熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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番外ストーリー(未来編) フユカの憂鬱

一人の少女は目を覚ました。周りを見渡すとそこはお城の一室である。少女は起き上がると鏡を見た。そこに映ったのはサラサラで綺麗な白い髪をセミロングに下ろしている。瞳は薄い黄色。彼女の名前はフユカ。今現在彼女は中学二年生の13歳。

 

「ん……」

 

彼女はいつものルーティーンである洗顔をすると目を覚めさせる。それから服を着替えるとそこにコンコンとノックが鳴った。

 

「フユカお嬢様。おはようございます。入ってもよろしいでしょうか?」

 

「どうぞ」

 

フユカがオッケーを出すとそこに入ってきたのは王城に支えるメイドさんだ。フユカはそのメイドから今日の予定について伝えられる。

 

「以上になります」

 

「わかったわ。……いつもありがと」

 

「いえ、これが私のお勤めですので」

 

フユカが今現在いるのはスカイランドの王城。フユカは両親や自身の義理の祖父や祖母達とスカイランドの王城で暮らしている。……義理の祖父や祖母はつい先日、スカイランドの国王の座を養子であるエルへと譲った。なので今はクイーン・エルと呼ばれている。

 

「おはようフユカ」

 

「起きたのね」

 

「おはようございます。父様、母様」

 

フユカが廊下に出てから部屋を移動。食事を摂る場所に行くとそこにいたのは自分を産んでくれた両親。アサヒ、ユキと会う。二人共三十代の半ばを過ぎてもうすっかり大人になっていた。だからこそフユカの両親としていられるわけになるが。

 

するとドタドタという音と共に赤髪をショートヘアにして薄い水色の瞳。そして元気そうな感じを出した少年……アキラが現れる。彼はフユカの二つ下で今現在小学六年生。一年後には中学生になるはずなのに相変わらず元気な様子である。

 

「アキラ。もう少し静かに歩きなさい。はしたないわよ」

 

「ええー。フユカ姉は厳しすぎるよ。俺達まだ子供だし」

 

「それでもよ。私達は王族の子供っていう自覚は持って。あと、クイーン・エル様ももう来るから煩くしたら失礼よ」

 

そう言ってフユカはアキラを戒める。それでもアキラは元気を持て余してしまうのか、なかなか落ち着かない。フユカはそれを見て溜め息を吐いた。

 

「アキラ兄さん。フユカ姉さんの言う通りだよ。あんまり周りに迷惑をかけたらダメ」

 

更にアキラの後を追うように来たのは白いショートヘアで物静かな雰囲気を出し、薄い赤の瞳をした少年。ユキヤが来る。彼はフユカの四つ下。つまり小学四年なのだが、もうこの時点でかなり大人びているのか難しい知識とかも積極的に覚えようとしている。

 

「ユキヤ。お前は静か過ぎるんだよ。てか、数年前まで俺と元気に遊んだじゃん」

 

「俺だって成長してるの。それにあんまり体を動かすのは好きじゃない」

 

アキラとユキヤはアサヒとユキが産んだ兄弟であるのにかなり性格が違う。と言うより、殆ど真逆だ。アキラは割と活発で運動が得意。男と女の差があるとはいえ、もうこの時点で歳上のフユカを追い抜いてしまっている。恐らく彼には運動面の才能が濃いのだろう。

 

逆にユキヤは運動面はあまり冴えない。同学年の男子と比べるとそこまで劣っているわけではないが、平均よりも下にはなる。だが、それを補って余りある勉強面の才能が目覚ましい。下手をすればこの年齢で中学生の勉強を理解できるぐらいだろう。

 

「まぁまぁ、三人共仲良くね」

 

「うちの子供達は今日も元気そうで何よりだ」

 

フユカはこの正反対の二人の弟を上手く纏めている方である。彼女も彼女で人を纏め上げるカリスマや人を見る確かな目。そして長女としてしっかりとしないといけないという気持ちが強いために二人の弟をちゃんとした路線に乗せようと毎日奮闘している。王城に勤めているメイドや青の護衛隊。兵士達からの評判も割と良い方で、フユカの人を纏める才能には一目置かれている程だ。

 

「後は……」

 

最後にメイドに連れられてやってきたのは末っ子娘。赤い髪をミディアムにして薄いミントグリーンの瞳をし、恥ずかしそうにメイドの脚に引っ付いている少女……ヒナである。彼女はフユカから数えると六つ下。小学二年生に当たる。

 

「おはよう、ヒナ」

 

「お、おはよう……ございます……父様……母様」

 

ヒナは今の所、他の三人程目立った才能は開花していない。運動も勉強も人の上に立って纏め上げるカリスマも無い。前者二つは兎も角、カリスマに関しては末っ子という事で、あまり自身の糧にできる経験が積みにくい。よってそこが育たないのは半ば仕方ない所だろう。だが、彼女は二人の兄に勉強、運動の両方の才能が遠く及ばないのをかなり気にしている節がある。

 

メイドに張り付いているのも父や母から今にも怒られるのかもしれないとビクビクしているのだ。

 

「おいで、ヒナ。俺達はヒナの事を怒ったりしないよ」

 

「一緒にご飯を食べましょ」

 

「は、はい……」

 

ヒナは怒られない事がわかるとようやく歩み寄ってきた。アサヒもユキも何故ヒナがこんな風に育ってしまったのかと疑問を抱いている。夜中に子供達が寝静まってから二人で何度も話し合っているぐらいだ。だが、フユカは知っている。何故ヒナがこのような感情を抱いてしまっているのか。

 

「(……無理無いわ。周りにいる両親も兄弟達も皆優秀なんだから……)」

 

フユカは物心ついた頃からアサヒやユキがすれ違う人々達からいつも先に頭を下げてもらって挨拶を受けているというのを見てきた。つまり、自分の両親は周りから尊敬されているのだ。幼い頃に話を聞かされたが、二人はかつてプリキュアとしてスカイランドや自分達が訪れるソラシド市を守るべく当時敵対していたアンダーグ帝国の幹部達からこの世界を守ってきた伝説の戦士だと。

 

その功績だけでは無い。それ以外を見ても二人揃って優秀なのだ。父のアサヒは青の護衛隊において、シャララ隊長やソラ・ハレワタールと同じレベルかそれ以上とまで言われている。それに加えて彼は優しい。困った人を放ってはおかず。必ずと言って良いほどに助けていた。民から信頼されるのも当然だろう。

 

ユキは元青の護衛隊のメンバーで自分達を産むようになって子育てに専念するべく引退。その後自分達がある程度育って復帰できるようになるとスカイランドの統治について若い女王であるクイーン・エルの補佐へと就任。それ以降は彼女も民から大きな信頼を寄せられるようになった。

 

それに加えて自分の姉や兄は皆何かしら飛び抜けた才能を持っているときた。自分一人だけ未だに飛び抜けた才能を持っていないヒナは怯えてしまっているのだ。下手をしたら自分は無能な人間だと見なされているかもしれないと。

 

「ヒナ、大丈夫。怖がらなくても平気よ」

 

そんな時は自分が手を差し伸べる。そして、彼女と手を繋ぐとようやく落ち着いたように安堵の顔を浮かべた。

 

「(早い事どうにかしないとね。ヒナも怯え癖が付いちゃってるし。父様も母様も心配してる。姉としてちゃんと導かないと)」

 

今現在、アサヒとユキの子供は四人。その数はかつてアサヒがユキと一緒に作りたいと言っていた子供の人数と一致する。アサヒもユキも幸せ者だろう。

 

家族が全員揃った所でクイーン・エルや先王、王太后も来るとアサヒやユキも三人に先に頭を下げて挨拶をした。フユカは父や母がスカイランドの王族として接する際に、父や母から先に挨拶をするのはこの三人が相手の時ぐらいだと知っている。そのため、やはり自分の両親は偉大な人達なのだと頭に根強く刻まれていた。

 

「そう固くならなくても大丈夫ですよ。アサヒ、ユキ」

 

「いえ。この国の女王。クイーン・エル様を相手に馴れ馴れしくするのは失礼です」

 

「形だけでもこのような挨拶になる事をお許しください」

 

元々エルは赤ちゃんの時にアサヒやユキ達に守られていたというのもあってエルとしては気軽に接して欲しい気持ちが強いものの、正当な先王や王太后の娘にして跡継ぎであるエルを相手にあくまで分家の子息である二人は形式上だけでもこの態度を取るべきだと判断しているのだ。親しい間にも礼儀ありという事だろう。

 

それから一同は大きなテーブルを囲んで食事となる。その様子は何気ない家族の和気藹々とした空間だ。それでもフユカはやはり神経を擦り減らしてしまう。何しろまだアキラはそういう上下関係を気にしない年齢。ユキヤは多少は理解しているようだが、それでも子供っぽさからか失礼な態度を取る時がある。ヒナは表面上は取り繕っているものの、肩身が狭そうにしている。両親は前者二人は気にしてないが、ヒナに関してはやはり気にしてしまっている様子だ。

 

「(できれば私がしっかりしないといけないんだけど、ヒナの面倒を見るので手一杯……。アキラやユキヤが偶に失礼な事を言うからヒヤヒヤする……)」

 

フユカは長女で四人の兄妹の中の一番上。という事もあって三人を制御しないといけないという責任感が強くて躍起になっている。それからご飯を食べ終わると今日は自分はそこまで忙しくないためにいつもの体のトレーニングから勉強の時間へと移っていく。そんな中、両親はいつものようにイチャイチャし始めた。具体的にはアサヒがユキにスキンシップを求めてユキは顔を赤くしながら奥の部屋でねと受け止めるのだ。

 

「(……もう二人とも良い歳なんだから良い加減にして……。いつまでバカップルのつもりなのよ。というか、中学生の娘の前でその話をするとか狂気の沙汰としか思えないわ)」

 

先程もあったが、もう既にアサヒもユキも三十代半ば。なのにこの二人はいつまでも熱が冷めない。目の前に中学生にもなる娘がいるのに普通に甘いやり取りをしている。だが、正直フユカは羨ましい気持ちもあった。

 

「良いなぁ……私も自分を大切にしてくれる恋人が欲しい……。勿論、あんなバカップルみたいにいつまでもイチャイチャするのは御免よ。それでも、あんな風に幸せな夫婦になりたいわ」

 

フユカは何だかんだで両親を尊敬している。休みの日にいつもするバカップルぶりは置いておくにしても、二人共フユカの目標として常に高い壁としていてくれるから彼女も自身を高めるために頑張れているのだ。

 

「……絶対に超えてみせるわ。父様や母様が完全に引退する前に……私。二人よりも高名な人になってみせるから」

 

フユカはそう決意して更に己を高めるためにひたすら努力を重ねるのであった。いつか、高い壁として立っている二人を超えてみせる……と。そして、二人に褒めてもらうのだ。自分は使える人間だと二人に認められるために。




また次回もお楽しみに。
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