熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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エンジェリーの過去 繋がる歴史

エンジェリーによるレクイエーショが終わり、部屋に戻ってきたユキ達。すると彼女達に多少の眠気が襲ってきた。

 

「あれ……何だか眠い」

 

「そういえばエンジェリーさんが言ってたな。この空間内にいたとしても疲労や眠気。生活する上で当たり前に感じる体の働きはちゃんと感じるらしい」

 

つまり楽しい時間を過ごしたりして疲れが溜まるとそれはしっかりと疲労や眠気になるという事だ。

 

「安心して。エンジェリーさんが言ってたけど、ここの睡眠はとても快適で、それを届けるために必要な設備も揃ってるらしいから」

 

それから四人はそれぞれ眠るベッドの上に座ると確かにフカフカのベッドで寝心地は良さそうだった。更にグッスリ眠れるようにアイマスクや人によっては抱き枕も必要との事で完備してある。

 

「エンジェリーさん……正直不安だな」

 

「え?」

 

「あの人、ちゃんと休んでるのかなって。私達におもてなしをするために私達の事を沢山調べたりしてくれていると思うし」

 

その言葉を聞いてユキが優しい子なのだと相部屋である三人とペギタンは感じ取っていた。

 

「ひとまず、寝るための支度をしよう。このまま寝なかったら明日の活動に支障が出てしまうだろうしな」

 

あまねの言葉に一同が頷くと少し時間が経って一同は寝る準備を整える。すると見回りに来ていたエンジェリーの声が聞こえてきた。

 

「すみません。入ってもよろしいでしょうか?」

 

「エンジェリーさん?」

 

「どうぞ!」

 

ちゆが了承の声を上げるとワープで入ってきたエンジェリーが寝る際の諸注意の説明に来た。

 

「……以上になります。もしお客様がお望みでしたら良い夢を見せられるように脳に働きかける機能もできますよ」

 

「そうなのか?」

 

「はい。アイマスクの目に当てる側にはタッチパネルの機能も搭載していて。それによって機能選択ができますね」

 

それから一同からの機能に関する質問が無いという事でエンジェリーは戻ろうとする。

 

「では皆様、快適な夜を……」

 

「あの!」

 

「どうしました?ユキ様」

 

「……エンジェリーさんは、基本的に一人でお仕事をされているんですか?」

 

「?そうですよ」

 

「あの、これだけの人数の面倒を見て……システムが正常に働くか確認して……。私はエンジェリーさんの体が心配で」

 

エンジェリーはとにかく頑張り過ぎている節があった。ユキが言えた事では無いかもしれないが、その労働量や仕事量は一人で片付けるにはあまりにも多すぎる。このまま働き続けたら彼女は過労で倒れるのでは無いのか。そんな不安があったのだ。

 

「……平気ですよ。私は一人でここを回していますが、苦には感じていません。……それに、あの人との約束もありますし」

 

それを聞いてユキ達は目を見開く。“あの人との約束”それが気になったユキは更に問いかけた。

 

「あの人って……誰ですか?」

 

「私とこのホテル。エンジョイーズは今から大体三百年前に作られました。あの人は私にとってのマスターで、とてもお優しい方でした。……その方はいつかの未来。どこかの時代で苦しんでいる妹がその時代に生きる救世主達に救われるから、その妹が負っている心の深い傷を癒してあげて欲しいと。そう仰られていたんです」

 

エンジェリーを作った人間は自分の寿命ではその時まで生き延びる事ができないと。そう判断したために以後何千年と稼働し続けられるシステムを形成。それは時代の移り変わりに連れてその時の最新を再現できるようにするにはどうするべきか。そう考えて考案されたのが訪れる客達の生み出す正の感情を動力源にする事だと。そしてそれを自分がいなくても完全に調律、制御できるためのオートマターが必要だと考えたのだ。

 

「こうして、私はあの人の願いを達成するために……ずっと一人でも頑張るって決めたんです。それが私を生み出したあの人への恩返しだと思っています」

 

そう言ってエンジェリーは微笑む。自分の体はオートマターであるが故に体力の限界は無い。だからこそ自分を生み出してくれたマスターの妹が苦しみから解放されるその時を待ち続けた。

 

「私の脳にあるチップには妹さんのデータが入っています。それで判断できると思ったのですが……。もしかするとまだ助けられてないのかもしれませんし、とっくに命を救われてもう亡くなられているのかもしれません」

 

いずれにせよ、エンジェリーは終わりの無い過酷な労働をずっと続けている事になるという事になるだろう。

 

「そんなの可哀想ペ」

 

「エンジェリーさん。あなたは本当にそれで良いんですか?」

 

「私に不満はありません。元々私の存在理由はあの人の妹さんの心の傷を癒してあげる事です。むしろ、私は皆さんに罪悪感さえ感じています。あなた方へのサービスは結局、その妹さんありきの事になってしまうので……」

 

そう言ってエンジェリーは申し訳なさそうに話す。それから彼女は仕事をこれ以上は抜けられないと言ってその部屋から立ち去って行った。

 

「……エンジェリーさん」

 

ユキは複雑な思いを抱きつつも彼女に自分達がしてあげられることは無いためにこの日は寝る事になった。

 

同時刻。アサヒ達男子勢のいる部屋では先程エンジェリーの説明があった後だったので完全に眠くなるまで話をする事になった。

 

「そういや、思ったんだけどヒョウとアサヒは犬猿の仲なのか?ゲームをしてる時しょっちゅう言い争ってるイメージというか」

 

「それなんですけど、ヒョウとは会ったときからの腐れ縁と言いますか……初めて会ったとき。俺はユキの過去に付いて知らなくて彼女にキツイ言い方をして傷つけてしまったんです。その時に俺の事をいきなり責めてきて」

 

それからアサヒはヒョウとの出会いからこれまでの事について話した。ヒョウがユキに対して大きな恩を感じている事、訳があって最初は男の子として振る舞っていた事。本当の彼女は弱い心に蓋をして隠し、強がっているだけだと。

 

「なるほどねぇ。ヒョウにも事情があったのね」

 

「でも、事情がわかった後も最初の出会いの事を忘れられなくて。あとユキの恋人になった俺に対して嫉妬している節があると言いますか」

 

「まぁ、あの子からすれば姉と慕ってるユキを訳のわからない内にポッと出てきた男に取られたわけだからな」

 

「だから彼女にはつい言い過ぎると言いますか。そんな風に言ってしまうんですよね」

 

アサヒはそう言って自分の気持ちを話す。そんな彼を見たかけるはアサヒへとある事を言い出した。

 

「でも、ヒョウちゃん。この前言ってたよ。アサヒには色々感謝してるって」

 

「え?」

 

「あの子からはアサヒに言ったらもっと揶揄われるし恥ずかしいから言わないでとは言われたんだけどさ。でも、アサヒは自分が女だってわかっても、心の弱い一人の少女だとわかっても態度を変えずに接してくれたって。ツバサ君や周りの皆が多少は接し方を変えてきたのにアサヒだけはそのまま気を使う事無く接してくれたってね」

 

ヒョウはアサヒに対してキツイ言い方をするが、それは逆に言えば彼女が演じ慣れてきた毒舌を交えた塩対応をしても大丈夫という事になるという事。ヒョウは自分を守るために作って染み込ませたペルソナを取らずに接しても大丈夫な人はいないと思っていたのだ。皆が自分の秘密を知れば絶対に本心を晒した弱い自分として接しないとダメだと。

 

だが、アサヒに対してだけは自分のペルソナを被ったままでもちゃんと接してくれる。そう思えているからこそ安心して毒を吐くような接し方をするのだ。

 

「アイツ……。やっぱりそういうツンツンした所が可愛いんだよな。……どうりでツバサが好きになるわけだ」

 

アサヒはこの秘密は彼女の前で話さないようにしようと考えた。幾らヒョウの弱みを見たら弄り倒すアサヒでもそこのラインはちゃんとするらしい。

 

「あの。私もお話ししてもよろしいでしょうか?」

 

するとアサヒが持っていたムーンライズのスカイトーンが光るとキュアルーセントムーンが幻影として姿を現す。

 

「ルーセントムーン?」

 

「なっ!なんか出た!」

 

「初めまして。拓海さん、マリちゃん。アサヒ君達より遥か昔に活躍していた先代のプリキュア、キュアルーセントムーンと申します」

 

「お、おう……」

 

「初めましてね」

 

「私の話も聞いてもらいたいんです。寝る前のちょっとした過去の話として受け止めてもらいたいので」

 

それからルーセントムーンは早速話を始めた。一応彼女が洗脳されてシャドーとして操られた話も簡潔に説明。その上で本題を始める。

 

「実は私、家族に兄がいたんです」

 

「お兄さんが……どんな人だったんですか?」

 

「とても優しい人でした。当時、無力だった私の面倒もよく見てくれて。彼はスカイランドの王城に就職していて様々な技術を磨いていました」

 

ルーセントムーンの家は貧しく。兄の才能が王城の人間の目に留まって就職したルーセントムーンの兄。そんな兄からの仕送りで彼女の家は何とか成り立っていたらしい。

 

「そんな優しい兄はよく言っていました。自分が技術を磨いて、スカイランドを豊かな夢が溢れるような国にするって。そして、私はある日聞きました。兄は密かにスカイランドから居なくなろうとしているって」

 

「「「「えっ!?」」」」

 

当時、偶々兄が実家に帰ってきた際にルーセントムーンがいない場所で両親にその事を相談していたのだ。

 

「勿論私は兄を問いただしましたが、結局満足な回答は貰えなくて。そんな中、プリキュアの伝説が生まれるようになったあの出来事が起きました」

 

その事件の結果、ルーセントムーンはプリキュアとして国を守るために、人々の笑顔を取り戻すために戦った。

 

だが、戦いの後にルーセントムーンは己の弱さに付け込まれて洗脳。そのまま兄がスカイランドからいなくなる所も見れずに人知れない場所に引き篭もり、そのまま寿命を迎えるまで己を鍛え続けて亡くなった。

 

「それ以降。私は意識を乗っ取られている間も兄の記憶は心の奥底に眠ったままでした。アサヒ君達によって救われた後もずっとその記憶は蓋をされたように思い出せませんでした。でも、このホテルに来て。楽しい時間を過ごされている皆さんを見ていたら急に記憶が戻ってきて」

 

恐らく、このホテルが人々を幸せにするのを見て兄の面影を感じたのだろう。

 

「うーん。でもエンジェリーさんにそれが関係あるのかな」

 

「え?」

 

「だってほら。ここに来てエンジェリーさんと出会って。幸せな時間を見ていたらそれを思い出したんだろ?多分トリガーは彼女だと思うけどな」

 

それを聞いてルーセントムーンは考え込む。しかし、彼女は首を横に振った。やはりそこまではわからない様子だ。

 

「とにかく、あなたとこのホテルがどこかで関係してそうって解釈で良いか?」

 

「はい」

 

ルーセントムーンの答えにその場が難しい雰囲気になる中、かけるがその話を一旦区切る事にした。難しく考えるという行為を楽しさを感じる場所でやるべき事では無いと踏んだのである。

 

「ひとまず難しい話はここまでにしましょう。ルーセントムーン。ありがとう、こんな事も教えてくれて」

 

「いえ……ちょっと懐かしさを感じただけなので」

 

それからルーセントムーンはスカイトーンへと引っ込む事になり、一同はひとまず疲れもあるために寝る事になった。そんな中、スカイトーンの内部ではルーセントムーンが僅かに心が締め付けられるのを感じる。

 

「どうして……どうしてなの?最後に話しかけてくれたかけるさんに懐かしい面影を感じて……。でも、かけるさんは私が生きていた時代よりも遥かに未来の人間なのに……親近感を感じて仕方ない」

 

ルーセントムーンはそんなモヤモヤとした気持ちを抱えながら自分の力をちゃんと維持させるために彼女も休む事になるのだった。

 

〜おまけ〜

 

約三百年前。伝説の五人のプリキュアの手によって事態が収拾してから数年後の事。ルーセントムーンの兄はスカイランドの王都から離れると王都のある島の端に大荷物を持ってやってきていた。

 

「……ルナ。ごめんな。お前がいなくなって一人で苦しい思いをしてるのに……。すぐに助けに行けなくて。でも、ちゃんとお前を救うための準備は揃えておいた。……何百年先になるかわからない。でも、俺は必ずお前を助けてやる」

 

ルーセントムーン……いや、彼女の本名と思われるルナのために彼女の兄はこの数年間奔走した。そして、自分は最後の条件を揃えるために今ここにいる。

 

「……約束する。スカイランドの王都で得られた技術。そして、この崖を降りた先……。もし、プリンセス・エルレイン様が仰られた事がそのままこの先の未来として待ち受けるのなら……。俺は、俺はこのスカイランドを去る事になっても構わない。ルナ、お前の力を受け止められる器となる人間を向こうの世界で作って……遥か先の未来。そこで俺がお前を救ってやる。これから俺の名前は望月(・・)流星だ」

 

その言葉を最後にスカイランドで彼の姿を見た者はいなかった。そして、彼は、リュウセイ・イザヨイは。望月流星として名前を変えて遥か先の未来でソラシド市へと変わりゆく場所へと飛び降りる。彼の目に絶望なんて無かった。ただ、愛する妹を……遥か先の未来で助け出すために。

 

彼が世界を移動してまで作り出した歴史の転換点が効力を発揮し、闇に堕ちてしまったルーセントムーンを。ルナ・イザヨイを救う事になるのは三百年先の事になる。




今回割と重要な話をぶち込みましたが、つまりはそういう事です。まぁ、まだ本人達はこの事実をわかってないんですけどね。というわけで今回はここまでです。また次回も楽しみにしてください。
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