熱き太陽 静かなる雪の輝きに照らされて   作:BURNING

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プリキュア達との別れ エンジェリーの選択

ネオボトムが消滅し、彼によって荒らされてしまったホテルは元の姿を取り戻していく。そんな中、エンジェリーの体は所々壊れかけであった。

 

「エンジェリーさん!」

 

それからプリキュア達は変身解除すると元の姿へと戻る。そんな中、エンジェリーの目の前に現れたのはキュアルーセントムーンであった。

 

「……エンジェリー、ごめんなさい。私がもっと早く覚悟を決めて助けていれば、こんな事には」

 

「いいえ。むしろ、私はあの時自分の体を命を捨てるつもりでした。なので、その捨てた命を拾ってくださったルナ様には感謝してもしきれません」

 

しかし、エンジェリーの体はエネルギーこそ拓海ことブラックペッパーによって復活したのだが体の老朽化による機能停止に関しては止められない。

 

「でも、折角助けてもらったのに申し訳ありません。もう私の体はどんなに保ってもあと数ヶ月かと。……この体が壊れる前にルナ様とお会いできて、私はちゃんと役目を果たせました。これで心置きなく機能停止できます」

 

するとエンジェリーが用意していた砂時計が一定時間を切ったのか、鐘が鳴り響く。エンジェリーが手を翳して砂時計を出すと砂時計の砂は赤のラインを切っていた。

 

「……申し訳ありません。折角プリキュアの皆様に日頃の疲れを癒してもらう時間だったのに」

 

「……エンジェリーさん。私達は十分楽しい時間を過ごせました」

 

「むしろ、俺達のためにゲームまで用意してもらえたんです。俺達は不満なんて言いませんよ」

 

ユキやアサヒの言葉に他のプリキュアメンバー達も頷く。エンジェリーはその言葉に安堵の顔つきを浮かべた。

 

「エンジェリーさんはこれからどうするんですか?」

 

かけるの問いにエンジェリーは俯くと考え込む。エンジェリーが機能停止すれば結局このホテルはオーナー及び司令塔を失って誰も訪れない廃墟と化すだろう。そうなればエンジェリーは止まったまま永遠にここで暮らす事になる。

 

「……私の作られた際に設定された本来の使命は果たしました。後は壊れるのをここで待つ事にします。ここに新たな客を招いてその方々に迷惑をかけるわけにはいかないので」

 

「……ねえ、エンジェリーさん自身はここから出る事はできないの?」

 

「出ようと思えば出られると思いますよ。でも、このホテルを捨てる訳には」

 

ヒョウの言葉にエンジェリーはこのホテルを捨てるわけにはいかないと言う。しかし、そんなエンジェリーへとヒョウはある事を提案した。

 

「……どっちにしてもエンジェリーさんはここに残っても機能停止するのを待つだけでしょ?……だったら、あなたを作った人であるリュウセイさんの故郷、スカイランドに行きませんか?」

 

エンジェリーは目を見開くとそれを受け入れかけて首を横に振る。自分にはそんな事できないと言わんばかりだ。

 

「私はリュウセイ様からの指示でここにいるように言われています。その意思に反する訳には……」

 

「でもさ、その使命はちゃんと果たしたんでしょ?」

 

「そうですよ。これ以上エンジェリーさんを縛る物なんてありません。むしろ、丁度良い機会じゃないですか」

 

ツバサやあげはも次々にエンジェリーにここを出るように進める。エンジェリーが周りを見れば他のプリキュアメンバー達もここから出る事に反対するどころか、彼女に出て欲しいと願うような視線であった。

 

「……それでもダメなんです……。私は、私はここにいるように命を受けてます。それに、外に出ても壊れるまであと少しなんですよ?何の意味があるんですか」

 

「……エンジェリーさんが生まれたのって何年前ですか?」

 

「……約三百年前です」

 

「それだけ時間が経ってるのならエンジェリーさんの壊れた箇所を治す方法がきっと見つかりますよ!」

 

エンジェリーはそれを聞いてまた目を見開く。エンジェリーは失念していたのだが、彼女が生まれてから三百年の時が経っている。そうなれば幾ら当時の天才的な腕と頭脳でエンジェリーを作り出したリュウセイの技術に時代が追いついてもおかしく無い。むしろ、それ以上の技術が外界にあるだろう。

 

「……私の兄妹の中に優れた修理技術を持ってる人がいます。昔の私が頼んでも一蹴されたと思いますが、今ならきっと私の願いも聞いてくれます。エンジェリーさん、ここという小さな世界で終わるなんてダメですよ」

 

ヒョウがそうエンジェリーに進言するも、エンジェリーは頑固なのか首を縦に振ろうとしない。どうしてもリュウセイからの使命が脳に残っているせいでそれが鎖のように彼女をこのホテルに縛りつけるのだ。

 

「……はぁ。見てられないわね。ルーセントムーン、どうする……の?」

 

すると幻影として出ていたライトピラーが溜め息を吐くと隣にいたルーセントムーンへと問いかけるが、彼女はその場にいなかった。そんなルーセントムーンはエンジェリーの肩を優しく叩く。

 

「……リュウセイ兄さんの言葉がエンジェリーをここに縛っているのなら……エンジェリー。リュウセイ兄さんの代わりに私が新しい使命を言います。外の世界に出てください」

 

「え……」

 

「私はまだあなたに助けてもらったお返しをしてません。だから、この命令であなたは自由の身になります。もうあなたはここに縛られなくて良いんですよ」

 

するとエンジェリーの脳内に設定されたメモリーの中に記憶された一文が呼び起こされる。それは、ルナを救い出したら彼女の命令を聞く事であった。

 

「あ……あぁ……」

 

エンジェリーはオートマター故に流さないはずの涙を流した。そして、そのためにエンジェリーは困惑すると同時にルーセントムーンへと問いかける。

 

「ルナ様……私は、これから外でやりたい事をしても良いのですか?」

 

ルーセントムーンは優しく頷く。するとこのホテルの機能が稼働すると同時にエンジェリーへと光が注がれていく。その光によってエンジェリーの体の構造は徐々に変化していった。オートマターであった彼女の姿が、機械仕掛けだった彼女の体の構造は消滅。その上から上書きされるように人間の女性として生まれ変わっていく。

 

『ええっ!?』

 

「嘘……エンジェリーさん、普通の女の人になった……」

 

「幾ら何でもワンダホーすぎない!?」

 

エンジェリーが手を動かすと先程まで劣化による動かしづらさを感じていたのだが、それも無くなっていた。いや、今までよりも動かしやすくなっていたのだ。

 

「これが、私?」

 

エンジェリーの姿は顔や体つきはそのままに、背中に生えていた天使の翼や天使の輪は消えていた。あくまで外見は弄らずにオートマターとしての象徴だった天使要素だけを消したのであろう。

 

「きっとそれがエンジェリーさんの本当の望みなんだと思いますよ」

 

「ホテルも最後に応えてくれたんですね」

 

「エンジェリーさんは三百年もずっと一人で他人のために尽くしてきたんですから、今度は自分が幸せになってきてって」

 

それと同時にホテルの機能を統制するオートマターの消失により、少しずつホテルのエネルギーは露散し始めると各部屋に置かれてあったプリキュア達の宿泊荷物が綺麗な状態で最初のようにしまわれて戻ってきた。

 

「って、あっ!エンジェリーさんが人間になったからここも機能を維持できなくなってない!?」

 

「ど、ど、どうするんですか!?ここから出られなければ意味無いですよ!」

 

するとホテルが最後に残されたエネルギーを使ってそれぞれがいた街に帰るための魔法陣が5つ、円陣を組むような配置で生成される。

 

「皆、あそこ!」

 

それと同時に一同の持ってきた荷物達がそれぞれの手元に収まっていく。後はプリキュア達が魔法陣の上に乗ってここから出るだけだ。

 

それから一同が魔法陣に浮かび上がった行き先に対応する魔法陣へと乗ると転送までのカウントダウンが表示される。その時間は約二分。ホテル側の最後の別れの挨拶はゆっくりして欲しいと言う意思だろう。

 

「皆さん、短い間でしたがありがとうございました!」

 

「あはは、最後は結構慌ただしくなっちゃったけど……楽しかった!」

 

「うん。今度は元の世界でも会いたいな」

 

「そうだね!じゃあトロピカる部の活動として皆の街への旅行も考えよっか!」

 

「予算とかもちゃんと考えて決めなさいよ」

 

まなつの言葉にローズマリーがツッコミを入れる。とは言え、彼女達なら本当に全部の街を回るための計画を立てかねないが。

 

「今度は皆で宇宙旅行したり、綺麗なお星様を観るのはどうかな?」

 

「いや、幾ら何でもこの人数は乗らないでプルンスよ!?」

 

ひかるの宇宙旅行の提案にプルンスは慌てた様子で答える。一応ララ達の乗ってきた宇宙船も今回の人数は普通に考えて乗り切らないだろう。

 

「そうやって考えてみるとまだまだやりたい事は浮かんでくるな」

 

「あはは……」

 

「でもそのくらい、皆と楽しい時間を過ごせたって事だよね?」

 

「……もう終わりかぁ。楽しい時間はあっという間に終わっちゃうよね」

 

「皆さん。この度はこのホテルにお越しいただき、ありがとうございました。……これからの未来、皆さんが楽しい日々を過ごせる事を心より祈っております」

 

「もう、ここのオーナーはじゃなくなったんだから堅苦しいのは無しだよ。エンジェリーさん」

 

「これからエンジェリーさんが作っていく幸せな未来を私達は願っています」

 

ゆいの言葉に他の一同は優しい目線をエンジェリーへと向ける。エンジェリーもその言葉に応えるように頷いた。

 

それからカウントダウンは残り約二十秒前後になって魔法陣から光の柱が伸び始める。それと同時に最後に残された自分達の周りの空間も消失を始めていた。

 

「皆、またどこかで会おうね!」

 

「絶対だぞ!」

 

ユキとアサヒが最後にそう言うと一同は微笑んで返す。そして、それと同時にカウントダウンは0を指し示す。そのまま魔法陣は上に乗ったメンバーを光の粒子へと変換させてから光の柱のエレベーターを駆け上るようにそれぞれの街のある方向へと消えていく。それと同時にホテルはその姿を完全に消失させていった。

 

これにより、プリキュア達を最後の客としてエンジェリーが一人で切り盛りしていた“ドリームホテル・エンジョイーズ”はひっそりと、最後に訪れたプリキュア達以外に知られる事なくその役目を終えたのだ。

 

ユキ達が目を開けるとそこには自分達がホテルに行く前にいた虹ヶ丘家の居間の中にいた。

 

「ここは……」

 

「私達の家って事は」

 

「ちゃんと家に戻って来れたみたいだね」

 

「お帰りなさい」

 

「おばあちゃん!」

 

そこにはヨヨがタイミングを見透かしたかのように部屋に入ってくる。そして、彼女は人間となったエンジェリーの姿を見ると優しく微笑んだ。

 

「……エンジェリーさん、お久しぶりね」

 

「……あなたは、前にご招待したヨヨ様ですか?」

 

「やっぱり、あなたは招待した客をちゃんと覚えてるみたいね。もう準備はできてるわ。王様に話は通してあるの」

 

『……え?』

 

「える?」

 

その言葉を聞いた瞬間、一同は固まる。ヨヨはまるでエンジェリーもこの家に戻ってくる事を想定したかのような言葉の使い方なのだ。

 

「え?待って待って、ヨヨさん。もしかしてエンジェリーさんの事」

 

「ええ。今日ここに来ると思っていたわ。そのためのスカイランドでの用事よ」

 

ヨヨがドリームホテル・エンジョイーズに来ずにスカイランドで用事を済ませた理由。それはスカイランドでエンジェリーを受け入れるための準備を済ませていたらしい。

 

「……ヨヨ様、どうして……」

 

「ふふっ。様はもう要らないわよ。これからはエンジェリーさんのやりたい事をやって良いのだから」

 

エンジェリーはヨヨへと頭を下げた。ひとまず今日は虹ヶ丘家で一晩を過ごし、翌日の夕方にスカイランドへと向かう事となった。

 

「良かった。エンジェリーさんが受け入れてもらえそうで」

 

「うん。あ、そういえばずっと思ってたんだけど。ルーセントムーンとライトピラーは普段アサヒとユキ姉の元にいるのよね?どうして私達の所に?」

 

そうやってヒョウは二人へと問いかけるが、答えは返って来ない。するとアサヒとユキのスカイトーン経由で二人は姿を現した。

 

「どうやら、あの空間内ではお二人の元にも移動できたみたいなんですけど……」

 

「こっちじゃアサヒとユキの元で固定されるみたいね」

 

二人の先代プリキュアはあくまでもムーンライズ、オーロラの元に付随するらしく、今回の事象の間のみ特別で移動できたようなのだ。

 

「なるほどね」

 

「あ、そういえばさ。か〜け〜る君?」

 

「あげはさん?どうし……」

 

「あの時かける君、エンジェリーさんに抱きついてたよね?どういう事?」

 

そう言うあげはの目には何故かハイライトが入って無かった。そして、それを見たかけるは冷や汗をかきながら慌て始める。

 

「え?え?待って待って、アレは流れでやったと言うか……。エンジェリーさんを助けるためについやっちゃったというか……。ルーセントムーンが直接話しかけるならああした方が良いのかなって……」

 

「でもそれって言い訳だよね?かける君」

 

あげはの声は少しずつ抑揚が無くなっていく。それを聞いたかけるはあげはが本気で怒っていると察した。

 

「あ、あげはさん。その……」

 

かけるは助けを求めるような目をアサヒやツバサと言った他の男性陣に向ける。

 

「あはは、かけるさん。ドンマイです」

 

「こればかりはボク達にはどうしようもできませんよ」

 

そんな風に二人から梯子を外されるとかけるはあげはとこの後じっくりお話しをする事になるのだった。

 

ただ、終わった後あげははとってもニコニコしていたらしい。かけるに後から話を聞いた所、お話しの中でちゃんと自分の分として抱きしめてもらったようだ。

 

何にせよ、エンジェリーは翌日の夕方にスカイランドへと旅立った。向こうでこれから彼女がどう生きていくのか。それを決めるのは彼女自身である。

 

同時刻。この日も特に騒ぎを起こさなかったヒューストムは一人隠れ家にいるとそこにアンダーグ帝国へと続くゲートが開いた。

 

「……ヒューストム、何をしている?プリキュアへと復讐するのを忘れたのか?」

 

そこに現れたのは前にシャドーへと暴走するような力を与えたローブを纏った影である。

 

「わざわざアンタがここに来るって事は……そろそろタイムリミットという事か?」

 

「……流石にお前は話がわかるな。あのお方は最早出来損ないのバッタモンダーには殆ど期待していない。プリンセス・エルを早く寄越せと所望している」

 

影はヒューストムへと抑揚の少なめな淡々とした言い方で高圧的な言葉をかける。

 

「チッ……あと一ヶ月だ。……そこまで貰えたら必ず過去の因縁に決着を着けてプリンセス・エルを引き摺ってでも連れて行く」

 

「……アンダーグ帝国の幹部の中でも四番手……いや、今の力なら三番手に付けるお前がそこまでかかるのか?」

 

「そう思うのなら幹部最強のアンタが直接出れば良いだろう。多分アンタならどうせプリキュアの実力は見てるだろうし、今のアイツらぐらい一捻りで潰せるんじゃねーのか?」

 

その言葉を聞いた影は一度溜め息を吐く。今回のはヒューストムの言う言葉があながち間違ってないからこその溜め息なのだろう。

 

「ならばそれを超過するような事になれば……わかっているな?」

 

「……ああ。俺はカバトンやあのみっともない馬鹿バッタのような情けない姿は見せるつもりは無い。幼い時の復讐はあと一ヶ月以内に俺の手で終わらせる」

 

「良かろう。ならばその間だけでも待つように掛け合ってやる」

 

その影はヒューストムの言葉に納得したのかゲートを潜って戻って行く。戻って行った影を見送ったヒューストムは苛立ったように舌打ちする。

 

「チッ……。あの野郎。あのお方に支える最古参の幹部だからって調子に乗りやがって。……だが、今の俺の力では逆らっても勝てないのは事実だ。何より、彼に手を出せばアンダーグ帝国のナンバー2の幹部にして最凶の剣士を敵に回す」

 

ヒューストムはいつまでも彼の下に付く現状に不満を持っているようだった。だが、まだ今の彼では逆らって勝てる状態に無いと考えている。

 

「まぁ良い。……俺は今やるべき事を済ませるだけだ。カゲロウとの結託も済んだし、あの女の彼氏の虹ヶ丘アサヒ。お前の命も丁度残り一ヶ月前後だ……。その間に決め切ってやる」

 

ヒューストムはその心の中で闘志を燃やす。彼との決着の時も着々と近づいているのであった。




今回で長々と続いたホテルでのレジェンドコラボ編が終わり、次回からアニメ20話の範囲に戻れると思います。本編をだいぶ待たせてしまい申し訳ありません。しかも140話以上投稿してまだ本編は折り返し前とか何やってるんだと思うかもしれませんが、長い目で見てもらえるとありがたいです。それではまた次回もお楽しみに。
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