スノー達がモットウバウゾーを浄化する少し前。サンライズ、ブラックペッパーの男二人組とシャドーの戦闘はサンライズの戦闘スタイルの修正が間に合っておらず、押され気味だった。
「そういや、ムーンライズとサンライズって色々と仕様が違うんだよな……さっさとサンライズの感覚を取り戻さないと!」
「俺を相手にお喋りとは……余裕だな」
シャドーの強さはサンライズが戦っている感じだとギアを二段階解放した後。最終段階の解放は体への負担を度外視していると考えると割と力は出している状態だ。だが、前はサンライズとスノーの二人のコンビでようやくまともに相対できていた。それに対して今回はブラックペッパーの支援込みではあるが一人で喰らいつけている。
「ッ……シャドーの二段階解放の力に追いつけてる。まぁ、シャドーを倒してから割と化け物の相手ばかりしてきたから……」
これはつまり、サンライズも着実に成長しているという事だろう。加えて、ブラックペッパーが上手い事サンライズの攻撃の隙間をフォローしてくれるお陰でサンライズは気兼ねなく全力を出せている。
「大丈夫か?サンライズ」
「ああ。久しぶりのこの姿でちょっと慣れてなかったけど……もう大丈夫」
サンライズはムーンライズの時の癖を完全に修正できたのか、更に火力を上げるために体に赤い炎のようなオーラを纏う。
「どうやら知らない間にこの俺の力に追いついてきたらしいな……。ならば、俺の更なる力で叩き潰す!」
その瞬間、シャドーもサンライズを見て力を更に解放。三段階解放状態へと移行した。
「ぬん!」
シャドーの刀から紫の斬撃波が放たれる中、サンライズとブラックペッパーはそれを回避しつつ接近するとまた攻撃を再開する。
それを見ていたローズマリーとかけるの二人は警戒をしつつも二人の強さに驚いていた。
「ブラックペッパーって言ったっけ……凄いですね。サンライズとのタッグはほぼ初見なのにあそこまで順応して……」
「恐らくだけど、彼の戦い方はゆい……キュアプレシャスに近い物があるのだと思うわ。現に力技でのごり押しとかそっくりだし」
「なるほど……。ああ、せめて俺も戦えれば……」
かけるはヒョウと離れ離れの関係で変身ができておらず。このままではずっと足手纏いのままだ。
「……一か八かの賭けになりますけど、一個試しても良いですか?」
「え?」
「この空間は確か願った事を叶えられる世界。多分俺がヒョウちゃんの近くに行きたいって強く思ったらそこに移動できると思うんです」
その案にローズマリーは一瞬賛成しかけるが、失敗した時のリスクもかなり大きいと踏み留まる。
「でも、それに失敗して変な空間に飛ばされたら……」
「確かにそのリスクはあります。でも、今は……今は俺にやらせて欲しいんです」
かけるがそう言うとシャドーのオーラに吹き飛ばされた二人が下がってきて話し始める。
「くっ……シャドー強すぎだろ。やっぱりユキがいないと……」
「ひとまず、闇雲にやるんじゃなくて何か手を打つか?」
「サンライズ、ブラぺ。ちょっと賭けになるけど、試したいことがある」
それからかけるが自分の意見を二人に話す。もし成功すれば二人にとっての戦力として戻って来れるだろう。
「……わかりました。行ってください」
「ッ……おい、リスクがかなり大きいぞ。良いのかよ」
「俺はかけるさんを信じてますから」
サンライズがそう言うとブラックペッパーはそんな彼を見て彼も覚悟を決めると笑みを浮かべて返す。
「……サンライズが信じるならきっと大丈夫だな」
「ブラぺも、良いの?」
「ローズマリーも本当は信じてるんだろ?それに、ここまで仲間を信じるサンライズを見てたらプレシャス達を思い出したからな」
ローズマリーはかけるを信じたサンライズやブラックペッパー。そしてたった一日ぐらいという短い共同生活の中でもかけるが信じるに足りる存在だとわかっていたために彼もかけるの提案を了承した。
「……わかったわ。かける君。絶対に戻ってきなさいよ」
「はい!」
それからかけるがヒョウの事を想うとその姿が消失。別の場所へと移動する事に。するとシャドーは一人減った事を気づいて指摘した。
「む……どうやら一人いなくなったようだな」
「まぁな。とは言っても今いなくなったのは戦闘員じゃない。お前の相手はちゃんとしてやるから安心しろ」
「……ふん。俺に親近感を感じる奴だったから色々と問いたかったが……まぁ良い」
シャドーはそう言ってサンライズ達へと攻撃。それに合わせてサンライズやブラックペッパー、そしてかけるを守る必要が無くなったのでローズマリーも本気を解放。
「はあっ!」
ローズマリーがシャドーが振り抜いた刀へと拳をぶつけると僅かに拮抗した後にシャドーを思い切り後方へと吹き飛ばした。
「ぐうっ!?」
「マジかよ!?マリちゃん強っ!?」
サンライズはまさかのローズマリーの戦闘能力の高さに驚かされる。彼はスペシャルデリシャストーンの力を使う事でプリキュアに匹敵する戦闘力を得られる……いや、単純な戦闘能力ならプリキュアを圧倒できるだろう。何しろローズマリー本人が生身の状態でもウバウゾーからの攻撃に耐えられる程度には強い。
だからこそスペシャルデリシャストーンによる力が上乗せされれば確実にプリキュアを超える実力がある。
「流石父さんと同じ、ジンジャーさんの門下弟子ですね」
「チッ……まさかこんな奴が控えていたとはな。だが、俺の力はこんな物では無い!」
シャドーがローズマリーの強さを見て本気モードへと入った。ただ、これによる体への負担は特に無い。前と比べると彼の足を引っ張っていた内部のかけるやルーセントムーンがただの想像上の存在であるがために無抵抗なので前よりは強くなるだろう。
「あの力を使ったシャドーはかなりヤバいです。これまでの彼と一緒にしたら痛い目を見ますよ」
「ええ。そのようね」
「だが、俺達なら勝てる!」
それからサンライズ、ブラックペッパー、そしてローズマリーはシャドーとの激戦を開始する事になる。
同時刻、ウィングの方ではテンジョウが指揮するノットレイが猛攻撃を仕掛けていた。ちなみに地形はウィングが逃げのために入り組んだ街中を想像したのでその場所になっている。
「ふふっ。私の可愛い駒達。あの小鳥風情をを踏み潰しなさい!」
ノットレイが手にしたレーザーガンによる射撃を仕掛けてきた。しかもその動きはしっかりと統率され、機動力で接近してからの近接戦しか攻撃の手段が無いウィングは押されている。
「くっ……折角この地形にしたのに、これじゃあ近づけません」
加えて、ウィングは背後に非戦闘員であるプルンス、フワ、くるるん、エルを抱えていた。となれば必然的に自由自在に飛べることによる機動力も封じられてしまう。
「何とか近づかないと」
ウィングは何とか障害物を使って回避するが、テンジョウはまるでウィングの動きを読んでいると言わんばかりにウィングが回避した先に先に伏兵を置いてウィングの逃げ道を制限してしまう。
「逃げてもダメだったら一点突破します!ひろがる!ウィングアタック!」
ウィングはオレンジのオーラを纏うと真上に飛び上がり、上空に一度姿を現して急降下。これにより、真下にいるノットレイの方へと突撃。しかし、テンジョウはそれさえも見越したのか手にした天狗の団扇のような物を振るうとノットレイが出したのは巨大なロケットランチャー。それが突撃してくるウィングへと放たれる。
「ノットレイ!」
「ッ!?うわああっ!」
ウィングは技の最中で回避ができず。まともにミサイルを喰らってしまったために吹き飛ばされるとそのまま地面に撃墜。
「う……くうっ……」
「さてと、ノットレイ。そっちの妖精を狙いなさい」
テンジョウは敢えて倒れたウィングを無視すると近くに隠れていた妖精組へと目を向ける。
「えるる……」
「ウィング、しっかりするでプルンス!」
「このままじゃ……」
ウィングは何とか立つとまた急いで飛行。それと同時に妖精組へと容赦なくレーザーが放たれるとウィングが盾として背中でレーザーを受けてしまった。
「うぐっ!?ぐああっ!」
「うぃんぐ!!」
エルが自分のせいでウィングが痛めつけられていると涙目に変わる。テンジョウは更に今が攻め時とノットレイへと指示を出すと先程以上の人数によるレーザーガンの一斉斉射を放たせた。
「さぁ、一気に奴を潰せ!」
そして、周囲からのウィングへの集中攻撃が始まってしまう。こうなると一発一発は大した事無いが、数がとにかく多いのでウィング一人の負担が大きすぎた。
「どうするフワ……」
「でも、プルンス達ではどうする事も……」
「大丈夫です……ボクが、ボクがプリンセスを、あなた方を守ります」
ウィングは傷つきながらもその気持ちを強く持つ事でどうにか耐えているような危うい状況だ。彼の体へのダメージがどんどん酷くなっていく。その少し前の時間に遡るとゼッタイヤラネーダと相対するラメール、スパークル、コスモ、そしてやる気を奪われたヒョウの四人の場面。
「くっ、このイカ、強くない!?」
三人はイカ焼きのゼッタイヤラネーダに対して三人で同時に攻めるが、十本の触手がその邪魔をする。
「はあっ!」
「ヤラネーダ!」
コスモが猫の能力で壁を駆け上るとそのまま空中から踵落としを放つが、ヤラネーダに弾かれてしまう。
「ッ……だったら、火のエレメント!」
スパークルが炎をステッキから放つとゼッタイヤラネーダを火炙りにした。
「もう既にイカ焼きだけど、もっと炙って黒コゲにしてあげる!」
しかし、ゼッタイヤラネーダはまるで効かないと言わんばかりにスパークルへと触手を伸ばして吹き飛ばしてしまう。
「ヤラネーダ!」
「きゃあっ!?」
「くっ……やっぱり強い。というか、ヒョウもいつまでそこにいるのよ!危険だから……」
「うぅ……やる気無い……ここから一歩も動きたく無いわ」
「ちょ、ヒョウ、何やってるニャ!」
「そういえばやる気を奪われたらそうなるんだったわ……」
ラメールは今のヒョウには何も期待できない事を悟る。やる気パワーを奪われたせいでヒョウは無気力状態にまでなっているのだ。
今度はラメールが飛び出すとゼッタイヤラネーダの周囲を駆け回る。そのまま背後を取ると後ろからのキックを繰り出す。
「はあっ!」
その攻撃がゼッタイヤラネーダへと命中するとゼッタイヤラネーダへとダメージが入り、少しだけ押されて怯む。
「良し、マーメイドアクア……」
「させるかよ!ゼッタイヤラネーダ!」
その瞬間、ゼッタイヤラネーダが正気を取り戻すとラメールへと攻撃。マーメイドアクアポッドによるやる気パワーの回収を阻止した。
「ッ……」
「かったるいが、お前が最警戒対象だってのは知ってんだよ」
チョンギーレはラメールの浄化技で何度もゼッタイヤラネーダがやられているので彼女を一番に警戒するのも仕方ない事だろう。それから三人のプリキュアが降り立つとラメールが二人へと質問する。
「ねえ、そういえばあなた達には強力な技とか無いの?例えば強化された敵に通用した技とか」
ラメールからの技が厳しいとなると他の二人の技も必要になる。そう言った意味を込めて二人に聞いたのだが……。
「ごめん。私の技って、個人技だと強敵には大したダメージには」
「私も皆がプリンセススターカラーペンを持ってるから大技は無理ニャ……。ダメージなら多少入るかもだけど……」
「ええっ!?」
このチームの致命的な欠陥。それは強敵を浄化できる程の個人技を無条件に使えるのはラメール一人という事だ。勿論二人も浄化自体はできる。だが、スパークルはグレース、フォンテーヌとの連携技。コスモはスターカラーペンが無いと強敵には浄化が通用しないのだ。
「何でこんな時に……」
「ヤラネーダ!」
するとゼッタイヤラネーダが三人へと攻撃しているといつまでも近くで倒れてやる気の無さそうな間抜けた顔をするヒョウを目障りに思ったのか、そちらに矛先が向いた。
「ッ!ヒョウちゃん!!」
「……んぁ?」
防御技持ちのスパークルが慌てて走り出すが、一度後ろに跳んだ後で着地するまでのロスタイムのせいで間に合わない。
「逃げなさい!ヒョウ!」
ラメールからの言葉にヒョウはゼッタイヤラネーダの方を向く。そのまま彼女は攻撃を喰らうかに思えた。だが、その瞬間ヒョウの脳裏にある声が響く。
“ボクがプリンセスを、あなた方を守ります”
「……ツバサ?」
それは妖精達を攻撃から守る苦しそうなウィングの声だった。それを聞いた途端ヒョウの目は覚醒。それと同時にヒョウの姿が消えてしまう。
「えっ!?」
「何がどうなってんの!?」
三人が困惑する中、ひとまずその場は戦闘を続ける事にした。そして、それと同時刻。一度レーザーガンの照射を止めたノットレイの背後に控えたテンジョウからの降伏勧告が飛んでいた。
「どうするの?弱い小鳥ちゃん。あなたが降参してその子達をこっちに渡すなら見逃してあげるわ」
「お断りします……くっ」
ウィングのダメージは大きく、体は既に傷だらけ。それでもエル達を守るために必死に頑張っていた。
「そう。じゃあ終わりにしてあげるわ。ノットレイ、やりなさい!」
そうして、ノットレイがレーザーガンを構えた瞬間。いきなり光と共にヒョウの姿が現れる。その体は先程までのやる気パワーが抜かれた後の物では無く、前以上にやる気が満ち満ちた物だった。
「ツバサを終わりにする?……そんな事、させるわけ無いでしょ!!」
「な、何よあの小娘。いきなり現れて……」
「ヒョウ……どうして」
「そんなの、あなたを守るために決まってるでしょ」
その言葉にウィングは頼もしさを感じる。そんな中、テンジョウはいきなり出てきたヒョウへと食ってかかる。
「だ、だからって小娘一人で何ができるってのよ!」
「一人じゃ無いよ」
するとヒョウの隣にかけるも姿を表す。どうやらかけるもヒョウの隣への転移に成功したらしい。これにより、二人は変身条件を満たした。
「俺達は手を取り合って、助け合って生きている。だから、俺達は一人じゃない!」
そして、二人はツインチェンジライトを捻って手を繋ぐと戦うための戦士へと変身する。
「「デュアルファンタジーパワー!」」
「夜空を照らし!」
「希望へ導け!」
今回は黄とミントグリーン。つまりムーンライズとオーロラの力を模した力となる。そして、二人はその姿を変えていった。
「過去からホップ!」
「乗り越えステップ!」
「「未来へジャンプ!」」
「青空を照らす太陽の輝き!アポロンムーン!」
「青空を彩る静かな粉雪!アルテミスオーロラ!」
「聖なる世界を汚す者よ!」
「光の裁きを今下さん!」
二人はアポロンとアルテミスへと変身すると名乗りを上げる。こうして、二人が変身した事でプリキュア達は全員が変身した事になるのであった。
また次回もお楽しみに。