熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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壁画アートと同時戦線

あげはからのお願いがあってツバサとヒョウはその日の昼の時間を空けた。そして、その時間が来るとあげはは二人に加えてかけるやエルと共にとある場所へと行く事になる。

 

「あげはさん。無理したらダメって言ったよね?」

 

「あはは……ごめんね。本当は私達だけで来るつもりだったけど」

 

「はぁ……まぁ、でも皆で行った方が楽しい場所だし別に良いけど」

 

「あっ。皆、着いたよ!」

 

あげはが声を上げるとそこにあったのは自然公園の中に存在する横に長く広がった壁に描かれた園児達の壁画であった。

 

「あれは……」

 

「もしかして……」

 

「そう。私達が前に実習に行ったソラシド保育園の子供達が描いた壁画アートだよ」

 

そこには園児達が描いた絵が自由に広がっており、公園や草むらの情景、大きな木に海の中と言った色んな場面が描かれている。

 

「あれ?ここだけ何も書かれてませんね」

 

「あっ。そう言えば私が前にここに来た時に園児達が描いている所を見たんだけど、保育園の先生がここは私やあげは先生やかける先生達が書く所って言ってたわね」

 

ヒョウがそう言った瞬間、ツバサが最初頷いていたがいきなり彼の頭に疑問符が浮かぶ。

 

「そうなんですね……って、ん?“前にここに来た”?……ヒョウ、もしかして」

 

「べっ、べっ、別に……前に保育園に行った時に園児達にプニバード姿を愛でられる事に味を占めて何度も行こうだなんてそんな……」

 

「ヒョ〜ウ?」

 

「わ、悪かったわよ……。……うう」

 

ヒョウはツバサに戒められて少し寂しそうな声を上げる。彼女は彼女で園児達から撫でられるのにハマってしまったらしい。彼女としては頼れるお姉さん像を元々目指していたはずなのに何故か可愛がられる方に気持ちが入った辺り、彼女の可愛らしさや幼さが滲み出ている。

 

「ま、兎に角俺達が描いて良いと言われたし。折角だから皆で描こうって訳」

 

「私もいつ言おうかなと思ってたけど、あげはさん達はもう既に話として聞いていたんですね」

 

「そうだね。それじゃあ、早速描こうか!」

 

それからエルを広げたレジャーシートの上に座らせて自由にしてもらうとかけるやあげは。そこにツバサ、ヒョウも加えた四人で壁画アートを開始する。

 

「……実はヒョウちゃんが前にここに来ていたのは知ってて。それと同時に保育園の先生から実習の記念に三人で描いて欲しいって頼まれたんだ」

 

「でも、引っ越しやら勉強やらで色々と忙しくて二人のタイミングが中々合わなくて。ヒョウちゃんにも連絡できてなかったし」

 

「あれ?だとしたらお二人共。大変な時期だってわかってたのにボク達のお世話もしてたんですか?」

 

「あはは……」

 

あげはが苦笑いする中、ツバサの書く絵を見るとそのあまりもリアルな雲の絵に目を見開いていた。

 

「あっ、上手じゃん少年!」

 

「ん、父さんが絵描きなのでこれくらいは」

 

ちなみに四人が今描いているのは左手から朝焼け、昼間の青空、夕焼け、夜の星々が煌めく空と言った感じに時間の移り変わりを表現している。

 

「ねえ、少年にヒョウちゃん。二人のスカイランドのご両親ってどんな人?」

 

「あっ……ヒョウの両親は……」

 

ツバサはあげはが振った話題を聞いて焦ったような声を出す。ヒョウは両親にあまり良い思い出が無いので、話させるべきでは無いと思ったのだ。

 

「……私の事を見下すような毒親……。でも、アサヒやユキ姉達のおかげでやっと両親から親らしい事をしてもらえるようになったわ」

 

「そう……だったんだ。ごめんね、ヒョウちゃん」

 

「いえ。もう乗り越えた事ですし、気にしてません」

 

ヒョウはそう言って淡々と述べる。彼女もまだ両親と接するのに心の距離感がかなり残っているが、それでもちゃんと向き合うべきだと彼女なりに頑張っていた。

 

「気を取り直して、ツバサ君の方は?」

 

「えっと、ボクの両親はですね。二人共、いつまで経ってもボクの事を子供扱いですよ。……何かと構ってくるので鬱陶しくて。……っ!」

 

ツバサがそう言っていると何かを思い出したかのように声を上げ、それに三人が反応した。

 

「「「どうしたの?」」」

 

「……わかりました。あげはさんやかけるさんの世話焼きな感じ。誰かに似てると思ったら。父さん、母さんに似てるんだなって」

 

それを聞いた瞬間、二人は顔を見合わせるとすぐに目を逸らして僅かに頬を赤らめる。そして、それを見たツバサは慌てて訂正した。

 

「あっ、ごめんなさい。失礼な事を言って」

 

「「……ッ!ううん。大丈夫だよ」」

 

二人は声を揃えてそう返すが、お互いに先程言われた両親という言葉に気持ちが行ってしまうとかけるはあげはが妻。あげははかけるが夫だという想像をしてしまって完全に意識。僅かに混乱してしまう。

 

「……あれ?お二人共、もしかして……」

 

ヒョウもそんな二人の様子に気がつくと敢えてそれ以上は口にせずに黙って作業を続けた。そんな中、沈黙を破るようにあげはが話し始める。

 

「ツバサ君やヒョウちゃん。エルちゃんにソラちゃん、ましろん。アサヒにユキちゃん。皆家族が全員揃ってなくて。だからかな。色々とやってあげたくなっちゃうんだよね。皆、いっぱい頑張っていると知ってるし」

 

あげはの言葉を聞いて他の三人はあげはの方を向くと彼女が一人頑張る理由を知り、考える。すると足元でペタペタという音とエルが笑う声が聞こえてきた。

 

「えるぅ!」

 

四人がその方を向くとそこにはエルが手にピンクや黄色の絵の具を付けて壁にペタペタと手を置いて遊んでいた。

 

「「あっ!」」

 

更にそのエルに気を取られたせいか、ヒョウは夜空に浮かべる星を描こうとしていたはずなのに緑の絵の具を付けて壁に線として描いてしまっていた。

 

「ヒョウちゃん!絵の具の色!」

 

「え?ああっ!」

 

かけるが慌てて訂正するも、もう遅い。ヒョウの描いた緑のラインは思いっきり夜空の部分にかかってしまっていた。

 

「プリンセス、ダメですよ。めっ」

 

「め……」

 

エルはツバサに戒められて落ち込み、ヒョウもやらかしてしまったと頭を抱えてしまう。

 

「すみません……。折角皆で良い絵を描いていたのに……」

 

「いや、エルちゃんのその手型もヒョウちゃんが間違えて描いたその線も全然活かせるし、寧ろ良いよ!」

 

「え?」

 

あげははそう言うとエルの手型の下に緑の茎や葉を描き足してチューリップに早替わりさせ、更に隣の方は脚やクチバシ、目を描いてヒヨコ風にアレンジした。

 

「どうかな?」

 

「えるぅ!」

 

「あはは!良いですね!」

 

更にかけるはあげはの意図をちゃんと読み取ったのか、ヒョウが間違えて描いた緑のラインに少し黄緑の線や色が空に溶けていくような雰囲気を付け足すと夕焼けから夜空にかかった緑のオーロラへと変化させて活かした。

 

「はい。これでヒョウちゃんの描いた線もオーロラとして活かせた」

 

「凄い……かけるさん、こんなに絵が上手だったなんて」

 

「まるでボクの父さんみたいです!」

 

「ありがと。高校時代に演劇部で舞台装置に色を塗った経験を活かせて良かったよ」

 

「あっ、その時の写真。見せてもらっても良いですか?」

 

ヒョウに言われてかけるが見せるとそれは背景舞台として夜空の星々が煌めく空が美しく描かれており、かけるはこれを一人で描いたようなのだ。

 

「かける君、高校時代の得意科目は美術だったらしいしね」

 

かけるの新たな一面が明らかになった所で四人はエルも加えて絵の制作を再開する事に。

 

「エルちゃん、もっとお手てをペタペタしよ!」

 

「える!ペタ、ペタ!」

 

「ツバサ君ももっと自由にして良いよ」

 

「良いんですか?」

 

「その方が四人での合作って感じがするしね!」

 

それから四人は絵の制作を続けていく。そして、完成した絵は日の出の空が朝焼けとして輝き、そこから昼の空にまでかかる虹。空には気球や飛行機。鳥や蝶も羽ばたいて夕焼けの空から夜の空へと煌めくオーロラ、夜空には星に加えて月も満ちて輝いている。地面の方には草原に加えて天気雨ならぬ天気雪のような風景の中で元気よく走っているツバサとヒョウのプニバード姿。エルの手を使ったチューリップ等の花も咲いた絵となっている。

 

「完成!!」

 

あげはがそう言ってツバサ、ヒョウ、エルは拍手をした。そこに大人二人組がお礼を言う。

 

「ありがとう!三人のおかげで最高の壁画ができたよ」

 

「皆で楽しく作ったこの壁画。園児達も見たらきっと喜ぶしね!」

 

「あ。でも、本当に良かったですか?元々頼まれていたヒョウは兎も角、ボクやプリンセスも入ってしまって」

 

「ふふっ。だから良いんじゃん。相乗効果ってやつだよ」

 

「ああ。俺達二人やヒョウちゃんも加えた三人だけよりももっとずっと楽しい絵になったしね」

 

「それなら良かったわ。それに、園児達の笑顔が見れるのなら頑張った甲斐があったものね」

 

四人が話しているとそこにいきなり後ろから声がかかってくる。それは、今四人が一番聞きたく無い声でもあった。

 

「ああ。なんて可哀想なんだ……。折角三人も増えたのに、ここにいるのは君達四人だけだなんてね」

 

そこにいたのは一人澄まし顔でカッコを付けたようなポーズを取るバッタモンダーである。

 

「「「バッタモン……」」」

 

「何よ、アンタに用は無いのよアッホモンダー!」

 

ヒョウが一人バッタモンダーをわざと言い間違えて悪口にしたために三人は呆気に取られる。勿論バッタモンダー本人は苛立つが、怒る気持ちを何とか抑えた。

 

「誰がアホだ!くっ……お前はいつもいつも憎まれ口を叩いてくれて……だが、あんまり調子に乗るなよ?カモン!アンダーグエナジー!」

 

それから彼が指を鳴らすとアンダーグエナジーが召喚。そしてそれは近くにあったゴミ箱の中に吸い込まれるとそれがランボーグへと変化した。

 

「ランボーグ!」

 

「皆、ここは私達で!」

 

あげはの言葉に三人は揃って変身アイテムを構える中、その様子を見た小鳥が近くの木から飛び立っていく。その鳥はツバサやヒョウの鳥友達で、学校から帰る途中のユキ達四人の元に急いで行った。

 

「それでね、ソラちゃん……」

 

「何でしょうか。ましろさ……」

 

「「ピー!ピピピッ!」」

 

ユキ達四人はいきなり現れた鳥達に驚くが、それがツバサやヒョウの鳥友達とわかると何が起きているかを理解。ツバサ達がいる自然公園に向かおうとする。

 

「皆、早く応援に行こう!」

 

「ああ。そうと決まれば……」

 

四人は素早い移動のためにプリキュアに変身しようとするが、そこにいきなり竜巻が降り立つとヒューストムが現れた。

 

「なっ!?」

 

「ヒューストム……」

 

「よっ。元気にしてたか?」

 

「今はあなたの相手をしている暇は……」

 

「そう連れない事言うなよ……とは言っても、俺の今回の目的は君達への足止めのための駒を出すだけだけどね。来い!アンダーグエナジー!」

 

するとヒューストムが指を鳴らした瞬間、彼から呼び出されたアンダーグエナジーは近くに停まっていた自転車の中に吸い込まれるとランボーグへと変身する。

 

「ランボーグ!」

 

「自転車のランボーグか……」

 

「さて、足止め用の駒は出せた。次はアイツらへのリベンジと行こう」

 

ヒューストムはさっさとその場から撤退。どうやら今回は四人を止めるためだけに現れたらしい。

 

「ランボーグ!」

 

ランボーグの突進を四人は何とか躱すと四人は光と共にプリキュアへと変身。

 

「「「「ひろがるチェンジ!」」」」

 

「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」

 

「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!」

 

「夜空にひろがる煌めく幻想!キュアオーロラ!」

 

「日暮れにひろがる輝く月!キュアムーンライズ!」

 

「「「「レディ……ゴー!ひろがるスカイ!プリキュア!」」」」

 

四人が変身するとランボーグに向き合うが、あまり膠着しているわけにはいかない。ヒューストムが去って行ったという事は恐らく彼もツバサ達のいる方向に向かったという事だ。

 

「くっ。こんな所で足止めを喰らうなんて」

 

「スカイとプリズムはツバサ君達の所に!」

 

「ここは俺とオーロラで止める!」

 

「わかった!お願いね!」

 

ムーンライズとオーロラは咄嗟の判断でスカイとプリズムを先行させて向かわせると二人はその移動を気弾でフォロー。ランボーグとの睨み合いを継続させる。

 

「ラン……」

 

「お前の相手は」

 

「私達よ!」

 

こうして、敵からの二箇所同時襲撃にプリキュア達は臨戦態勢を敷く事になるのであった。




また次回もお楽しみに。
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