熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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あげはの目指す目標 奪われたミラージュペン

あげはが時間になったという事で話を終えて一同は街へと移動を開始する。ユキ、アサヒ、ソラ、ましろ、エルの五人はあげはの運転するハマーに乗るとその向かう先にあったのはソラシド市にある専門学校であった。

 

「わぁ……ここがあげはさんの用事があるという場所ですね!?」

 

「うん。私、この学校の校長先生との話があるから行かないとだから。一応校舎外の学校の敷地でゆっくりぐらいはできると思うし、そこで待ってて」

 

「わかったよ。あげはちゃん、頑張ってきてね!」

 

「あげは姉、行ってらっしゃい」

 

こうして、あげはは一人校長先生とお話をするために校舎内へと向かって歩いていく。そんな中、ユキ、ソラ、アサヒ、ましろの四人はあげはの話が終わるまで暇な時間になってしまうのでエルと共にひとまず学校の中の敷地にあるベンチで座る事にした。

 

「そういえば、あの建物の中には入ったらダメなのですか?」

 

「うーん、エルちゃんもいるし。学校はまだ休みの期間だろうからあまり良く無いのかも」

 

アサヒやましろが春休み期間であるようにこの専門学校……ソラシド福祉保育専門学校も未だに春休みの真っ只中。そのため、校舎内で授業はやっていない。幾らこれから入学する生徒の関係者だからと言って、敷地内は兎も角、校舎内にまで入るのは迷惑になってしまうだろう。

 

「える?」

 

「ここはね、保育士さんの学校だよ」

 

するとエルはここが何の場所に当たるのかわからないためにましろへと質問してきた。

 

「「保育士?」」

 

ましろからの言葉に対し、ユキとソラの二人も何の事だかわからずに首を傾げる。スカイランド組である二人にとっても保育士というのは初めて聞く単語なのだ。

 

「小さい子供のお世話をする先生の事だよ。あげはちゃん、昔から保育士さんになりたいって言ってたんだ」

 

「そうなんですね!」

 

「あ、それであげは姉が目指すのは保育士は保育士でも最強の保育士なんだと」

 

「最強の保育士……何だか強そうですね!」

 

「いや、多分物理的に強くなるって事じゃ無いと思うぞ?」

 

ソラは最強の保育士と聞いてあげはがトレーニングをして強くなった上で小さい子供を強くするためにお世話をするというイメージを浮かべた。勿論、保育士はそういう事をするための職業じゃ無いのでアサヒが否定する。

 

「最強の保育士……それがあげはさんの目標……」

 

ユキは小さくそう呟く。するとましろはあげはに憧れるような声色で彼女の事を褒め出した。

 

「あげはちゃん、なりたい物のために頑張ってる。偉いよね!」

 

「良いよなぁ、あげは姉。将来の目標をちゃんと持ってるってさ」

 

アサヒやましろがあげはへの思いを馳せる中でましろの方は自分が抱いているエルの方を向くと話しかけた。

 

「ねぇ、エルちゃんは大人になったら何になりたいの?」

 

「える……?」

 

エルはましろに聞かれて首を傾げる。いきなりそんな事を言われても何の事やらと言わんばかりの声色にアサヒはましろへとツッコミを入れた。

 

「ましろ、流石にそれはエルちゃんには早過ぎる質問じゃないか?」

 

「あはは……」

 

そんなやり取りにユキは苦笑い。流石に赤ちゃんであるエルにはまだまだ知らないことが多い。将来のなりたい事を聞かれても返答に困るだろう。

 

「それに、エルちゃんってプリンセスだろ?多分、将来は……」

 

「あっ、そっか……。多分スカイランドでお姫様になるんだよね」

 

加えて、この先スカイランドに戻ってカバトンを撃退したらエルがこれ以上狙われなくなる。そうなればきっと彼女は順調に育っていくだろうし、その頃にはスカイランドのお城でプリンセスとしての教育を受ける事になるだろう。

 

「あ、そういえばましろさんやアサヒ君は何になりたいんです?」

 

「そうだ、二人が将来なりたい事……気になるかも」

 

ソラとユキの二人はアサヒやましろの持っている将来の夢に関して気になった様子だ。そのため、早速二人へと質問をした。

 

「私?私はね……」

 

「うーん、将来の夢や目標かぁ……」

 

それから少しの間、静寂が続いた。そして、二人からの回答が中々得られないためにユキやソラは思わず首を傾げる。すると二人揃って慌てたように声を上げた。

 

「「……特に無い!?」」

 

その直後、ましろはそのまま頭を抱えて悩み始めた。それは将来の夢が無くて焦っている人の顔色である。そんな彼女とは対照的にアサヒの方はまだ比較的冷静だった。

 

「(……そういえば、クラスの子達は……)」

 

ましろは学校に通うクラスメイト達の様子を思い出す。その中にはイラストレーター、公務員、キュアチューバーなどと言った目標を既に持った人もそれなりにいた。そのため、ましろは余計に焦りの気持ちが増してしまう。

 

「(……いつの間にか、なりたい物とか決まってなくてダメなパターン?でも、私って得意な事とか特に無いし……。そんな人間が何かになれるの?疑問だよ〜!)」

 

そんな彼女を見てユキはどうにか彼女をフォローしようと恐る恐る話しかける。

 

「あ、あの。ましろちゃん?そんなに慌てなくてもゆっくり決めたら良いんじゃない?私もソラちゃんと比べたらまだ夢は漠然として決まってないから……」

 

「でも、私には人と比べて特に優れてる特技とか無いんだよ?」

 

ましろがそんな風に弱気になる中でアサヒはそんなましろを落ち着かせるように彼女へとアドバイスをした。

 

「……俺は別に今は無理して決める必要は無いと思うかな。俺だって特にやりたい事を見つけてるわけじゃ無い。それに、今決めなかったらダメっていうわけでも無いんだからさ」

 

「え?って事はアサヒ君も」

 

「ああ。俺もまずやりたい事から探さないといけないかな。色々選択肢はあるわけだし。そういえば、ソラはヒーローになるのが夢なんだろ?」

 

「はい!私は私を助けてくれたあの人のような素敵なヒーローになりたいです!」

 

そんな風に四人が将来の事について色々と会話していると突然アサヒは何かを見つける。

 

「……あれ?」

 

そんな彼の様子に他の三人も気がつくとその視線の先を見る。そこにはモヒカン頭をした紫の子豚がどこかへと歩いていた。

 

そんな子豚の歩く先にあるのは裏山で見た毒キノコである。更に言えば、キノコのある場所の近くには棒によって支えられているザルが存在し、棒にはロープが括られている。

 

「(……え?どゆこと?豚……さん?ていうか、あの罠何?昭和の罠?しかもあの毒キノコ、川で見たやつだよね?」

 

何とも古典的な罠に見た事のある顔つきの子豚が誰から見ても明らかなくらいに不自然な動きで罠へと一直線に進んでいる。そして、罠の近くにあるキノコの匂いを嗅ぐとチラリとこちらを気にしていた。するとユキがアサヒやましろへと話しかけてくる。

 

「……何あれ?ましろちゃん、アサヒ君、あの罠は多分……」

 

「うん、怪し過ぎるし。多分カバトンの罠だよ」

 

「本当にわっかりやすいなぁ。……てか、あんなのに俺達が引っかかると思ってんのか?」

 

「二人もそう思うよね?ソラちゃん、あれは無視した方が……」

 

ユキ、ましろ、アサヒの三人はあの仕掛けがカバトンの罠であると一瞬で見抜くと無視を決め込む。ユキはその事をソラへと伝えようとするが、その前にソラは立って声を上げる。

 

「ブタさんが危ない!」

 

「「いや、罠だよね!?」」

 

ユキとましろがそんなソラへと同時にツッコミを入れるが、既にソラは動き出してしまう。どうやら、こんなにわかりやすい罠にソラは気が付かなかったらしい。

 

「ソラ待て、止まれ!」

 

アサヒが動いたソラを止めようとするが、もう遅い。もう既にソラは罠を押し退けるように飛び込んで子豚を助け出してしまった。

 

「危ない所でした。ブタさん。あれは罠ですよ。近寄ってはいけません」

 

「……カバトントン」

 

ソラがそう子豚に言い聞かせると子豚は喋り出して呪文を唱える。次の瞬間、子豚の額にの宝石が光ると突然周囲に黒煙が広がった。

 

「うわっ!?」

 

ソラがいきなり出てきた黒煙に驚いてむせてしまうと少しして煙は消える。ただ、その時点で既に目の前には元の姿へと戻ったカバトンが立っていた。

 

「ゴホッ……ゴホッ……あなたは……」

 

「ぐっふっふ。このカバトン様がブタに化けていたとは……あっ、お釈迦様でも気づくめぇ!」

 

「な、なんてずる賢い!」

 

「コントかな?」

 

「えるえる」

 

「もう、ソラちゃんってば……」

 

「幾ら何でもソラの奴……純粋過ぎるだろ」

 

ソラ以外の三人呆れた様子でそれを見て、エルも同意するように頷く中でユキは何かに気がつくとソラへと叫んだ。

 

「ッ!?ソラちゃん!腰にあったペンは!?」

 

「えっ!?……嘘、私のペンが無くなってます!!」

 

ユキからそれを聞いてソラが慌てて腰を見るとそこにはミラージュペンが無くなっており、カバトンはニヤニヤと笑みを浮かべながらソラへと話しかける。

 

「お前が無くしたペンってのはこれの事なのねん?」

 

そこにあったのは確かにソラのミラージュペンであった。どうやら先程の煙幕の際に奪ったらしい。

 

「ッ……返してください!」

 

ソラがカバトンに駆け寄ろうとするとカバトンはすかさず後ろに飛び退く。そして、いつものようにランボーグを召喚した。

 

「やっと気づいたのねん。でももう遅い!カモン!アンダーグエナジー!」

 

するとアンダーグエナジーは先程ソラを騙すために使ったキノコの中に吸い込まれていくとその姿が変化。キノコのランボーグが降臨する事になる。

 

「ランボーグ!」

 

ランボーグの登場に周囲にいる人々は慌てて逃げ出していく。ユキ達はこのタイミングで出てきたランボーグに警戒体勢を敷く事になった。

 

「ランボーグ……こんな時にまで!」

 

「にゃーっはっはっは!プリキュアになれないお前なんて怖く無いのねん!今日こそプリンセス・エルをいただくぜ!」

 

プリキュアに変身できなくなったソラは戦えない。そんな彼女の窮地にユキは黙って見ているつもりは無かった。

 

「だったら、私が……うっ!?」

 

しかし、ユキの方は今朝の時点で一度完全に体力切れしてしまったのだ。その疲労が半日足らずで抜けるはずが無い。そのため、足の力が一瞬抜けるとフラついてしまう。

 

「ユキちゃん!?まさか、まだ体力が……」

 

「はぁ……はぁ……大丈夫。ソラちゃんが戦えないなら……私が守らなきゃ」

 

ただ、今のユキに任せっきりなのも危険である。だからこそ、アサヒはすぐに動いた。ソラが変身できず、ユキが満身創痍な今はまともに戦えるのは彼だけだからである。

 

「……だったら、ソラ、ましろ。二人は下がってろ。それと、ユキも無理するな。この場は俺がどうにかしてみせる」

 

「へん、プリキュアになりたてで実戦経験の少ないお前にどうにかできるとでも思ってるのねん?」

 

「それでもどうにかしてやるよ。それが俺の今やるべき事だからだ!」

 

アサヒは手にミラージュペンを出すとすかさずプリキュアへと変身を開始した。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!サンライズ!」

 

そして、アサヒの姿が光に包まれると炎と共にキュアサンライズへと変身。名乗りを挙げた。

 

「夜明けにひろがる眩い朝日!キュアサンライズ!」

 

アサヒはサンライズに変身すると構える。彼がやる気になったのを見てカバトンはニヤリと笑った。サンライズ一人だけなら勝てると思っているのである。

 

そんな中、ユキも足手纏いになりたく無いとどうにかミラージュペンを使って変身した。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!スノー!」

 

ユキもアサヒ同様に光に包まれるとその体をプリキュアへと変身。キュアスノーとなる。

 

「静かにひろがる白い雪景色!キュアスノー!」

 

スノーはサンライズの隣に並ぶと構えるが、プリキュアになれてもまだ重い疲労感は残っているために戦う前の時点でもう既に息が荒い。

 

「スノー、お前……」

 

「はぁ……はぁ……私だって戦う力はある……だから、私にも背負わせて……」

 

ただ、足は小刻みに震えている。体に力を入れ続けるのもキツい状態なのだろう。それを見てカバトンは声を上げる。

 

「そっちの脇役はお疲れなのねん。ランボーグ、実質アイツ一人だけだ。さっさと倒すのねん」

 

「ランボーグ!」

 

「くっ。ソラ、ましろ!二人だけでもエルちゃんを連れて逃げろ!」

 

「ここは私達がどうにか……うぅ……」

 

「ユキさん、無茶したらダメです!」

 

ソラは体力が枯渇した状態で無理をするスノーを心配した。ただ、変身できない自分では弾除けにすらなれないために進んで前には出られない。

 

彼女がもどかしさを感じていると校舎の方からあげはが出てきてソラやましろに呼びかけた。

 

「ソラちゃん、ましろん、こっち!あの二人は誰だかわからないけど、今のうちに安全な場所へ!」

 

あげはは二人が変身した所を見ていないためにサンライズとスノーの正体を知らない様子だった。ひとまずソラとましろはユキに無理させたくないという気持ちと逃げないといけないという気持ちの間で葛藤するが、それでも今は逃げるのが優先だと考えて校舎へと走っていく。

 

「二人共、負けたらダメだよ!」

 

「ユキさん、無茶だけはしないでくださいね……」

 

その言葉を残し、二人は急いであげはのいる校舎の方へと逃げていく。それを見届けたサンライズ、スノーはソラ達がひとまず安全な状況になったために安堵の顔を浮かべた。

 

「良かった……建物の中ならランボーグは……」

 

今目の前にいるランボーグは大きいためサイズの関係で校舎の内部には絶対に入れない。そのため、校舎内に逃げ込んだ二人とあげは、エルは大丈夫であると考えたのだ。

 

「ふっ、あの中に行けば安全……と、その考えはちょっと甘いのねん」

 

「「え?」」

 

カバトンが指を鳴らすといきなり小さなランボーグがキノコの傘の下から生えて出てくる。これにより、ランボーグは二体に増えてしまうとソラ達を追えるようになった。

 

「さぁ、プリンセスを捕まえてこい!」

 

「ランボーグ!」

 

小型のランボーグはサンライズとスノーを無視して校舎へと走っていく。スノーはそれを見てサンライズへと小型ランボーグを追うように言った。

 

「サンライズ、サンライズはあっちの小さなランボーグを……」

 

「でも、それじゃあスノーが」

 

先程から言及している通り、今のスノーはまともな戦力として数えられるような状態じゃ無い。彼女を一人残せば痛めつけられるのではないかと感じた。

 

「私は平気。私なんかよりも今はソラちゃん達が危険な目に遭わないようにするのが一番。……大丈夫、私はできる限り時間を使って引きつけるから」

 

幸いな事に、カバトンにはソラのミラージュペンのみを奪って撤退するという考えは存在しない。逆に言えば、エルを捕まえるまではペンを取り返すチャンスがある。だからこそ元気なサンライズが小型ランボーグを倒し、一緒に二人でミラージュペンを取り返しつつもう一体を浄化すれば良いとの判断だ。

 

「……わかった。その代わり、この前みたいに無謀な攻めをして体力を削るなよ?」

 

「うん」

 

サンライズは疲れ切っているスノーに戦わせるのは後ろめたさを感じたが、それでも今はソラ達の元に行ったランボーグを止めるのが先決。そのためサンライズは小型のランボーグを止めるべく追いかけた。

 

「チッ……やっぱり二手に別れたか」

 

「ええ、これでソラちゃん達を……」

 

しかし、次の瞬間。突如としてランボーグを追いかけたサンライズの走る先の地面へと紫の斬撃波が激突して爆発する。

 

「なっ!?」

 

サンライズが爆発を見て慌てて後ろに飛び退くと彼の前に何かの影が降り立った。

 

「何だ!?今の……」

 

「え……」

 

スノーも音に気が付いて慌てて振り返る中、そこにいたのは紫のローブを纏い、顔にはお面をして背中には納刀された刀がある。……それは、スカイランドでスノーと対面した仮面の男であった。

 

「久しぶりだな」

 

仮面の男は落ち着いた様子で目の前にいる二人のプリキュアへと話しかける。こうして、事態は更に悪い方へと向かってしまうのだった。




また次回もお楽しみに。
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