熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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アサヒの軌跡 夢の中での事

夜も更けていき、深夜帯になる中。ホテルに泊まっているプリキュア達は就寝して夢を見る時間になっていく。

 

そんな中、エンジェリーは一人夜の業務に入っていた。それは、施設が正しく稼働しているか。点検に加えて次に招く客の情報収集や選定を始めていたのだ。すると彼女の体の動きが僅かにカクカクとすると体から火花が散る。

 

「……もう私も限界が近いのでしょうか。まだあの人との約束を果たしていないのに……。恐らく、私が倒れて機能停止すればこのホテルも誰にも認知されなくなって廃業でしょうね」

 

エンジェリーの動力もここを訪れた人々が出す正の感情。だからこそ四百年もの長い間、ホテルを営業しても体に限界が来ることは無かった。

 

「動力は問題ありませんし、恐らくこれからも正常に溜まります。でも、ボロが出る体までは私では治せません。下手をすれば今回のプリキュアの皆様が最後の客になるかもですね」

 

エンジェリーはそう言って名残惜しそうに呟く。すると彼女の視界がブレると変な画面に僅かに差し代わって元の視界に戻った。

 

「……せめて、せめてリュウセイ様の妹様、ルナ様をお救いしてから機能停止したいのに……。このままでは……それも叶いませんね」

 

 

エンジェリーは何となく察していた。もう自分には先が無いのだと。すると彼女の視界に僅かなシステムの異常を検知する画面が映った。

 

「ッ!?これは……。まさか、動力室?何にしても、確認しませんと」

 

エンジェリーが作業をしていたデスクの椅子から立ち上がるとやはりまた体に一瞬火花が散ると動きがカクカクとする。

 

「………」

 

それでもエンジェリーは無理矢理自らの体に言うことを聞かせると異常が起きたとされた動力室へと向かっていく。

 

「せめて、せめて異常が起きるにしても……プリキュアの皆様の手を煩わせるわけには……」

 

エンジェリーはこのホテルの主でたった一人の従業員。これまでも一人で全ての客の面倒を見てきた。だからこそ彼女にもプライドがある。人々を笑顔にするためのサービスを提供する彼女がもてなすべき客に迷惑をかけるわけにはいかない。

 

エンジェリーは先程より重くなった体を何とか動かしつつ動力室に行くためのワープ地点へと移動していくのだった。

 

〜アサヒの夢の中〜

 

ここは夢の中。アサヒが目を開けるとそこは家の中だった。周りを見渡すとそこは赤ちゃん用のベッドの上である。

 

「あーう?」

 

アサヒが声を出そうとするが、自分の声があまりにも上手く出ないと彼は感じると自分の姿を見た。それは、自分が赤ん坊になってしまっていたのだ。

 

アサヒは思わず声を上げようとするが、声が出ない。出したくても自分では出せないのだ。恐らく、アサヒは自分が赤ん坊の頃に見ていた景色だと察する。

 

「(この感じ……ずっと忘れていた。多分ここが俺の生まれた場所だ)」

 

アサヒがそう考えるとそんな彼を覗く男女の姿があった。その二人はとても優しくアサヒへと微笑んでくれる。

 

「アサヒ……お前は父さんと母さんの宝物だ」

 

「どうか健やかにね」

 

「(この人達が……俺の父さんと母さん……)」

 

アサヒは二人の顔立ちを見て自分が二人の子供だと察する事ができた。何しろ、赤茶色の髪の毛や瞳の色は父親譲りの色。顔立ちは母親の方に似ていた。

 

それからアサヒは時が過ぎ去るのを幼い赤ん坊の自分では無く、第三者視点で見ていく。その日々は平穏その物で、両親と共に自分はこのまま穏やかに過ごすかに思えた。

 

すると場面が変わるとそこは漆黒の暗い世界へと切り替わる。そこはまるで闇に包まれた国のようだった。

 

「どうして……どうしてこんな事を……」

 

そこで自分の母親は体中に傷を負いながらも、息子であるアサヒの事を必死に守っていた。母親の周囲にはランボーグと思わしきモヒカンの兵士が多数存在。母親に守られているおかげでアサヒは無傷だが、恐怖に怯えて泣いてしまっていた。そんな中、母親の前にいたのはこの世界の女王のような存在とスキンヘッドに二本のツノを生やした執事のような男である。

 

「スキアヘッドから聞いた。お前の赤ん坊には不思議な力があるそうだな」

 

「何の事……この子にはまだ何も力なんてないわ!」

 

「誤魔化すな。お前の持つそのくすんだ石には先祖から伝わる伝説の戦士の力が宿っていると、この私の知識の宮殿に記憶されている」

 

「……これは確かに私達の家に先祖から伝わる大切な物。でも、今までこの石に認められた人は誰一人として……」

 

アサヒの母親がそう言って抵抗するが、その瞬間。女王からスキアヘッドと呼ばれた男が放った漆黒の光弾がアサヒの母親に命中すると彼女は地面へと叩きつけられて体中の痛みに苦しむ。

 

「ふん、言い逃れはできんぞ。……私は知っている。その赤ん坊こそが石に認められ、伝説の戦士となる存在だ。だからこそここで始末する」

 

「くっ……」

 

アサヒの母親は何としてでもアサヒを守るつもりだった。恐らく、自分は殺されるだろう。それでも彼女は大事な息子を守るために自分の命さえ捧げるつもりだった。

 

するとその瞬間、石が眩い光を放つと赤い炎が燃え立つ。そして、それによって生成されたワームホールが出てくるとそこからいきなり光の速度で太刀が飛び出す。それが近くにいたランボーグを一刀両断して粉砕した。

 

「……現代におけるスカイランド最強の剣士にして青の護衛隊の隊長か」

 

「いや、その名はもう捨てた。俺はもうただのこの子の父親だ」

 

アサヒの父親……アポロ・マブシーナが手にした剣を構えるとアサヒの母親へと声をかける。

 

「お前はアサヒを連れて今すぐ逃げろ。……ソラシド市にお前を匿ってくれる人に心当たりがある」

 

そう言ってアポロが妻に逃げるように言う。しかし、彼女は立とうとすると脚に激痛が走る。

 

「……ッ、この怪我じゃ……もう逃げられない。あなたがアサヒを連れて逃げて……お願い」

 

彼女は先程までランボーグに痛ぶられた影響か、脚に深い怪我を負っており、アサヒを抱いたまま立って逃げられる余力なんて無かった。

 

「お前を一人を置いてなんて行けるか。俺は、俺の家族を守るために護衛隊を辞めたんだ。せめて……」

 

アポロの言葉にも彼の妻は首を縦に振ろうとしない。それどころか、アサヒをアポロへと差し出している。

 

「うぁああんっ!」

 

アサヒは赤ん坊の声で泣く中、スキアヘッドが指を鳴らすとランボーグが目から光線を放つ。

 

「ッ!」

 

アサヒの母親は無理にアサヒをアポロへと預けると痛む脚を動かしてその光線を全て自身の体で受け止めた。

 

「ぎゃあああああっ!?」

 

アサヒの母親はアポロの前で力無く倒れ込むと小声で細々とアサヒへと呼びかける。

 

「お願い……アサヒ、生きて……」

 

「ちく……しょう……!」

 

アポロはアサヒを抱いたままでは戦えないと、一度その場から撤退。ただ、自分の妻までを抱える余裕までは無い。急いで彼が先程石の力で開いたゲートを通るとゲートはすぐに閉じてしまう。ランボーグ達に追って来させないようにするために石の力が働いたのだろう。ただ、石はゲートが閉じると光を失ってしまう。

 

その様子を見ていた今のアサヒは霊体のような姿で唇を噛み締めると悔しさに怒りを込み上げさせる。自分は赤ん坊でどうする事もできなかった。自分の本当の母親が自分を守って倒れたのをただ見ているだけだったのだ。

 

それから赤ん坊のアサヒはアポロの手によって虹ヶ丘ヨヨのいる虹ヶ丘家に預けられた。彼が自分に背を向けて去っていくとそれを最後にアポロも二度とアサヒの前に帰ってくる事は無かった。

 

「俺は、こうして父さんや母さんと生き別れたんだな……」

 

そして、アサヒは元々その家に生まれていたましろと共に育った。ましろやその両親。ヨヨは余所者であるはずの自分に優しくしてくれて。月日は流れ、アサヒはあげはとも出会った。そこでアサヒ、ましろ、あげはという仲良し三人組になると楽しい日々を過ごす。その間、敵からの襲撃は一切無かった。

 

また月日は流れてアサヒとましろは中学生になった。あげはは親の都合で引っ越してしまい、中学一年生が終わって春休み。二人が街を歩いていると……。

 

「「うわぁああああああ!!」」

 

「え?何、何、何、何!?」

 

「………はぁ!?」

 

「そ、そこ!退いてください!」

 

「急にごめんなさい!でも本当に危ないんですぅうう!」

 

いきなり空からソラとユキがやってきた。それからアサヒはプリキュアの力に目覚め、沢山の日々が流れていく。その間にアサヒは異世界からやってきたユキと惹かれ合うと恋人になった。

 

そして、アサヒの視界はまた変化すると脱衣所でのハプニングの後の映像へと変わる。

 

「ま、待てユキ……今のは……」

 

「そっか。……アサヒ君にそう言われて嬉しいな」

 

「……怒ってないのか?ユキ……俺、勝手にユキの裸を見たんだぞ?」

 

「……アサヒ君にだったら……良いよ」

 

ユキはパジャマとなったその姿で恥ずかしそうな顔つきをしてアサヒへと言う。アサヒはユキの方を向こうとするとユキはアサヒを引き込むように体を掴んでそのまま自分を押し倒させた。

 

「……え?ユキ?」

 

「もしさ……もし私がこのまま私を脱がせても良いよって言ったら……どうする?」

 

ユキのその言葉を最後にプツンと映像は途切れた。アサヒはその事に疑問を浮かべる。まだ自分の生きてきた軌跡は終わってない。まだもう少しあるはずなのに。

 

「……ユキ。俺がお前をメチャクチャにしてやる。俺好みの女にして弄んでやるからな」

 

その言葉を聞いてアサヒは目を見開く。そこにいたのはもう一人の自分ことカゲロウだ。

 

「お前!?何で……」

 

「良いのか?俺なんかに構ってよ」

 

するとそこにはカゲロウの手によって痛めつけられて絶望したような顔を浮かべ、プリキュアから変身解除してしまうユキ。それだけじゃない。その近くには同じくカゲロウに痛めつけられたと思われるプリキュア達やアポロン、アルテミス。ソラに至ってはミラージュペンやスカイトーンも使い物にならなくなっていたのだ。

 

「……嘘だ……嘘だ。俺はこんな状況にはまだ……一度も……」

 

「確かにその通り。まだお前の記憶にこの情景は無い」

 

するとアサヒの影であるカゲロウはアサヒの前に姿を現すと邪悪な笑みを浮かべて冷たく言い放った。

 

「だってこの映像は……これから訪れる未来の事だ(・・・・・・・・・・・・)

 

そのまま彼の視界は暗転。アサヒの体にはドンドン黒い泥のような物が張り付いていく。

 

「ッ!?」

 

「お前の進む未来なんて物はな、真っ暗闇以外の何物でもない。安心しな。ここから先の未来は俺がお前の代わりに生きてやる。そうして……お前が愛したあの女は俺が好き放題奴隷のように扱って魔改造してやる」

 

カゲロウの浮かべた不気味な笑みを前にアサヒはそれを振り払うように手を振るうが、まるで闇の中でもがくようで何も変わってくれない。

 

そのままアサヒは目を覚ますとそこはちゃんとホテルの一室だった。周囲のベッドにはちゃんとかける、マリちゃん、拓海が寝ており、一人だけ悪い夢にうなされたようだった。

 

「……なんだったんだ。今の……」

 

アサヒは深呼吸をするとまだ鮮明に覚えている夢の中身を考える。しかし、またすぐに眠気が襲ってきたために彼はまたベッドの上へと寝転ぶ。

 

それから彼はまた目を閉じて夢を見るのだが、今度は先程の辛い夢とは一転して楽しい夢だった。そのために彼は今度こそグッスリとした深い眠りにつく事になる。




また次回もお楽しみに。
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