最後に残されたネオボトム。そんなネオボトムが目を光らせると宙に浮かんでいた五つの禍々しいエネルギーが取り込まれていく。それは倒されたラスボス達の残滓だ。ネオボトムは残滓に残っていたエネルギーを纏って一回り大きくなる。
「ッ……まだ悪あがきを」
「悪あがきをしているのは貴様等だ。私の力の前にひれ伏せ!」
ネオボトムが目からエネルギービームを放つとプリキュア達は何とかそれを回避。
「とにかく、アイツを倒さないと!」
「でも、エンジェリーさんが……」
エンジェリーは未だにネオボトムの左胸の辺りに小さく拘束されたままだ。このままネオボトムを倒せばエンジェリーも巻き込まれて破壊される可能性が高い。
「どうした?さっきの勢いはもう終わりか!」
ネオボトムが巨大な腕で薙ぎ払うとプリキュア達はそれに巻き込まれて半分近くが吹き飛ばされる。
「皆!」
「……ムーンライズ。私に考えがあるよ」
「多分俺も同じ事を考えた。……皆、少しだけ時間を稼いでくれないか?俺達ならエンジェリーさんを助けられる」
「オッケー!任せて!」
「エンジェリーさんはロボットだけど、大切な人を助けるために作られた一つの命。だから私達で助けよう!」
サマーが了承し、グレースがその言葉に続く。するとムーンライズとオーロラはネオボトムから距離を取って手を繋ぐと体に黄色とミントグリーンの光を集約していく。
「貴様等、我を前にしながら小細工などさせない!」
「はぁっ!」
「花のエレメント!」
ネオボトムが二人を阻止しようと口にエネルギーをチャージし始める。するとそこにプリズムの気弾、グレースのエネルギー弾が命中。
「二人が何かをするための時間を稼ぐラビ!」
「私達にできる事をやろう!」
「プリキュア!プレシャストライアングル!」
「プリキュア!スパイシーサークル!」
「プリキュア!ヤムヤムラインズ!」
更にそこにプレシャス、スパイシー、ヤムヤムが個人技でネオボトムを三方向から挟んで攻撃。この際敢えて個人の浄化技の中でもアイテムを使わない弱い技を使う事によってネオボトムの注意を分散させた。
「こっちです!」
「私もいるニャン!」
そこに純粋な運動能力による機動力の高さを使って跳び回るスカイや猫としてのすばしっこさを持つコスモがネオボトムを撹乱。
「アルテミス、俺達はムーンライズ達のサポートを」
「わかりました」
アポロンとアルテミスは再度手を繋ぐとツインチェンジライトをまた捻る。これにより灯っていた光が変化。二人は掛け声と共に姿を変えた。
「「デュアルファンタジーパワー!」」
「夜空を照らす満月の輝き!アポロンムーン!」
「夜空を彩る幻想の奇跡!アルテミスオーロラ!」
二人は自身の姿を変えるとムーンライズ、オーロラに合わせた姿となる。すかさず二人はもう一度ツインチェンジライトを捻り、光を宿す。
「月の力!」
「光の力!」
「「ファンタジーパワー!」」
二人から飛び出した光はムーンライズ、オーロラの腕に集まるとそれがシャイニングブレスへと変化。ムーンライズとオーロラの二人は合体技を発動させる。
「輝け、月の力!」
「煌めけ、光の力!」
「「集まれ!二つの幻想の力達よ!」」
二人が光の球体となると宙へと浮かび上がり、天高く舞い上がる。エネルギーは徐々に増幅。これは技の特性として飛距離を伸ばす事で火力を底上げしているのである。
「チッ……本命はこちらか」
ネオボトムが二人が技を使おうとしているのに合わせて拳に力を集約させて迎撃しようとする。
「させない!」
「雨のエレメント!」
「雷のエレメント!」
「空気のエレメント!」
フォンテーヌ、スパークル、アースがそんなネオボトムを邪魔するように攻撃を命中させると更に一人飛び出していたバタフライがその手にミックスパレットを構え、そこに合わせるようにウィングがバタフライの前に出る。
「行くよウィング!」
「はい!」
「私達も行くぞ!」
「うん!」
バタフライがミックスパレットからの光をウィングへと照射。そのままウィングは巨大なプニバード姿となる。ネオボトムの意識がそれに釣られて上に向く中、ネオボトムに生じた隙を狙ってサマー、コーラル、パパイア、フラミンゴの四人が技を使った。
「プリキュア!タイタニックレインボーアタック!」
「「「「プリキュア!ミックストロピカル!」」」」
これにより、上からはプニバードのウィング。真正面からは四人のハートを合わせたエネルギーのフェニックスが迫る。ただ、このフェニックスは四人のプリキュアの特徴を合わせたようなちょっと特殊な姿だが。
「くっ!」
ネオボトムが両腕をクロスさせるようにしてそれを受けると割と余裕で耐える。やはりエンジェリーを人質にされているせいでプリキュアは全力を使ってこないと考えたネオボトムは内心ほくそ笑んだ。
「どうした?今の技、わざと弱くしたのか?」
ネオボトムが巨大な腕を後ろに下げるとその瞬間、フィナーレとブラックペッパーの合わせ技として二人のエネルギーをクリーミーフルーレから発射した光の鎖として後ろに引いたネオボトムを後ろ側から拘束。
「エンジェリーさんを助けられるようになるまで、何としてでも時間を稼ぐ!」
「プリキュア!ミルキーショック!」
そこにネオボトムの逆の腕にミルキーからの電撃が命中するが、やはり通用しない。そのままネオボトムが目を光らせるとミルキーは吹き飛ばされ、さらにフィナーレとブラックペッパーも逆の腕で薙ぎ払われてしまう。
「危ない!」
飛ばされた三人をソレイユ、セレーネ、ラメールの三人がカバー。ネオボトムは自身の力に笑みを浮かべた。
「お前達では私を倒す事はできない。……それに人質がいるこの状況じゃあお前達が本気を出せないらしいしなぁ」
「ふふっ。でも、ネオボトム。ちょっと私達に時間を与えすぎじゃない?」
「ッ!?何!?」
ネオボトムが見上げるとそこには飛び上がったムーンライズ、オーロラが先程以上に巨大なエネルギーを纏っていた。
「ば、馬鹿な……」
「行って!二人共!」
「「プリキュア!ファンタジーパワー・クレシェンド!」」
ネオボトムの注意を二十人以上のプリキュアが引き付け、その間に極限にまで高めた本命のムーンライズ、オーロラの技。それはこれまでのどの技よりも強力だった。
「くくっ。だが、お前達はそれを私には使えまい。何しろここに人質がいるのだからな」
「わかってるよ。だからこそ、あなたが油断するこの瞬間を待ってたわ!」
「俺達がこの技を使うのを躊躇うと思うなよ?そう思わせるためのさっきの動きだ!」
ネオボトムは完全に思考を誘導されていた。先程までのプリキュア達が弱い技ばかり使うのを見てネオボトムは人質がいる今の状況では自分へと高威力の技は使えないとたかを括って油断し切っていたのだ。そしてそれによって彼は完全に力を抜き切っている。今ならこの大技を当てられる。
「ぐっ、させるかぁあっ!」
「「はぁああっ!」」
ネオボトムが慌てて迎撃しようとするものの、もう二人は懐にまで入り込んでいる。そのため、二人へと反撃するのは間に合わなかった。
二人からの突撃がネオボトムの左胸へと向かうとエンジェリーを救出するために二人は手を伸ばす。
「「行っけぇええっ!」」
二人はネオボトムに激突すると同時に体の表面に気を失ったまま拘束されたエンジェリーの体を掴む。
「ぐ……おお……お前ら如きに……俺が負けるかぁああっ!
ネオボトムが体を踏ん張らせると二人の勢いはどんどん落ちていく。そもそも、今の二人の攻撃はネオボトムを倒すための物では無い。エンジェリーを助けるために先程まで高めたエネルギーの大半を使っているため、ネオボトムへのダメージは見た目程大した事が無いのだ。
「くうっ……ダメ……このままじゃ……」
「ここまでやってもらっても助けられないのかよ……」
二人が必死にエンジェリーをネオボトムの体から引き剥がそうとするものの、あまりにも拘束が頑丈すぎる。相手もエンジェリーを取り返されたら自分を本気で倒しにかかられると判断しているので必死に阻止に動いているのだ。
「なるほど、お前達の狙いはコイツか。だが、この操り人形は絶対に助けられない。諦めろ」
ネオボトムが更に凄まじいエネルギーによる衝撃波を出すと二人はそれに耐えるので手一杯になってしまう。もう技によって出していた力も殆ど効力を失い、このままでは二人纏めて弾かれてしまう。
「エンジェリーさん、しっかりしてください!」
「あなたを待ってる人達がいるんです!だから、だから自分は役目を終えたから壊されて良いなんて思わないでください!」
ムーンライズ、オーロラの必死の呼びかけにエンジェリーは全く反応しない。
「もうその人形は諦めてるんだよ。良い加減お前達も諦めろ」
「そんなの……諦めるわけ無いでしょ!アポロン!」
「わかった!」
アルテミスがバレーのトスをするように腕を組むとアポロンがその上に乗る。そのタイミングでバタフライがミックスパレットを使った。
「元気の力、アゲてこ!」
バタフライがミックスパレットで最初に使った元気の力を発動させるとアルテミスの基礎的な力が上昇。アポロンを思い切りネオボトムの方へと打ち上げる。
「ルーセントムーン、君の気持ちをエンジェリーに!」
今にも吹き飛ばされそうなムーンライズ、オーロラの元に到達したアポロンはエンジェリーを抱きしめるように飛びつくとアポロンの背中から幻影としてルーセントムーンが出てくる。
「エンジェリー、私のために今までずっと無理させてごめんなさい。……私、とても嬉しかったんです。エンジェリーがこんなダメな私のために待ってくれてたと知って……。私はあなたのお陰で思い出さないといけないことを沢山思い出せた。……だから私は面と向かってあなたにお礼がしたい。こんな形じゃなくて、きちんと。これは私からのお願い。生きるのを諦めないで!」
「ふん。何を言うかと思えば。その程度でこのオンボロが動くとでも……」
ネオボトムがルーセントムーンを嘲笑う中、囚われていたエンジェリーがピクリと動き始めた。
「……ッ!?」
「エンジェリー?」
「……やはり、あなた様は……ルナ様はリュウセイ様の妹様です。リュウセイ様そっくりな事を話されて……。そのお願い……。承りました」
エンジェリーはそれと同時に体の全機能を稼働。自分からネオボトムから抜け出そうとする。
「馬鹿な!?何故だ!この人形の体はもう動かないはず……動力は全て抑えたはずなのに」
「……私の体の外に出て私を体ごと取り込んだのが失敗でしたね。乗っ取られた時の最終手段として、私の中には外からのハッキングを遮断。物理的に外との繋がりを遮断する機能があります。あなたが体の中にいる時はどうしようもできませんでしたが、今のあなたの本体は体の外。ですので、あなたとはこれでお別れです!」
エンジェリーは自身の機能をフル稼働させて完全にネオボトムとの物理的な接続を遮断。そのままアポロン達三人に引っ張られる形で外へと飛び出した。
「がぁああっ!?貴様、貴様ぁああっ!」
するとネオボトムのパワーが一気に落ちていく。その証拠に体が先程までよりも数回り縮小しているのだ。
「ネオボトムが縮んでます!」
「多分だけど、ネオボトムの力はエンジェリーさん依存なのかも!」
「ああ、そういえば最初はエンジェリーさんに取り憑いて動いてましたしね」
ネオボトムは急激な復活こそ遂げられたものの、それはあくまで素体となるエンジェリーに取り憑いた事ありきの話。エンジェリーが抜けてしまえばエネルギーをコントロールする中枢を失ってパワーダウンするのも当然だった。だからこそエンジェリーの出ていた位置が人間で言う左胸……心臓の辺りだったのだろう。
「クソォ……プリキュア如きが……この私を……馬鹿にするなぁああっ!」
ネオボトムは前にプリキュア側に少しずつ戦況を変えられているのが気に入らないのか怒りの声を上げると下に降り立った三人とその周りに集まったプリキュア達を見据える。
「エンジェリーさん、動けますか?」
「えぇ、体に流れるエネルギー量が不十分でまだ完全な動きはできませんけど動くくらいならできます」
「彼女の保護は私とブラペがやるわ」
「ああ。ここは俺達に任せろ」
そこにエンジェリーを離脱させるためにローズマリーが到着。他人の回復ができるブラックペッパーもローズマリーと共にエンジェリーを連れて離脱。
「皆さん。一気にネオボトムを倒しましょう!」
スカイの言葉に全員が頷くとネオボトムは怒りの咆哮を上げると同時に自身に残された力を掻き集める。
「プリキュアぁああっ!」
ネオボトムの叫びを皮切りにその場にいるプリキュア達はその姿を技を使う際の強化スタイルへと次々と変わっていくことになるのだった。
また次回もお楽しみに。