソラが気づくとエルの興味を持った物の方へと進んでいく。
「えるぅ〜!えるえるるうっ!」
「エルちゃん?」
エルは鼻息が荒くなる程に興奮し、ユキ達は何が彼女をそこまで動かす事になったのか余計に気になった。
「エルちゃん、凄く興奮してる」
「そのくらいプリンセスにとって面白そうな物なのだと思いますよ!」
「あ。あそこ!」
すると、ユキはエルが興味を持った物を察すると指差す。その先にあったのは掲示板のような物で。そこに描かれていたのはツバサのプニバード姿にそっくりな姿をしたマスコットキャラと思わしきキャラであった。
また次回もお楽しみに。