キュアプリズムの覚醒により四人に増えたプリキュア。カバトンは早速目の前にいるプリズムを潰させようとする。
『ボッコボコにしろ!ランボーグ!』
カバトンの指示に応えるかのようにプリズムの正面に立ち塞がる小型ランボーグがプリズムを攻撃しようと跳び上がって踵落としを放つ。
「ランボーグ!」
「ッ!」
プリズムはそれを躱すために後ろへと思い切り踏み込んで跳ぶ。ただ、全力で力を込めてしまうとそのパワーを制御し切れないわけで。
「えっ!?」
プリズムは少し後ろに下がるだけのつもりだったのに一気に後ろに飛んで自分達がいた屋上から飛び出した事に驚いてしまう。
「うわあっ!パワー強すぎだぁ!!」
『にゃ〜っはっは!ランボーグ、今だ!プリンセスを捕まえろ!』
カバトンはプリズムが力を制御できてないのなら好都合と言わんばかりにランボーグへとプリンセスを確保するように命じる。
「ランボーグ!」
ランボーグはカバトンの命を受けてあげはの方を向くと彼女は渡さないと言わんばかりに身構える。
「ッ!」
しかし、プリズムも先程のジャンプ一回で大体の感覚を掴んだのか空中で体勢を変える。そのまま建物の壁に足を付けてから一気にランボーグへと向かって突撃した。
「させないよ!はあっ!」
プリズムはその突撃の威力を全て上乗せする形でランボーグへと蹴りを叩き込む。
「ラン……ボーグ!?」
ランボーグはこちらに向かってくる際の勢いを全て利用したプリズムからのキックに堪らず吹き飛ばされてしまう。
「え!?あわわわっ!」
しかも運の悪い事にランボーグの吹き飛ぶ先にいたのはランボーグの傘の上に乗っていたカバトンである。彼は慌てて逃げようとするが、その暇すら貰えなかった。
「のわああっ!?」
そのままランボーグの吹き飛びに巻き込まれたカバトン。しかも彼はその拍子で持っていたミラージペンを手放してしまう。
「しまったぁ!!」
そのままランボーグは近くの建物の屋上に落下するとその上にランボーグも落ちてくる。加えてカバトンが手放した事で宙を舞うミラージュペン。それを見たソラはすかさず走り出すとあげはは慌てた。
「え!?ソラちゃん、そっちは……」
あげははいきなり駆け出した上に屋上にある手すりを足場にして飛び出したソラに目を見開く。普通ならこんな事、自殺行為に等しい。だからあげはも彼女の行動を止めようとした。しかし、ソラにとって今空中にあるミラージュペンまでの距離は……跳べば届いてしまう距離なのだ。
「ソラちゃん!」
更にプリズムは手から光の気弾のような物を飛ばすとそれを空中に並ぶ足場としてソラをサポート。下にいたシャドーもまさか生身のソラがプリズムのサポートありきとは言えあの高さから飛び出してくるとは思っていなかった。
「何!?まさか、生身であそこまで届くのか!?」
そんな彼を他所にソラはプリズムの足場で踏み込んで跳び上がり、空中のミラージュペンをキャッチ。そのまま変身する。
「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!スカイ!」
ソラは光を纏うと一瞬にしてキュアスカイへと変身。そして名乗りを挙げた。
「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」
これにより、スカイは地上波と降り立つとシャドーと向かい合う。シャドーはまさかのスカイの参戦に驚いたが、面白そうに笑みを浮かべる。
「なるほど、お前も随分と楽しめそうだ。来い」
スカイがシャドーと対峙して構える中、吹き飛ばされたカバトンがランボーグを退かして声を上げる。
「ぐぬぬ、何で俺ばかりこんな目に……行け、ランボーグ!」
「ランボーグ!」
するとカバトンの隣にいた小型ランボーグが起き上がって飛び出すと
スカイと対峙するシャドーの横に立つ。更に後ろに陣取るように普通のランボーグも現れた。これにより、スカイは三方向を囲まれてしまう。
それを見たプリズムも手すりを足場にして跳び上がるとまた両手に気弾を生成した。
「三人がかりでなんてやらせない!」
プリズムが放った二発の光弾はランボーグにそれぞれ命中。ランボーグを怯ませている間にスカイの背中を守るように降り立った。
「スカイ、私達でどうにかしよう!」
プリズムの言葉を聞いてスカイも同意するように頷く。彼女もここまで二人が繋いだ分、戦う気満々な様子だ。
「えぇ、ここまでお二人が頑張ったんですから。ここからは私達の番です!」
「ふっ、二人が復活したとて手数はこちらが上。……お手並み拝見だな」
二体のランボーグに加えてシャドーが二人を挟むように立っている現状。このままでは不利な戦いになってしまう……そんな時だった。
「いいや……三対三だ」
そこに合流したのは先程までシャドーにやられて倒れていたサンライズである。彼の参加で数は互角になるが、サンライズに関してはここまでのダメージが気になる所だった。
「サンライズ!?無理は……」
「このくらい大丈夫だ。それに、折角ましろがプリズムに覚醒してここまで戦況を戻してくれたんだ。俺だって負けてられねーよ」
サンライズがまだ動ける所を確認した上でスカイ、プリズム、サンライズの三人は手分けしてランボーグ二体とシャドーを相手取る事になる。
「はあっ!」
最初に動いたのはシャドーだ。彼にしては珍しく先制で拳を振るってきた。その対応は総合的な戦闘力が高いスカイが担う事になる。残されたプリズムとサンライズはそれぞれランボーグと交戦した。
「やあっ!」
プリズムが先程同様に両手に気弾を生成するとそれを小型のランボーグへとぶつける。
「ラ!?」
ランボーグは気弾の影響で煙幕が張られたためにプリズムを一度見失ってしまう。その瞬間、プリズムが煙から飛び出してくるとまだ戦い慣れしてないせいかランボーグを両腕で押し出す形で拳を命中させて攻撃を加えた。
「ランボーグ!?」
ただ、元が非力なましろでも全体重を預けてくるタイプの攻撃は小型のランボーグにとっては強攻撃に相当する。そのため堪らず後ろに押し戻された。
「ッ……やっぱり強い、これならいけるよ!」
一方のサンライズはランボーグから展開された触手を捌きながら接近していく。彼は先程シャドーから言われた通り、目の前のランボーグだけで無く周囲から攻めてくる触手を上手くいなしながら突っ込んで行った。
「あ、アイツ!?成長してやがる!」
サンライズの教えに対する吸収力が高いおかげでシャドーは完全に敵に塩を送った形になるとランボーグの近くにまでサンライズが接近。
「だああっ!」
サンライズが体に炎を纏わせてからすかさずその火力で地面を殴った。その瞬間、炎の衝撃波が発生すると周囲に展開されたランボーグの触手が熱線で焼き切られてしまう。
「ラン!?」
「うらあっ!」
ランボーグが動揺している間にその腹へと炎の拳が命中。ランボーグは炎に包まれるとダメージに苦しんだ。
「だだだっ!」
そして、残ったスカイの方もシャドー相手に戦いを挑む。シャドーはスカイからの攻撃を素手で捌きつつある事を考えていた。
「(……なるほど、単純なパワーにおいてはサンライズより劣る。だが、それでもサンライズ以上に力を発揮させてくれる所を見るにこちらの方が経験値では上か)」
少なくとも、サンライズからの攻撃は殆ど当たらないか軽く流されていた所をスカイの方はまともに防御をする場面が多少あるためにスカイはシャドーの余裕を無くせているらしい。
「ッ、やはり強いですね」
「お前もな、少なくともサンライズよりは楽しめている」
「そうですか、でも!」
その瞬間、スカイは攻撃をシャドーの上半身ばかりに繰り出す事で彼の意識を上に集中させると余裕からか、気を抜いていた足元に足払いをかける。
「ッ!?」
「私相手に余裕なんて持たせません!」
スカイは倒れかかっているシャドーが立て直す前に一気に決めるべく浄化技を繰り出す。
「ヒーローガール!スカイパンチ!」
スカイが踏み込むと渾身のスカイパンチが放たれる。その瞬間、シャドーは咄嗟に背中に背負っていた刀を抜き放つと同時にそれで攻撃を受け止めた。
「ッ!?」
「ぐっ……」
しかもシャドーは転びかけてスカイパンチを喰らったはずなのにすぐに浮いていた足を地面に突き刺すようにして踏み込むとスカイの突進力を押し留めていった。一方のスカイは自分の攻撃を受け止められたために驚愕。
「甘い!」
シャドーはスカイの力の緩みを見逃す事無く、彼女からのスカイパンチを弾き飛ばしてしまった。
「くうっ!?」
「……俺にこの刀を使わせるとはな」
シャドーの手に握られているのは日本刀に近いタイプの刀。持ち手は黒だったものの、刀身の色は一応普通の日本刀と似たような感じだった。一方、弾かれたスカイは何とか着地すると構え直す。
「スカイパンチを体勢を崩した状態で完全に受け切るなんて……」
「キュアスカイ、俺にこの刀を抜かせたことに敬意を表して……この技を見せてやる」
その瞬間、シャドーは刀を構えると同時に円を描くように動かす。それは円月殺法に近い形であった。それと同時にエフェクトして自身の背後に紅い月が出現。
「ひろがる!シャドーブラッドムーン!」
「……え!?」
そのスカイはその技の名前を聞いて混乱する。技の言い回しがプリキュアのそれと同じであるからだ。シャドーはスカイが困惑する中でも容赦なく技を継続。斬撃を放つために刀の向きを少しだけ変える。
「はあっ!」
「ッ、しまっ……」
スカイはシャドーの言った技名に気を取られたせいで反応が遅れてしまう。しかし、シャドーにとってそんな事情は関係無い。そのまま容赦無く振り下ろされる刀。
「ぐっ!?」
シャドーが刀を動かした瞬間、突如としてスカイはいきなり突き飛ばされると技の攻撃範囲から外れた。その直後、スカイを突き飛ばした何かが技をまともに受けてしまった。
「ああああああっ!?」
その場には悲鳴が響くとスカイの前で崩れ落ちる。それを見たスカイはどうにか言葉を絞り出した。
「スノー……?」
スカイの代わりに攻撃を受けてしまったのはスノーだった。彼女は悲鳴をあげると共に倒れてとうとう変身解除。戦闘中に浴び続けた体へのダメージと体力が十分に戻らない状態での無理な戦闘。それらが彼女の体に重くのしかかると気を失ってしまったのだ。
「ユキさん!?ユキさん!しっかりしてください!ユキさん!ユキさん!……どうしてこんな……」
スカイが慌てて駆け寄る中、ユキが倒れた事はプリズムやサンライズにも見えた。
「ユキちゃん!?」
「ユキ……許さない、お前ら!」
サンライズはユキが一方的にやられた事への怒りを募らせる中、目の前のランボーグが空気を読まずに拳を繰り出してきた。
「ラン!?」
「テメェ、少しは空気を読めよ!」
サンライズはそれを片手で捕まえると顔面に拳を命中させる。それを皮切りにサンライズは拳をランボーグへと乱打。
「ラララァ!?」
すかさず彼は容赦無く目の前でグロッキーになったランボーグへと浄化技を発動。
「ひろがる!サンライズブレイク!」
サンライズからの流れるような怒りの炎による鉄槌が下されるとランボーグは問答無用で押し潰されて浄化された。
「スミキッタァ〜」
そしてプリズムの方にもランボーグはいるためにプリズムはすぐに意識を目の前のランボーグに戻すと気弾による射撃を命中させる。
「ラン!!」
「はっ!」
ランボーグの守りが気弾によって崩れたその瞬間を狙ってプリズムは先程とは違った普通のパンチにランボーグは後ろに倒れ込む。
「これで決めるよ!」
プリズムは技を発動させると同時に両手で気弾を作り出し、それを真上に掲げる。その間に気弾はエネルギーを注がれて巨大化。そのまま両腕を前に振り下ろしつつ構えてから放つ。それはプリズムの技だった。その名も……。
「ヒーローガール!プリズムショット!」
プリズムからのプリズムショットは一直線に飛んでいくとランボーグに命中。ハート型のエフェクトが弾けると共にランボーグの体を丸ごと包み込むとその体を浄化していく。
「スミキッタァ〜!」
これにより、その場に展開されていたランボーグは二体揃って消滅。カバトンは完全に勝ち確ムードからここまでひっくり返されて頭を抱えていた。
「つ、TUEEE……」
そんな中、プリズムからの目を向けられたカバトンは慌てて撤退を選択。そして、残っていたシャドーの方も小さく笑みを浮かべていた。
「くっ、カバトントン!」
「……流石に三人相手は分が悪い。ここは大人しく退かせてもらおう」
シャドーはカバトンのように呪文は言わなかったものの、自分で紫の煙を発生させると共にその場からいなくなった。それを見届けたプリズムは変身解除するとその場にへたり込む。
「あ、あれ……」
「ましろさん!?」
ユキだけで無くましろもいきなり変身解除してその場にへたり込んだ事に焦ったスカイ。彼女もその場で変身解除してソラに戻るとましろへと駆け寄った。
「大丈夫ですか!?」
「うん。緊張が解けてちょっとふにゃーってなっちゃっただけ」
「良かったです……」
だが、これだけ時間が経っても未だに目を覚さない者が一人。ユキである。彼女は汗をかいて顔は真っ赤、荒い息をしているのに意識が戻らない。
「ユキ!聞こえるか?返事をしてくれ!ユキ!」
アサヒが慌ててユキへと声をかけるが返事どころかどんどん体調が悪化しているようにも見えた。そこに校舎から出てきたあげはが出てくる。
「今ここに救急車呼んだから!ひとまずユキちゃんの応急処置を!」
取り敢えず一同はユキを安全な姿勢で寝かせると心臓がまだ動いている事を確認。それから冷やせる物を持ってきて彼女の体を少しでも冷やす。ユキはそれから救急車に乗せられると病院へと送られた。
それから時間が経ってその日の夕方。ユキはようやく目覚めるだけの体力が戻ったのか、ようやく目を覚ます。
「……ん……ここは……」
「ユキさん!!良かった……本当に……」
「もう、心配したんだからね!」
「み……ん……な?」
ユキは体を動かそうとするが、思うように動かない。いや、動かす事すらできない。それからどうにか手を視界に入れるものの、その手が震えている事に気がつく。
「そっか、私……もう体力が無いんだ……」
目覚めたとは言ってもユキの体力はもう殆ど残っていない。それに戦いでの肉体の疲労も限界値を大幅に超え、思うように力が入らないのだ。
「ユキ、帰ったらまたお説教だからな。無理を押してあんなことまでして……俺達がどれだけ心配したか」
「ごめんなさい……私のせいで……」
「違います!ユキさんのせいではありません」
ユキは細々とした声で謝罪。流石に今回のユキは擁護しきれない程の失態を重ねてしまっていた。強くなるために無茶した結果、肝心な時にまるで役に立たなかったのだから。ただ、ユキの言葉にソラが異議を唱える。彼女も目に涙を浮かべるとユキへと謝り始めた。
「謝るのは私の方です。私が未熟だったから……私がカバトンにペンを奪われたから。だからユキさんがこんな目に遭ったんです。私なんかを助けなければ……」
「そんな、ソラちゃんは何も悪くないよ!私がでしゃばったからあの結果に……」
このままでは責任感の強い二人による不毛な責任争いを始めかねない。そんな時、ましろがユキとソラの手を優しく掴むと間に立つ。それから二人を順番に見てから微笑みつつ首を横に振る。
「ダメだよ……」
「「え?」」
「私なんかとか私のせいでとか言っちゃダメ。二人共私の大切な友達。……だからこれ以上、自分を責めてる所を見せないでほしいな」
二人はましろからの言葉にどうにか自分の中にあった責任感が消えていくと二人共頷く。そのタイミングで今まで静観していたあげはが口を開く。
「ひとまず一件落着だね。……あと、お医者さんからの伝言を一応言っておくと、ユキちゃんは暫く運動禁止。疲れがちゃんと抜けるまでは安静にする事。それとさっきの大事だけど……アレを綺麗さっぱり忘れるのは流石に無理そうなんだけど……」
「「「あ。あはは……」」」
あげははランボーグとの現場を見た上にその渦中に巻き込まれてしまった。流石にそこまで印象深い事を忘れるのは流石に無理である。そのため、ユキを除く三人は苦笑いするのだった。
「(それにしても、シャドー。とんでもない強さだった。ソラは対応できていたけど、俺は全然で。……俺がアイツに勝つにはどうすれば良いんだろう)」
アサヒは先程のシャドーとの戦いを考える。彼はシャドー相手に歯が立たなかった。しかも彼とは今後何度も戦う可能性が高い。そう考えると楽観視なんてできないだろう。
「(俺も強くならないとか)」
アサヒがそう考える中、ベッドの上で安静にしているユキも心の中ではモヤモヤが溜まり続けていた。
「(私、何やってるんだろ。強くなりたくてトレーニング量を増やしたのに。これじゃあただの足手纏い。どうすれば……どうすれば皆に捨てられずに済むのかな……もうどうすれば良いのかわかんないよ……)」
その目に光は無い。このままではまた過剰トレーニングをしても同じ結果になるのは目に見えてわかる。ユキにはどうすれば良いのかわからずにまた自分一人で抱えてしまう。
こうして、ユキもアサヒも心の中は晴れないままにその日は幕を閉じていく。そしてユキの不安定な心が原因でまたひと頓着ある事をまだ誰も知らない。
また次回もお楽しみに。